ADHD・自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 －洗車・事務補佐－

実習をきっかけに、仕事への自信と興味を抱く

発達障害のあるAさんは、高校を卒業後すぐに、LITALICOワークスの利用を開始しました。コミュニケーションでの苦手意識が強く、丁寧にしようと思うあまり、誰に対しても敬語を使ってしまい、上手に仲良くなれないという悩みを持ちつつも、欠勤も少なく勤怠は安定していました。また、カリキュラムも自分で決めたものを途中で投げ出すことなく、黙々と進めることが得意な方でした。

就職活動で応募する企業については、ご家族の「事務職に就職してほしい」という希望が強く、Aさん自身も事務職を中心に就職活動を実施していました。最初は自分に向いているかどうかもわからず、事務職だけを希望していたAさんでしたが、なかなか納得して応募できる仕事に出会えずにいました。

ある日、スタッフからの紹介で、Aさんはバスの洗車実習へ参加することになりました。清掃業務という仕事に最初まったく興味のなかったAさんですが、実習を進める中でバスの洗車や清掃といった業務にやりがいを感じ、「事務職だけを見ていたが、清掃業務やほかの職業も見てみたい」という希望が生まれました。

こうしてAさんは、清掃業務に対して自信を持つようになり、事務職だけでなく清掃などの求人も幅広く探しはじめました。職種を広げて求人を検索している中で、Aさんは気になる会社を見つけました。

ハローワークへの定期的な情報提供が、雇用前実習の後押しに

LITALICOワークスでは、ハローワークとも連携しています。定期的に訪問し、お互いの情報交換をおこない、一緒に就職活動の支援ができるようアプローチを重ねていたのです。

そんなある日、LITALICOワークスのスタッフはAさんが応募を希望した清掃会社の求人について、ハローワークに相談を持ち掛けました。するとハローワークの担当者も、「本人のやる気も十分のようですし、まずは相談してみましょう」と、企業の担当者へ2週間の雇用前実習を打診してくれました。

さらに、ハローワークの担当者はAさんの面接にも同行し、LITALICOワークスの説明や就労・生活支援センターとの役割の違いなどを、丁寧に企業担当者に伝えてくれました。こうしたハローワークの後押しもあり、Aさんは晴れて雇用前実習に進むことができました。

雇用前実習先でAさんの業務レクチャーをしてくれた先輩も、自身が発達障害があることを打ち明けてくれたこともあり、これまでの体験談を聞いたり、会社でのアドバイスをもらったりと積極的に交流することができたそうです。先輩社員のサポートもあり、Aさんはいきいきと働き、大きなトラブルもなく無事に雇用前実習を終えることができました。

先輩のいる職場に就職、安心した就労を支援

雇用前実習を終えたAさんは、スタッフから感想を尋ねられると、「実は……雇用前実習の最初は、行くのが少し怖かったんです」と話してくれました。

「自分は障害のこともあるし、うまく仕事ができなくて、ずっと怒られながら働いていくのかなって。正直に言うと、実習がはじまる前は不安で仕方ありませんでした。でも、実際に自分と同じ発達障害のある先輩が働いていて、実習中の安心感はとても大きかったです」。

Aさんは最後に「雇用前実習に行けてよかったです」と、柔らかな表情で話してくれました。

企業の採用担当者からは、Aさんの働きぶりについて「何事にも一生懸命で、非常にいい」という評価と、採用決定の連絡がありました。さらに、指導にあたった先輩社員が「少しの間とはいえ後輩社員ができて、自分がしっかりしないといけないと、業務に取り組む気持ちが変わった」と話すなど、Aさんの雇用前実習が、いい影響をもたらしたそうです。「今後、Aさんの他にもう一人採用することも考えていきたい」といううれしい言葉もあるほどでした。

「先輩とまた、一緒に働くことができてうれしいです」と、スタッフと顔を合わせるたびにうれしそうな笑顔を見せてくれるAさん。現在は、Aさん本人とLITALICOワークスのスタッフ、ハローワークの担当者で、定着支援をおこなっています。