LITALICOワークスとは
大学院卒業後、精神科クリニックの臨床心理士として、患者の方の心理検査やカウンセリングに携わっていました。患者の中には「働きたい」とおっしゃられる方もいましたが、当時は社会資源も少なく、私自身の知識や経験不足もあり、障害のある方の就労は難しいと思っていました。
その後、学生相談のカウンセラー職に就き、学生のサポートをおこなっていました。そのとき障害のある学生さんの就職に関する相談を多く受けました。しかし、そこでは一人ひとりが満足する就職サポートが難しくモヤモヤが募る日々を過ごしました。彼らにできることがないかを考えていたときに、先輩から「こんな会社があるよ」と紹介されたのがLITALICOワークスでした。
カウンセリングは1対1の仕事だったので、LITALICOワークスの「みんなで支援する」という体勢の強さを実感しました。チームで支援に取り組むと、利用者の課題を多面的に捉えることができ、さまざまな意見を出し合い、解決の可能性が大きく広がります。その人の性格や特性をこうだと決めつけることなく、その人が本当に必要とするサポートを提供できます。
チームであることは、私たち支援する側にも効果があります。みんなで喜んで、悩んで、怒って……共感することは大切です。毎日思考錯誤しながら楽しくいられることは、働く意欲に直結しますね。
この「みんなで支援」はもっと大きくなるといいなと思っています。LITALICOワークスという組織内チームを超えて、地域内チームへ。例えば医療機関や、生活の質を安定させるための福祉サービス、さらにはご家族など。多くの方と連携し、1つのチームを作り上げていくことが大切だと考えています。支援者にも悩みや不安はありますし、支援機関同士で相談したいことや勉強したいこともあります。名古屋千種ではそれがうまくいっていて、地域全体で支援スキルをボトムアップするため、他の支援機関を巻き込んだ勉強会など開催しています。これからもっと広がっていくと感じています。
学生相談のカウンセラーだった頃、病院で統合失調症の方ともたくさんお会いしていましたし、入院された方も支援していたのですが、彼らから働きたいって言われたときに私は反対していたんですね。病状が悪化するからやめた方がいいということで。
LITALICOワークスで1番印象的だったのは、とても病状が重いある方の支援を担当したときでした。その方は何度も処置入院をされていて、初めてお話しをした際にも就労は難しいと感じていました。しかしその方が卒業、就職されたと報告をいただきました。電話口で「今が人生で1番幸せです」という声を聞いたとき、私は今まで何を見てきたんだろうって思いました。
働きたいと相談されたら、反対するのではなく「行っておいで」と背中を押せばよかったなと。そのことがあってからは、医師が患者の就職に反対する際は「私も支えますから、先生も一緒に支えてください」と説得するようになったんです。これまでの経験を通して、医師が患者の背中を押す難しさや不安はよく分かります。支援する人にも支えがいるんだと気付き、自分が変わるきっかけにもなりました。
またLITALICOワークス名古屋千種では、毎週「Team Works(チームワークス)」というプログラムをおこなっています。名前の通りチームでおこなうトレーニングで、スタッフから出された課題に取り組み、1つの業務を達成していくことで、集団行動でのいいところや苦手なところに気づいてもらうことを目的としています。そもそも参加できるか悩まれる方もいれば、共同作業が苦手な方や参加したものの発言できなかった方もいます。利用者に気づきを促すプログラムですが、私たち支援者にも意味があります。「事業所で起きる問題は職場でも起きる」と考え、集団行動をするために本人を変えるのではなく、就職先でも同じようなことが起きると想定します。当たり前のことですが、人はみんな違います。一人ひとりへのアプローチも異なります。それを受け止める覚悟をする。そこから支援がはじまると思っています。
スタッフの1日
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8:30出勤、スタッフ朝礼・共有
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8:45掃除
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9:00全体朝礼・体操
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9:10ステージ毎の朝礼・共有
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9:30外出(企業・関係機関・地域協議会等)
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12:00外出から戻り、昼休憩
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13:00面接プログラムの実施
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15:00外出(企業・関係機関・地域協議会等)
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17:00外出から戻り、メールチェック等
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17:30退社
私たちは就労のための支援を提供していますが、目的は働き続けた先にある「よりよい人生」だと思っています。就職することが目的ではありません。
就職するには就職するためにある程度のノウハウが必要ですが、働き続けるためには色々なノウハウが必要になります。他人との距離の取り方、意思伝達の仕方、人間関係の築き方……LITALICOワークスにはさまざまな職務経験を経たスタッフもいますし、企業インターンで職場体験もできます。自分を客観的に見てくれる人がいるし、それによって新しい自分に気づくこともあります。
ここでは色々な経験ができるし、その人の世界を広げるサポートがあります。もしも今、就労支援を利用することに迷っている方がこれを読んでくれているとしたら、そのことを伝えたいです。あなたの人生のために、福祉サービスを上手に使ってほしい、と。
みんなで支援する強い地域をつくることの延長として、ライフステージを一貫してサポートできるようになりたいですね。就労支援の利用対象者は18歳からなので、これよりも若い方にはまだ支援することができません。子どもや大人の領域の溝をなくして、すべての方に支援ができたら素敵だなって思っています。
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。