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障害のある方の就職事例

マルチタスクが苦手でも、自分のスキルを生かして働く道はある

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プロフィール

  • Kさん
  • 年代 : 30代
  • 就職先企業 : 株式会社 ゾフ
  • 診断名 : 自閉スペクトラム症(ASD)

困りごと

  • マルチタスクが苦手
  • 金銭管理が苦手
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ストーリー

31歳で初めて診断を受け、現在は国内外にメガネブランド「Zoff」を運営する株式会社ゾフに勤めるKさん。過去に体調を崩したことをきっかけにLITALICOワークスの10ヶ月間の利用を経て、障害者雇用枠で週5日間フルタイムでの就職を決めました。

主に広報の仕事を担当しながらも、これまでの経験で身につけた専門性を生かし、メガネの加工業務にも携わっています。

「唯一無二の人材になりたい」というKさんに、LITALICOワークスの利用に至った経緯や現在の働き方を伺いました。

社会人になって初めて感じた、マルチタスクの難しさ

—— Kさんは、LITALICOワークスを利用される前にも企業で働かれていましたよね。そのときに、困っていたことはありましたか?

初めて働いた会社で、「業務が上手く進められないな」と感じたことがありました。特に苦手だったのはマルチタスクです。自分の業務を進めながらもほかの人から引き継ぎを受けた業務を並行して進めたり、一連の作業の中で一部だけほかの人に引き継いだりすることが多かったのですが、業務や引き継ぎを忘れてしまうことがありました。

 

—— 就職する前から、そのように感じる場面があったのでしょうか?

実は、全くなくて。マルチタスクが苦手だと感じるようになったのは社会人になってからです。

 

—— なるほど、そうだったんですね。なぜ病院を受診しようと?

仕事での失敗を繰り返すようになって、少し不安な気持ちが強くなってしまったんです。だから、一度診断を受けてみようと思って病院に行きました。当時の診断結果は、広汎性発達障害でした。

 

—— 診断が出てどう感じましたか?

よく診断をもらってほっとしたと言う人もいると思いますが、私の場合は結構ショックでした。発達障害ではないことを確かめるために病院に行ったのに、診断名がついてしまったんです。でも気が楽になった部分もありましたね。それまでは、「自分には強めの個性があるんだ」くらいに思っていて、失敗しても落ち込まないようにしていたんです。診断をもらったことで、自分の特性をそのまま受け入れられるようになったと思います。

 

「障害をオープンにして働こう」気持ちが変化した

——なぜLITALICOワークスを利用することに?

私の兄がLITALICOワークスを利用した経験があって、「すごくよかったよ」とすすめてくれたのがきっかけです。自分にとって働きやすい会社を一緒に探してくれるんじゃないかなと思って、申し込みを決めました。

それまで働いていた会社では、周囲の人に苦手なことを上手く伝えられず、しんどい思いをした経験があります。LITALICOワークスであれば、就職した後も働き続けられるようにサポートをしてくれる「定着支援」にも力を入れているところが特にいいなと思いました。自分がつまずいてきた部分に対して、サポートしてくれるのではないかなと思ったんです。

 

—— 実際に利用してみて、今に生きていると感じたプログラムがもしあれば教えてください。

私の場合は過去に企業で働いた経験があったので、社会人としてのマナーや基本的なスキルを身につけるプログラムでは、自分が学んできた知識を再確認する場として受けていました。タッチタイピングの練習をたくさんやったことでタイピングは速くなりましたね。広報の業務ではパソコンに入力することも多いので、役に立っているなと思います。ほかにも、利用していたLITALICOワークス独自のワークショップもあったりして、それは特に楽しかったです。

私は金銭管理が苦手だったので、そこへのアドバイスをもらえたり、仕事以外の話も聞いてもらえたのは期待以上だったなと思います。正直、障害があることを企業側に開示するかしないかは悩んでいたのですが、LITALICOワークスに通う中で、「障害があることをオープンにして就職しよう」という気持ちが固まりました。

 

障害者雇用枠で働きながら、専門性を活かす

—— 今はどのような仕事をしていますか?

障害者雇用の枠で就職していて、所属しているのは広報のサポートをするチームです。広報用に使うメガネのレンズやフレームの在庫管理をしつつ、加工や発送業務、貸出の記録をつけたりしています。

 

—— 広報用に使うメガネの管理をするとなると、かなり忙しいのでは?

そうなんです。常に何社とも並行して連絡を取りますね。その日に返ってきた商品をクリーニングしてそのまま次の企業に貸し出して、それが戻ってきたらまた別の企業へ、という感じで、リレーのように進めていくこともあります。商品がどこに何本あるのか、在庫が何本あるのか、などを管理するのは結構大変です。

 

—— それ以外の業務をされることもありますか?

私の場合はメガネの加工業務を担当しているので、それも並行してやっています。過去にメガネ屋さんで働いていたことがあり、そこでお客さんが持ってきたメガネの調整や加工などの業務を学ばせてもらいました。障害者雇用枠でありながらも、自分の専門性を生かして働けることはやりがいに繋がっていると思います。

 

—— 自身のこれまでの経験が生かせているんですね。ただ、急な変更もありそうですね。

ありますね。3分前に言われたことが変わったり、広報で使うメガネを20〜30本用意したら、実際は4、5本でよかったりとか(笑)

少しの工夫でマルチタスクを管理する

——まさにマルチタスクですね…!何か工夫していることはありますか?

私の場合は、同時並行でできる作業が3つまでと自覚しているので、そのことはチームのメンバーに共有しています。それでも忘れてしまうことはあるので、新しい業務が入ってきたときは、可視化できるようにその都度メモを取るようにしています。

 

—— そのような工夫は、今の仕事に就いてからはじめたのでしょうか?

前職から似たような工夫はしていたのですが、LITALICOワークスのスタッフからの話を聞いたり、ほかの利用者からやり方を教えてもらったりする中で、今のかたちが一番やりやすいなと思って定着しました。業務管理ができるようなスマホのアプリを使ったこともありましたが、スマホを取り出してアプリを開いて…という作業が意外と面倒だったりしました。結局、シンプルなやり方が一番いいんですよね。

 

—— 働きやすい環境をつくるために、チーム内でやっていることはありますか?

広報を担当するチーム内で、それぞれの苦手や得意を共有するためのシートを作っています。苦手なことを書いて、「それに対して自分ではどう対処しているのか」「周りの人にはどうしてもらいたいか」などを書いておくんです。

例えば、私の場合は「作業中に話しかけられるとパニックになってしまうことがあるので、要件を言う前に『今、いいですか?』と聞いてもらえるとうれしいです」とか「体調が悪いときはしかめっ面になってしまうのですが、怒っているわけではないので気にしないでください」とか、そんなことを書いています。それをメンバー全員がお互いに見られるようにしています。

シートを作って共有するだけではなくて、業務の内容で漏れていることがあったら伝えたりと、お互いにフォローし合いながらやっていますね。

 

—— 最後に、あなたにとってLITALICOワークスはどのようなところですか?

「自分には必要ないんじゃないか」と思ったり、使うことに対して抵抗があるのはすごくよくわかります。私もそうでした。でも、結果として自己理解を深めることに繋がったので利用してよかったなと思います。通うことには勇気がいるかもしれませんが、自分に必要な支援なのかを確かめるためにも、体験だけでも行ってみるといいのではないかなと思います。

 

—— Kさん、ありがとうございました。

趣味・リフレッシュ方法

ゲーム、コーヒー、お菓子、トレーディングカードと多趣味なKさん。
甘いものが好きで、奥様と甘いお菓子の置いてある喫茶店によく行くことがリフレッシュ方法の一つ。

インタビュー:2022年11月7日

※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。

企業からのコメント

現在は40名以上の障害のある方が勤務しています。本社での人事サポートのほか、IT関連や施工管理、店舗の事務サポート、メガネの加工業務など、それぞれ多岐に渡って活躍されています。 採用選考の際、Kさんの応募書類を見たときは写真や文章から誠実さが伝わってきました。弊社で働き始めてからは3年目を迎え、今では広報部門にいなくてはならない存在だと思っています。 業務の中ではサポートが必要なときもありますが、そんなときは自分から助けを求めてくれます。ただ、「自分から助けを求めてね」とこちらが言うだけでは意味がないと思うので、月1回は1対1で面談をしたり、普段から話しやすい雰囲気をつくるようにしています。 今では、Kさんも含めチーム内のメンバー同士で教え合ったり、困っていることを伝え合ったりすることができていると感じます。障害者雇用枠であるかどうかに関わらず、「この人はこういう人」と決めつけるのではなく、一緒に働く中でお互いのことを知っていけるといいなと思っています。 Kさんはメガネの加工ができる技術もお持ちなので、今後の活躍にも期待しています。

スタッフからのコメント

優しく穏やかで、他者への思いやりに溢れたKさん。 利用中、ほかの利用者さんから慕われていらっしゃったことをよく覚えています。 就職後はいつもスタッフに「もっとチームメンバーの力になりたい。支えられる存在でありたい。」と話してくださり、「そのためにも自分がキャパシティオーバーしないよう業務の効率化を頑張る」とおっしゃっている姿が印象的でした。 LITALICOワークス利用中も今も、ぶれないKさんを見習ってスタッフも日々がんばれています。ありがとうございます。
LITALICOワークス 横浜西口

利用していた事業所

神奈川の就労移行支援事業所 LITALICOワークス 横浜西口

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