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障害のある方の就職事例

自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 -事務-

自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 -事務-

自閉症スペクトラム障害の理解ある職場で働く

女性/20代/小売業/事務職

自閉症スペクトラム障害(発達障害)

将来のことを考え、就職の道へ

自閉症スペクトラム障害のあるRさん。特別支援学校を卒業後、就労継続支援B型事業所を数年間利用していました。しかし母親はRさんの将来を心配していろいろと調べたり、ハローワークに相談に行ったりしてRさんの就職について模索していました。

近くにLITALICOワークスがあることを知り、母親だけで相談することに。就労移行支援事業所とは?から説明を受け、「一般企業への就職を目指す障害のある方の就職を支援する所」「就職後も安定して働き続けられるように定着支援サービス」があること、「一人ひとりに合った支援をすること」……全てにおいて母親の理想を超えたサービスだと分かると、次回Rさんを連れて再度見学へ。

後日、LITALICOワークスへ具体的な相談をするために訪れたRさん親子。スタッフと母親が話している中、Rさんは話しかけられるとしばらく沈黙し、一言二言を回答……Rさんが何を思っているのかをスタッフは推測しながらゆっくりと話を進めました。

パソコン操作が得意であることが分かると、「パソコン操作のある仕事に興味があるか」の質問に、Rさんは大きく首を縦に振りました。そこで、未経験で事務職に就いている利用者もたくさんいることを説明しました。スタッフの対応や事業所内の雰囲気が気に入り「まずは通い続けられるか体験をしてから判断したい」というRさん親子の意向を汲み、利用前に体験をすることにしました。

「不調=休む」? 選択枠を広げる努力

LITALICOワークスでは、実際に提供されているプログラムの中から興味のあるプログラムを体験してから、利用を検討することができます。Rさんは、数あるプログラムの中から、「ビジネスマナー」「自己理解」「コミュニケーション」の3つのプログラムを他の利用者と一緒に受けました。

個人で取り組めるワークは一生懸命取り組んでいましたが、グループワークになるとみんなの様子を見ているばかりで発言ができないRさん。プログラム終了後にRさんに感想を聞くと、「LTIALICOワークスに通ってみたいけれど、グループワークはどうすればいいか分からなかった」とのことでした。スタッフはRさんに「グループワークは、はじめのうちは見学するだけでも大丈夫。慣れてきたら、少しずつ発言してもらえればいい」と伝え、Rさんはその言葉で通うことに決めました。

LITALICOワークスの利用をはじめたRさん。社会人経験がないため、SST(ソーシャルスキル・トレーニング)やビジネスマナーを中心に、興味のあるプログラムに参加し、得意なパソコンのトレーニングに励んでいました。しかし、数週間後、母親からスタッフに「微熱があるようなので、今日は休みたい」と連絡がありました。Rさんの様子をよくよく聞いてみると、Rさんは学生の頃から少しでも体調が悪いと休むという選択肢しかなかったとのこと。今も寝込んでいるわけでも具合が悪そうな雰囲気ではないと、母親も困った様子……そこで次の日にRさんに少し体調が悪いときは、体調がよくなった時点から通うことも可能と伝えました。

その後、数回同じようなことがありましたが、スタッフは都度言い方を変えて伝えるうちに、Rさんに変化が生まれました。朝起きた時に、少し体調が悪かったRさんが「午後から行ってもいいですか?」と自ら連絡をしてきました。電話を受けたスタッフはRさんの成長を喜びました。そうして徐々に勤怠の問題がクリアになり、パソコンスキルも着々とアップしていきました。

企業インターンで苦手とこだわりに向き合う

母親が1番心配していたのは他者とのコミュニケーションでした。Rさんはグループワークでぽつぽつと発言することはできるようになりましたが、自分から質問することは難しく、休憩時間などに他の利用者へ自ら話しかけることはありませんでした。しかし、問いかけられるとゆっくり回答するRさん。そんなRさんをみんなは妹のように接しました。いつの間にか、Rさんの周りはほのぼのした雰囲気が漂い、事業所の癒しになっていました。

しかし、1度考えたことを変えることが難しいRさんは、想定外の出来事が起こるとパニックになってしまう障害の特性が出ることがしばしばありました。Rさんと関わりが多いスタッフは、アイコンタクトで何を思っているか理解できましたが、関わりが少ないスタッフとはなかなかコミュニケーションが取れず泣いてしまったり、他の利用者が冗談で言ったことを真に受けて傷ついてしまったりすることがありました。

事業所以外の場所で他者とコミュニケーションをしてみること、ビジネスマナーなど学びを実践すること、実践を通して働くイメージを見つけることを目的に、企業インターンへの参加をRさんに提案しました。

Rさんは快諾して、インターン先を探すことに。コミュニケーション力に不安があるので、事務職でなく大手特例子会社で部品の組み立てを体験してみることにしました。5日間休むことなく、業務もきっちりこなし報連相もできていたとの評価を得ましたが、Rさんは「働くならパソコンを使った仕事でないと」と納得がいかない様子。

次に事務職のインターン先を探し、10日間、大手特例子会社の総務部で事務職を経験することにしました。企業の評価は、コミュニケーションが必要とされない時は問題ありませんでしたが、社内で他部署とのやり取りなどの業務で意思疎通が難しいとのことでした。

事務業務への強い憧れはあれど、総務部はいろいろな方とのやり取りがあってRさんには厳しいものでした。他の事務職でも、「Rさんは発言するまでに時間がかかるので聞き手の汲み取る力が必要」「Rさんのペースを尊重してもらう」などの配慮が必要とわかりました。

一丸となって支援する・見守る就職活動

企業インターンを終え、就職活動を進めるRさん。苦手なコミュニケーション対策に、面接の練習を何度もおこないました。質問されたことに対してゆっくりですが、ひとつひとつていねいに受け答えができるようになってきました。

就労移行支援事業所の利用期間は2年間です。Rさんの利用期間が残り3ヶ月と迫っていた頃、スタッフはRさんに合う求人がないか、福祉関係機関各所に何度も働きかけていました。その中でRさんにフィットしそうな仕事が見つかりました。

「インターネット通販の会社で事務アシスタント」の求人です。数ヶ所に拠点を構えているため、1拠点内の従業員数は15名程度とのことでした。Rさんは2社企業インターンに参加しましたが、2社とも従業員500名以上の大手企業。「コミュニケーションが最大の課題であるRさんには、小規模の職場で働く方が向いているのでは?」と判断したスタッフはRさんにこの企業の求人を説明しました。

Rさんは「受けたい」と即答。さっそく企業へ応募書類を送ると、面接の前にトライアルで働いている所を見てみたいと企業担当者から連絡がきました。Rさんは、職場が自宅から近いこと、業務内容が事務職であることから、喜んでトライアルを受けることを承諾しました。企業と調整し、2ヶ月トライアル期間を設定しました。前日まで、再度「働くこと」についてスタッフと報連相や敬語の確認などをおこない、トライアル雇用に挑戦。

母親から心配だという連絡を受けましたが「Rさんの可能性を信じましょう」と伝えました。Rさん自身が嬉しそうにしている姿を見て、「心配だけれど、見守ります」という前向きな発言に変わったことにスタッフは安心しました。

初日はスタッフが同行し、途中まで様子を見ていました。企業担当の方にゆっくり教えていただいている姿を見て、大丈夫そうかなと思っていたスタッフ。業務終了後は、緊張からか1日を振り返ってみても覚えていないほど疲れ切っていたRさん。「明日、大丈夫?」とスタッフは心配するも、へとへとながらも意気込んで「せっかくのチャンスを逃したくないから、頑張ります」と言ってくれたので、引き続き見守ることにしました。

翌日、業務終了後に「昨日ほど疲れませんでした。報告するためにきました!」とLITALICOワークスに寄ってくれました。これまで何事も受け身が多かったのですが、自発的に行動したRさんを見て、自主性が生まれていることに感動しました。仕事の話を聞くと、企業担当の方が、Rさんの障害特性をよく理解されていることも分かりました。

トライアル2ヶ月間が終わり、最終面接に挑んだRさん。面接終了後に「大丈夫だと思う」とにこにこしていて、スタッフも一安心していたところに、採用の連絡がきました。Rさんは「就職できた」と今までにないほどの笑顔で採用を受けることに。

課題に向き合いながら長く働く

LITALICOワークス最終日に、母親も最後に来て「まさか本当に就職できると思っていなかった。心配もあるけれどうれしさの方が大きいです」と涙ながらに話し、しんみりモードになったのも束の間。他の利用者からサプライズで祝福モードに変わりました。Rさんも喜びの涙を流し、最後に「これからも頑張ります」と、最終日を終えました。

LITALICOワークスは、就職後も職場への定着サポートに取り組みます。Rさんが就職後、スタッフが職場に連絡すると、「今のところ順調です」とRさんは言いますが、企業担当の方からは相談事が上がりました。「イレギュラー対応は難しい様子・質問する相手が不在の時に業務が止まってしまう」とのこと。Rさんが自覚していない所に課題がありました。

さっそくスタッフは職場へ出向き、まずは企業担当の方と話をして、「業務を固定し、イレギュラーをなるべくなくす」「質問する相手を1名でなく、3名にして予め順番をつけておく」というルールを決めました。その後Rさんを交えて3者面談をし、その旨を伝えました。

就職から3ヶ月目、企業担当の方から「お願いしたことはきっちりやってくれるので助かる」との評価が! その後も定着支援の面談で、仕事でうれしかったこと・褒められたこと・困ったことなどを逐一報告してくれるようになりました。家では「これからも課題や困りごとは出てくると思うけど、定着支援を利用して長く働き続けられるように頑張りたい」と母親と話しているそうです。

最近の面談では、「趣味の電車撮影のために、お給料を貯めてカメラを買いたい」と嬉しそうに話してくれました。

※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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