障害者雇用の企業事例
障害のある方と共に歩んだ働き方
まいばすけっと株式会社 人事総務部 齊藤 様(左)・黒川 様(右)
目次
まいばすけっとはどんな会社ですか?
~大きな「イオン」から生まれた、小さな「まいばすけっと」。~
まいばすけっとは「近い、安い、きれい、そしてフレンドリィ」をコンセプトとした、都市型小型食品スーパーマーケットです。
2005年に横浜市に第1号店を出店。
現在では、東京・川崎・横浜で約800店舗を展開し17,000名の従業員が活躍している、イオングループの「都市部シェア拡大」を担う伸び盛りの会社です。
障害者雇用をはじめた経緯
障害者雇用をはじめたのは、2012年に「まいばすけっと」がイオンリテール株式会社から分社化をしたことがきっかけです。
はじめて採用したのはLITALICOワークスを利用者している方でした。当時は、事務職採用で進めていました。しかし、当時の会社の成長スピードに法定雇用率の達成が間に合わないことや、“まいばすけっとらしい”働き方が事務職以外にあるのではないかと考えたことから、店舗勤務での障害者雇用の検討をはじめました。
店舗での業務で毎日一定時間をかけておこなっている業務は「レジ」と「商品陳列」でした。1日に複数名で一緒に業務ができるということと、店舗の従業員がレジ業務に集中する助けになるということから「商品陳列」を選びました。
「商品陳列」をやることを決めてから、まずはLITALICOワークスを利用者している方に企業実習に来ていただきました。そこで実際に商品陳列でどれくらいの時間がかかるのか、チームでの取り組み方法や休憩取得などどのようにすることが最適なのか意見を頂きました。
この実習に来ていただいた方々の中から数名の方が現在の「店舗商品陳列チーム」の初期メンバーとなりました。
障害者雇用の人数とその働き方

店舗内イメージ
現在70名の障害のある方が働いています。
その内、事務アシスタントは7名。総務と人事サポートに従事していただいております。
店舗商品陳列チームは63名。障害のある方がチームを組み、1日に2店舗の商品陳列をおこないます。店舗の規模にもよって異なりますが、3~10名で1つのチームを形成し、現在は10チームあります。業務時間は1日6時間です。主な業務の流れは「商品の仕分け⇒商品陳列⇒商品の前出し」です。
チーム内にはリーダーがおり、同じ障害者雇用枠で働く方が担当します。リーダーもメンバーも障害のある方同士であるため、業務上の質問や、体調の相談などがしやすい環境です。
企業インターンでミスマッチ防止

人事総務部 齊藤 様
当社では、「障害」ではなく「人物本位」で採用を考えております。そのために、選考実習の前に必ず企業インターンに参加して頂いています。
企業インターンは、職場を体験することです。
参加者は選考を気にすることなく、業務内容や職場環境が自分に合っているかを肌で感じることができます。私たちは、その方が長く働くことができるかを確認する期間であると考えています。
「事務職が人気」「作業系の仕事は敬遠されがち」といわれる障害者雇用ですが、当社にインターンに来られたほとんどの方が、その後「作業系の仕事のほうが自分に合っている」と自分の意外な適性を発見されています。ですので、「自分には向いていないかな」と思っている方でも気軽にインターンに参加して頂きたいです。
また、当社の企業インターンは何度でも挑戦が可能です。例えば過去4回参加され、その後選考に進まれた方もいらっしゃいます。当社は働きたいという方の気持ちを大切にしています。
百聞は一見に如かず。まずは当社を体験していただき、働き方を知っていただきたいと思います。
▼まいばすけっとの採用までのフローを紹介
1.見学
まず実際の店舗を見学。作業内容を確認。
2.企業インターン
1週間の企業インターンで既存メンバーと一緒に作業を実施。
3.雇用前実習
2週間の雇用前実習で実際に働くイメージを深める。その際、企業インターンでの振り返
りをもとに、本人の発信力を確認する。
4.面接
支援者同席の上、面接を実施。作業内容や長く仕事を続ける上で配慮事項を確認。
ルール策定は、まず話し合いから

人事総務部 黒川 様
当社の障害者雇用において、70%以上を占めているのが精神障害のある方です。
その障害特性のため、季節の変わり目や台風の時期などは体調を崩される方が多くいらっしゃいます。そのような時は、勤怠が不安定になることも少なくありません。
出勤するまではできても、普段のパフォーマンスで働くことができず、作業が進まないこともよくあります。そういった状況を考慮して、チームメンバーで意見を出し合い「作業の途中で1度10分休憩をとる」というルールを決めました。
休憩回数を増やすことでみんなが安定して働けるようなモデルをつくることができました。
1日に複数名が欠勤をして勤務人数が少ない日は店舗従業員が「いつも助けてもらっているから」と快く手伝ってくれ、障害の有無関係なくスタッフ同士が支え合って店舗を運営しています。
障害のある方が相談しやすい環境づくり
相談しやすい体制づくりを心がけています。
障害のある方だけで形成された商品陳列チームは10チームあります。彼らは1日に2店舗を担当しているため、私たちだけではどうしても目が行き届きません。小さな悩みも、溜まっていくうちに大きな課題になることもあります。各チームには、同じ障害者雇用で働くリーダーを配置し、気軽に業務上の質問や相談をしやすい環境を提供しています。私たちもなるべく店舗に訪問し、リーダーから相談があったメンバーに関しては電話で話を伺ったりするようにしています。
2018年4月からスタートした定着支援事業もうまく活用しています。
当社の障害者雇用で働くメンバーの8割の方は、就労移行支援事業所の利用者ですので、月に1度本人と支援者と当社の三者面談の機会があります。その際、最近の体調や働き方のこと、今後のキャリアのことを話し合います。
信頼できる第3者がいることは、雇用する側として大変心強いです。
障害者雇用の展望

商品陳列チームを、より多くの店舗に拡大していきたいと考えています。障害者雇用をはじめて5年が経ち、商品陳列チームのいない店舗の店長からも「自分の店舗でもやってほしい」と言っていただけるようになりました。必要とされるチームに成長したことは、大きな一歩だと思っています。
障害者雇用のさらなる拡大のために、適切な業務の切り出し、就職後のキャリアパス、当社で働き続けるために必要な選択肢を考えて、増やしていく必要があります。これからAIや技術が発達してもなくならない仕事を、障害のある方と一緒に創出したいと思っています。
障害者雇用を検討している企業様に一言

まずは企業インターンで、障害のある方を受け入れてみることからはじめてほしいと思います。
そして、障害のある方とたくさん話してみてください。同じ障害名や診断でも、一人ひとりのできること・できないことは全く異なります。画一的な先入観にとらわれない対話をすることが最も大切です。
当社も、企業インターンを通しそのような対話を繰り返すことで、「私たちらしい障害者雇用」ができてきたと感じています。
今回訪問した企業様の会社概要

企業名 |
まいばすけっと株式会社 |
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設立 |
2011年9月 |
事業内容 |
都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」の運営 |
ホームページ |
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インタビュー:2019年12月9日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。