アスペルガー症候群(発達障害)の仕事・就職事例 -物流・ピッキング-
仕事で発揮された強み
男性/40代/物流/ピッキング
アスペルガー症候群(発達障害)
LITALICOワークスの就労支援に出会うまで
アスペルガー症候群は自閉症のひとつに分類され、「コミュニケーションをとること」「想像力と創造性」に障害のあることで診断されます。特に「相手の表情が読み取れない」「人に感心を持つけれども距離のとり方や話しかけ方が不自然になりやすい」ということから、日常生活を送るうえで支障をきたすことがあります。
Cさんは、アスペルガー症候群と診断され、今まで数多くの苦労を重ねてきました。やっとの思いで就職しても長続きすることができず、生活保護を受けながら日々を送っていました。
性格はとてもこだわりが強く、指摘や注意を受け止めきれない傾向があり、ときには感情が不安定になることがありました。それは仕事場で働いているときにも起き、感情が抑えきれないことが多々ありました。その後、心が落ち着いたときに「職場のみんなに迷惑をかけてしまった」と責任を強く感じてしまい、気まずさからそれ以上その職場にいることができなかったそうです。
「もう同じことは繰り返したくない。きちんと就職して独り立ちした生活を送りたい。」
そう心に決めたCさんは、地域の市役所に相談し、就労移行支援事業所LITALICOワークスをすすめられたそうです。Cさんとご両親、LITALICOワークスのスタッフの三者による顔合わせをおこない、通うことが決まりました。
できることを見つける
パソコンを使ったデータ入力のような作業はCさんに向いており、人並み以上のスピードでおこなうことができました。アスペルガー症候群の特性を生かし、記憶力と細かな作業を丁寧におこなうことが誰よりも得意だったのです。
しかし、人一倍集中力があり、記憶力があることや細かな作業が得意だということが分かった一方で、自分で優先順位をつけて段取りを考えることがどうしても苦手だということも分かりました。Cさんは販売職・営業職に就きたいと強く希望しましたが、そこで求められる臨機応変な対応が苦手なために、就職活動では書類は通っても面接では不採用になることが続きました。
そこでLITALICOワークスのプログラムでは、企業見学や企業インターンを多くおこなうとともに、自分の得意・不得意の整理からスタートしました。その過程で、Cさんは必要以上に「自分の不得意」に着目してしまうことがありました。私たちはその都度「できること」に目を向けられるように話す機会を設けて、本人と確認をしました。それを何度も繰り返すことによって、少しずつCさんのマイナス思考も変わっていきました。
アスペルガー症候群が強みに変わった
Cさんの変化が目に見えて分かるようになったとき、転機が訪れました。物流倉庫の実習へ参加し、取り組んでいたピッキングの作業の中で、Cさんの抜群の記憶力が発揮できる場面に出会ったのです。物流倉庫の担当者さんはその記憶力のよさにとても驚かれ、「こんなに記憶力がいい人は見たことがない。是非ともここでその力を発揮してほしいです!」との言葉をいただき、実習生だったCさんをそのまま正規雇用することが決まりました。
LITALICOワークスを利用した当初のCさんの望んでいた販売職・営業職ではありませんが、Cさんは今の仕事にとても満足しているといいます。
「自分がやりたい仕事に就職することよりも、人に必要とされて働く方が仕事としてずっとやり甲斐を感じます。」
そう話されていたCさんは笑顔で満ち溢れていました。
今でも、たまに茶話会※などに参加され、利用者さんに自分の経験した就職までの歩みをお話しされています。
※茶話会:月1回、定期的に開催している利用者さんやOBの方が集まってお話しする会
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。