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障害のある方の就職事例

パーソナリティ障害・双極性障害(精神障害)の仕事・就職事例 -事務-

パーソナリティ障害・双極性障害(精神障害)の仕事・就職事例 -事務-

感情の起伏を何とかして働きたい

男性/30代/スポーツ用品/事務職

パーソナリティ障害・双極性障害(精神障害)

父への嫌悪 増える診断名

子どもの頃から父親と遊んだ記憶がなく、ほとんど家にいないことに不信感を募らせていたNさん。自分の父親のようにはなりたくないとずっと思ってきたとのこと。

高校卒業後、浪人をして大学受験を目指しましたが、勉強を続けていくうちに何のために大学受験をするのかわからなくなった時に普段何も言わない父親が反対して大げんかになり、以降結婚した現在でも一言も口をきいていないそうです。

NさんがLITALICOワークスへ見学に来た時、アルバイトを転々とした後に就職した小規模のインターネット通販会社を退職したばかりでした。前職でパニック障害になったり休職中にうつになったりして自分が嫌になり自傷行為を繰り返していました。

「可愛くて仕方がない子どもが2歳になりこんな自分を見せるわけにはいかない」「何とかして働きたいと思っている」と素直な気持ちを打ち明けてくれました。

第一印象は清潔感のあるさわやかなスポーツマンタイプの好青年。自分の障害名に納得がいかずクリニックや病院を転々とし、最終的に「境界性パーソナリティー障害(BPD)」と「双極性障害」落ち着いたと話すNさんからは、納得のいかないことは突き詰めてしまう所も見受けられました。

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気を引くための試し行動

境界性パーソナリティ障害(BPD)の特徴の1つに自傷行為があります。対象の愛情を試すために自身を傷つける行為をおこないます。

Nさんは自傷行為が多い理由について、とても愛妻家なのですが奥さんの愛情を試すことがどうしてもやめられず、勤務中の奥さんに連絡をして返答がないと自傷行為→奥さんが耐えられず実家に帰る→謝って仲直り、を繰り返していると話してくれました。

自傷行為は人に危害を加えることはなく、壁や家具などの物に当たり、時には壊してしまうほど。Nさんの場合、基本的に自宅が多いとのことでしたが万が一を備え、スタッフは事業所内で自傷行為をしたら救急車を呼ぶと伝えておきました。

他の利用者にもわかってしまう所に傷を作らないようお願いをすると、洋服で隠れている場所に傷つけるように変更したり傷を見せるのはスタッフのみにしたり、お願いしたことは聞き入れてくれました。

利用するうちに治療上・衛生上・就職する上でもその気の引き方は適切でないことを分かってもらえるよう、自身の障害理解や辛いときどう自分を対処するかなどに重きをおいて支援していきました。

次第に傷を負う頻度は少なくなっていきましたが、小さな出来事を大きくとらえてしまったり、日々の振り返りでトレーニング内容のことは話さずスタッフの気を引くような試し行動や言動をしてしまったりしてしまいました。働く上で必要なこととプライベートを切り分けていくように支援方法を変えていきました。

双極性障害の症状がたまに出る

パーソナリティー障害の他に双極性障害の診断があると聞いていました。ある日グループワーク中に躁状態になり、目が血走り急に仕切りはじめるということがありました。

今までこのようなことがなかったため、スタッフは一区切りついた時にNさんへ躁状態になっている旨を伝えると、通常通りに戻り「たまに出る。この前は高額な財布を買っていて、届いてから後悔した。躁状態になっていたら、今のようにストップをかけてほしい」という話をしてくれました。

その後も躁状態になることがしばしばありましたが、スタッフが声をかけるとハッとして落ち着くなど行動を観察しながら見守ることにしました。

Nさんは就労経験がありビジネスマナーや生活リズム、パソコンスキルなど働く上で必要なスキルは全く問題なかったため、企業インターン先を探しつつ就職活動を進めていきました。

特にインターネット通販会社でExcelを駆使していたとのことで中級以上のレベルがすらすらでき、パソコン操作が得意のため、「Excelスキルを活かせる所だと障害の部分をカバーできるから気負いなく働けるかもしれない」と自己分析を進めていきました。

企業との出会いは興味関心が糸口

障害を理解してくれる環境での就職を希望するNさんは、障害者雇用枠(オープン就労)での求人を探すことにしました。

Nさんが興味を持った企業に対し、スタッフから「性格や感情に揺れがある」「プライベート面で体調を崩しやすい」などをあらかじめお伝えをしました。それらを理解した企業のみ応募するという形を取りました。Nさん本人も1番の条件は、感情の波が激しい自分を受け入れてくれる・理解してくれる企業でした。

LITALICOワークス専用求人サイトやハローワークの求人などをチェックしながら、しばらくは求人を見ながら模擬面接や応募書類作成を続けていました。そんな中で、Nさんはスポーツ用品店の本社での求人を見つけ、スタッフに企業への確認を依頼しました。

中学生の頃からサッカー部に所属し強豪校と知られる高校でレギュラーだった程の腕前を持っているNさん。スタッフは、Nさんの特性の他にこれまでのスポーツとの関わりを伝えると、人事担当者や所属長がサッカー経験者とのことで、応募を快諾してもらい面接日程の調整の連絡を受けました。

就職をきっかけに夫婦仲が良くなった

いよいよ面接日を迎えました。面接は終始リラックスムードでサッカーの話に花が咲き、Nさんもスタッフも好感触でした。

数日後、内定の連絡がきました。Nさんにとって障害者雇用での就職活動ははじめての体験でした。「思ったより早く就職が決まってホッとした。子どものためにもしっかり働けるよう頑張ります」と安心した様子。

就職まで残された日数のほとんどを事業所で過ごしました。他の利用者に役に立てばと「体調管理」「ストレス対処法」についてプレゼン資料を作成し、みんなの前で発表してLITALICOワークスでの最終日を終えました。

就職後も安心して働き続けるために、定着支援サービスがあります。「月1回の面談の他に困り事こや悩み事などがあれば連絡するように」と伝えた所、週1回は連絡してくれるNさん。

「仕事は順調、休憩時間もサッカー談話などで楽しく過ごしている、プライベートは相変わらず奥さんを困らせちゃっていますが夫婦仲は以前よりすごくいいです」と笑いつつ、職場には持ち込んでいませんと胸を張って仕事について順調ぶりを毎回アピールしてくれています。

上司から仕事のスピードが速く、コミュニケーションも問題ありませんと高評価を得ていることを伝える職場でも高評価。「何が起こるかわからないけれどこれからも頑張ります」と笑っていました。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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