障害者雇用の企業事例

社員との信頼関係を築き、「任せる」を大切にした障害者雇用

株式会社MIXI EMPOWERMENTはどのような会社ですか？

株式会社MIXI EMPOWERMENT（以下、MIXI EMPOWERMENT）は、株式会社MIXIの特例子会社です。障害のある社員の方が、バックオフィスサポート業務を中心に、本社からの委託業務などを行っています。今回は、MIXI EMPOWERMENTでは障害のある方とどのように関わっているのか、どのようなサポート体制を整えているのか、特長や想いなどについて伺いました。

 

 

MIXI EMPOWERMENTは、株式会社MIXIの特例子会社として2017年に設立されました。MIXIでは以前から障害者雇用を行っていましたが、さらなる雇用の創出に取り組んでいくため、特例子会社を設立したという背景です。業務内容としては、主にMIXI GROUPのバックオフィスサポート業務を行っています。

 

障害のある社員へのサポートとしては、定期的な1on1ミーティングの設定などの「相談しやすい環境作り」や、毎朝の体調アンケートや小休憩の導入などの「体調管理のサポート」、通院休暇制度の導入などによる「休暇を取得しやすい雰囲気作り」などの取り組みを行っています。

 

そういった取り組みが認められて、令和2年に仙台市から、障害者雇用に貢献したということで「障害者雇用貢献事業者」として表彰していただきました。

 

株式会社MIXI「ミクシィの特例子会社ミクシィ・エンパワーメントが 「令和2年度 仙台市障害者雇用貢献事業者」として表彰」

https://mixi.co.jp/news/2021/0201/2547/

障害名にとらわれず、「傾聴する姿勢」を意識する

 

仙台の事業所には27名の社員がいて、そのうちの23名が障害のある方です。23名のうち身体障害のある方が2人、知的障害のある方が3人、精神障害のある方が18名となっています。ほかの社員はコーチングスタッフと呼ばれていて、障害のある社員の管理やサポートなどを担当しています。

 

仙台以外にも、埼玉県の戸田市にも事業所があり、そちらではハーブティに使うハーブの水耕栽培をしています。栽培したハーブは乾燥させてブレンドし、パックに詰めるところまで行っていて、それを渋谷にある本社の休憩室に置いています。

 

障害のある方と一緒に働いていて意識しているのは、「必要以上の配慮をしすぎない」ということです。また、障害名にとらわれずに、その人にはどういう特性があって、どういうことに困るのかということを見るようにしています。「障害があるから」という先入観を持たずに、その人の話に耳を傾けることが、信頼関係を築くうえでも大切だと思っています。

「誰かひとりの責任」にならないような体制づくり

 

障害のある社員へのサポートとしては、相談しやすい雰囲気作り、体調管理のサポート、業務のサポートなどを行っています。

 

相談できる窓口もさまざまなものがあり、コーチングスタッフやマネージャーとの定期面談だけではなく、外部の人事コンサルや産業医と月に1度面談することも可能です。生活面の不安なども含め、社内の人にはどうしても言いづらいこともあると思うので、いろいろな立場の方に相談できる機会を設けています。

 

体調管理のサポートとしては、朝に体調アンケートを実施しています。専用のフォームを使って、その日の体調について「こころ」と「からだ」に分けて5段階のアンケート形式で回答してもらっています。「相談したいことはありますか？」という欄も設けていて、希望者はコーチングスタッフと面談できるようになっています。

 

また、体調管理サポートのために、「25分休憩」という制度も導入しています。これは、お昼休憩とは別で、25分の休憩時間を任意で取っていいという制度です。以前は「50分働いたら10分休憩」というように休憩時間を決めていたのですが、休憩したいタイミングは人によって違うので、個人に任せようということになりました。きっちり25分を取る必要もないですし、細切れに合計25分の休憩を取る形でも構いません。「任意」とするとなかなか休憩を取らない人もいるので、こちらからも休憩を取るように声掛けしたりしています。

 

業務に関しては、誰かひとりの責任にならないような体制づくりを意識しています。例えば、何か作業をした際は必ずダブルチェックするというものですが、これはミスを減らすということ以外にも、1人で完成させて納品したものに不備があったりクオリティが低かったりした場合に、全部その人の責任になってしまうことを防ぐという狙いがあります。また、突発的に休んだ時のことも考えて、複数人が同じ仕事をできる状態にしておくことを心がけています。

チームで分かれて、連携を取りながら業務を進めていく

 

仙台の事業所では、基本的に本社から受託した業務を行っています。具体的な業務内容は、大きく分けて「各種ワークフローの対応」「分析用データの集計」「画像の加工作業」「賞品などの梱包・発送作業」の4つです。

 

各種ワークフローの対応は、本社で社員が申請した交通費の精算や福利厚生に関する手続き、法務系の稟議書の承認などの業務です。申請内容や添付の領収書などを確認して、正しければ承認し、不備があれば差し戻しをします。差し戻す際には、添える文言も考えてもらうようにしています。

 

分析用データの集計業務は、本社から送られてくる数値データを、スプレッドシートを使って集計していく業務です。そうして作ったデータは、報告書やミーティングの資料などに使われています。

 

画像の加工作業では、本社で扱っているキャラクター画像の加工などを行っています。IllustratorやPhotoshopなどのソフトを使用して、展開する商品に合わせて画像サイズを変更したり、キャラクター画像に背景を差し込んだりしています。

 

賞品などの梱包・発送作業では、本社で行っているアプリやゲームなどのキャンペーンに当選されたお客様のもとに、賞品を梱包して送付しています。取引先に請求書を送る際に、宛名ラベルや見積もりを作成して封入し、発送するという作業もあります。

 

こうした業務は、すべてチームで行っており、必要に応じてチーム同士で連携を取りながら取り組んでいます。その際、まずはコーチングスタッフが詳しい業務内容を確認した上で、各チームのリーダーが話し合いながら業務を進めるようにしています。

リモートワークでも「社員を信頼して任せる」ことを大切に

 

現在は、週に2日リモートワークをしています。リモートワークだからといって特別なことはしていませんが、チャットでこまめに連絡を取り合ったり、朝礼と終礼を行ったりしています。

 

パソコンを使った業務の場合、スプレッドシートを使って業務をすれば進捗を把握することもできますが、進め方はそれぞれの担当者に任せています。リモートワークだからといって細かく管理したり、ルールを増やしたりするのではなく、みなさんを信用して任せるようにしています。

 

将来的にはフルリモートでも勤務できるようにして、遠方に住んでいる方や、身体障害などで通勤が難しい方にも働いていただけるようにしていきたいと考えています。

 

社員を信頼して任せるということは、他の面でも取り入れています。例えば、新しい社員が入ってきたら、実際の業務は先輩社員がOJTという形で新入社員に教えます。

 

また、社員の適性に合わせて、チームリーダーを任せることもあります。リーダーは、チームのスケジュール管理や新しい依頼業務の分担調整をしたり、進捗状況に合わせて必要なアラートを上げて周囲にヘルプを求めたりということもしています。

 

社内のキャリアとして「リーダー的な役割」がありますが、リーダーシップがあることだけが評価されるのではなく、特定の業務が得意ということや、作業の効率化が得意ということも評価していくことが大事だと考えています。それを踏まえて今後は評価制度の見直しを進めていこうと考えています。

LITALICOワークスとの連携で、ご本人の状況に寄り添ったサポートが可能に

LITALICOワークスとは、採用時や定着面談の際に連携させていただいていますが、MIXI EMPOWERMENTがどういう会社なのかを理解した上で対応してくださるので助かっています。利用者の方の特性や配慮事項も事前に共有してもらえるので、入社する前にその方のことをしっかり把握できるのもありがたいです。定着面談の際には、会社としてはなかなかできない部分でご本人のサポートをしてくださるので、安心感があります。

 

最後に、障害のある方は独自の才能や能力が高く、今までになかった視点で気付きを与えてくれることが多いと感じています。そこから新たな疑問や発想、解決策が出てくることが会社として強みになっていると思うので、どんどんチャレンジしてほしいと思っています。