障害者雇用の企業事例
安心と納得感が、障害者雇用促進のカギ。強みが発揮できる環境づくりを目次
株式会社フレスタはどのような会社ですか?
広島県を中心にスーパーマーケットチェーンを展開する株式会社フレスタ(以下、フレスタ)では、多様な人が活躍できるダイバーシティな組織を作るためのひとつとして、障害者雇用に取り組んでいます。社内への理解の促進や、安心して働ける組織を作るためにどのようなことに取り組んできたのか、お話を伺いました。
フレスタは、広島県を中心に65店舗のスーパーマーケットを運営している会社です。創業は明治20年で130年以上の歴史があり、広島県ではじめてスーパーマーケットを開業しています。
お客さまに喜んでいただくために食品を届けるだけではなく、信頼できる商品と人に磨きをかけ、食から広がる豊かで快適な「ライフスタイル」の創造提案企業を目指しています。
フレスタでは、今から12年ほど前から障害者雇用に力を入れ始めました。フレスタの従業員も含めて、今世の中で働いている人たちは、今後介護や子育てなどの理由により、働く上でのさまざまな制限がかかってくると想定されます。そんな中で、もっと多様な人々が活躍できるダイバーシティな組織へと変化していくことが重要であると考えたからです。
まずは障害のある方にとって働きやすい会社を目指し、各店舗の店長をはじめ、社内に障害者雇用に対する理解を浸透させることから取り組み始めました。
障害者雇用で働くメンバーと業務内容
現在、障害者雇用の方は合計で167名在籍しています。障害種別の内訳としては身体障害が26名、精神障害が65名、知的障害が75名となっています。(2022年度時点)
業務内容は、商品補充、賞味期限チェック、売場整理などがありますが、できる限り一人ひとりの特性に合わせて仕事を分担するようにしています。
例えば、一つのことを黙々とすることが得意な方であれば、バックヤードで盛り付けやパック詰めなどの製造業務をしていただいたり、お客さまとコミュニケーションをとることが好きな方であれば、売場での商品陳列業務やレジ業務をしていただいたりしています。
選考の流れと採用の際に重視すること
フレスタの障害者採用は、特別支援学校経由や就労支援センター、就労移行支援事業所などからのご紹介がほとんどです。まずは必ず、フレスタのどこかの店舗で体験実習をしていただき、候補者の方に「フレスタで働きたい」と思っていただければ、求人を出している店舗の提案をします。さらにその後、採用に向けた雇用前の実習をもう一度実施するのが基本的な流れとなります。
その後、双方が働くイメージを持てた場合は内定ということで、実際にフレスタで働いていただくことになります。
採用のポイントとしては、障害の有無にかかわらず「人に対しての思いやりがあるか」を見るようにしています。周りの人から言われたことを素直に聴けるか、仕事に一生懸命に取り組む姿勢があるかなども大切です。スキルは後からついてくるものだと思っているので、最初の段階ではさほど重視していません。
また、コミュニケーションについて心配される方も多いですが、例えばお客さまから何か質問をされた際に「自分は分からないので、担当者を呼んできます」と言えれば、立派なコミュニケーションだと考えています。「できないこと」に着目するのではなく、「どこまでできるのか」を確認して、他のメンバーとの協力体制を作るようにしています。
幅広い選択肢の中から「強みが発揮できる環境」を考える
フレスタには幅広い業務内容があるため、一人ひとりの希望や特性に合わせて柔軟に対応できることが強みだと思っています。品出しや商品加工、接客だけではなく、希望次第では食品工場の方で働くという選択肢もあります。
また、業務内容だけではなく、長く働き続けるためには、人との相性も大切ですよね。基本的には家族のようなアットホームな職場ですが、それでも何度か「周囲に馴染めずに悩んでいる」という声が挙がることはありました。
そのような時も、まずは現場に状況を確認した上で、必要であれば別の店舗や別のポジションに移ることも可能です。業務内容や環境が合わなかったからダメということは決してなく、「どうしたらその方の強みが発揮できるのか」という視点で、幅広い選択肢の中から考えるようにしています。
それからもう一つ、フレスタでは「従業員相談窓口」を設けています。勤務がシフト制であったり、流動的な職場環境であったりすることから、現場の状況をタイムリーに把握するということがどうしても難しいことが理由です。
実際に、障害者雇用で働いている方が勤務していく中で困りごとを抱え、症状が悪化してしまい、窓口に相談するというケースもありました。そのような時は、現場に事実を確認した上で、必要に応じて支援機関の方にも連携するようにしています。
特性を理解するための「セルフケアシート」導入の背景
フレスタでは、店長と本部メンバーが集まる月に1回の営業会議で、障害者雇用に関する店舗ごとの事例や困りごとを共有し合うこともあります。
もともと地域貢献を大事にする社風なので、そういった意味でも障害者雇用に対して否定的な意見というものはほとんどありませんでした。一方、店舗での採用をしている店長からは、「障害のある方に対するサポートが大切だということは分かるけど、具体的に何をしたらいいのか分からない」という声が度々挙がっていました。
そのような背景もあり、「セルフケアシート」を導入することにしました。同じ障害名でも一人ひとり特性や症状は違うし、困りごとが似ていたとしても、必要とする配慮は違ったりしますよね。そのため、「障害名」ではなく「その人ならではの特性」として理解してもらえるように、セルフケアシートには、普段の生活で困ることや周囲に求める配慮などを記載してもらっています。
これは、ご本人が書かなければならないというルールではなく、ご家族や支援機関の方が代わりに記載しても全く問題ありません。
セルフケアシートの作成後は、店長やマネージャーに必ず共有しており、必要に応じて一緒に働くメンバーに共有することもあります。フレスタでは、店舗の店長が変わることも度々ありますが、そのような時にしっかり引継ぎするためにも、セルフケアシートが役立っています。
もう一つ、障害者雇用を広く浸透させる上では、「人件費」が大きなハードルになっているという現状がありました。採用は店長の裁量で行っていますが、障害の有無とは関係なく、同じお給与を支払うのであれば「それ相応のレベル」を求めるためです。
一方、障害者のある方がそれぞれの強みを活かしつつ、特性に合わせた働き方を実現していく上では、そのような考え方でいるとなかなか障害者雇用が進みません。まずは障害者雇用で活躍していただくための「機会作り」から、会社として本気で取り組んでいこうということで、障害者雇用の人件費を本社付けにして、人件費というハードルを取り払うことにしました。
もちろん、これが根本的な解決策だとは考えていませんが、障害のある方の活躍の場を広げるためには必要な期間だと考えています。ゆくゆくはこれを段階的に減らしていき、障害の有無に関係なく各店舗の予算の中から雇用機会を提供できるようになればと考えています。
障害者雇用に関する今後の展望
これまでの10年間は、「障害のある方が安心して働ける環境を作りたい」と思い突き進んできました。もちろんその思いはこれからも変わりませんが、次のステップとして「成長できる環境を作っていきたい」と考えています。
障害者雇用の場合、ご本人も周囲も、どうしても「単純作業がメインの業務なのでは?」というイメージを持つことが多いと思います。ですが、私たちは希望があれば別の仕事にチャレンジできる環境を用意するなど、フレスタの中で成長できる仕組みを作ることで、その認識を変えていきたいと思っています。
まだまだ構想段階ですが、例えばスキルシートを作成して「ここまではできているから次はここを目指したい」という目標を立てられたり、客観的に評価ができたりするようなプログラムを作りたいと考えています。
また、個人的な話になりますが、私は障害者雇用に携わりたくてフレスタに入社したんですよね。これまでにさまざまな障害のある方のお話を聞いたり、関わったりする中で、「能力はあるのに、それを受け入れる環境が社会に少ない」ということを痛感してきたことが理由です。
だからこそ、フレスタの人事担当として、そのような課題や認識を少しでも変えられる存在になりたいと思っています。会社としても、障害者雇用で働く方の数はこれからもっと増やしていきたいですし、「フレスタで働きたい」という方がいれば、積極的に受け入れていきたいです。
これから障害者雇用を目指す方へ
就労支援を使っている方も、そうでない方もいるかと思いますが、まずは体験実習を通して、自分に合う仕事や環境を知ることが大切だと考えています。実習であれば、仮に合わなかった場合にも、それも含めた自己理解を深めることに繋がるからです。
また、長く働き続けるためには、仕事内容はもちろんですが、職場環境や雰囲気なども大事ですよね。そのような情報は、求人票からだけでは分からないので、実習や職場見学で実際に見ておくことが必要だと思っています。就労支援を使うことのメリットのひとつは、そのような機会がたくさんあるということだと思います。もし、就労支援を使うかどうか迷っている方は、一度相談に行ってみるといいと思います。
当社では、常時体験実習を受け付けているので、もしご希望があればいつでもご連絡ください。あなたの第一歩を応援しています。
今回訪問した企業様の会社概要
企業名 |
株式会社フレスタホールディングス |
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従業員数 |
5,364名(2024年2月1日時点) |
事業内容 |
グループ会社の事業統括及びシェアードサービス事業 |
ホームページ |
インタビュー:2024年2月7日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。