統合失調症(精神障害)・アスペルガー症候群(発達障害)の仕事・就職事例 -福祉・経理事務-
「無表情なくらいがちょうどいい」
男性/40代/福祉/経理事務
統合失調症・アスペルガー症候群
服装に無頓着で無表情すぎる点が問題
Gさんは、慢性期の「統合失調症」と診断されています。Gさんは子供のころ、「アスペルガー症候群」だったそうです。アスペルガー症候群は知的障害を伴わないのですが、コミュニケーションなど社会性に課題があるとされる発達障害のひとつです。
アスペルガー症候群は症状によって対人ストレスや劣等感を抱えやすく、二次障害として統合失調症や不安神経症(不安障害)などの精神障害を発症する場合があるとされています。
統合失調症の症状には、幻聴や妄想、感情の平板化や意欲の低下、状況の変化に対応しにくい認知機能障害などがありますが、Gさんの場合は全体的に非常に安定した状態に見えました。ただし服装にまったく無頓着であることや、無表情すぎる点などが目立ちました。
Gさんは以前、別の仕事に就いていたのですが、そこを退職してしばらく治療に専念したあと、「変動の少ない、安定した仕事である事務職に転職したい」とLITALICOワークスの就労支援を利用するようになりました。
採用面接時の鋭い指摘に衝撃を受ける
これまでも、Gさんは周囲から髪の寝ぐせを直す、服装を整える、汚れた服は着替えるといった助言を受けていたようです。しかし、なぜそれが必要なのか、Gさんにはなかなかピンとこなかったようで、注意を怠るとすぐに自分にとって楽な服装に逆戻りしてしまってました。
いろいろな企業の求人に応募したのですが、やはり服装のだらしなさと無表情は大きなネックとなり、なかなか採用を勝ち取ることはできませんでした。特に無表情については、面接官から心配されることさえありました。
しかし、ある企業の面接官にズバリと次のように指摘されたことで、Gさんの意識は大きく変わります。
「お話をしていて、Gさんがとてもいい人だということはよくわかりました。しかし、それにしても眼鏡が汚すぎる!」
もちろん結果は不合格。しかしGさんにとっては、不合格という結果よりも「自分の問題点を面と向かって他人に指摘された」という経験のほうが強く印象に残ったようでした。
それ以来、Gさんの態度は大きく変わりました。みずから衣類の汚れなどに気を配るようになり、もちろん眼鏡も常にピカピカに磨くようになりました。Gさんは、社会人にとって身だしなみも重要なスキルだということに気付いたようです。
仕事場で「身だしなみのいい人」で通っています
Gさんの身だしなみはきれいになりましたが、表情が乏しいという点はなかなか変化が見られませんでした。しかしその後、ある企業の経理職の求人に応募して面接に臨んだとき、先方の面接官から意外な高評価を受けました。
「経理担当者たるもの、何があっても動揺を顔に出してはいけない。経理に携わる人間は、無表情くらいがちょうどいいです」
Gさんは几帳面な性格で、以前の仕事でも無遅刻無欠勤が自慢でした。その安定ぶりとポーカーフェイス(?)が先方に非常に気に入られ、その経理職の求人でとんとん拍子に採用が決まりました。
就職後も特に仕事ぶりには問題がなく、無表情であることも、かえって信頼や高い評価につながっているようです。
Gさんに尋ねてみると、「眼鏡が汚すぎるという指摘を受けたときは、脳天をガツンと殴られた思いだった」とのことです。あの一言がよほど身にしみたのか、就職後半年以上経っても、服装に少しの乱れもなく、仕事場では「身だしなみのいい人」で通っているそうです。
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しております。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。