不安障害(精神障害)の仕事・就職事例 -調理-
毎週続けた面接練習で、希望の一般求人での就職が決定
女性/20代/飲食業(調理補助)
不安障害(精神障害)
「普通の人と同じように仕事がしたい」本人の意思を尊重する支援計画
大学を卒業した後すぐにLITALICOワークスの利用を開始したYさん。自宅では話せるのに学校や公共の場ではまったく声が出せない。
また、大学卒業後すぐにLITALICOワークスの利用を開始したこともあって、Yさんに社会人や職業経験はありませんでした。そのため、「シフト制とは何か」など働く上で必要な基本的な知識から身につけていく必要がありました。
Yさんとご家族は「障害者手帳は取りたくない。一般の就職枠で障害を周りの人に伝えずに働きたい」ということを強く希望していましたが、Yさんの状態を見たスタッフは、「障害があることを職場に伝えて周囲のサポートをもらいながら働いた方がいいのでは??」と一抹の不安を覚えました。
しかし、「まずは本人とご家族の意思を尊重しよう」と障害のことを伝えずに就職できるように、個別支援計画を作成しました。
毎週続けた面接練習で、1歩ずつ就職に近づく
就職活動において、面接は避けて通れないものです。しかし、LITALICOワークスの利用を開始した当初、Yさんはスタッフが挨拶をしても、会釈を返すだけにとどまり、話すことに苦手意識があるようでした。まずは話をすることや、相手の目を見ること、質問に答えることに慣れてもらうため、毎週定期的に、面接の練習をおこなうことにしました。毎週の練習を通じ、面接の場で適切な受け答えができるように、少しずつ話す訓練を重ねていきました。
また、「なぜ障害を伝えずに就労を目指すのか」といった自己分析や、ストレスコントロール、SST(ソーシャルスキルトレーニング)のプログラムにも積極的に参加し就職に向けて準備を整えていきました。
Yさんには、就職した後も「障害を周りの人に感じさせないようにしたい」という希望がありました。
それを実現させるためには、Yさん自身がスキルを獲得する必要があります。
どんなスキルをどの程度身につければYさんの希望がかなうのか。スタッフと一緒に、就職するために必要なことを洗い出して最終目標を設定しました。
最終目標が決まったら、最初から高い目標を目指すのではなく、Yさんが達成しやすい小さな目標設定を個別の支援計画に盛り込み、Yさんが1歩ずつ就職に近づけるようにスケジュールを組み立てます。
Yさんのがんばりが徐々に効果を表します。最初は面接練習でまったく話すことができず、ずっと黙ってしまうこともあったYさんでしたが、練習を重ねることでしっかりと言葉を返すことができるようになっていきました。
「がんばりを形にする」3度目の正直で就職が決定
Yさんには「できるだけ早く就職し、家族の支えになりたい」という気持ちが強くありました。毎週の面接シミュレーションを受け始めて9ヶ月が経ったころには、Yさんからトレーニングだけではなく面接も受け始めたいという希望があり、企業インターンと並行して企業面接も受けるほどになりました。
コツコツと続けた面接練習の成果を発揮したいと意気込んでいたYさん。しかし、初めて挑んだ企業面接にうまく受け答えができず、不採用の通知が2社続いてしまいました。
そのころのYさんは、面接の練習では受け答えできるようになったものの、いざ本番になると緊張してしまい、面接官の目を見ることができなかったり、質問に対して考え込んでしまったり、返答まで間が空いてしまったりするといった課題がありました。
しかし、9ヶ月におよぶ小さな積み重ねの結果として企業から受け取った不採用の連絡は、Yさんが「このままではいけない」と気持ちを改めるきっかけになったそうです。
「本当に働きたいのに、今までの企業には面接でその思いをきちんと伝えられなかった。今まで9ヶ月もコツコツがんばってきた積み重ねを、ちゃんと形にしたい」と、Yさんは決意を新たに3社目の面接に臨みました。
以前までは面接官の目を見ることができず、すぐに返答ができなかったそうですが、今回は面接官の目をまっすぐ見て、間をあまり置かず、まっすぐに返答ができたそうです。「もし、これでダメでも悔いはない」と、面接後にやりきった表情を見せてくれたYさんですが、そのがんばりもあって、無事に3社目の企業から内定をいただきました。
現在、Yさんは週20時間の勤務を続けています。「今の仕事はやりがいがあるし、職場にも満足している。家族のためにも、将来的にはフルタイムで働きたい」と明るく話すYさんは、前向きな気持ちで毎日楽しそうに働いています。
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。