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障害のある方の就職事例

高次脳機能障害(精神障害)の仕事・就職事例 -事務-

高次脳機能障害(精神障害)の仕事・就職事例 -事務-

就職して早く安定したい

男性/30代/医療/事務

高次脳機能障害(精神障害)

30代、突然の事故

大学卒業後、大手企業のエンジニアとして働いていたSさん。30代になり管理職を目指そうとしていた矢先、趣味のバイクで転倒事故を起こして緊急搬送された病院で脳挫傷・高次脳機能障害と診断されました。

入院とリハビリセンターを経て、リハビリセンター近くのオフィスへ異動・復職しました。配慮してもらっていたものの、今までと同じように働くことが難しく産業医と相談の上、退職したそうです。

ソーシャルワーカーに今後のことを相談した所、就労移行支援事業所の利用を勧められましたが、なかなか現状を受け入れることができずに就職活動をしようとしました。しかし何から手を付ければいいかわからず、時だけが過ぎて1年……

当時付き合っていたパートナーの収入が高く養ってもらっていましたが、このままずっと頼り続けることが心苦しくなりLITALICOワークスへ相談に。スタッフに現状を話して「頭が動かなくて事故前のようにうまくいかないけれど、早く働いてパートナーの負担を減らしたい」と就職にとても焦っていました。

スタッフは日常生活や就職に役立つトレーニングやプログラム、企業見学や企業インターンなど何ができるか試すチャンスもあることを伝え、少しブランクがあるため週3日からの利用を勧めました。

Sさんは「最初から週5日通える」とソーシャルワーカーに伝えましたがいきなり週5日より徐々に日数を増やしていく方がいいと言われ、渋々週3日から通うことに決めました。

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高次脳機能障害を理解する

Sさんには、高次脳機能障害の症状の1つである記憶障害があります。メモを取ることはリハビリ時からやっていたとのことでしたが、何でもメモを取り、またノートへランダムに書いていたのでどこに何を書いたか分からなくなってしまったり、書いてあることが読めなかったりすることがたびたびありました。

1ページ目から順に使うことと急いでメモを取らないことを決め、スタッフはメモの進捗具合を見ながらゆっくり話をすることを約束しました。また、書いたこともを忘れてしまうことがあるので、「さっきメモを取っていたよ」とスタッフは都度伝えていまいた。

トレーニングやプログラムに過集中して疲れてしまうことはありましたが、2ヶ月目からLITALICOワークスへ通う頻度を週4日、3ヶ月目から週5日と順調に増やすことができました。

ある日の朝、落ち込んでいる様子のSさん。スタッフが声をかけると朝からパートナーを怒らせてしまったそうで詳しく話を聞くと「感情的になることがたびたびあり、今日はパートナーの仕事に口を出して怒鳴ってしまった」とのことでした。

相手に上手に伝える方法や断り方などを重点的に身に付けるために、コミュニケーションプログラムや個別SST(ソーシャルスキルトレーニング)に取り組みました。自分の感情をコントロールしたり、ぶっきらぼうに話したりしないようにトレーニングをおこないました。

Sさんは自身の障害である高次脳機能障害についての理解が不十分であるとスタッフは判断しました。自己理解を深め、それを他者に説明できるようにするため、Sさんとスタッフ二人三脚で障害に関する説明書を作成しました。

緊張すると頭が真っ白に

個別トレーニングをおこなう内に、マルチタスクは難しいけれど1つのことに集中して取り組むことは得意であることが分かりました。また、自身の働くイメージがつくようにもなりました。

すると「早く就職したい」という感情がこみあげてきて、まだ早いと思っていたハローワーク主催の合同企業面談会に参加したいとの申し出がありました。スタッフも少し早いのでは……と思いながらも、応募書類の作成や模擬面接は進んでいたため、「チャレンジしてみましょう」と賛同しました。

合同企業面談会に参加する企業の事務職すべてに応募すると意気込むSさん。時間が限られているため、いくつかに絞り込むことを提案すると「就職できればどこでもいい」と譲りません。

Sさんに合う仕事・職場でないと、就職しても長く働くことは難しいのではないかと説明しました。「どうしても焦っちゃうけれど、焦って就職してもすぐ辞めたら意味ない」と自分を説得させるようにスタッフへ伝え、焦る心を静めていました。

3社回ることにして当日を迎えました。たくさんの人がいて企業担当者を目に前にすると、緊張から頭が真っ白になってしまいました。3社目には疲れ切っていて、メモを取ることすら忘れてしまったとうなだれるSさんに、スタッフは「実際の企業担当者を前にすると、どう思うか分かっただけでも収穫」と声をかけました。

急に舞い込んだ求人

先日3社受けた合同企業面談会の結果は、1次書類審査が通らず2次面接へ進むことはできませんでした。しかし落ち込んでいる暇はないと前を向くSさん。そんなSさんに心打たれたスタッフは人材紹介会社の方に協力を仰ぎ模擬面接をお願いしました。

模擬面接で激しく緊張したSさんは「高次脳機能障害で記憶の部分に不安があるため書類を見て話をする」という前置きを忘れてしまいました。その失敗を教訓として、その後も何度か練習するうちに、やるべきことを忘れたり話す内容が飛んだりすることはなくなりました。

ある日Sさんが企業インターンに参加することを決めて企業一覧を見ていた所、他の利用者が病院の事務職で内定が出たという話題が上がりました。みんなでお祝いモードになっている所にもう1名採用したいとの連絡がありました。

仕事内容を見ると、健康診断のカルテを並び変えてスキャン、データ入力。Sさんはルーティンワークが得意だったので、「企業インターンに行ってみてはどうか」と提案すると即答のSさん。

企業担当者に「まずは企業見学を兼ねて働いている所を見て欲しい」と連絡、企業訪問となりました。内定をもらった利用者から前もって雰囲気を聞いていたため、少しの緊張だけで業務を体験できました。

3日間体験後に採用面接がおこなわれました。面接官は実際に業務をおこなっていた時に指示をしていた方だったため、終始穏やかなムードで終了しました。Sさんも同席したスタッフも手ごたえを感じ、結果を待つことに。数日後、内定の連絡が来ました。予定より早く就職できたことに喜びをかみしめていました。

恵まれた環境で仕事

就職するまで半月ほどあったため、生活リズムを崩さぬようSさんは週5日LITALICOワークスへ通いました。タイピング練習を毎日おこない、準備万端で病院での仕事初日を迎えました。

「早く就職したい」とLITALICOワークスに来てから1年以内での就職。パートナーがお祝いしてくれたと嬉しそうに語っていました。初日の終わりに「上司の方が気さくで仕事をしやすい環境だと思う。明日からも頑張ります」とスタッフに連絡をくれました。

順調に仕事をしていると聞いていた矢先にSさんから「ミスをしてしまって以来、不安と焦りで仕事がうまく進まない」との連絡がありました。Sさんと上司から別々に詳細を聞くと、上司曰く「不安や焦りが簡単なミスを招いている様子」。スタッフは対策を考え、Sさんに「机にメモ貼って迷ったらここを見る」という工夫を提案しました。

すると次の日から仕事がはかどるようになったと連絡があり、事なきを得ました。その後、上司から「単調な仕事ばかりと思うかもしれないけど、あなたがいるから仕事が回っている」と言われ、俄然やる気が出たと報告してくれました。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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