障害者雇用の企業事例
現場の声を活かし、障害のある人がより働きやすい環境づくりを目次
株式会社NTT西日本ルセントはどのような会社ですか?
西日本電信電話株式会社の特例子会社として2009年に設立された株式会社NTT西日本ルセント(以下NTT西日本ルセント)では、『共生と貢献』という理念のもとに障害のある方を雇用しています。独自のシステムを使った体調サポートや、チャレンジしていきやすい雰囲気作りなど、さまざまな取り組みについてお話を伺いました。
NTT西日本ルセントは、主にNTT西日本グループから受託した、データ集計や請求書発行、プログラム開発、DM発送やテレマーケティング、紙書類のPDF化などを行っている特例子会社です。
NTT西日本ルセントではさまざまな障害のある方が働いていますが、みなさんがやりがいをもって仕事に取り組んでいる姿に私も影響を受けています。私自身は着任から半年くらいですが、彼らが真摯に仕事をしている姿を見て、負けてられないという気持ちになり、企画スタッフとしてもっと何かできることはないかと前向きなエネルギーをもらっています。
昨年、「私たちは私たちの成長をする姿で世の中の仲間に、“夢と輝き”を届けます」というパーパスを設定し、社内のポータルサイトに掲載しました。その実現のために取り組んできましたが、少しずつ体現できていると感じています。
ささいな変化も見逃さないで声をかけていく
私たちは、「障害のある社員の小さな変化も見逃さない」ということを意識しています。まず、障害者雇用で入社した社員には、毎日の体調変化を把握するため、社内の「アスドライブ」というシステム上に健康状態や気分を書いてもらっています。
体調のほかにも「伝えたいこと」を書く欄も用意されていて、そこに書かれた情報が蓄積されていきます。これをもとに、体調の変化などを感知し、必要に応じて声掛けをするなどの対応を行っています。
業務時間の中にアスドライブに入力する時間を設け、必ず入力できるような環境を作っています。基本的には、毎日退勤前に書いてもらい、その後に上長が確認やコメントの返信などを行っています。
また、アドバイザリー担当として精神保健福祉士、社会福祉士の方も在籍していて、障害のある社員からの相談を受け付けています。同僚や上長に直接言いづらいこともあると思うので、社内のポータルサイトに相談窓口を設け、スタッフも含めて相談しやすい環境を意識しています。アドバイザリー担当に寄せられた意見は職場にフィードバックするようにしていて、席替えやグループ分けなどの環境整備に役立てています。
上記窓口等に相談があれば、アドバイザリー担当が面談し、相談者の希望に応じて都度、定期実施するなど柔軟に対応しています。障害のある社員向けの各種研修会や勉強会も、アドバイザリー担当が主導して開催しています。
障害のある社員が働きやすい環境を作っていく
NTT西日本ルセントでは、障害のある社員のうち約7割が精神障害のある方です。
精神障害のある方は、人間関係で悩んだことのある方が多い傾向にあるため、そうした背景を踏まえた上で働きやすい環境を用意できるように、さまざまな工夫をしています。例えば、気分を落ち着かせるクールダウンスペースや、PC作業に集中したい時に使える遮音スペースなども用意していて、現在はリモートワークの体制も整えているところです。
もちろん、精神障害以外の障害がある方も多く働いているため、それぞれの特性に合わせたさまざまな環境調整を行っています。以前は、視覚障害のある方向けに点字のブロックを敷いていたのですが、それだと車いすを利用する方が通行しづらいという課題点も見えてきました。そこで、視覚障害のある方も車いすを利用する方も通行しやすいような形に工夫をしました。このように、働いている方が困っていることにスピード感を持って対応していることも、私たちの特長だと思っています。
ユニバーサルデザイン自体は、NTTグループ全体で取り組んでおり、多目的トイレの設置やLGBTQへの配慮なども積極的に推進しています。
NTT西日本ルセントでは、障害のある方が約330名働いていますが、NTTグループ全体では約1,000名の障害のある方が働いています。障害の有無にかかわらず働きやすい環境を用意するという意識が根付いているため、特例子会社であるNTT西日本ルセントでもこれを当たり前に行っていて、既に「文化」になっているように感じます。
障害のある社員が開発した「アスドライブ」
先ほど紹介した、障害者雇用で働く社員の健康管理をするシステム「アスドライブ」は、実は障害のある社員たち自身が開発しました。まず会社の方から「こういったシステムを作りたい」という相談をして、あとは障害のある社員たちに設計や業務進捗管理、開発までを担当してもらった形です。障害のある社員だからこその視点や工夫が盛り込まれており、障害のある社員が使いやすいシステムになっています。開発後の機能改善も、その方々がプロジェクトとして進めています。
こういった社内のシステム開発で培ったノウハウを活かし、NTTグループはもとよりNTTグループ以外の会社からも業務を受託して、設計や開発、メンテナンスなどを行っています。システム開発の部署はフルリモートで、基本的に事務所には出社せずに働き、朝礼などはビデオ会議で実施しています。また、直接顔を会わせる機会がないため、コミュニケーションが疎遠にならないように、自ら対策を考えてもらっています。
会社全体でチャレンジを後押しする制度もあり、年に1回「KAIZEN大会」というイベントを開催しています。受託している業務の効率化・生産性の向上を実現した優良事例を発表し、意見交換を行い、社内全体で共有しています。順位をつけるものではなく、優秀なチームは表彰して、NTT西日本全体の改善活動事例として紹介してもらったりしています。
人はチャレンジすることで成長すると思うので、「良いことはやってみよう」「失敗したら改善したらいい」といった心理的安全性を作っていくことを大事にしています。
このように、私たちの障害者雇用の取り組みでは、アスドライブなどのハード面と、働きやすい雰囲気作りというソフト面のバランスが取れているように思います。そのことが、障害者雇用の定着率95%という数字にもつながっていると考えています。
「自主的に学ぶこと」を大切に
私たちは、社員のキャリアアップとして、自己研鑽を目的に資格取得を推進しています。まずNTT西日本グループ全体として推奨する資格が1,600種あり、さらにNTT西日本ルセント独自に50種の資格を定めて、奨励金制度を設けています。また、これとは別で、業務に関係しない資格取得も、本人のチャレンジ精神を尊重して推奨しています。
また、社員が自己学習できるツールとして、年間を通して学べるeラーニングも用意しています。設定した数の研修を修了した方には、認定証を授与するという取り組みも行っています。
業務に関しては、まずはマニュアル通りにしっかりと仕事をこなすことが大事です。そのうえで、障害のある社員自らがマニュアルやフローの見直し、ICTツールを活用した効率化へのチャレンジなどを行っていきます。もちろん、すべてを任せるのではなく、定期面談やアスドライブなどを通して、上長などと相談しながら進めていくことも可能です。
NTT西日本ルセントでは、NTT西日本グループの業務を主に受託していますが、それまで受託元で行っていた方法を見直し、より効率的でミスが起こりにくい工夫を心がけています。これらも障害のある社員が主導で行っていて、実際に受託元からも高い評価をいただいています。
応募を考えている方へのメッセージ
NTT西日本ルセントでは、ハード面とソフト面の環境をしっかりと準備して、障害のある方が仕事を通して光り輝き成長していくためのサポートをしています。
先ほど紹介したKAIZEN大会だけでなく、防災コミッティや様々な委員会活動など、接的な業務以外の活動についても社員主体で取り組んでいくことで、社内環境の整備や一体感の醸成を進めています。その中の「輝き配達員」という活動では、11か所ある拠点にいる配達員のメンバーが、社内新聞や社内ポータルサイトを活用して、業務に関するトピックだけでなく社員の趣味に関する投稿など、さまざまな情報を発信しています。
また、社員が自主的に「ボッチャ大会」というスポーツイベントを開催したこともあります。普段の業務とは別の能力や特性を活かせる場も用意しているので、ぜひ積極的にチャレンジしてもらいたいと思っています。もちろん、こうした業務外の活動への参加は自由です。
入社前に職場の雰囲気を感じていただく機会も設けていますし、選考の中でも、職場見学や1日業務体験をしてもらっています。NTT西日本ルセント内でもさまざまな業務があり、それぞれ雰囲気も異なるので、実際に見て感じてもらえたらと思っています。
今回訪問した企業様の会社概要
企業名 |
株式会社NTT西日本ルセント |
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従業員数 |
約410人〔内、障害者社員336人〕(2023年6月現在) |
事業内容 |
NTT西日本グループ等からの営業系・設備系・共通系の受託業務 |
ホームページ |
インタビュー:2024年1月26日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。