肢体不自由(身体障害)の仕事・就職事例 -コールセンター-
自分の魅力に気づき、いかすことができました
女性/20代/コールセンター/IT企業
肢体不自由(身体障害)
「自立したい!」という強い思い
Bさんは、脳性麻痺のために足に軽い運動機能障害(肢体不自由)が見られます。小さいころはもっぱら車椅子で移動していましたが、生来の粘り強い性格から、きびしいリハビリを乗り越え、短い距離なら自力で歩けるようになったといいます。
とはいえ、やはり身の周りのことはお母様に世話をしてもらうことが多く、Bさんは「このままでいいのかな…いつまでもお母さんに世話をしてもらっていて、将来お母さんが年をとったらどうすればいいのだろう?」という漠然とした不安を長らく抱き続けてきたそうです。
そして20歳の誕生日を迎えたとき、Bさんは一念発起します。
「もう成人なのだから、経済的に自立したい!」
「親が元気なうちに、自分のことはできるだけ自分でできるようになりたい!」
そう決意したBさんは、独力で就職活動を開始しました。
長く歩けないとはいえ、書くことや話すことには問題ありません。「デスクワークなら、誰にも負けずバリバリ働ける!」という強い自信を持っていたBさんは、高収入のハイレベルな求人ばかりを選んで応募を続けました。
しかし、残念ながら結果は不採用続き。
「自分が身体障害者でなければ…」
負けず嫌いのBさんでしたが、自分ではどうしようもない現実に、悔し涙をこぼすこともあったといいます。
やがてBさんは地域の相談支援事業所からLITALICOワークスの就労支援を紹介され、利用を開始しました。
「私はできるはず!」が過信に…
LITALICOワークスに通うようになったBさんは、自分の意外な弱点を発見してショックを受けます。
他の利用者さんたちと話をしたり、スタッフからのアドバイスを受けたり、また職場体験で実務の現場に接したりするうちに、「自分にはできる」と思い込んでいたことが実はできていなかったり、自信を持っていたスキルが、実は実務レベルに達していなかったりというギャップがあることに気付いたのです。
Bさんは、後にこう語りました。
「肢体不自由なんか関係ない。自分は誰にも負けずにできるんだという思い込みが激しすぎて、現実が見えていなかったのかもしれません。今から思うと、自力でいろいろな企業に求人応募していたころも、実は障害のために不採用になったのではなく、スキル不足や、大きすぎる気負いを面接官に見透かされていたのかもしれませんね」
Bさんは「私はできなきゃいけない、できるはず!」と自分に言い聞かせることで自分を奮い立たせてきたのでしょう。しかし、その気持ちが強すぎて、思い込みと現実とのあいだにズレが生じてしまっていたようでした。
夢を声に乗せて
しかし、そのことで夢をあきらめるBさんではありませんでした。
できていなかったのなら、本当にできるようになればいい。
スキルが不足しているなら、スキルを身に付ければいい。
Bさんは持ち前のガッツで、くじけることなくスキルに磨きをかけていきました。そして、Bさんの素敵なところは、そういう状況であっても、決して笑顔を忘れなかったことです。
「明るく前向きにがんばる」というBさんの姿勢は、他の利用者さんたちやスタッフにも大きな勇気を分けてくれました。そんなBさんの魅力が、ある企業の面接官に伝わりました。それはコールセンターの仕事でした。張りのある明るい声。そして、ハキハキとした対応。
電話口で、お客様からのお問い合わせやご注文に応じるコールセンターの仕事なら、Bさんの魅力やスキルが最大限にいかせると評価されての採用です。
「お客様には、私の姿は見えません。でも、声だけでも、こちらの誠意や『お客様のお役に立ちたい!』という気持ちはお伝えできるんですよ。本当にお客様のことを考えて対応しているかどうかは、すぐに先方に伝わってしまいます。決していいかげんな気持ちではできない仕事です。でも、だからこそやりがいもあるし、対応をお褒めいただいたり、『ありがとう』と言われたりしたときは、この仕事に就いて本当に良かったと思います!」
目をキラキラさせて、そう話してくれたBさん。この分なら「経済的な自立」という夢の実現も遠くないかもしれません。
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。