障害者雇用の企業事例
自分でキャリアを広げるための仕組みとして、リモートワークでの障害者雇用を実現目次
i-plugはどのような会社ですか?
新卒向けリクルーティングサービス「OfferBox」の運営などを手がける株式会社i-plug(以下i-plug)では、積極的に障害者雇用を進めています。今回は、i-plugで実施している障害のある方へのサポート体制やキャリアアップの仕組みなどをお伺いしました。
i-plugは、「つながりで世界をワクワクさせる」をミッションに掲げ、さまざまな人のキャリアを支援している会社です。事業を通して、「人と企業、人と情報」の新たなつながりを作り、あらゆる人が自己実現できる未来を目指して活動しています。
その中で、キャリア支援のサービスを展開するだけでなく、i-plug自身もさまざまな人がキャリアの可能性を広げられる場所であるべきだと考え、障害者雇用にも力を入れて取り組むようになりました。
障害のある方の働き方を教えてください
基本的にはリモートワークです。障害者雇用で入社する方はOSS(オペレーション・サポート・サービス・ユニット)というチームに所属して働いているのですが、このチームを立ち上げた際に、「リモートワークも可」として全国から採用しました。現在は東京、兵庫、静岡などさまざまな場所で働いてもらっています。
また、大阪オフィスで庶務業務ができる方を別途募集したこともあり、その方は出社メインで働いています。
現在、障害者雇用として8名在籍していて、そのうち7名のメンバーがOSSに所属し、社内アウトソーシングのような業務を担当してもらっています。社内の各部署から受けた依頼業務をOSSのメンバーに割り振って取り組んでもらい、作業が完了したら各部署に納品するという流れで進めます。具体的にはデータ入力や事務が多く、各メンバーの得意な業務を中心に任せています。
独学で勉強し動画編集が可能なメンバーもいるので、その方には社外向けセミナーなどの動画編集や、インタビューの撮影から編集まで担当してもらうこともあります。
先ほど紹介した、大阪オフィスにて出社メインで働いているメンバーはYさんという方なのですが、別途卒業生インタビューでも取り上げていただいている通り、総務事務やCEOの秘書業務などを幅広く担当して活躍してもらっています。もともとは彼もOSSとして入社し、総務事務を担当してもらっていましたが、6か月間働いて正社員雇用となるタイミングで、それまでの成果を踏まえてCEOの秘書への登用を打診しました。会社の理念にあるように、OSSメンバーにもさまざまなことにチャレンジしてもらい、キャリアの可能性をさらに広げていってもらえたらと考えています。
OSSメンバーの採用の流れを教えてください
2021年には1名の方が障害者雇用として働いていましたが、2022年にOSSが発足し、3名の方が障害者雇用で入社。その後、新たに4名を採用して現在に至ります。
リモートワークがメインとなるため、採用する上では、体調が安定していることに加えて、コミュニケーションを取りやすいことが重要であると考えています。会社に出勤して働く形であれば、同じフロアに同僚や上司などもいるので、何かあっても相談しやすい面があります。ですが、リモートワークの場合は、1人で作業することになります。精神的に安定しているかどうか、何かあれば自分から発信できるか、ということは採用においても大きな判断基準でした。スキル面では、i-plugはIT系の会社なので、PCの基本的な操作ができることも条件としています。
実際に募集してみると、前職でIT関連の業務経験がある方が多く、精神障害か発達障害のある方の割合が9割でした。応募者の方が支援機関による支援を受けている場合は、その時点で連携させてもらい、情報交換をしながら採用を進めることもあります。
一緒に働くうえで大切にしていることはありますか?
コミュニケーションを密にとるように心がけています。具体的には、週1回の1on1ミーティング、健康管理アンケート、週1回の全体ミーティングを実施しています。
1on1ミーティングでは、上長と社員が1対1で、毎週30分の面談をしています。話す内容は、体調の変化や業務の進捗、不明点の確認などさまざまですが、1対1ですので、他のメンバーには言いづらいことも相談しやすいのではないかと思います。
健康管理アンケートは、毎日出勤時にフォームに回答してもらう形式です。この形をとっている背景には、管理側が当日の体調をあらかじめ把握できるほか、自分からチャットで不調を伝えるよりも相談のハードルが低くなるようにという配慮の面もあります。
週1回のOSSチームの全体ミーティングの内容は、業務内容の相談や引継ぎです。また、リモートワークだとチームメンバーと雑談する機会がないため、業務の話が終わった後は雑談の時間を取り、チーム内のコミュニケーションを促進しています。
また、OSSチームは他部署から依頼を受けた業務に取り組みますが、その際の仕組みにも工夫をしています。最初は私が依頼元の部署と連絡を取ってミーティングの設定などをしていますが、慣れてきたら、業務で分からないことがあればメンバー自身が直接依頼元にコミュニケーションを取るように心がけて関係性を築いています。
OSSチーム以外に向けて、何か取り組んでいることはありますか?
社内向けに、2つの取り組みを実施しています。1つ目は、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」をなくそうという働きかけです。これは、OSSが発足する当初から社内に周知しており、今では社内に浸透してきたように思います。そのことが、障害のある方と一緒に働くことに対する不安を取り除くことにつながり、OSSへの業務依頼がたくさん集まるようになってきました。
2つ目は、社内ポータルサイトの運用です。OSSのメンバーの障害やこれまでの経歴、スキル、現在取り組んでいる業務などを書いていて、社内の人が見ることができます。ポータルサイトに書かれている情報を見て、「前職でコラム執筆を経験していた方なら、うちの部署でも書いてもらいたい!」といった形で業務依頼があります。先ほどお話した動画編集に関する依頼も、そのような経緯で発生しました。
リモートワークが中心で、直接的なやり取りが少ないからこそ、ポータルサイトのような形で「知ってもらうための仕組み」を作ることが大事だと考えています。
キャリアアップの仕組みを教えてください
障害のある方も、ほかの社員と同様の評価制度と昇給制度があります。
障害のある方は、入社時は原則としてアルバイト雇用からスタートしますが、その間はお互いにとっての「お見合い期間」という位置づけです。その後は正社員登用制度もあり、最短6か月で正社員へのステップアップが可能です。現在は、障害のある方8名中6名が正社員となっています。モチベーションを高めるためにも、ステップアップの制度は大切だと考えています。
LITALICOワークスとの連携について教えてください
LITALICOワークスとは、入社前の合理的配慮のすり合わせなどで連携しました。入社後も、ご本人の勤務状態に合わせた頻度で相談させていただき、6か月の移行支援期間が終了してからも、月に1度の振り返りをさせてもらっています。
やはり、LITALICOワークスのような外部の支援機関と連携することによって、第三者的な目線で今後の話をしてもらえたり、会社とご本人の間に入って中立な立場で対応してもらえたりするので、ご本人が安定して働くうえで大きな意味があると思っています。
今後の展望をお聞かせください
まずは会社の方針として、さまざまな人が可能性を広げる場を設けていきたいと思っています。その中で、私たちは「障害は個性である」という考え方なので、個性を活かしてご本人がキャリアを広げるための仕組みを作っていきたいです。
i-plugのミッションは、「つながりで世界をワクワクさせる」ということ。そのため、社内全体にそういう風土があると感じています。
また、弊社が行っているようなリモートワークを活用しての障害者雇用の取り組みを、今後もっと広めていきたいです。i-plugはキャリア支援を行う会社なので、障害者雇用を促進したい、リモートワークでの障害者雇用に課題を感じている、という企業さまがいらっしゃれば力になりたいと考えています。
今回訪問した企業様の会社概要
企業名 |
株式会社i-plug |
---|---|
従業員数 |
236名(※単体/2023年3月31日現在) |
事業内容 |
新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox(オファーボックス)」の運営など |
ホームページ |
インタビュー:2024年1月26日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。