障害者雇用の企業事例
サポート体制を整え、全員を戦力に目次
総合メディカルはどんな会社ですか?
そうごう薬局 天神中央店
当社は、医療機器専門のリース会社として1978年に福岡で創業しました。
「よい医療は、よい経営から」をコンセプトとし、コンサルティングをベースに、医業経営のトータルサポートをおこなっています。
医師の紹介や医業継承、医療連携を通じて、地域医療の活性化をお手伝いするDtoD、地域医療における課題を解決する医療モール、全国691店舗(2018年6月1日現在)を展開する調剤薬局、医療機器のリース、患者さんのアメニティ向上をお手伝いするテレビのレンタルなど、「よい医療」を支える多角的な事業を展開しています。
障害者雇用が促進された経緯
1998年に外部から紹介を受け、障害のある方をはじめて採用しました。このときに障害者雇用の制度を知り、これから会社として取り組む必要があることを認識しました。
その後、主に本社の事務部門で雇用を進めました。2009年には、社員のメンタルサポートと併せて障害者雇用に取り組む部署として、メンタルヘルスサポート室を立ち上げ、主に知的障害のある社員の雇用などに取り組みました。
2012年からは、社員数の増加と法定雇用率の引き上げに伴い、更なる雇用拡大に向け、障害者雇用と職場定着に特化した専門部署をつくりました。社外から専門のコンサルタントを顧問として招き、組織化と体制づくりに着手し、現在に至ります。
障害のある方の仕事内容とは
管理本部 総務部
業務支援グループ(障がい者雇用促進担当)
シニアマネージャー 松尾 謙師 様
当社での働き方は大きく2つのパターンがあります。
ひとつは、各部署で他の社員と同様の業務をおこなう、部署配属。もうひとつが、業務支援グループへの配属です。
業務支援グループは、障害のある社員の活躍と戦力化を目的とした部署で、2018年6月時点で障害のある社員が45名所属しています。部署の設立に向けて、障害のある方の就労支援に携わった経験のある方などを新たに採用し、専門知識を取り入れながらサポート体制を構築してきました。
障害のある社員6名を含む9名がジョブコーチの役割を担う「サポート社員」として、実業務に加え、業務の切り出し、業務指導、定期面談など、各スタッフのサポートをおこなっています。部署全体の業務内容は多岐に渡ります。患者満足度調査等のアンケート集計、データ入力、請求書のチェック、契約書のファイリング、郵便の仕分け、各薬局店舗へ販促物等の発送、薬局店舗の清掃など。これら各部署から受託している業務のほかに、印鑑・名刺・社員証の制作など、今まで外注していた仕事を内製化した業務もあります。
制作業務の内製化により、大幅なコストダウンが実現したことに加え、小ロットでの制作や即時対応が可能になりました。また、各部署から事務作業系の業務を受託することで、各部署の残業削減、業務効率化、業務の質向上に貢献しています。
障害者雇用を進めるにあたって、苦戦したこと
業務の切り出しに苦戦しました。今はたくさんの部署から声をかけていただけるようになりましたが、仕事を任せてもらえる関係性をつくるまでには時間がかかりましたね。
業務支援グループができた当初は、他部署の社員も、障害のある社員にどんな仕事を依頼できるのかイメージがつきにくかったこともあり、こちらから積極的に仕事を取りに行く必要があったんです。さらに、受けた仕事を必ずやり切るだけでなく「またお願いしたい」と思ってもらえるように、期待以上の出来栄えを目指しました。
障害者雇用の業務切り出し方法とは
管理本部 総務部
業務支援グループ(障がい者雇用促進担当)
リーダー 松隈 浩史 様
残業をしている社員を探し、声をかけました。何をしているのか詳しくヒアリングして、業務の切り出しができそうな場合は「その業務、うちでできるよ」と、提案したんです。
業務行程のすべてを請け負うのではなく、一部だけでも切り出すことで業務担当者の負担が大きく減ることがあります。まずは一部を切り出し、試しに業務支援グループに依頼してもらうことに注力しました。そして、納期内に質の高いものを納めていくことで少しずつ信頼を得る。地道な活動ですが、この積み重ねから今の仕事が生まれています。その他にも、薬局店舗でのデータ入力の業務や、お子さまが多くいらっしゃる薬局で配っていた折り紙の制作についても業務支援グループの定期的な仕事になっています。
この仕事も同様に、現場に出向き、社員からのヒアリングをもとに業務を引き受けたことから、今に繋がっています。最近では、薬局店舗のスタッフから「いなくなったら本当に困る」と言ってもらえることや、各部長から「業務支援グループができてから事務仕事が減り、企画や営業など本来の業務に集中できるようになった」との声をもらえる機会が増えました。役に立てたと感じるときは、やはり嬉しいです。
障害者雇用を進めていく上で大切にしていること
業務支援グループ 執務スペース
「戦力化する」ということを大切にしています。障害の有無にかかわらず、社員は仕事を通じて会社に貢献し、対価としてお給料がもらえて、自立できる。
そして、仕事にやりがいを感じられる。そういう関係になって初めて本当の意味での「雇用」になると考えています。そのためには、障害名に先入観をもたず一人ひとりと向き合い、本人の得意・不得意を知る必要があります。社員全員が戦力となれるよう、その人に合った業務や必要な配慮を検討することが大切だと思います。
障害者雇用の今後の展望
一人ひとりが業務に取り組みやすくなる仕組みや、キャリアアップできる体制を整えていきたいですね。今のところ、業務上ではフラットな組織になっています。
今後は業務サポーターの役割をつくり、業務面の管理やサポートを手厚くしていきたいです。そうすることで、一人ひとりが今以上に仕事のスピードと質を上げること、職域を広げていくことにも繋がります。
人財育成の観点でも、組織や役割をつくることでキャリアアップしやすい仕組みができます。障害のある社員が、まずは業務支援グループで働き、キャリアを積む中で業務サポーターとなり、ゆくゆくは他部署に異動して活躍の幅を広げていくなど、本人の希望に合わせて多様なキャリア形成ができる会社にしていきたいですね。
障害者雇用を検討している企業に一言
まず、就労移行支援事業所などの専門機関と繋がることからはじめてみてはいかがでしょうか。人事担当者だけで抱え込まず、外部の専門機関をどんどん頼っていいと思います。専門機関にアドバイスをもらうことで、取り組むべきことが明確になり、順番に進めていくことができます。
あとは、悩んだときに同じ立場で相談し合える相手がいると心強いですね。当社では、福岡エリアで障害者雇用に取り組む企業数社でネットワークをつくっています。各企業での取り組みや課題の共有、医療・福祉機関の方の講演など、2ヶ月に1度のペースで勉強会を開催し、ともに学び合っています。自社だけで解決しようとせず、外部の専門機関や他社と一緒に取り組んでいくことで、気持ちも楽になりますし、結果的に効率よく雇用を進めていくことにも繋がると思います。
今回訪問した企業様の会社概要
企業名 |
総合メディカル株式会社 |
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創立 |
1978年6月12日 |
事業内容 |
医業経営コンサルティング/医療モールの開発・運営/医療機関への医師の紹介/医師の転職・開業支援/医業継承支援/保険調剤、一般薬・介護用品の販売/医療機器などのリース・販売/入院患者向けテレビのレンタル |
従業員数 |
7,138名(2018年6月1日現在)※グループ会社含む |
ホームページ |
インタビュー:2018年4月26日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。