障害者雇用の企業事例
人の役に立つことを体感できる職場目次
関東労災病院はどのような病院ですか?
関東労災病院は、がん診療連携拠点病院です。
がん診療連携拠点病院は、地域における「がん医療」の中心的役割を担う施設として、都道府県知事の推薦に基づき厚生労働大臣が指定した病院です。
川崎市中部地区の中核病院として24時間救急医療を実践し、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院として地域医療連携にも力を注いでいる高度医療、二次救急を重視した急性期型の総合病院です。
また、政策病院として、労災疾病に関する高度・専門的な医療を提供するとともに、勤労者の疾病と職業生活の両立に向けた支援等勤労者医療の中核的役割を担っています。
障害者雇用の拡大を目指して
障害者雇用は継続して行っていましたが、平成26年11月からは法定雇用率を充足させることを組織の目標として取り組んできました。
ただし、当初は当院のホームページとハローワークの求人票への掲載しかおこなっておらず、受け入れ体制も整っていなかったため、なかなか応募者も集まらず、採用しても定着しないなどの課題もありました。
そこで、障害者雇用をうまく実践できている病院を見学させていただき、ジョブコーチという存在を知りました。確かに一つの部署で障害のある方の働き方をサポートする方法であればうまくいくなと感じました。
当院でどのようにその仕組みを作るか考えていたとき、ちょうど就労移行支援で働いていたスタッフが当院に入職。さっそく相談したところ、就労移行支援という存在を初めて知りました。
これらがきっかけとなり、薬剤部での障害者雇用がトントン拍子に進んでいきました。
障害者雇用で働く職員と働き方
当院では、17名の障害のある方が働かれており、障害種別や働き方も様々です。
<障害種別>
● 身体障害:5名(内、重度3名)
● 知的障害:2名
● 精神障害:10名(発達障害含む)
<業務内容>
● 総務課:事務作業(書類整理・データ入力など)
● 入院サポートセンター:データ入力など
● 薬剤部
- 調剤補助業務(内服薬、外用薬、注射薬の調剤補助)
- 事務一般(発注業務・治験事務補助)
- 調剤済点滴注射薬等の運搬 など
勤務時間は週5日・7時間を基本としていますが、その方に合わせて多様な働き方を調整することが可能です。
院内でも総務課・入院サポートセンター・薬剤部だけでなく、より多くの部署で障害者雇用を促進し、現在障害者雇用で働くスタッフの次のキャリアを作っていきたいと考えています。
職員が安心して働くための取り組み
就労移行支援をうまく活用するようにしています。
現在働いている方の多くが就労移行支援を利用して、入職した方です。
半年間は定着支援が利用できるので、月に1度就労移行支援のスタッフと障害者雇用で働く職員と三者面談を実施しております。
それ以外にも、本人が思っていてもなかなか言えないことや、こちらでキャッチできない本人の気持ちや不調を就労移行支援のスタッフが事前に聞いてくださるので、大変助かっています。
また、私たちが「本人に伝えたいけど言っても大丈夫かな」と思うことも就労移行支援のスタッフに相談に乗っていただいています。見た目がこんな感じなので、怖いと思わせないようにすごく気を使うんです。(笑)
障害者雇用を拡大して、薬剤部に起きた変化
現在薬剤部の障害者雇用で働く職員は、資格がなくてもできる薬剤師のサポート業務を担っていただいています。
薬剤師の仕事というと、医師の処方箋をもとに薬をとりそろえる調剤業務をイメージされる方も多いと思いますが、「外来や病棟で患者さんに薬の説明をする服薬指導」「医師や看護師とともに治療法を検討する会議への参加」「薬品の管理や発注」と業務は多岐にわたります。
薬剤部で障害者雇用を拡大したおかげで、薬剤師が患者さんのもとに出向き、服薬指導により時間を費やすことができるようになり、今の世の中でいう働き方改革に繋がっていると私は感じております。
こういった変化は薬剤部だけでなく、もっと院内に広げていけるとも考えています。
関東労災病院における障害者雇用の展望
障害者雇用は今後も増やしていきたいと考えておりますが、薬剤部だけでなく、院内全体(診療科やその他部門)での障害者雇用を促進していきたいと考えております。
そして、将来的には障害者雇用で働くスタッフが、障害者雇用で新たに入職される方々のマネジメントができるシステムを構築できたら素晴らしいと思います。
当事者だからわかる悩みや苦労もあるかと思いますし、障害のある方が障害者雇用におけるリーダー的役割を担うことにより、今後のキャリアアップ・職員のモチベーション向上につながり、定着率の向上・活性化につながると考えています。
障害者雇用を検討している企業に一言
障害者雇用が進まない背景には、ある種の誤解があるのが大きく、且つ根本的な原因と考えています。
どんな方法でもまずは障害者雇用を経験して、雇用側が何かしらの成功体験をすることが大切だと思います。
私は障害者雇用を当院で進めてみて、一般職員の雇用とあまり変わらないと感じています。
障害のある方は仕事への意欲が高く、仕事ができる喜びを感じて働いてくれています。
そんな職員と一緒に働けることほど嬉しいことはないです。
障害者雇用をしたいと思う病院があれば、ぜひ当院に見学しにきてください。
今回訪問した企業様の会社概要
企業名 |
独立行政法人 労働者健康安全機構 関東労災病院 |
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障害者雇用実績 |
17名 |
事業内容 |
川崎市中部地区の高度医療、二次救急を重視した急性期型の総合病院 |
ホームページ |
インタビュー:2021年11月17日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。