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障害のある方の就職事例

統合失調症(精神障害)の仕事・就職事例 -冠婚葬祭業-

統合失調症(精神障害)の仕事・就職事例 -冠婚葬祭業-

できる仕事とやりたい仕事に線を引くということ

男性/30代/冠婚葬祭業

統合失調症(精神障害)

「やりたい仕事」と「できる仕事」のギャップ

統合失調症にはさまざまな症状があるとされますが、その中のひとつに、認知機能障害というものがあります。これは情報処理能力や注意力、記憶力、問題解決能力などの高次能力に問題が生じるという精神障害です。

Sさんの場合、この認知機能障害の傾向が見られるとのことで、頭の中に浮かぶさまざまな考えをまとめて総合的な判断を下すことが苦手なようでした。

Sさんの人柄を一言で表現するなら「熱血」そのものです。
意欲や情熱に満ちあふれ、LITALICOワークスに通うようになってからは積極的にリーダーシップを発揮し、模範的な姿勢を示してくださいました。そういうSさんの姿は、ほかの利用者の皆さんにも良い影響を与えていたように思います。

それだけに、自分の意見や考えが複雑になると、うまくまとめて表現できないことにもどかしさを感じていたようでした。

Sさんは「教師になりたい!」という強い思いを長年持ち続けてきました。しかし、さまざまな事情から教員採用試験を受けることができず、学校卒業後はほかの仕事をしながら、塾講師なども含め「生徒を教え育てる仕事」に就きたいと転職活動、就職活動を続けていました。しかし、その願いはなかなか叶いませんでした。

Sさんはコミュニケーションスキルもビジネススキルも十分高いのですが、「やりたい仕事」と「できる仕事」のギャップが大きすぎるために仕事への意欲が失われ、結局前職を退職することになったそうです。

しかし「働きたい、就職したい」という気持ちそのものは強かったので、LITALICOワークスの就労移行支援を利用しながら、自分の気持ちを整理するとともに、教育に関わる仕事を含め、さまざまな職業の選択肢を検討してみたいとのことでした。

自分自身で思いの整理をすることが必要

LITALICOワークスに通うようになってからも、Sさんの「教師になりたい!」という強い思いは変わりませんでした。しかし、Sさんの思うような教育関連の求人にいくら応募しても、採用されることはありませんでした。

「どうしても教師になりたい。もしくは教育に関連する仕事がしたい」と主張するSさん。しかし現実はきびしく、その夢の実現に至る道は険しいものでした。

現実を受け入れるか。それとも、ひたすら夢を追い続けるか。スタッフとSさんとの話し合いが繰り返されました。

その葛藤の苦しさから、Sさんは「LITALICOワークスから離れようか」と真剣に考えたこともあるそうです。

しかし、スタッフはあきらめませんでした。
Sさんの言葉に真摯に耳を傾け、Sさんの気持ちを受け止め続けました。
「Sさんの葛藤を解決するためには、Sさんが自分自身で思いの整理をすることが必要だ」と考えたからです。

話し合いを重ねるにしたがって、スタッフとの信頼関係が少しずつ構築されていき、Sさんは、胸の奥に溜まっていた思いをストレートにスタッフにぶつけられるようになっていきました。またそうすることで、これまで自分ひとりで抱え込んでいた葛藤を言葉にすることができ、自分の気持ちを整理するきっかけとなったようです。

人に教え育てるという仕事。もう悔いはない

就労支援のひとつに、「職務経歴書の作成」のサポートというプログラムがあります。

職務経歴書は履歴書と並んで、求人応募には欠かせない書類のひとつです。一般的な職務経歴書は、これまでどんな仕事をしてどんなスキルを身に付けたか、どんな経験をしてきたかといったことを簡潔にまとめます。

しかしSさんは職務経歴書づくりに非常に入れ込み、「自分史」ともいえるほど詳細な経歴書を書き上げました。Sさんにとって、職務経歴書づくりはこれまでの自分の半生を整理し、振り返るための絶好の機会だったのです。

Sさんは記憶を掘り起こし、職歴だけでなく、自分の印象に強く残っている出来事を職務経歴書に並べていきます。

なぜ自分は「人を教え育てる仕事」に就きたかったのか。教師になれないとわかったとき、どんな気持ちだったか。それからも夢をあきらめず、どんな努力を重ねてきたか。
記憶を克明にたどり、紙に書き込んでいくという地道な作業が続きます。

職務経歴書が出来上がったとき、Sさんの心はしっかりと整理されていました。
その職務経歴書には、夢に向かって最大限の努力をしてきたSさんの、いきいきとした就職活動の記録がつづられていました。

Sさんはその記録を確かめながら、こう言いました。
「自分はいつも全力でがんばってきた。ここまでやりきったのだから、もう悔いはない」
Sさんの口から、明確な自己肯定の言葉があふれます。

このような心境の変化があったあと、スタッフがマッチングしたある企業の求人をSさんに紹介しました。それは教育とは無関係な仕事でしたが、迷いのふっきれたSさんは応募をすることにしました。ただし、教師以外の仕事の求人に積極的にチャレンジするのは初めてということもあり、LITALICOワークスからの「卒業」をためらう気持ちもあったようです。

企業担当者からも「慣れることから徐々にステップアップしてくれればいい」という温かいお言葉をいただき、LITALICOワークスの就労移行支援事業所に所属しながら仕事を始める「トライアル雇用」を行うことになりました。

こうしてSさんは慎重に新しい仕事をスタートさせ、順調に新しい職場や仕事に慣れた後、見事正式に採用。そして職場に定着することができ、現在も働き続けています。

今も時々、Sさんは休日を利用してLITALICOワークスの茶話会や同窓会に参加しています。
「教師になるという夢は叶わなかったけれど、今の仕事にはとてもやりがいを感じています。働くことができるというだけで、とても充実した毎日です」
自身の経験を利用者の皆さんに話されるSさんは明るい笑顔でした。

※同窓会:OBの方がプログラム内容やメニューを企画から考えて開催する会
※茶話会:月1回、定期的に開催している利用者さんやOBの方が集まってお話しする会
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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