双極性障害(躁うつ病、精神障害)の仕事・就職事例 -事務-
「自分に正直に生きる」就職先の障害理解
男性/40代/運輸/事務職
双極性障害(躁うつ病)(精神障害)
周りの目が気になって、無理が続いた日々の末に
40代で働き盛りのYさんは、これまで大手企業の人事や総務事務の経験が10年以上というベテランのビジネスマンでした。 前職では保険会社の総務で朝から晩まで休みなく働いていたそうです。働くことは好きでしたが、10年以上の間に溜まった疲労やストレスがいつの間にかYさんを蝕んでいきました。
どうしても仕事へのやる気が出ない、そればかりか怒りっぽくなってしまって周りに迷惑をかけている、そう思い悩んでいたとき、会社から病院への受診を指示されました。
病院へ診察に行ったところ、Yさんは「双極Ⅱ型障害」と診断されました。双極性障害 は一般的に「躁うつ病」といわれています。また双極性障害は「双極Ⅰ型障害」と「双極Ⅱ型障害」に分けられます。Yさんの診断された「双極Ⅱ型障害」はI 型の躁状態に比べて軽躁状態といわれ、症状が軽く社会的な問題も少ないとされています。しかし、Ⅱ型はⅠ型に比べてコントロールしにくく、うつ状態を再発しやすいといわれています。
Yさんは休職をしリハビリ後に復帰しましたが、周囲に双極性障害(躁うつ病)のことを伏せていたこともあって周りの目を必要以上に感じてしまい、結局退職することとなりました。
このことから、「次は障害を開示して就職する」と決意したYさん。しかし障害を開示して就職するためには、自分自身がもっとこの双極性障害について正しく知ること、そしてこの障害に対して理解のある職場を探したり橋渡しをしたりしてくれる第三者的な就労支援が必要だと考え、LITALICOワークスの利用を決めました。
就労支援の開始
優しく穏やかで誰からも好かれるYさんでしたが、就職へのハードルは高く、不採用の日々が続きます。それでも自分が落ち込んでいては、周りの利用者さんの気分を害してしまうと、常に明るく気丈に振舞っていました。
そんな日々が続いていた頃、スタッフが神奈川県にある特例子会社に訪問した際にYさんについてお話ししました。するとその会社の人事課長さんから「ぜひお会いしたい」と言われ、会うことになりました。
面接のときに「想像していた通りの人ですね。ぜひ一緒に仕事をしたいです」と言われました。その企業で雇用前実習をおこないました。実習は問題なく対応、給与面での調整などもスムーズに進み、総務課で就職することになりました。
双極性障害(躁うつ病)の理解へ積極的な就職先
Yさんの就職先では、採用担当者だけではなく、同じ部署の方たちにも双極性障害についての研修を実施して、理解を深めてもらうことができました。
また、Yさんの状態が徐々に安定してくると、もともと真面目な性格で謙虚なうえに業務スキルも高い方でしたので、すぐに周囲に溶け込むことができました。
就職後しばらく経った後、会社の人から話を聞いても、周りからの信頼も厚く、職場に馴染むのにも時間はかからなかったそうです。最初に声をかけてくれた人事課長からも「本当にいい人材で、ウチに来てくれてみんな助かっています」と、 LITALICOワークスへわざわざ電話をして感謝を伝えてくれました。
就職後の定期面談の際に、周りの人と上手くいくコツとしてYさんはこう話してくれました。
「気分が沈みそうなときは無理をしない。これは簡単なようでも、周りの目を気にしすぎると意外にそれができない。前職での自分がそうでした。ちゃんと話をしたら周りの人は分かってくれます。周りの人と上手くいくためのコツは正直に生きることです。これは自分自身に対してはもちろんのこと、周りに対しても自分を抑えすぎずに、自己開示することだと僕は思います」
Yさんは今でも周りからの信頼厚く、働き続けています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。