障害者雇用の企業事例
障害者雇用担当という専任のポジションによる、手厚く温かいサポート
千葉市教育委員会の教育総務部教育職員課 (写真左から)障害者雇用担当 菅野様/課長 吉田様
目次
千葉市教育委員会の教育総務部教育職員課はどんなことをされていますか?
千葉市の教育に携わる仕事において、障害者雇用で働かれている方々がいます。そして、その方々の日々の仕事に寄り添うために、教育総務部教育職員課には障害者雇用の専任の職員がいるとのこと。なぜそのようなポジションを用意したのか、特長や想いについてお話を伺いました。
千葉市の教育委員会では、教育に係る計画の策定、学校施設の整備、小・中学校の転入学、学校の教育課程、教科書その他の教材の取扱い、学校給食等に関する事務を行うほか、生涯学習の振興、図書館・公民館の運営、文化財の保護などに関する事務を所管しています。
その中で教育総務部教育職員課では、教育職員の任免・服務・人事記録その他の人事に関することのほか、教職員の選考に関することや、学級編制に関する業務を行っています。
力を入れている障害者雇用
障害者雇用は以前より行っていましたが、令和2年4月に障害のある職員の活躍の推進に向けた目標や、目標達成に向けた取組み内容等を定めた「千葉市障害者活躍推進プラン~障害の有無に関わらず全ての職員が互いに尊重し、活躍できる組織を目指して~」の策定をきっかけに、より推進を強化してきました。
このプランでは、障害のある職員の活躍を推進していくために、(1)体制の整備、(2)業務の選定・創出、(3)環境整備・人事管理、などの視点で、今後力を入れて取り組んでいくことをまとめています。
千葉市として障害者雇用で目指すものを示すことで、職員全員の目線を揃えて一丸となって取り組むとともに、障害のある方にとってもキャリアプランを描きやすいようになればと考えています。
障害者雇用のメンバーと仕事内容
千葉市教育委員会では、令和5年12月1日現在で102名の障害のある方に活躍いただいています。障害の種別や世代もさまざまな方が働かれていて、それぞれのフィールドで大切な人材としてその力を発揮していただいています。
就労している障害のある方の人数(令和5年12月1日現在)
● 正規職員 40名(知的障害0名 身体障害33名 精神障害7名)
● 会計年度任用職員 62名(知的障害3名 身体障害9名 精神障害50名)
勤務先としても、教育の現場である小・中学校や高等学校、特別支援学校から、事務局としての学校教育部や教育総務部など、多様なフィールドがあります。仕事内容としては、正規職員の場合、他の職員と同様の業務を担当しています。会計年度任用職員(短時間勤務)の業務内容としては、以下のものがあります。
会計年度任用職員の仕事内容
● 学校:印刷業務、配布物の仕分け、環境整備(清掃活動含む)、児童の見守り、児童の下校指導の補助、人によっては簡単な採点業務等
● 事務局:書類整理、正誤チェック、PCでの入力作業等
それぞれの特性や状況を踏まえて、力を発揮しやすいポジションで業務にあたってもらっています。
障害者雇用担当という専任のポジション
さらに障害者雇用の推進をしていくために、令和3年度から、障害者雇用担当が着任しました。障害者雇用について専任という形で取り組んでいくポジションで、採用面接や就職後のサポートまで一括して担っています。このポジションに就いている菅野は、教育委員会に来る前に校長を務めていて、学校現場で直に子どもや職員を見てきました。
このポジションが設置される前は、障害者雇用を推進していくにあたり、万全なサポート体制を築くことができていませんでした。それぞれ抱えている業務も多く、手が回っていない状況だったんです。
それが、相談窓口を設置して専任職員を配置することで、障害のある職員からの相談に対し的確に対応できるように変わりました。相談を待っているだけではなく、こちらから積極的に声かけをすることで、障害者雇用で働く職員にも安心感が持てるようになったのではないかと思います。直接会って話した方が良いと判断した時は、オフィスを飛び出して車に乗って会いにいくことも何度もありました。
何でも気軽に相談できるように心掛け、時には笑ってもらえるようにくだけた話題で話しかけたり、出勤した時の表情の変化など細かいところにも気付けるように努めていたり。その結果として、温かい人間関係が構築できたらと思っています。
その他にも、面談や勤務意向調査を通して、身体の状況や希望する業務・職場で配慮してほしい事項等を常に把握し、人事異動など適切な人事管理に取り組んでいます。
会計年度任用職員の採用・定着
また、会計年度任用職員の採用と定着に関しては、以下の取り組みを行っています。
● 正式な採用の前に、1週間程度の体験実習を行い、就労に結びつける。
● 希望者に対し、定期的なフォローアップ面談の実施。
● 何か困ったことや嫌なことがある場合は、障害者雇用担当に気兼ねなく連絡するように促す。
● 毎月の勤務状況を把握し、休み等が多い場合は雇用先や就労支援事業所との情報交換をして改善の連携をはかる。
毎月勤務状況調書を提出してもらっていますが、休みが多い場合は気になって、こちらから所属長等、時には就労移行支援事業所の方に連絡を取り、情報共有をしています。障害者雇用で働く職員を孤立させずに、常に状況を把握するようにしているので、そのコミュニケーションの厚さは、やはり専任のポジションがあるからこそだと思っています。
多様な働き方やキャリアアップ
千葉市教育委員会では、一人ひとりが働きやすい、成長しやすい環境づくりを大切にしています。いくつかその事例をご紹介します。
● 在宅勤務や早出・遅出勤制度により、職員個人の事情に応じた多様な働き方の推進をする。
● 勤務経験を積み、徐々に勤務時間を延ばしている方もいる。また、違う職種を希望し、障害者雇用枠で他企業に転職した方もいる。(銀行、県の会計年度職員など)
● 千葉市正規職員(障害者雇用)を受検している方もいる。
● 福祉に関する勉強を研修や通信制を利用して行い、キャリアアップにつなげる。
障害の有無に関わらず、みんなが同じように生活して、働いていくことができる社会をつくる。その機会のひとつに、私たち千葉市教育委員会の教育職員課がなれたらと思っています。だからこそ、障害者雇用の方のキャリアに向き合い、成長をサポートしていけたら嬉しいです。

(左)障害者雇用で働くFさん /(右)教育職員課 中田様
障害者雇用の採用で大切にしていること
採用の流れとしては、(1)人事担当課面談(2)就労候補先での面談(3)体験実習(1週間程度)(4)両者がマッチング(5)採用、というステップになっています。
その過程で、こちらからはどんな仕事内容なのか、綺麗ごとだけではなく明確に伝えるように心掛けています。それが、面接に来ていただける方への誠意だと考えています。入社後に「思っていた仕事と違う」となってしまうと残念なので、それは徹底していますね。
採用の際に見ているのは、基本的な挨拶ができたり、コミュニケーションがとれたり、周囲と協調できるか、ということです。ご自身の障害を理解し、適切に対応できるかということも大切にしています。何よりも、お互いに気持ちよく働くことができるかどうか、それを知るためにざっくばらんに会話をするようにしています。
障害者雇用の方が自主的に生み出したアイディア
教育職員課のホームページ内に、コンテンツを紹介するページがあるのですが、それぞれの項目をイラストで視覚的にわかりやすく伝えようとしています。これは、実は障害者雇用の方のアイデアでつくられたものなのです。
「ちょっと文字だけだと分かりにくいよね」と話していたところ、「じゃあ、私がやります」と言って、いろいろ考えてこのデザインをつくってくれました。「めちゃくちゃ良いですね!はい採用!」と、チームで即決しました。ユニバーサルなデザインを当事者視点で考えてくれて、とても嬉しかったです。
このように、障害者雇用の方は確実に私たち教育委員会の戦力になってくれていて、大切な存在です。
障害者雇用を考えている方へのメッセージ
千葉市教育委員会では、皆さんの能力や希望に合わせて、丁寧に配置先を決定することを大切にしています。体験実習を通じて、ミスマッチを少なくし、長く働いていただける環境づくりに力を入れています。また、障害者雇用専任の職員を配置し、困ったことがあったらすぐに相談いただける体制を整えています。
障害のある職員が働きやすい職場づくりに取り組むとともに、障害の有無に関わらず全ての職員が、千葉市政を共に支える仲間として互いに尊重し、職員一人ひとりがキラキラと輝くことができる組織を目指しています。
千葉市教育委員会で働くことに興味をお持ちでしたら、お気軽にお問い合わせください。
今回訪問した企業様の会社概要

企業名 |
千葉市教育委員会 |
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従業員数 |
約7,300人 |
事業内容 |
千葉市内の学校教育、社会教育、文化振興等に関する事業 |
ホームページ |
インタビュー:2024年1月29日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。