障害者雇用の企業事例

長く働き続けられる、環境と制度がある障害者雇用

アルティウスリンクはどんな会社ですか？

コンタクトセンター事業を中心に展開するアルティウスリンク株式会社（以下アルティウスリンク）では、障害者雇用において働きやすい環境や制度づくりに力を入れています。その特長や想いについてお話を伺いました。

 

アルティウスリンクは、BPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）・コンタクトセンターを中心としたカスタマーサービスの提供を通し、企業の皆さまのロイヤリティを支える会社です。2023年9月にKDDIエボルバと、りらいあコミュニケーションズが経営統合し、両社が培ってきた「人を大切にする」文化を受け継いだアルティウスリンクとして発足しました。

 

この社名には、「より高く」を意味するラテン語の“アルティウス”と、両社がともに大切にしてきた「つながり」を意味する“リンク”のふたつの願いを込めていて、人と社会のよりよい未来につながるさらなるコミュニケーションの高みを、これから目指していきます。

障害者雇用におけるこれまでのストーリー

アルティウスリンクの前社であるKDDIエボルバ時代に、事業拡大に伴って、年々数千名単位で従業員数が増えていきました。その過程で、多様な雇用形態・働き方ができる環境整備をすることが事業継続に必要不可欠であるという考えのもと、障害者雇用にも力を入れてきました。

 

2011年には、印刷・事務代行などの業務を担う、障害のある方専門の部署を設立しています。2017年には、震災の跡地を活用し、障害者雇用×農福連携の障害者専門部署も立ち上げました。そして2020年には、常用雇用者が数千名規模で増員したことに伴って、全社をあげて障害のある方の雇用促進活動を推進。2021年には、全国で年間100名以上の新規雇用を実現しました。

 

この雇用促進活動を通して、障害のある方とともに働くことが当たり前の企業風土が醸成され、多くのスタッフが安心して働ける環境を整えてきました。例えば、障害がある方から相談やお願いをされることを待っているのではなく、苦手そうなことには周囲から歩み寄ってサポートの姿勢を示すなどが挙げられます。そういう当たり前のことへの理解が、浸透しているように思います。

 

アルティウスリンクとしても、全社で障害者雇用を推進していくという方針を出しました。自分の能力を発揮しながら働いて、人生がより豊かになっていく場所となるために、DE&I（ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン）を推進していきます。

 

障害者雇用のメンバーと仕事内容

アルティウスリンクでは現在、障害の有無に関わらず、年齢や国籍など多様な個性や価値観をもつ約58,000人が、自身の能力を活かして働いています。そしてそれぞれが、働きやすい雇用形態や時間・曜日を選択しながら、自分らしい働き方を実現しています。社員として働く障害のあるスタッフは約650人、その中で6割がコンタクトセンター業務に従事しています。対面のコミュニケーションが苦手な方でも、対応マニュアルのあるコールセンターであれば働きやすいと感じる方も多いようです。

 

障害者雇用のスタッフの障害種別割合

身体障害：39%

精神障害：48%

知的障害：13%

 

業務内容の割合

コンタクトセンター（電話・事務・チャットなど）：60%

クリーンスタッフ：13%

事務・庶務：8%

エンジニア・営業：2%

障害者専門部署（事務・農業・清掃）：17%

 

障害者雇用で働くスタッフのうち7割以上が、一般社員と同じ業務に従事して活躍していることも、アルティウスリンクの特長であり、強みなのかなと思います。働き方への考え方も柔軟で、業務によっては短時間勤務から始めて、慣れてきたら勤務時間を増やすという方もたくさんいらっしゃいます。障害のある方が働きやすい形を相談しながら、一緒に見つけていきたいと考えています。

 

障害のある方が働きやすい環境づくり

障害のあるスタッフが、困りごとなく長く働き続けられるために、日々環境や制度の整備を進めています。

 

通院休暇制度

障害者手帳を持っているスタッフが、障害に起因する通院の際に休暇を利用できる制度を設けています。

 

障害者相談窓口と障害者職業生活相談員の設置

全国11拠点に「障害者相談窓口」を設置し、合わせて「障害者職業生活相談員」を配置しています。ここには、障害のあるスタッフからの相談だけでなく、一緒に働く社員からの相談も受けつけ、ともに働きやすい環境整備を推進しています。「障害者職業生活相談員」は、各拠点の障害がある方の採用促進や定着促進を実施。特に、入社3か月未満の障害があるスタッフや、そうした方とともに働く社員も交えて面談を行っています。

 

職場環境調査

在籍している障害のあるスタッフ全員に年に1度の職場環境調査を行い、満足度、継続意向、具体的な満足理由や希望、キャリア意向などをヒアリングして全社へ報告しています。面談を希望される方には、直接、またはオンラインで面談を実施しています。

 

障害者理解の促進

障害者雇用、合理的配慮、差別禁止法への理解はもちろん、日頃のコミュニケーションを円滑にするためのポイントを学ぶ研修を、経営層から社員まで受講必須として展開しています。また、障害があるスタッフのフォローと理解のためのマニュアルや面談シートなどのツールを、管理職へ展開しています。

 

このような環境づくりの中で、特定の部署だけが障害者雇用を行うのではなく、全社として誰もが障害のある方とともに働く職場づくりを推進するために、活動や情報展開を行っています。

 

キャリアアップと評価制度

例えば、障害者雇用のうち約6割の方が働いているコンタクトセンターには昇格制度があり、障害の有無に関わらず、キャリアアップをされているスタッフがいます。コンタクトセンターに従事されている障害があるスタッフの中にも、約20名の方が、スタッフを管理するリーダーやスーパーバイザーなどに昇格し勤務されています。

障害者専門部署の「チューター制度」

東京にある障害者専門部署で実践している「チューター制度」は、障害のある先輩社員が新人育成担当に着任し、障害のあるスタッフの業務習得と会社生活をサポートする制度です。

 

この制度には、教える側と教えられる側、双方にメリットが存在します。先輩社員としては、チューターとして指導に当たることで、社会人としてのお手本になる自覚と責任感が高まり、業務へのモチベーションにもつながります。チューターに着任したある先輩社員は、今まで以上に相手のことを気づかった言動へと変化したりと自身の成長にもつながりました。また新人スタッフとしては、先輩の姿を見て、あんな風に働けるようになりたいとか、成長していきたいとか、一つのベンチマークとして近い将来のイメージを描けるようになります。チューターの存在が働くことへの精神的な支えにもなっているようで、良い関係性が築かれています。

 

あるチューターが、「仕事は時間をかければ覚える。まずは明日も会社に行きたいって思えるようになってもらいたい」と言っていました。そのような素敵な先輩の存在は、不安な気持ちも持ちながら入社してくる新人スタッフの支えになり、この制度があって良かったなと改めて思えました。

 

採用に関して大切にしていること

私たちの採用サイトには、原則「障害がある方も全ての業務に応募いただけます」と記載していて、障害の有無に関わらず働いていただける企業である、というメッセージを発信しています。実際にアルティウスリンクでは、子育てをしている方、介護をしている方、ミュージシャンや芸能活動など夢の実現のために働いている方、60歳を超えている方など、多様な方々が自分らしく働いています。

 

採用の過程においては、お客様の個人情報を扱う仕事のため、オフィス内を見学いただくことや、業務の事前トライアルなどができないケースが多いです。それでも、可能な範囲で、休憩室などの環境を見ていただけるようにしています。また、採用の面接官が、障害のある方の採用面接を初めて担当するケースもあるので、面接用のマニュアルを全社に展開しています。そうすることで、応募していただく方に安心して面接を受けていただける環境をつくっています。

 

面接は基本1回で、働き方の希望をお聞きし、適性をみて内定というシンプルな採用フローとなります。未経験で入社される方がほとんどですので、ぜひお気軽に、まずは話をしに来ていただけたらと思います。

 

障害者雇用で今後目指していくこと

先日、コンタクトセンターの管理職社員から「障害のあるスタッフが、障害のある友人の方を紹介してくれました。アルティウスリンクは働きやすいと感じていただいている証拠だと思います。」とのお話しがあり、大変嬉しかったです。

 

これからもそんな風に思っていただける方を1人でも増やしていくために、アルティウスリンクとしての障害者雇用の文化醸成に取り組んでいきます。