アスペルガー症候群(発達障害)の仕事・就職事例 -IT企業・事務補助-
ポジティブな思考転換で仕事が楽しく
女性 /40代/IT企業/事務補助
アスペルガー症候群(発達障害)
現状を変えたいという思い
「自分の言動が相手を不快にしている」「会話がうまく続かない」「輪に入れない」など、Eさんはいつも悩んでいました。昔のEさんはとても明るく、前向きな性格だったとご両親は語られていました。しかし、アスペルガー症候群特有の症状と折り合いをつけられず自信を失ってしまい、次第に明るかった性格も変わっていったと話されます。
アスペルガー症候群の主な特徴の1つに、対人関係の障害というものがあります。Eさんのように自分では気づかないうちに相手に不快感を与えてしまうことを繰り返し、コミュニケーションを取ることが怖くなり、周りの顔色をうかがうようになって自分の心を閉じてしまうケースがあります。その結果、周りの人と打ち解けられず友達ができにくい、会社で長く働くことができずに転職を繰り返すという人も少なくありません。
完全に自分に自信を失ったEさん。家族からの支えも重荷に感じてしまい、自分のことを責めてばかりいたそうです。そんなとき本音で話ができる数少ない友人からLITALICOワークスの就労移行支援を紹介されました。これ以上周りの手を借りることに抵抗があったそうですが、このままでは何も変わらないと思い、思い切ってLITALICOワークスを利用することにしました。
就労支援の開始
Eさんが「自分の言動が相手を不快にしている」「会話がうまく続かない」「輪に入れない」ということを不安に感じていると聞いていましたが、当初は客観的に見るとそれほど課題となるような言動は見当たりませんでした。しかし、いつも先回りした不安感に苛まれ、孤独を感じていることがわかりました。
そこで私たちは著しい自信喪失に対し、考え方を徐々に変えていけるようなプログラムをおこなうとともに、「できること」に気持ちが向くようにサポートしていきました。
就職に対しては前向きで「仕事はしたい。これまでもどんなに辛くても仕事を休んだことはない」と話されていたので、Eさんに合いそうな求人を提案していましたが「職場の人と仲良くなれるか不安……」という理由から、なかなか就職活動への一歩が踏み出すことができずにいました。
就労支援をはじめてから半年ほど過ぎた頃、私たちは提案をしました。「このままでは時間だけが過ぎてしまいます。まずは就職活動の一歩を踏み出してみましょう。ハローワークにいって求人情報を探しましょう」するとしぶしぶではあるもののEさんは納得をしてくれました。
すると驚いたことに、翌日ハローワークへいくと、ある企業の面接がその日のうちに決定しました。さらに面接後すぐにその会社から採用通知をいただきました。私たちはもちろん、本人も驚きの早さでした。就職活動再開から就職までまさにあっという間の出来事でした。
一歩踏み出す勇気、そこからつかんだ就職
仕事探しから面接、採用とスムーズにことが運び、市内にあるIT系の企業で仕事をはじめたEさん。入社直後は、「休憩時間の空気が気まずい」「既にグループができていて入りにくい」という悩みもありました。Eさんの不安な気持ちや状態を企業に情報共有しながら、面談や企業訪問を続けていきました。
しかし、Eさんが働きはじめてから2ヶ月後の定期面談の時に「就労移行支援でのプログラムで得た自信と、ポジティブな思考転換を意識してやってみました。やっぱり仕事をすることは楽しい、クビにならない限り辞めるつもりはありません」と、私たちが今まで見たことがないくらい前向きに話をされていました。
就職後の茶話会や同窓会では、利用者さんに就職や仕事の内容を話す機会が多いのですが、Eさん自身が経験した「一歩踏み出す勇気」を利用者さんに伝えることで、不安で立ち止まってしまっている利用者さんの後押しになっているようです。
また現在でも休まずにお仕事に励まれていることを自信を持ってお話していました。地域の当事者会にも積極的に参加されているようで、笑顔も戻ってきました。
※同窓会:OBの方がプログラム内容やメニューを企画から考えて開催する会
※茶話会:月1回、定期的に開催している利用者さんやOBの方が集まってお話しする会
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。