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お役立ち仕事コラム

自律訓練法とは?効果は?公式・やり方も解説

更新日:2024/06/20

自律訓練法は状況に合わせて適切に用いることで、ストレス解消や健康維持などの効果が期待できます。

 

しかし、自律訓練法にはいくつかのポイントがあるため、実践する前にやり方のコツや注意点を合わせて把握しておく必要があります。

 

また、心身になにかしらの病気がある方は、事前に医師へ相談することも大切です。

 

今回は、自律訓練法について「具体的にどのようなものなのか?」を含め、効果や手順、暗示をかけるときに使う(言語)公式について順番に解説します。

 

※自律訓練法を実際に実践される場合は、十分に注意が必要です。以下の記事を最後まで読んでいただき実施の際は医師や専門家に相談の上実施されることをおすすめします。

自律訓練法とは?

自律訓練法とは、自己暗示(自分に思い込ませること)をかけ、身体の筋肉の緊張をほどくことで、身体を本来の健康的な状態に整えることを目的とした訓練法のことです。

 

1932年にドイツの精神科医であるJ・Hシュルツにより生み出されました。

 

日本へ入ってきて以来、医療現場やスポーツ現場、教育現場、企業研修の場など、幅広いシーンで取り入れられています。

自律神経について

自律訓練法をより理解するためにも、まずは、自律神経について説明します。

自律神経は「身を置いている環境や外部からの刺激に応じて、全身の状態を自動的に調整する働き」をしています。

 

例えば、暑いときに自然と汗が出る(体温の上がりすぎを防ごうとする)のは、自律神経の働きによるものです。

 

また、自律神経は、交感神経(身体を緊張させる)と副交感神経(身体をリラックスさせる)のふたつに分かれており、相反するふたつの神経が、バランスをとることで身体の機能を保っています。

自律神経が乱れるとどうなる?

全身の筋肉や血液を調整している自律神経が、ストレスや生活習慣によって乱されてしまうと、下記のような症状があらわれることがあります。

  • 疲労感
  • 頭痛
  • めまい
  • 不眠
  • 肩こり
  • 便秘
  • 下痢
  • 腹痛
  • 熱っぽい感じ
  • 食欲がない
  • 動悸
  • 背中の痛み
  • 腰の痛み
  • 手足のしびれ
  • 息切れ など

自律神経のバランスが崩れることにより生じる症状は、まとめて「自律神経失調症」と呼ばれることがあります。

 

自律神経失調症は統一された定義や診断基準が存在せず、医師によっても見解や治療方針が異なるのが現状であり、医学的に正式な疾患名ではありません。自律神経のバランスが崩れたことにより、上記のような症状が認められていることを指し、診断名ではなく「状態」と言えます。

そして、自律訓練法は、このような自律神経失調症に見られる症状の予防や緩和につながることが期待され、精神科や心療内科などで導入されていることがあります。

自律訓練法の効果は?

自律訓練法の効果は心と身体をリラックスさせ、自律神経のバランスを整えることです。

 

具体的には下記のことに期待できます。

  • 溜まっていた疲労を回復することができる
  • イライラ感が収まり、穏やかな気持ちになれる
  • 精神の苦痛が和らぐ
  • 身体の痛みが和らぐ
  • 寝つきがよくなる
  • 自分をコントロールしやすくなり、衝動的行動の頻度を減らせる
  • 仕事(勉強)への集中力がつき、効率良く取り組める
  • 自分自身の内面を見つめることができ、向上心が増す

自律訓練法は自分で理解ができるようになるほど、より効果が出やすくなります。

 

そのため、すぐに効果を感じられない場合も、しばらく継続することが大切です。

自律訓練法の公式とは?

自律訓練法は、「ゆったりした姿勢」で「決まった言葉」を心の中で繰り返しながら、以下の公式に関連する身体部位にぼんやり注意を向け、そのときの心身の感覚を味わうといった方法でおこなっていきます。

 

この決まった言葉のことを「(言語)公式」と呼びます。

 

そして、公式は合わせて7つ(基礎となる背景公式と6つの公式)から成り立っています。

  • 背景公式:「気持ちが落ち着いている」
  • 第1公式:安静練習「両手両足が重たい」
  • 第2公式:温感練習「両手両足が温かい」
  • 第3公式:心臓調整練習「心臓が穏やかに打っている」
  • 第4公式:呼吸調整練習「楽に呼吸をしている」
  • 第5公式:腹部温感練習「お腹が温かい」
  • 第6公式:額部涼感練習「額が心地良く涼しい」

必ずしも、背景公式から第6公式すべてをおこなわなくてはいけないわけではなく、「第1公式のみ」や「第1公式~第2公式まで」など、選んで実践できます。

自律訓練法のやり方は?

それでは、自律訓練法の具体的なやり方をご紹介します。

 

ここでは、事前準備から、実践しやすい「背景公式~第2公式」までの手順を解説していきます。

事前準備

まずは、事前準備として、下記を済ませておきましょう。

  • お手洗いに行っておく
  • 身体の締め付けが少ない衣類に着替える
  • アクセサリー類や、めがね、時計などを外す
  • 髪の毛を束ねている場合は、ほどいておく
  • 部屋を暗めにして、落ち着ける空間をつくる など

リラックスしやすくするために、可能な範囲で落ち着ける環境をつくることが大切です。

 

自宅であれば、なるべく明るすぎず、雑音の少ない部屋で実践することをおすすめします。

 

また、寝た状態でおこなう場合は、床にマットや布団を敷いておきましょう。

自律訓練法を実践するときの姿勢

基本となる姿勢には、主に下記の3つがあります。

  • 仰臥(ぎょうが)姿勢⇒仰向けになる
  • 単純椅子姿勢⇒椅子に座る
  • 安楽椅子姿勢⇒背もたれのある椅子にもたれかかる

寝る前であれば仰臥(ぎょうが)姿勢、電車であれば単純椅子姿勢が取り入れやすいはずです。それぞれの姿勢の取り方を順番に解説します。

 

まず、仰臥(ぎょうが)姿勢では、仰向けになり、両足を肩幅くらいに開きます。

 

両腕は、脇にゴルフボールがひとつ入るくらい軽く開いておきましょう。(手のひらの向きは上でも下でもかまいません)

 

また、単純椅子姿勢は、椅子に座った状態のことです。

 

基本的には背もたれのない椅子を使いますが、背もたれがある場合は、もたれかからないように注意しましょう。

 

安定感を高めるため、足裏は床につけるようにします。

 

もしも、口元に力が入っている場合、上下の歯が触れない程度にゆるめておきます。

 

どの姿勢でも、目は軽く閉じておき、頭から足先までの力が抜けた状態をつくりましょう。

背景公式:「気持ちが落ち着いている」

深い呼吸を意識して「気持ちが落ち着いている状態」に導いていきます。

 

吐く息とともに、肩の力を抜くようなイメージです。

 

身体のどこかにこわばっている部分を見つけたら、軽くゆすりゆるめていきましょう。

 

意識的に身体の緊張をほぐすことで、気持ちを自然にほぐしていきます。

 

「心と身体がゆるんできたな」と感じたら、心の中で「気持ちが落ち着いている」という言葉を繰り返しましょう。

第1公式:安静練習「両手両足が重たい」

第1公式では、「手足の筋肉がゆるんで重たい」という感覚を感じ取っていきます。

 

とはいえ、いきなり両手両足すべての重みを感じようとするわけではありません。

 

まずは、神経が発達していて、感覚が得られやすい利き手からおこないます。

 

具体的には、下記の順番(右手が利き手の場合)で公式を唱えながら、重さに意識を向けていきます。公式は実際に呟くのではなく、心の中で繰り返します。

  1. 「右手が重たい」
  2. 「左手が重たい」
  3. 「右足が重たい」
  4. 「左足が重たい」

自律訓練法の実践においては「言葉をどのように唱えるか」が大切なポイントです。

 

「おもたーい」と語尾を伸ばしたり、徐々にゆったりとした口調に変えたりする方法も効果的です。

第2公式:温感練習「両手両足が温かい」

第2公式では、「両手両足が温かい」という感覚を感じ取りましょう。

 

実際のところ、人間の身体はリラックスすると血流が増え、その部分の温度が上がるため、自律訓練法により、本当に手足は温かくなっていきます。

 

この温かさを感じ、感覚をそのまま受け入れます。

 

第1公式と同じように、利き手⇒反対側の手⇒足の順番に意識を向けて、「〇〇が温かい」と心の中で公式を唱えましょう。

消去運動(消去動作)

自律訓練法をおこなっている間、心身はうつらうつらとした眠りと目覚めの中間のような状態になっています。

 

そのため、自律訓練法を終えた後、すぐに日常生活に戻ろうとしても「ぼんやりとする」「ふらふらする」など、行動に支障をきたす恐れがあります。

 

消去運動(消去動作)は上記の状態から元の状態へと戻すためのものです。

 

具体的には、下記のやり方があります。

  1. 両手を握って開く(グーの状態からパーの状態にする)を繰り返す
  2. 両手を握った状態で両腕を上げたり、曲げたりする
  3. 大きく伸びをして、深呼吸を繰り返す

消去運動(消去動作)の種類はいくつかあるため、自分好みの動作を見つけましょう。

自律訓練法の注意点

自律訓練法をおこなうと身体の緊張がほどけるため、血流が良くなったり、筋肉がゆるんだり、内臓が活発に動いたりと、さまざまな変化が起こります。

 

そして、この変化がその人の持病や状態によっては、副作用となることがあります。

 

例えば、よく頭痛が生じる人や、糖尿病のある人、心臓に異常が見られる方は、一部の公式を実践すると、身体にとって良くない反応が起こる可能性があります。

 

また、よく妄想の出る精神疾患のある人が自律訓練法をおこなうと、状態が悪化してしまう場合もあるため、自律訓練法を試みる前に必ず医師へ相談するようにしてください。

自律訓練法は一人でできる?

「自律訓練法」と調べるとさまざまなやり方がインターネットで検索できるので、自分一人でもできるのでは?と思われる方も多いかと思いますが、基本的には専門的な知識のある方の指導のもとおこなわれることをおすすめします。

 

もし、かかりつけ医などがある場合は、自律訓練法を一人で実施する前に、医師に相談してみましょう。

 

練習法が難しく、体調や体質、持病の有無によって合わない可能性が考えられるからです。

自律訓練法のまとめ

自律訓練法は、心身をリラックス状態へと導いてくれるため、疲労やストレスによってお困りの方や、疲れを癒したい方に有効です。

 

自律訓練法をおこなうにあたり、道具や広いスペースは必要なく、通勤中や寝る前などのちょっとした時間と場所で実践可能です。

 

また、日々継続することでより効果を得られやすくなるため、習慣のひとつとして取り入れるのもよいでしょう。

精神的な不調によって、仕事に関するお悩みがある方へ

働くことにお悩みのある方が活用できる施設として「就労移行支援事業所」があります。

 

就労移行支援事業所とは、うつ病を含め、さまざまな障害やご病気によって福祉サービスを利用できる方の就職をサポートする福祉機関のひとつです。

 

具体的な活動内容の例は下記の通りです。

  • その人に合った仕事探しのお手伝い
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このほかにも、さまざまな角度から支援をおこなっています。

 

就労移行支援事業所の「LITALICOワークス」は、各地で就職の支援をしています。

 

相談も受付しているので、就職のお悩みのある方はお気軽にお問い合わせください。

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更新日:2024/06/20 公開日:2022/07/12
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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