働くことが不安で不安で仕方なかった。でも今は、職場で笑顔でいられる自分がいる
プロフィール
- Fさん
- 年代 : 40代
- 就職先企業 : 千葉市教育委員会
- 診断名 : 双極性感情障害(双極症)
困りごと
- 不安感が強い
- 複数のことを依頼されると混乱しやすい
- 聴覚からの情報処理が苦手
- 人の名前と顔を覚えるのが苦手
ストーリー
高校時代よりうつ病と診断され、2016年には双極性感情障害と診断されました。常に働くことへの不安と隣り合わせだったというFさんは、LITALICOワークスへの通所を経て、今では千葉市の教育委員会で活躍されています。
いったい、どのようにして働くことへの自信を育んでいったのでしょうか。そんなFさんに、通所中のこと、就職活動のこと、現在のお仕事についてお伺いしました。
とにかく、不安で押しつぶされそうだった
ーーFさんの心身の不調は、いつ頃から感じられていたものなのでしょうか?
Fさん:高校時代からうつ病と診断されていて、拒食症にもなって、その当時から心療内科に通院していました。それから長い間、薬も飲みながら心身の不調と向き合っていたのですが、2011年に大きく体調を崩してしまいました。起き上がれなくなって、引きこもっていた時期もありました。2017年に入院したのですが、その際には幻覚や幻聴の症状も出て、双極性感情障害と診断を受けました
ーー診断を受けたとき、どのような受け止め方をされたのでしょうか。
Fさん:当時は双極性感情障害(双極症)に関する知識が無かったので、正直かなり衝撃を受けました。ただ振り返ると、社会人になって伝統工芸品を受注・販売する会社でアルバイトとして働いていた時に、新しい店舗がオープンする時期に変にテンションが上がってしまったり、忙しさのピークが過ぎるとガクッと気持ちが落ちたりと、その傾向があったようにも思います。
ーー働く上で、どのような困りごとがありましたか?
Fさん:躁状態になったとき、怒りやイライラなどの気持ちのコントロールが難しく、周囲の人に当たってしまうことがありました。そして常に、とにかく働くということに対して不安感が大きかったですね。
ーーずっと不安だった。
Fさん:そうですね。さかのぼれば、大学時代に就職活動をしなかったのですが、それは書類選考や面接で落とされることが怖かったからなんです。自己肯定感が低かったので、とにかく就労に対しての不安が人一倍強かった。だから大学院への進学を選択したということもありました。
困難を乗り越えることをサポートしてくれる、大きな家
ーーLITALICOワークスにはどのタイミングで通所されたのでしょうか。
Fさん:実は今の仕事に就くタイミングでの通所以外にも、引きこもっていた時期に一度LITALICOワークスを利用したことがありました。ただその当時は自分の状態を受け入れることもできなくて、体調も良くなくて、一方的に退所する形になってしまって。それにも関わらず、二度目の通所でもスタッフの方が変わらず温かく迎えてくれて、安心したことを覚えています。
ーーLITALICOワークスへの通所の決め手は、どんなところにありましたか?
Fさん:就労移行支援事業所を選ぶにあたって私が重視していたことは、就職活動に対するサポート内容でした。一人で就職活動をすることはやっぱり不安で、ハローワークで求人に応募して落とされることへの恐怖心もあって、とにかく就職につながりやすい事業所を探していたんです。他の就労移行支援事業所も見学と体験をした上で、就職活動に関して手厚いサポートを受けられると感じたLITALICOワークスを選びました。
ーー「不安」というキーワードがFさんの就労にはあると思うのですが、通所することで好転したのでしょうか。
Fさん:不安が生じたときには、スタッフの方に面談をしていただくことで、今後の就職活動における道筋を立てることができたように思います。私のことを受け入れてくれているというのが、スタッフの方の表情から分かったんですよね。困難を乗り越えることをサポートしてくれる大きな家、というような存在でした。
ーー迎え入れてくれて、向き合ってくれている感じがした。
Fさん:はい、だから就労については何でも相談することができていました。私の場合は、就職活動の具体的な進捗や障害特性についての不安に関してはLITALICOワークスで、そして自己肯定感の低さなどについては臨床心理士の方のカウンセリングで、といろいろな方に相談しながら、不安に対処していました。
ーー誰かに不安な気持ちを開示しながら、就職活動に取り組まれていたのですね。LITALICOワークスの具体的なプログラムで、受けて良かったものはありますか?
Fさん:パソコンを使った事務職への就労を希望していたので、個別訓練ではパソコンでWordやExcelの問題集を使った訓練を行っていました。プログラムは、内定をいただくまでに全て受けました。障害特性を理解するうえで役に立ったのは「自己分析」や「ストレスマネジメント」のプログラムでした。
ーー自己分析を通して自身のことを知り、もともと懸念されていたストレス耐性についてもプログラムを受けていたと。
Fさん:はい。通っていたLITALICOワークスで活用していたセルフモニタリングシートは、自己分析のために今でも書き続けています。その日の出来事や自分の気持ちを記入していくものなのですが、客観視することで感情の起伏の傾向が見えてきて、双極性感情障害を理解することにもつながっています。
ーー実際の就職活動において、通所されて助かったことはありますか?
Fさん:これまで正規職員の経験がなかったので、職務経歴書の書き方がわからず悩んでいました。スタッフの方に何度も添削をしていただくことで、ブラッシュアップをしていくことができたと思います。本当に心強かったですね。
不安を感じずに働くことができるようになった
ーーそして千葉市教育委員会での勤務をスタートします。
Fさん:はじめは、市内の小学校の事務補助員としての雇用でした。志望した理由としては、私自身が小学校時代に担任の先生に恵まれ、とても充実した生活を送れたため、同じような環境を支えることができればと思ったからです。事務補助員として2年8か月を過ごして今の教育職員課に異動するタイミングで、子どもたちが「いつもトイレの消毒をしてくれてありがとうございます」ってメッセージをくれて。本当に嬉しかったです。
ーー教育職員課ではどのようなお仕事をされているのですか?
Fさん:主にはコピーや紙データの電子化、データ入力などです。この場所では毎日が新しいことを覚えることの連続で、自分自身が成長していくことにやりがいを感じています。
ーー職場ではどのような配慮がされていますか?
Fさん:私は聴覚からの情報処理が苦手であるため、一度に複数の事柄を教えていただく場合には、混乱することがありました。そのため、メモを取る時間を多めに取らせていただくようにしています。また、障害者雇用について専属で担当されている方がいるので、その方に常に気にかけていただいていて、サポートされているなと感じています。
ーーとてもよい職場なのですね。
Fさん:はい!本当にフランクで、素敵な方々ばかりです。どんなに忙しくても私が話しかけると笑顔で向き合ってくれますし、普段から笑わせていただいていて、この場所で働くことができて幸せです。あれだけ感じていた就労への不安も、今ではあまり感じないように変わりましたね。何よりも周囲の方々の支えがあるから、自分は仕事ができているのだという気持ちが大きいです。そして、周囲の方々と協力して、お仕事をしていけるところにやりがいを感じています。また、同僚の方とお茶をした時に「共に成長していきましょう!」と言っていただいた言葉が、心の支えになっています。
ーー他にも今の職場で、サポートしてもらっているなと感じる場面はありますか?
Fさん:職員の皆さんのご理解もあって、現在千葉県障害者ピアサポート研修を受講して、福祉施設への実習にも行かせていただき、無事に修了することができました。
ーーそれは素晴らしいですね!
Fさん:職場の皆さんもとても喜んでくださって、それが本当に嬉しくて。自分のように障害で悩んでいる方にとって、私の経験が役に立ったりロールモデルになることができたり、少しでも力になることができればと思っています。これまでの経験や知識を活かし、福祉の世界で障害者支援をすることが今後の目標です。
ーーありがとうございます。最後に読者の方にメッセージをお願いいたします。
見返りを求めることなく、目の前にあることに対して誠意を持って取り組んでいれば必ず成果はついてくると思います。「みんなのためになることが、自分のためになること」、私はそういう風に考えて就職活動をしてきました。その上で、周りの人に頼ることはして良いことだと思うので、ぜひ誰かに自分のことを相談してみてくださいね。皆さんがよい就職先に出合えることを、願っています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。
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