アスペルガー症候群(発達障害)の仕事・就職事例 -小売・営業-
自分にはまる仕事との出会い、特性が魅力に!
女性/50代/営業/小売業
アスペルガー症候群(発達障害)
悪気はないのにうまくいかない人間関係
主婦であるTさんは家計を少しでも支えるためにと、これまでに多岐にわたる仕事のパートをしてきましたが、どれも仕事は長続きはせず、短期間で離職を繰り返していました。
Tさんはとても明るくて社交的な性格です。しかし、悪気なく発した一言がその職場の雰囲気を悪くしたり、意図せずに失礼なことを言ってしまい相手を怒らせてしまったりすることが数多くあったそうです。
そのような自分の性格に悩んでいたTさんは、テレビ番組で発達障害(アスペルガー症候群)のことを知ります。症状の特徴的な項目が、自分の悩みに当てはまり、「これは自分のことではないか?」という疑念から地域の発達障害者支援センターに相談し、心療内科に通院したところ、広汎性発達障害と診断されました。
広汎性発達障害とは、社会性に関連する領域にみられる発達障害の総称で、自閉症・アスペルガー症候群・トゥーレット症候群・小児期崩壊性障害などが含まれています。主な特徴として、社会性の発達・コミュニケーション能力に障害があり、強いこだわりや、感覚が過敏であることが挙げられます。仕事探しに行き詰っていたTさんは、発達障害者支援センターに相談した時に紹介された、LITALICOワークスの就労支援を利用することを決意しました。
自分の自信を取り戻したTさん
就労支援を利用し始めてからは、東京と神奈川を中心に積極的に就職活動をおこないました。利用しはじめたばかりのときは、自分の言動などで人を不快にさせたり傷つけたりすることを恐れていましたが、同じ悩みを持つ仲間と話をしたり、自分の抱えている症状について理解することで、Tさんの明るくて社交的な性格が戻ってきました。
すっかり自分に自信を取り戻したTさんは、それから大量の求人票を持って通い続け、応募書類の添削や模擬面接などをノンストップでおこないました。常に全力投球で取り組む姿は、周りの人に活力を与えていました。そうした甲斐もあり、一般枠求人で営業の仕事に採用が決定しました。
営業職の仕事は、一般的に発達障害を持つ人には不向きといわれる職種です。
しかしTさんは「自分の特性を知ったうえで選んだ仕事なので大丈夫です。訪問営業なので、押しが強いくらいでちょうどいいと職場の人にも言われました」と、ひるむ様子が見られません。決意がみなぎるその表情は、誰から見ても確かに信頼できるものでした。
就職して仕事ができる、それが自信へと繋がった
Tさんが就職して仕事が始まったあとも、私たちは職場定着へのサポートをおこないました。週に1度、Tさんからお話を伺うことを3ヶ月ほど続けました。最初はお客様のあいまいな断り方から意味が汲み取れなかったり、道に迷ったりと苦労も少なくなかったようです。仕事を始めて6ヶ月経ったときに「ギリギリの状態ですが、6ヶ月続いたのは初めての経験です! 訪問営業は空気が読めないくらいじゃないと務まりませんよ!」と自信満々に語るその姿は、私たちが初めて会ったときとはまるで別人のようでした。
職場に定着することができたTさん。仕事に対する感想を尋ねてみると「広汎性発達障害と診断された時はショックもありましたが、いまはこうして働けていることにとても感謝しています。しっかりと働いてお金がもらえることで気分も経済的にも安定しますしね」と、周りの人と同じように、社会に出て仕事ができているというよろこびを心から感じているようでした。
収入が安定して入ってくることで心に余裕ができ、休日には旦那さんと映画を観たり、美味しいものを食べ歩いたりなど、出かけることも多くなったと嬉しそうに話していました。
※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。