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障害のある方の就職事例

ジストニア(難病)の仕事・就職事例 -事務-

ジストニア(難病)の仕事・就職事例 -事務-

難病で働けると思っていなかった

男性/20代/福祉/事務職

ジストニア(難病)

就活で難病の説明に苦戦

全身性ジストニアという難病のあるTさん。全身性ジストニアは身体が突っ張ったり捻じれたりするため、全身の筋肉が異常に動いてしまう症状があります。

Tさんは特に声が出しづらいこと、手足がうまく動かせず細かい作業や重いものを持つことが難しい状態でした。その症状を改善するために脳に電極を埋めており、月に1度電磁波の調整のための通院が必要です。また脳に電極を埋めているため、身体障害者手帳を保有していました。

 

大学卒業後、LITALICOワークスへ相談に来たTさん。学生時代に就職活動をするも、内定を取ることができませんでした。応募書類が通らなかったり、面接で難病について質問されてもうまく説明することができなかったり……特に難病や自分の症状などを説明することに苦戦したそうです。

 

見学時に声を出しづらいことからぼそぼそと話しをするため、スタッフは聞き取りづらく聞きなおすことが何回かありました。しかし嫌な顔を一切せずに一生懸命話をしてくれる姿に好感を持ちました。

 

その後Tさんは、LITALICOワークスの利用を開始しました。寝ぐせなどの身だしなみが整っていない状態でLITALICOワークスに通ってくることがありました。これまで実務経験やアルバイトの経験がなかったため、ビジネスマナーや社会人として働くための身だしなみから習得することにしました。

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働くために必要なマナーとスキル

Tさんは人見知りが激しく内向的なタイプで、はじめは他の利用者の輪の中に入らず事業所の端で読書をしていました。積極的なタイプではなありませんが、見た目や雰囲気が柔らかい感じのため近寄りがたい印象を持たれることははありませんでした。次第に様々なプログラムに参加。グループワークで他の利用者と接点を持つようになると、Tさんが話をする時は皆静かに見守る姿勢を取り、事業所内の癒しになっていきました。

 

業務上の会話や電話、職場での雑談など働くにあたりコミュニケーションをするには、Tさんの声量では少し厳しいと感じたスタッフは、アナウンサーがよく利用している発声練習法を取り入れました。事業所内で声を出し続けることは難しいため、Tさんは自宅でも練習をしていました。

 

就職するなら事務職か図書館受付を希望していたTさん。どちらの職種でも電話対応が業務内容に含まれる可能性が高いため、電話対応の練習もスタート。電話の取次練習の際、要件をスタッフに伝えようとするも何と声掛けして本題を切り出したらいいか分かりません。Tさんは自己発信が苦手で、スタッフから声をかけることがほとんどでした。そのため話しかける前に「クッション言葉」を使うということを認識していませんでした。

 

仕事では「~さん、少々よろしいでしょうか」などのクッション言葉が必要になるため、話しかける際に具体的な理由を入れたり、クッション言葉を入れたりする練習も取り入れることに。Tさんは「仕事をするって学生の延長ではできないんだな」と苦笑い。しかし働くためには必要なので、きちんと習得できるよう頑張ると意気込んでいました。

 

また、事務職で働くためには、パソコンスキルが必要と感じたTさん。これまではジストニアの影響でタッチタイピングのスピードが出ないとあきらめていましたが、入力を速める練習の他にパソコンの資格取得のための練習を事業所でも自宅ではじめました。努力家のTさんは就職するために、何が必要かを考え自主的に行動できるようになっていきました。

職業体験で働くことへの自信を

仕事をするための準備が進む中、実際に「働く」というイメージをなかなか持つことができないTさん。スタッフはさまざまな職場見学の機会を設けました。職場見学を重ね、働くイメージを膨らませていったTさんはと、働く上での配慮事項を明確にするため、実際の企業で仕事の体験ができる企業インターンにも積極的に参加することに。

 

これまでに実務経験がないことや、声の出しづらさから会話への強い苦手意識から、企業インターンに行く前に気持ちが落ち込んでしまいました。スタッフは「職場体験は職業適性を確認するため、働くために必要な経験を積んで自信をつけるための企業インターンだから考えすぎないように」とフォローしました。

 

企業インターンで事務職を体験したTさんは、日々の振り返りでできたこと・できなかったことをデータに残しました。企業からのフィードバックで「緊張すると早口になってしまう」とのことをスタッフに相談。職場のさまざまなシーンを想定し会話の練習をしました。

 

努力の結果、次の企業インターンでは「できる」に変わり、徐々に働くことへの自信をつけることができました。3社目の企業インターンでは、はじめから自信を持って仕事に取り組むことができました。

会話や難病説明、苦手を克服

働くことへの自信がつくにつれ、「図書館で働きたい」という希望が日に日に強くなっていました。しかし図書館司書は人気職種でなかなか求人募集がないこと、さらに雇用形態が業務委託や派遣がほとんどで障害者枠での求人がなく、スタッフは頭を抱えました。

 

Tさんらしく働くには図書館はぴったり。しかし求人募集がない……ハローワークなどの行政へ相談するも答えはNOばかりでした。スタッフがいろいろと掛け合っていることを知ったTさんは「図書館で働きたいけれど図書館での求人が少ないことを知らなかった。図書館の仕事に絞らず、パソコンの資格をいかせるような事務職も併用して探していきたい」と意思表示をしてくれました。

 

図書館や事務職の求人を見ながら、難病や自分の症状・配慮事項についての説明できるよう文章作成から進めました。学生時代に説明ができず挫折した経験があるTさんは苦手意識が強く、なかなか手が進みません。スタッフと二人三脚で何度も作り直し、簡潔かつ分かりやすくまとめあげ、面接で話ができるよう練習をしました。

 

模擬面接で自己PRや難病・症状などの説明を1度で合格点。スタッフが褒めると、Tさんは「学生時代のリベンジ」と照れ笑いをしていましたが、スタッフには内緒で自宅でも練習を重ねていたとのことで、就職への本気度を感じ取ることができました。

難病に理解のある職場で働く

難病のある方に対してどう対応すればいいか分からないという理由で応募書類がなかなか通らないことや、Tさんに実務経験がないことから新たな環境で働くことに不安があったため、雇用前実習のある企業へ絞って就職活動をすることにしました。

 

Tさんの自宅から遠くない福祉系企業でパソコンスキルを活かせる求人を見つけたTさんとスタッフ。早速応募すると、「難病について把握したいから、面接と雇用前実習で決断させてほしい」と連絡がきました。

 

面接では練習した成果を発揮でき、雇用間実習も問題なく期間を終えることができました。スタッフはTさんに職場の雰囲気やこちらの企業で続けていけそうか確認すると、「配慮事項はもちろん、いろいろと気遣ってもらえるので分からないことを質問しやすい」と笑顔で回答してくれました。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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