障害者雇用の企業事例
仕事に達成感・満足感を得る風土を目次
セントスタッフはどんな会社ですか?
東京本社の職場風景
1999年に業界の人材不足解消を担うべく、一貫して福祉(介護、看護、保育の分野)の専門人材サービス会社として、「価値ある出会い」を追求してまいりました。2010年には増え続ける認知症高齢者を対象としたグループホームの運営に参入し、2012年にはミサワホームグループへ参画。その後、保育施設の運営や、社会問題の1つとなっていた発達障害児の療育を目的とした放課後等デイサービスの運営を開始しました。
現在は、
・人財コンサルティング事業
(介護・看護・保育分野などの人材派遣と人材紹介、採用アウトソーシング等)
・施設運営事業
(介護施設・保育施設・放課後等デイサービス)
・人材育成事業
(資格取得サポートや介護施設向けのオーダーメード型の研修)
を三本柱に全国12拠点で展開しております。
2019年4月からは、障害者雇用の人材紹介事業を本格的に開始し、障害のある方の働く場を創出しています。
障害者雇用人数と業務内容
ヒューマンリソース部 アシスタントマネージャー 野尻 様
現在13名の方が勤務しており、精神障害・発達障害・身体障害・知的障害と様々な障害のある方が活躍されております。
そして、そのうち 8 割の方が福祉現場で働いています。介護職で採用された方は、当社運営のグループホームでご利用者様の食事など日常生活のサポートや、洗濯、掃除などの間接業務に携わっています。介護職なので夜勤もあるのですが、障害者雇用では基本的に夜勤なしのシフトでお願いしております。
また、障害のみならず遠方に住んでいる方など、その方に合わせた働き方ができるよう調整しています。
雇用形態は正社員と契約社員があり、週5日・8時間勤務をする方もいれば、短時間勤務をする方もいます。
2018年4月から一般事務職として本社で初めて採用した方は、
営業リストの作成や各種リサーチ、ご本人の強みが発揮されるイラスト制作などの業務に取り組んでいただいております。
得意・不得意は人それぞれなので、その方のスキルや能力に合わせて業務を調整し、強みを生かして活躍してもらうことを意識しています。
障害者雇用をはじめた経緯
人財コンサルティング事業部 人財開発課 チーフ 中川 様
福祉業界で事業展開する当社にとって、障害のある方の能力を生かし雇用の場を創出することは、社長をはじめ全社員が社会的責務と感じていました。そこで、2011 年より特別支援学校の福祉コースの学生を、当社運営の高齢者施設グループホームに実習生として受け入れ 、介護職の採用をしていました。それぞれが持っている強みや弱みを把握し、現場の教育担当ともよく連携をしていたこともあり、雇用後の定着率もよく、障害者雇用について緊急性を要したことはありませんでした。
しかし、会社の成長と共に拠点数・社員数が大幅に増加し、法定雇用率以上を保つことが難しくなってきたため、障害者雇用の拡大を検討していきました。当時、介護職としての採用実績しかなかったのですが、雇用の受け皿を増やすために、本社での事務職採用に向けて動きはじめました。
本社で初めての障害者雇用
本社での事務職採用は初のこと。まずは各部署の業務の切り出しから着手しました。本社で障害のある方が働くにあたり、どのような業務が適しているのか、フルタイムで雇用するだけの業務量が社内にあるのだろうか……未知の状態でした。
しかし、公共の支援機関に成功事例をうかがったり、LITALICOワークスの担当者にアドバイスをいただいたりすることで業務の切り出しが進み、業務内容やフォロー体制が確立されていきました。
その中で特に役立ったのは、LITALICOワークスのサポートの1つである「業務の切り出しシート」です。各部署の業務内容、業務の発生頻度や時間配分、使用ソフト、業務行程等がまとめやすくなり、スムーズに業務の切り出しができるようになりました。
採用に関しては、就労移行支援事業所向けの事務職採用の説明会を実施しました。説明会には約20名の方に参加いただき、面接→実習→採用というフローのもと、1名の方の採用に至りました。その時ご入社いただいた方は、現在も継続してご活躍いただいております。
障害者雇用を促進する上で大変だったこと
ヒューマンリソース部 ゼネラルマネージャー 大類 様
合理的配慮ですね。
一人ひとりに合わせて具体化することが最も大変でした。
今まで、採用の大半を占めていた特別支援学校の実習生は、軽度の知的障害で、報連相のやり方や、あいさつなどのビジネスマナーについてはカリキュラムを通して学ばれていました。
しかし、ハローワークや就労移行支援事業所からの採用では、年齢や障害特性、就労経験の有無も人によって様々。当社の事務職採用では個別の配慮事項について確立しているものがありませんでした。そこで、その方にあった配慮事項を考えるために、面談を通して相互理解する機会を増やし、どのような配慮が必要で、社内でどう対応できるのかを検討していきました。合理的配慮は画一化できるものではなく、ニーズを汲み取り言語化することは難しかったのですが、支援機関の担当者と相談しながら配慮事項を考えていきました。
安心して働き続けるための取り組み
普段から、些細なことでも不安に思ったことや不明点を周囲に聞きやすい風通しのよい環境づくりを心がけています。ほとんどの社員が福祉系の資格を保有しています。ですので、何かあったらみんなで声をかけようという思いがあるホスピタリティの高い社員が多くいますね。
ヒューマンリソース部では週1回~月1回の頻度で面談を設定しています。社員やスタッフから、「体調が不安定でどうすればいいか」と相談を受けることもあれば、「今後この仕事でもっと活躍したいから資格を取得したい」と、キャリアビジョンを話してくれることもあります。相談しにくい状況にならないよう、任意で面談の機会を設けたり、相談窓口を配置したり、1つずつできることを積み重ねていきました。
また、今年度は全社員向けに役員面談も実施しました。一同緊張した面持ちで臨みましたが、役員から一人ひとりに向けたメッセージがあり、目標を持って前向きに働く良いきっかけになったようです。
一緒に働く上で大切にしていること
目の前の業務にやりがいを持ってもらうことです。
社内の業務に意味のないものなど1つもありません。今やっている業務は何のためで、何に役立つことになるのか、誰が幸せになれる仕事なのか、などをできるだけイメージしてもらいながら仕事に取り組んでもらっています。
当社には、「人と仕事との出会いを通じ、生きがいと感動の創造に努め、雇用の創出に全力を尽くします」という経営理念があります。小さく単純なことでもやりがいを持つことで、質の高いサービスやお客様満足度の向上につなげる意識を持ち、社員一丸となって達成感や満足感を感じてもらいたいです。
障害者雇用の展望
当社としては、関東以外の拠点にも障害者雇用を展開することを目指しています。そのためにも関東での雇用実績を積み上げ、体制を整備していくことが重要です。
具体的には、障害者雇用向けの明確な人事制度の策定を考えています。
過去、障害者雇用で働く社員が社長賞に表彰されることがありました。現場からの声で、障害者雇用で働く社員は他の社員よりも評価が高いことが多々あるとも聞いております。障害の有無に関わらず、頑張って努力している人に対して報いる制度を用意したいと考えています。
また、障害者雇用で働く社員の中にも、結婚して子育てをしながら働く社員も出てきました。人生のステージの変化に合わせて、社員が長く安心して働けるように、待遇面の改善に関してしっかりと向き合っていきたいと思っています。
このような障害者雇用の取り組みを社内に発信していくことで社員の理解を深め、障害者雇用によりポジティブに取り組む会社にしていきたいです。
障害者雇用を検討している企業様に一言
最低限の知識を学ぶことは必要ですが、障害者雇用には正解がありません。だからこそ様々な事例に対応してきた専門機関の方の話を聞くことは、自社の課題や強みが整理され、それぞれの会社に合った障害者雇用の切り口になります。
分からないことは専門機関に聞く。そこからはじまると思っています。
今回訪問した企業様の会社概要
企業名 |
セントスタッフ株式会社 |
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設立 |
1999年10月 |
事業内容 |
労働者派遣事業・有料職業紹介事業/施設運営事業(高齢者・保育園・障がい児)人材育成教育事業/障がい者就労支援事業 |
ホームページ |
インタビュー:2019年9月24日
※掲載内容(所属や役割など)はインタビュー当時のものです。