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障害のある方の就職事例

ADHD・自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 -棚卸し-

ADHD・自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 -棚卸し-

就労移行支援を2度利用して獲得した、念願の初就職

男性/20代/食品/棚卸し

ADHD・自閉症スペクトラム障害(発達障害)

理解ある職場で楽しく働く

真面目な性格で作業スキルの高いHさん。現在勤めている職場の方に話を聞くと「仕事も早く業務に問題はない」と周りからの信頼も厚く好評。職場では合理的配慮に基づいたフォローがきめ細かく、同じ職場の先輩たちは新人であるHさんをとても可愛がってくれ、すぐに周囲に溶け込むことができたそうです。

「今はすごく将来に向けて前向き。でも、障害者なんてこの世からいなくなればいいのにと思ったこともありました」

幼い頃から障害と向き合ってきたHさん。今でこそ職場の方々と和やかに話すHさんですが、人付き合いがとても苦手な性格で、就職するまでに就労移行支援を2度利用した経験があります。

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姉弟で同じ障害に

3歳時検診にて言葉の遅れや感覚過敏、落ち着きがないといった兆候を指摘され、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」と「自閉症スペクトラム障害(発達障害)」と診断されました。
Hさんの姉も障害者手帳を取得しており、姉弟で小学校より支援教室に通っていたそうです。

とりわけ小学校の頃から友だち付き合いが苦手で、なかなか集団の輪に馴染めなかったHさん。特に「コミュニケーションがうまく取れない」「学習内容と関係ないことを授業中に話し出す」「忘れ物や無くしものをよくする」「集中力が維持できずにソワソワしている」といった悩みが多かったと言います。
学校での休み時間は友だちと遊ぶことも少なく、花が大好きだったHさんは校庭の花壇の前で植物や虫を観察するなど1人で過ごすことが日課になっていました。

母親は障害に対してとても熱心に勉強し、全国自閉症協会に入会するなど、障害の子どもをもつ親として何ができるか、懸命に調べ考えてきたそうです。
ただ、「1人で生きていくために」という母親の切実な想いとは裏腹に、Hさんにはその想いが時に厳しく感じられプレッシャーという重荷がのしかかりました。

大学と併用しながら通う

大学生になっても同級生と関わることが少なく、うまくいかないことは更に増えました。
「自分の気持ちをうまく伝えられない」「思ったことをすぐに口にしてしまう」「授業に集中できず、すぐスマホを見てしまう」などの失敗体験が続き、自分はダメな人間なんだと自己肯定感はどんどん下がってしまいました。

心配した母親は大学を卒業したらすぐにでも就職できるように支援してもらいたい、と大学のキャリアセンターへ相談するよう促し、Hさんはキャリアセンターの先生からLITALICOワークスを紹介してもらいました。Hさんはそのことを母親に相談し、一緒に見学へ。そのままLITALICOワークスを利用することになりました。

はじめは週2回のペースで大学と併用しながら通っていたHさんですが、大学とLITALICOワークスとの距離が離れていて通うのに時間がかかることや、卒業単位が危ういという課題がのしかかり、やる気がなく投げやりな態度を取ったり、スタッフが話しかけてもスマホをいじりながら上の空だったり……次第に疲れが溜まり、LITALICOワークスをたびたび休むようになりました。
また大学では、思ったように卒論が進まず、母親から「そもそも卒論が提出できないと卒業できないし、就職もできないじゃない」と呆れられる始末。

利用して半年ほど経った頃です。学校とLITALICOワークスと母親と連携して、HさんはいったんLITALICOワークスの利用を止め、大学に専念した方がいいという判断に至りました。その後Hさんは卒論を書き上げ、無事に卒業の目処が立ったところで再度LITALICOワークスを利用したいと市役所に相談。快く承諾が得られたため、再度利用することになりました。

次々と同級生が就職 「このままではいけない」

LITALICOワークスの利用を再開したHさんは、相変わらず他の利用者との関わりを持とうとしません。最低限スタッフからの質問には応じるものの、いつもフロアの隅で1人座っている日々が続きました。

しかし、大学の同級生が次々と就職していく姿を見て、Hさんも焦りが出たのか「このままではいけない、早く就職したい」という前向きな気持ちが芽生え、積極的にプログラムに参加するようになりました。

日々の生活や就職に役立つLITALICOワークスのプログラムは200点以上あります。学生ということもあり、まずは社会人としての立ち振る舞いを重点的に学ぶための「ビジネスマナープログラム」に参加。

基礎的な礼儀やあいさつはもちろん、服装や髪型に独特の世界観をもっていたHさんには身だしなみのチェック表を作成し、朝の日課として鏡の前で服装をチェックする習慣をつけたり、時間厳守で行動できるようにプログラムや作業内容などをスケジュール表にまとめたりして、仕事に必要なビジネスマナーやコミュニケーション方法などを身につけるプログラムを進めていきました。

イライラすると、過去の失敗体験のフラッシュバックから髪をかきむしって攻撃的な態度を見せることもしばしばあったHさん。スタッフは、失敗時の自信喪失が続かないように「失敗してもしっかり反省すれば大丈夫」とフォローやフィードバックを徹底したと言います。

さらに、「コミュニケーションプログラム」や「ストレスマネジメントプログラム」なども多めに設定され、人との程よい距離を保つ方法や、ストレスや気分の落ち込みの対処法をメインとしたプログラムにも懸命に取り組みました。

しばらくすると、Hさんの身だしなみも整えられ、スタッフ・利用者との距離感も少しずつ縮まっていきました。

全力投球で挑んだ就職活動

LITALICOワークスでは、企業インターンで職場体験する実習に取り組んでいます。「どんな職種や仕事・働き方が自分に合うか」をイメージするために、数社で体験実習をすることができます。

Hさんは、小さい頃から花や植物などに興味があり、大学時代の卒論テーマは植物の生態系でした。そのため兼ねてから興味のあった農産業の仕事を希望しました。実際に現場に行ってみると違和感を覚え、「好き」と「仕事」は必ずしも一致しないことに気が付きました。

他にも事務職や接客の実習に行きました。そこで分かったことは「パソコンなどの事務系は合わない、体を動かす作業系の方が向いている」ということ。それに気づいてからは猛スピードで作業系の求人を探し、合同面接会などにも多数参加。その結果15社以上の企業から面接のオファーがきました。

はじめての面接対策に、LITALICOワークスの面接プログラムを入念に受講しました。「大学時代に何の勉強をしていたか」「なぜこの会社を選んだのか」など事前に定形フォーマットを準備。自己分析もできていたため、面接本番では用意していた回答を含めスラスラと言葉にすることができ、計5社から正式に内定が出ました。

Hさんは「苦労がやっと報われてよかった……」とLITALICOワークス最終日に安堵した表情で語ってくれました。

ワンランク上の働き方を

最近はすっかり仕事にも慣れて、責任のある仕事を任されるようになりました。
「今の仕事を継続して、より自立した日常を送りたい」「1人暮らしをしてみたい」「勤務時間を伸ばして雇用形態を変えたいと思っている」と、現状に甘えることなく向上心をもって楽しく働いている様子。社会人の自覚を持ち、余裕や自信が見られます。

※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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