知的障害(知的発達症)の仕事・就職事例 -バックヤード-
「本当に明るくなったね」充実した毎日
男性/20代/エンタメ/バックヤード
知的障害(知的発達症)
対人関係に自信が持てず、自分の殻に閉じこもっていました。LITALICOワークスでは色々なことにチャレンジし、先輩方やスタッフに支えられて、少しずつ本来の自分を出せるようになりました。採用が決まったときは、とてもうれしかったです。今は、大好きな音楽・アニメ・マンガに囲まれて、2人の後輩と一緒に働いています。昔の自分からは想像できないくらい今が楽しく、充実した毎日を送っています。家族からも「本当に明るくなったね」と言われるようになりました。自分を支えてくれている家族に恩返しができるようにと思っています。
LITALICOワークスを利用した経緯 高校中退後、知的障害(知的発達症)の診断を受け入れて
高校3年生になったとき、学校の勉強についていけず、通信制高校に通うようになりました。しかし、通信制高校では先生とうまくいかず中退しました。その後、就職活動をしましたがなかなかうまくいきませんでした。やっと採用してもらえた飲食店では、忙しさについていくことができず、人間関係でも自信をなくし退職しました。
これからどうしたらいいのかと僕も母も悩んでいた時期に、母と長い付き合いのある友人から「もしかするとEくんは障害があるかもしれないから、一度障害福祉センターに行ってみたら?」と言われました。母が信頼している友人からの助言とはいえ、自分に障害があると思っていなかったし、もしそうだとしても認めたくありませんでした。悩んだ末に、障害福祉センターに行って検査を受けたところ、知的障害(知的発達症)※と診断されました。覚悟はしていたし、結果を見ると明らかでしたが、最初はなかなか障害を受け入れることができませんでした。
障害福祉センターの方からLITALICOワークスの就労移行支援を紹介されて、家族で見学に行きました。その後、他の就労移行支援事業所も見学しましたが、スタッフや利用者さんがフレンドリーで明るいと感じたため、LITALICOワークスに通うことを決めました。
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
LITALICOワークスでの変化 好きなことを通じて、少しずつ「本来の自分」が出せるように
LITALICOワークスに通い始めた当初は、スタッフや利用者さんと、ほとんど何も話しませんでした。人間関係での辛い経験から、人と接することが怖くなり、自分の殻に閉じこもっていました。
変わるきっかけとなったのは、LITALICOワークスでおこなわれた納涼祭でDJ係になったことです。朝礼で「納涼祭のDJ係、やりたい人いますか?」と聞かれたとき、音楽が好きだったため、自然と体が動いて立候補していました。初めて自分が主体となってアンケートを取り、選曲などの準備を進めました。音楽の話を通じて利用者さんと盛り上がることもできるようになり、この頃から人と接することが少しずつ怖くなくなっていきました。当日のDJが成功したときは、とてもうれしかったです。
やがて企業の体験実習にも積極的に参加できるようになり、働くことに対する自信も取り戻していきました。また、そこでの新しい出会いを通じて、人と接することを楽しく感じられるようにもなりました。
入社の経緯 音楽やアニメ・マンガに囲まれた環境で働ける!
アニメやマンガに囲まれて働きたいと思っていましたが、志望していた企業は障害者雇用をおこなっていませんでした。一般雇用で面接まで行きましたが、障害のことを話すと、不採用となってしまいました。気持ちが沈んでいたときに、LITALICOワークスのスタッフからTSUTAYAの障害者雇用の求人を紹介されました。やりたいと思っていた仕事にぴったりで、スタッフからも「アニメや音楽が好きなEさんに向いていると思う」と背中を押され、受けてみることにしました。LITALICOワークスのスタッフが、TSUTAYAにはどのような仕事があるのか事前に調べて、実習に行くためのプログラムを用意してくれたので、自信を持って実習に臨むことができました。実習では、プログラムの成果がいかされる場面もありましたが、同じ失敗を繰り返してしまうこともありました。一緒に実習をしていた2人は器用だったので、自分はきっと不採用だろうと思って落ち込んでいました。しかし、実習をしていた3人全員の採用が決まりました。まさか自分が採用してもらえると思っていなかったので、決まったときは本当にうれしかったです。
現在の業務内容 3人チームのリーダーとして
エスカレーター、エレベーター、フロア、トイレ、什器などの掃除や、返却された商品を棚に戻す作業、入荷シールを貼る作業、DVD・CDの研磨や修理、ブックカバー折など、さまざまな仕事があります。今は、障害者雇用で採用された3人が1つのチームとして働いています。僕はその中で1番入社時期が早く、年上でもあるので、後輩2人を教える役割も担っています。最初の頃は自分の仕事で手いっぱいで、全然2人を見ることができていませんでした。「もうちょっと周りを見ようか。2人、失敗しているよね。」と注意されることもありました。でも、スタッフや店長が「自分のペースで大丈夫だよ」「僕たちもサポートするから大丈夫だよ」と言ってくれたので、そのときからスイッチを切り替えることができました。今では、周りを見ながら丁寧に仕事に取り組むことができるようになったように思います。後輩は覚えるのが早いので、僕も頑張らなきゃいけないと思っています。
楽しさ・やりがい 色々な作品に出会う喜び
入社3ヶ月後に、スタッフ割引が適用された時は、すごくうれしかったです。条件付きではありますが、CDやDVDをスタッフ価格で安く借りることができるため、割引を利用してたくさん借りました。お客さまから商品の場所を聞かれたり、おすすめを聞かれたりすることもあるので、なるべく頭の中に情報を入れておきたいと思っています。
また、他のスタッフから「面白いよ」とおすすめされることもあるので、職場でたくさんの作品に出会うことができるのも、楽しみのひとつです。
だんだん自分の頭に色々な作品が入っていくことが楽しいです。
今後の目標 頼れるリーダーになる
僕も障害があるので、後輩の障害や悩みをなるべく分かってあげたいと思っています。後輩に指示を出すときや注意をしたいときなど、どのように伝えればいいのか、よく悩みます。厳しく言ったら傷つけてしまうかもしれないし、だからといって優しく言いすぎても伝わらないし、どの程度踏み込むべきなのかを考えて伝えていきたいです。そうすることで、頼りにされる存在になっていきたいです。また、しっかり仕事を続けることで、母に恩返しをしていきたいとも思っています。
LITALICOワークス利用で就職後に役立ったこと
先輩方の話を聞けたことや、就職していく先輩方の姿を見ることができ、とてもよい刺激になりました。先輩の話を聞く中で、自分はまだ知らないことがたくさんあると知り、世界が広がりました。また、人と話すことが怖かった時期に、「早くみんなと話そうよ」「なんでそんなすみっこにいるの?」などと、よく声をかけてくれる先輩がいて、とてもうれしかったことを覚えています。LITALICOワークスでたくさんの人と関わる中で、暗かった自分から今の自分に少しずつ変わっていきました。今、お客さまやスタッフと笑顔で話すことができるのも、LITALICOワークスでの出会いがあったからだと思っています。
これから働きたいと思っている障害のある方へのアドバイス
とにかくチャレンジしてみることです。面接まで行かなくても、書類を作成してみるなど、行動を起こしてみると少しずつ意識が変わってきます。僕はLITALICOワークスに通いはじめた頃、自分の殻に閉じこもっていました。実習にも行きたくないと言って、何も行動しませんでした。でも、少しずついろいろなプログラムにチャレンジして、実習にも行って、係の仕事にも挑戦する中で気付くことが沢山ありました。2年前の僕から大きく変わることができたのは、少しだけチャレンジしたからだと思っています。
株式会社TSUTAYA TSUTAYA BOOK STORE TENJIN 店長 榊原様
Eさんが入社して3ヶ月がたったとき、2人の後輩が入社しました。
年上・先輩としてしっかりしなきゃという意識や、彼らが困っていたら助けなきゃと自分から声をかけている姿勢は、本当に頼もしいです。
また、Eさんはアニメが好きなので、お客様からアニメに関するお問い合わせを受けたときは率先して案内してくれますし、アニメのDVDを売り場に戻す作業も迅速です。音楽やマンガ・アニメなど、好きなジャンルがあるということは、この仕事をする上で大きな強みになります。これからも、Eさんの強みを生かしながら、後輩を束ねていく存在として、活躍を期待しています。
LITALICOワークスより
利用当初はスタッフ以外と話すこともなく、おとなしい印象だったEさん。
係の仕事を通じて他の利用者とも話せるようになり、次第に笑顔がたくさん見られるようになりました。「変わった」というよりは、Eさんの本来の姿が出せるようになったというべきで、それが何よりもうれしかったです。自信を取り戻し就職を意識するようになってからは、実習に参加したり1人で職場見学に行ったりと、積極的に行動していましたね。憧れの企業に応募し、実習に向けてシール貼りの猛特訓をしたことは良い思い出です。そして、採用が決まったときの笑顔は今でも忘れません。音楽やアニメなど好きなものに囲まれて、先輩としての責任感をもって働かれているEさんの姿は、とても頼もしく見えました。これからも持ち前の素敵な笑顔で働き続けてほしいです。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。