メモすら取れずに苦しかった自分が、今の職場で「ありがとう」の言葉をかけてもらえるようになるまで

30代後半で、職場での働きにくさに悩んでいた時に障害の診断を受け、その後LITALICOワークスへの通所を経て株式会社ミュゼプラチナムの一員となったNさん。

入社から約3年半が過ぎ、現在は銀座並木通り店の店舗管理係として、一緒に働くメンバーにも愛されながら活躍されています。そんなNさんに、通所中のこと、就職活動のこと、現在のお仕事についてお伺いしました。

ーーNさんはこれまでどのようなお仕事をされてきたのですか？

Nさん：社会人になってからはアルバイト契約などでさまざまな会社で働いてきて、前職では用紙を扱う会社に4年間いました。クライアントから受注した分の用紙を用意して、営業の方に受け渡すようなことが主な仕事です。

ーー仕事をする中で、困難に感じられることはあったのでしょうか。

他のメンバーの方とコミュニケーションを取るのが苦手で、分からないことを聞くことも躊躇してしまって。その結果いつまでも仕事を覚えられなくて、抑うつ状態のような症状も出てしまい、もう仕事には行きたくないっていつも考えていました。

ーーそれくらい追い込まれてしまっていたんですね。

Nさん：ずっと不思議に思っていたんです。「私はなんでこんなに仕事を覚えられないんだろう。なんでメモも取れなくて、他のみんなに追いつけないんだろう」って。その違和感がいよいよ大きくなってきたので、病院を探していたんです。自分で精神科の病院を探して通い始めましたが、当時の自分の状況に対してどうしても納得のいく答えが得られずに、病院を転々とする日々が続きました。

ーー大変な時期を過ごされたのですね。そして診断名が分かった時には、どのようなお気持ちでしたか？

Nさん：知能検査をしてくれる病院で、ようやく軽度知的障害（知的発達症）という診断名が分かったのですが、長年の肩の荷が降りたようで、良かったなと思ったのが正直なところでした。ずっと自分自身のことがよくわからなくてモヤモヤとしていたので、ようやく霧が晴れたような感じです。そこに至るまで、本当に長かったので。

ーー同時期に1年半ほどLITALICOワークスへも通所されていたとのことですが、どんな印象がありましたか？

Nさん：実はLITALICOワークスには以前も通所したことがあって。2度目となるこの時は、以前お世話になっていた方もいたので、懐かしい気持ちでした。それに、どんなプログラムを受けるのかを押し付けられるのではなくて、自分の意思で選べるのも安心感がありました。つらかった職場に比べて、自分の居場所だと感じることができました。

ーーそんな安心できる場所で、具体的にどのようなプログラムに参加されていたのでしょうか。

Nさん：個別訓練ではパソコンで履歴書作成をしたり、タイピングの練習をしたり、メモを取る練習をしたりしていました。とにかくメモを取ることが苦手だったのですが、スタッフの方から「全部ではなくて要点を絞ってまとめると良いですよ」とアドバイスをいただき、何回も実践してみてコツを掴んでいきました。

ーー実践を通して成長に繋げられているのが素晴らしいですね。それ以外にも、さまざまなことに取り組まれていたと伺っています。

Nさん：はい、ボールペンを解体してみたり、ビーズの袋詰めの訓練をしてみたりと、いわゆる作業訓練にも取り組みました。他にも、ビジネスマナーやコミュニケーションスキルなどのプログラムも幅広く受けていました。とても基本的なことではあるのですが、今の会社で働く上でとても活きていると思います。

ーー就職活動でのサポートはいかがでしたか？

Nさん：仕事探しはとても孤独で不安も多いのですが、常に私の不安や悩みにスタッフの方が寄り添ってくれたことが嬉しかったです。会社を探して、履歴書を書いて、面接の練習をして、面接にも付き添ってくれて。そんな形で順を追って導いてくれて、常に優しく背中を押してくれる感じがあったんです。

ーー心の拠り所だったという言葉は、LITALICOワークスのスタッフとしても励みになります。

Nさん：そうですね。障害者雇用で働くことの相談であったり、日頃のストレスのことであったり体調面での相談であったり、本当に些細な事柄や悩みごとでもサポートしてくれたんです。そういう意味で、皆さんには本当に感謝しかないです。

ーー就職活動を経て今の会社に出会われましたが、不安はありませんでしたか？

Nさん：LITALICOワークスのスタッフの方に付き添ってもらって、事前に見学も行っていたので、職場のアットホームな雰囲気を見ることができており、安心感はありました。雇用前実習ではわからないことも質問できたので、自信を持って入社できましたね。

ーー良いスタートを切れたのですね。今の会社ではどのようなお仕事をされていますか？

Nさん：たくさんあるのですが、洗濯業務や清掃、封筒封入作業、メモ用紙づくり、お客さまが使用するお部屋のベッドメイキングなどです。お客さまにリラックスしていただけるように、またスタッフも気持ちよく働けるように、環境づくりを担っています。この仕事を通して、「ありがとう」と感謝の言葉をもらった時にやりがいを感じるんです。

ーーNさんが活き活きと働いている姿が想像できます。

Nさん：そうですね。前職の自分からは想像できないくらい、前向きに働くことができています。職場の皆さんも、忙しい時でも質問したら快く答えてくださる方ばかりで、明るい気持ちで仕事ができていると思います。自分にとっては、大きな変化ですね。

ーー入社後には定着支援のサポートも受けているんですよね。

Nさん：はい、入社してしばらくはLITALICOワークスのスタッフの方が職場訪問してくれて、店舗の責任者を交えて面談をしたり、私自身がセンターに足を運んで定期的な面談をしたりしました。職場のメンバーとの関係性などを相談した時にも、解決するためにサポートをしてくれたので、定着支援を受けてみて良かったです。

ーーありがとうございます。今の仕事での、今後の目標や夢はありますか？

Nさん：ミュゼアワードという、スタッフの普段の仕事ぶりを表彰する社内イベントがあるのですが、この前の回で私と同じような仕事をされている方が表彰されていて。あぁ素敵だなと思って、自分もミュゼアワードに出てみたいなと思うようになりました。そんな風に、皆さんに認めてもらえる仕事をもっとしていくことが、これからの目標です。

ーー就労移行支援の利用を迷っている人、LITALICOワークスに相談したいけれど、一歩を踏み出せないという方にメッセージをお願いします。

Nさん：仕事にしても人間関係にしても、いっぺんに何でもかんでもまとめてやるのではなくて、少しずつ順序を追っていくことが大切だと感じています。皆さんが実際に就職された後にも、職場の方に相談をしつつ、その仕事に定着していけることを心から祈っています。