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障害のある方の就職事例

障害者雇用の企業事例

「できる」に目を向けて、自己決定を尊重する。年間定着率94%を実現した障害者雇用の取り組み

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 (写真左から)経営支援部 深川様/人事部 河原様

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 (写真左から)経営支援部 深川様/人事部 河原様




LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社はどのような会社ですか?

コミュニケーションアプリ「LINE」やポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を展開する「LINEヤフー株式会社」の子会社であり、サービス運営を担う LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社(以下、LINEヤフーコミュニケーションズ)では、「多様性を重んじる文化」と「地域に貢献したい」という思いから障害者雇用に力を入れており、多くの方が活躍しています。実際の事例や取り組み、今後の展望などについてお話を伺いました。

 

 

LINEヤフーのサービス運営を主に担っており、カスタマーケア・テスト・審査・モニタリング・マーケティング・セールス・デザインなど幅広い機能があります。

 

2013年に前身のLINE Fukuokaが設立、2023年10月にヤフーのカスタマーサポート部門と統合し「LINEヤフーコミュニケーションズ」になりました。関連拠点は福岡を含めて7つあり、社員数は1,650名(2024年4月現在、LINEヤフーからの出向社員含む)です。

 

職種も幅広く、男女比率は半々、UIターン比率が5割以上と、全国から多様なキャリアの人たちが入社しています。

障害者雇用の始まりは多様性を重んじる文化×地域貢献

 

もともと多様性を重んじるカルチャーがあり、国籍、性別、障害の有無などに関わらず「多様な方に活躍してもらいたい」という思いがありました。それに加えて「地域に貢献できる会社でありたい」という思いから、障害者雇用には以前から取り組んでおり、特にバックオフィス部門で多くの方が働いていました。

 

2022年4月頃から更に全社的に障害者雇用を促進していくために、サービス運営を担う事業部門側でも採用を進めていく動きが始まり、ジョブコーチの深川を中心に新しいサポート体制の仕組みつくりをスタートしました。

 

しかし事業部門側でも採用を進めるためには、人事部だけではなく、現場のメンバーにも理解をしてもらう必要があります。まずはそれぞれの部門の業務内容をヒアリングした上で、「どういった業務を任せたいか」ということを管理者と相談しながら、少しずつ雇用の機会を広げていきました。現在は、例えばツールの設定やデータチェック、キャッチコピー作成など、幅広いサービス運営業務を行っています。

障害者雇用で働くメンバーと業務内容

障害種別の内訳としては以下の通りです。

 

● 精神障害:約50%

● 知的障害:約20%

● 身体障害:約30%

 

業務内容としては主に以下のようなものを担当していただいています。

 

️バックオフィス部門

・勤怠管理サポート

・人事企画/研修等におけるサポート

・退職/雇用契約等各種サポート

・社員貸与デバイスのキッティング等のサポート

 

️事業部門

・ツール設定・入力系

・データチェック系

・クリエイティブ系(画像編集、キャッチコピー作成など)

 

️オフィスサポート部門

・クリーンキーパー

・マッサージ

 

雇用形態としては、最初は時短勤務を希望される方が多いため、アルバイトからスタートすることが多くなっています。そこから慣れてきたタイミングで働く時間を伸ばしたり、ジョブチェンジをしたりして、ステップアップをされるケースもあります。

一人ひとりの特性に合わせた工夫

マニュアルや作業手順の整備、体調を考慮した業務調整、定期的な1on1ミーティングなど、一人ひとりが必要とする配慮に合わせて柔軟に対応しています。

 

1on1ミーティングでは、業務のことだけでなく普段の暮らしのことなど、自由にお話しいただいています。理由としては、直接仕事と関係のないことでも、抱え込むことで業務に支障が出てしまうこともあるので、できる限り悩みが小さい段階からフォローできるようにするためです。

 

工夫していることの例としては、ある社員に「忘れやすい特性」のある方がいました。仕事中に不安や疑問があっても、いざ面談をすると忘れてしまっているのです。業務量が増えてきたからこそ顕著に現れた課題だったのですが、その対策として、気になったことを自由に書き留めるオンラインスペースを作成し、今でも活用しています。

 

仕事中に不安や疑問があればそこに書き留めておいて、1on1ミーティングの時に担当者と内容を確認するようにしています。これを使うようになってから、不安や疑問を一つ一つ解消した上で、業務を進められるようになりました。

 

あとは、ご本人からの発信だけではなくて、こちら側からも良かった点や気になる点は必ずお伝えするようにしています。だからこそ、ご本人との課題に対する認識のズレが生まれることは少なくなっていますね。

 

「できる」に目を向けて見えてきた、適材適所の考え方

一人ひとりの特性が発揮できるように、「適材適所な人材配置」は大切にしています。

 

例えば、細部へのこだわりが強いという特性のある方がいるのですが、その方はマニュアル作成で大活躍してくれています。周囲が見落としてしまうようなことでも、「こんなことも書いてあるといいのでは?」などと気づいて提案してくれるのでとても助かっています。

 

他にも、口頭でのコミュニケーションが苦手な方がいるのですが、チャットコミュニケーションが主流な当社では、全く問題なく働かれています。パソコンが得意な方なので、私たちもできないようなこと(例えばExcelでマクロを組んだりなど)も進めてくれたりして、大変頼りにしています。

 

障害者雇用の場合、ご本人も周囲も「できないこと」に目が向きがちですが、ちょっとした工夫をしたり、環境を変えてみたりするだけでも「できる」になることが多いなと日々実感しています。

 

周囲が勝手に可能性を潰さないためにも「どうしたらできるのか?」という視点を持って関わることを意識しています。

キャリアの選択肢を広げられる環境づくり

 

当社で働いてくれている障害者雇用のメンバーは「安定して長く働き続けたい」という方が多いのですが、一方で「多様な仕事を経験して仕事の幅を広げたい」という方の要望も叶えていきたいと考えています。

 

アルバイトや契約社員の方の場合、3か月に一度契約更新面談をしているのですが、普段の1on1ミーティングとは少し違い、次に挑戦したいことや、ステップアップの意向なども聞くようにしています。

 

また、その方の働きぶりなどを考慮した上で、こちらから「こんな仕事があるけどどうですか?」と提案をすることもありますね。

 

提案をした際に、「やってみたいです」となることもあれば、「やりたい気持ちはあるけれど、勤務形態が変わることに今は不安があります」と保留になるようなこともあります。保留になったとしても、ご本人の気持ちを一番に尊重したいので、むしろ現状を客観的に判断して自己決定できてよかったと考えています。

 

ステップアップを選択する・しないに関わらず、働きぶりを周囲から評価されているからこその提案でもあるので、それを機にご本人の自信にも繋がっていたら嬉しいなと思っています。

チームビルディングのための取り組み

 

チームビルディングの一環として、ランチ会や飲み会なども実施しています。12月には部門ごとに忘年会をしたのですが、その時には障害者雇用のメンバーが率先して幹事を担当してくれていました。ランチ会も、これまではこちらから働きかけていたのですが、今では障害者雇用のメンバーから「ランチ会やりましょう!」とメールで提案してくれることも。

 

障害の有無に関係なく、こういった集まりが好きな人・苦手な人はいますよね。もちろん、苦手な方に対しては無理強いすることは決してありません。それぞれの意思を尊重しあう文化が根付いているからこそ、メンバー一人ひとりが「自分らしい選択」を気持ちよくできているのではと考えています。

ミスマッチを防ぐために、採用面で重視していること

 

面接の際には「自身の特性について理解して、伝えることができる方かどうか」を重視して見ています。ご入社された後に体調や気持ちが不安定になったとしても、自身の兆候を掴んで早めに伝えてもらえると、こちらも手立てを考えられるからです。

 

そのような意味でも、最近では就労支援からのご紹介で入社されるケースがほとんどです。就労支援を利用されてきた方の場合は、自己理解を深めた上で転職活動をされている方が多いですし、ご本人の主観だけではなく、支援スタッフの客観的な見解が聞けることも安心感があります。

障害者雇用における今後の展望

事業部門に関しては、障害者雇用の社員は、経営支援部配属でバックオフィス業務の傍ら、部分的にサービス運営業務を行っていますが、今後はご本人にスキルと意欲さえあれば、事業部門に異動して、サービス運営業務をメインに活躍をしていただける状態を目指していきたいと思っています。

 

清掃・マッサージなどのオフィスサポート部門に関しては、業務内容自体は同じだとしても、対応の幅やレベルを上げていくことで、オフィス利用者の満足度向上や、ご本人の成長にも繋げていけたらと思っています。

 

そのためには、社内における就労支援や人材育成にも力を入れていく必要があると考えているので、単なるサポート役ではなく、人材輩出的な役割を我々が果たしていきたいです。

これから障害者雇用を目指す方へ

 

今、障害のある方と働いていて、「ご自身のことをちゃんと理解しているかどうか」が非常に大切だなと思っています。できること・できないことがあるのは当たり前ですし、できないことがあるからといって、それだけがマイナスになることはほとんどありません。

 

むしろ自分のキャパシティを把握して、できないことを発信してくれると、環境や業務の調整がしやすくなるので周囲も助かると思います。

 

逆に、「なんでもできます」とか「苦手なことはありません」と言われてしまうと、何が負担になるか分からず、企業側としては不安になる場合もあります。

 

お互いが気持ちよく働くためにも、無理のない等身大の自分でチャレンジしてほしいと思っています。もし自分ひとりで自己理解を深めることが難しいのであれば、就労支援に通うなど、第三者を頼ってみるといいかもしれません。

LINEヤフーコミュニケーションズが考える障害者雇用とは

障害者雇用に限らず、さまざまな個性や価値観のある人たちと働いた方が、提供するサービスにもいい影響があると考えています。「こういうところで困る人もいるんだな」とか「こんなサービスが求められているんだな」など、幅広い意見を知ることができるからです。それにより、多様な観点をもつ柔軟で強い組織へと成長していけると思っています。

 

社内への影響でいうと、障害のある方にとっての働きやすさ=その他の多くの社員の働きやすさに繋がると思うんです。例えば、障害のある方のために作ったマニュアルを新入社員が使うことができたり、有給を取りやすい雰囲気は、障害のある方だけでなく、育児や介護をしている社員にとっても重要です。

 

私たちもまだまだ発展途上の段階ではありますが、まずは社内から多様な個性が活かされる環境作りに引き続き取り組んでいきたいと考えています。




今回訪問した企業様の会社概要

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社

企業名

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社

従業員数

1,650名(2024年4月現在、LINEヤフーからの出向社員含む)

事業内容

LINEヤフーが展開するサービスの運営・カスタマーサポート・クリエイティブ・事業企画など

ホームページ

https://lycomm.co.jp

インタビュー:2024年2月2日

※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。

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