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障害のある方の就職事例

潰瘍性大腸炎(難病)の仕事・就職事例 -事務-

潰瘍性大腸炎(難病)の仕事・就職事例 -事務-

難病を開示して一般就職

男性/30代/メーカー/事務職

潰瘍性大腸炎(難病)

難病と診断され愕然

国が定めた「指定難病」の1つである潰瘍性大腸炎とFさんが診断されたのは3年ほど前のことでした。接客の仕事で店長を任されるようになってから、仕事中にお腹をくだすことが多発したそうです。もともと胃や腸が弱かったこともあり、はじめはストレスが原因で調子が良くない状態が続いているだけだと思っていました。しかし通院していても徐々に状態は悪化する一方、やがて仕事に支障をきたすようになっていました。

 

仕事中に何度も業務から外れることや体調が一向に回復しないため、好きだった仕事を退職することに。何度も通院や検査を続け、ようやく下りた診断名は「潰瘍性大腸炎」。あまりピンとこず、主治医の説明で「難病」というワードが命に関わるものだと知りショックを受けました。

 

潰瘍性大腸炎は難病ではありますが命に関わる病気ではないことから「診断名がついてホッとした」と考え方が変わりました。しばらくは症状が現われる「活動期」が続いたため、治療と休養に専念することに。治療期間中にインターネットで「難病 仕事」など難病のある方が仕事をするにはどうしたらいいか検索をしながら、今後について考えていました。

難病を上手に説明するには

「難病を開示して働く=障害者枠で働く」だと思っていたFさん。しかし、一般的に障害者枠の求人に応募するためには障害者手帳が必要となります。難病法により「潰瘍性大腸炎」は指定難病にあたるため医療費助成の対象となりますが、障害者手帳はFさんの症状では難しいと医師から伝えられました。

 

調べていくうちに、難病ということを伏せて仕事をしている方がいると知るも、Fさんはトイレに行く回数が明らかに多く、隠すことで不信感を抱かれることが目に見えたため、開示して働きたいと思いました。

 

家族や親しい友人に、難病と伝えると驚かれたり悲観的に見られたりして、説明が難しいことを痛感していました。さらに就職となると、どうすれば理解を得ながら働くことができるかを整理することが難しく、1人での就活に不安が募りました。現状を相談したいと思い調べていると、就労移行支援事業所の存在を知りました。

 

FさんはLITALICOワークスへ相談しました。その際「現状の体調で就活や仕事ができるか」「難病であることを開示するにあたり配慮事項をどう伝えるか」など今までに経験したことのない不安でいっぱいなことを話してくれました。スタッフは少しでも抱えている不安を減らせるよう一つひとつ一緒に解決し、Fさんに合った仕事を見つけられるよう支援することを約束しました。

見学した複数の就労移行支援事業所を中から、スタッフや利用者同士のやり取りや雰囲気を見て、LITALICOワークスへ通うことを決断しました。

支援を受けながら就活準備

LITALICOワークスを利用しはじめたFさんの最初の壁は、生活時間を整えることでした。前職を退職してから1年ほど自宅療養をしていたため、朝決まった時間に支度をして出掛けることが難しいことに気が付きました。特に朝体調が良くないことがあり、遅刻してしまうこともありました。そこでトレーニングの一環として電話連絡をすることにしました。

 

しかし移動しはじめてから到着時間に間に合わないことに気付き、事業所に着く直前に連絡することが多く見受けられました。理由を尋ねると「移動中に電話できない」とのこと。そこで電話以外の連絡方法の幅を広げました。後になって振り返った時に「就職する前に生活時間の改善の大切さを分かって良かった。発症前と後とでは身支度の段取りや必要な時間が全く違う」とFさんは語りました。

 

Fさんが通っていたLITALICOワークスでは、トレーニングの一環として事業所内に模擬会社をつくってさまざまな部門での活動体験をしていました。Fさんは総務部に所属し、部内でコミュニケーションを取りながら備品管理や補充など各種業務を担当し、事務職に就いた場合のイメージを膨らませていました。今まで接客業に従事してきたFさんは、「事務職=パソコンの前に座っている」というイメージがありましたが体験することでそれが払拭されました。今後は事務職も仕事の選択肢に加えることにしました。

 

体調が悪いと集中できないことがあるFさんは、自己理解プログラム、応募面接プログラムなど様々なプログラムを受け、自分に適した休憩時間の取り方・頻度の確認をスタッフと共に繰り返し、身に付けました。日々の振り返りでネガティブになってしまうことがあるため、スタッフと一緒にリフレーミング(※)を取り入れ、ポジティブに捉えるようにトレーニングをしました。

※物事の枠組みを変えて、プラス思考で考える方法

コロナ禍での就活

目標に沿ってトレーニングを進めている所に、緊急事態宣言が発令されました。世間が自粛ムードになっている時、LITALICOワークスの各事業所でも在宅トレーニングに切り替わりました。当時は新型コロナウイルスについての情報が少なく、不安になったり働く意欲が失せてしまったりする利用者が多くいました。

 

Fさんは求人を見てどのような仕事を希望するか確認をはじめた時で、「前向きに物事をとらえたり考えたりすることが難しく、何を見てもできないと感じてしまう」とネガティブになってしまっていました。スタッフは仕事に求めるキーワードを一緒に整理し、そのキーワードに当てはまる求人を探してみることを提案。はじめはキーワードを整理することに苦労しましたが、在宅トレーニングでもスタッフのフォローがあることを実感し、キーワードを10個に絞り込むことができました。

 

整理したキーワードの内「ステップアップ」「主体的」「責任感」などを元に求人検索する他、パソコントレーニングにも取り組んでいました。緊急事態宣言が解除され、約2ヶ月ぶりに事業所で他の利用者と実際に顔を合わせ、楽しそうに話をするFさん。在宅トレーニングで得たことの中で1番大きいことは「在宅勤務は向かない」ということでした。人目を気にせず仕事ができる在宅勤務に興味を持っていたものの、人との交流ができないことの不便さを痛感したとのことでした。

 

コロナ禍での就活は続き、会社説明会や面接でもオンラインがメイン。Fさんは就活をしている利用者からオンラインでの就活についてヒアリングしました。実際の会社の雰囲気を確認できないというデメリットや、オンライン面接は対面より緊張しないなどのメリットなどの情報を聞いて、今後の参考にまとめました。また自己紹介・自己PR・志望動機をまとめようとするとついつい長くなってしまうため、スタッフが添削して簡潔に伝えられるよう何度も作成し直しました。

自分に合う仕事探し

希望職種について立ち仕事や時間が拘束される接客は難しいと考え、座ってできる事務職に絞り、職場を体験できる「企業インターン」へ参加することにしました。はじめの数日はパソコンの前に座って作業をする業務、慣れてきたら動きのある仕事が加わるという2パターンを体験することができました。企業インターンを終え振り返りをした際に、実際の職場で事務を体験したこと以外に就活のヒントを3つ得ることができました。

 

企業インターンで得た3つのヒントとは……ずっと座って作業をする事務より動きのある事務、静かすぎる職場よりLITALICOワークスくらいの話し声などがある職場、大きな組織の事務よりアットホームな雰囲気の事務の方が向いていることでした。企業インターンで得たことを元に就職活動を本格的にスタートしました。

 

就活をしながら、面接練習を取り組みました。真面目で優しく誰に対してもていねいに対応でFさんですが、スタッフが面接官となり模擬面接をすると、ポーカーフェイスで淡々と話をすることが多く、気難しい印象を与えてしまう可能性があることが判明しました。Fさんの性格を知っていれば気難しい印象を得ることはありませんが、面接は第一印象が大事なため笑顔を増やすことを課題にあげました。

 

対面の面接だとマスク着用ですが、オンライン面接だとマスクを外すことが多いため、オンライン上での模擬面接もおこないました。模擬面接の様子を動画に撮って後から見たFさんは、緊張しているという認識はないものの、固い・覇気がないように見えてしまうことを認識しました。スタッフと試行錯誤しながら何度も何度も面接練習を重ね、次第に笑顔を作れるようになりました。

難病を開示し、一般求人で応募

障害者手帳がないため一般求人に応募し、応募書類の備考欄に潰瘍性大腸炎であること、主治医から就労は問題ないと言われていることを記載していました。しかし、一般求人になると事務経験がないことや難病の記載がネックになり、なかなか書類選考を通過することができませんでした。

 

スタッフはハローワークの難病患者就職サポーターに相談し、応募する際は一旦難病であることを伏せ、面接の際に伝える方法でチャレンジすることを提案されました。難病患者就職サポーターの提案通りに実施すると、書類選考が通り面接に進むことができました。何度も作成した自己PRなどに加えて難病や配慮いただきたい事項の説明をし、1社内定を得ることができました。Fさんが思い描いたアットホームな企業で動きのある営業アシスタントの仕事でした。

 

コロナ禍で落ち込んでしまったこともありましたが、得たことも多いとFさんは振り返りました。就職初日に遅刻しないように30分前に会社に着くよう準備をしたり、今後PowerPointのスキルが必要になるため独学で勉強したり、就職しても真面目です。就職後まだ日は浅いですが、今まで以上に食生活や睡眠に気を付けいづれ自立した生活ができるよう頑張ると意気込んでいる姿を見て、スタッフは陰から無理をしすぎないようフォロー・応援することを誓いました。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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