就労がゴールではなく、その先のキャリアまでを見据えた働き方
プロフィール
- Kさん
- 年代 : 20代
- 就職先企業 : PwCコンサルティング合同会社
- 診断名 : うつ病、ADHD(注意欠如多動症)
困りごと
- 気分の上下が激しく、体調が悪い日は集中できなくなることがある
- 整理整頓が苦手で、細かい情報の見落としが発生しやすい
- 極端にこだわったり、逆にすぐにあきらめたり、ムラがある
ストーリー
大学生のときにうつ病やADHD(注意欠如多動症)の診断を受け、その後就労支援移行事務所への通所を経て、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwC)の一員となったKさん。入社から約3年が過ぎ、現在では業務リーダーを務めるKさんに、お仕事やキャリアについて伺いました。
大学中退という挫折からの、就労支援移行事務所での再起
ーーまずは遡ってKさんの学生時代のお話をお聞かせください。どんな学生だったのでしょうか?
Kさん:大学生の頃はちょっと悩んでいた時期がありまして…。学部に馴染みきれなかったというか、自分が本来学びたかった分野との差異に悩んでしまって。いろいろと考えて何をするにも気分が乗らずにネガティブになってしまい、ついには大学の授業に出ることが難しくなってしまったんです。
ーー大学に行けなくなってしまった。
Kさん:はい、そこで大学のクリニックを受診してみたのですが、その時にうつ病と診断されました。その後治療を進めていく中で、さらにADHD(注意欠如多動症)の傾向があると診断されました。
ーー診断を受けた時は、どのように感じられましたか?
Kさん:ADHD(注意欠如多動症)の特性に自覚はあったので、やっぱり…という感じでした。例えば、当時学習塾のアルバイト講師として働いていたのですが、授業のスケジュールを組む際に予定を見落としてしまい、ダブルブッキングしてしまったこともありました。
ーーなるほど。その後は大学に復帰されたのですか?
Kさん:いえ、大学の4年生の頃に中退して、一旦は通信制の大学に籍を置き、今後どうしようかと考えていました。そしていよいよ就職か…と考えた時に、今の自分がメンタルを上手くコントロールできるかどうかなど、不安を感じました。
ーーそれで、就労移行支援事務所への通所をはじめられたと。
Kさん:はい。両親からこんな場所もあるんだよって、就労移行支援事業所のパンフレットを渡されたことがきっかけでした。それで結局、1年ほど通いました。
ーーそこではどのようなことに取り組まれたのでしょうか?
Kさん:主に障害の自己理解プログラムに参加していました。それまでは、自分が課題だと思っていることに対して、何となくで捉えていて、うまく言語化できていなかったんです。自分が不調になりやすい場面や苦手なこと、それらへの対処について客観的に考えられるようになったことで、不安を乗り越えられるようになりました。
ーーご自身が何が苦手かということをまずは理解して、クリアにしていったと。
Kさん:そうですね。「課題にどのように対処すれば良いか」という考え方を学ぶことができて、行動に移すところまでできるようになりました。特に働く上では、自分自身のことを相手に伝える必要があるので、それができるようになったことは私にとって大きなことでしたね。また、他者の発言や行動を自分が勝手にネガティブに捉えてしまい、ストレスを感じることが多かったのですが、自分を理解できるようになったことで、そのストレスもだいぶ減ったように感じます。
ーー実際の就職活動についてのサポートはいかがでしたか?
Kさん:履歴書や面接練習について何度もフィードバックをいただき、それを基に考えを練り直すことでさらなる自己理解につながりました。サポートがなければ書類選考や面接を突破できなかったですし、就職活動になかなか踏み出せなかったと思います。最後まで寄り添ってくれたことが、私にとって大きな支えとなっていました。
ーーなるほど。Kさんにとっての就労移行支援事務所に通うことの意味って、総じてどんなものだったと思われますか?
Kさん:そうですね…就職活動においてもそうだったのですが、「第三者からの視点で意見をもらえたこと」だと思っています。
自分の考えを表現した上で、それに対して何が良くて、何が足りないかを指摘してもらえる。その繰り返しで自分の考えがブラッシュアップされていく。それってやっぱり、一人ではどうしてもできなかったことなので、自分の成長につながったなと感じています。そこが一番、意味として大きかったように思います。実際、就労移行支援事業所を卒業するときには自信が持てて、以前はネガティブだった気持ちが前向きなものに変わっていたと思います。
キャリアに意欲的な姿勢で成長を続ける日々
ーーそして実際に就職されたわけですが、就職活動中にPwCに対してはどのような印象を持たれていたんですか?
Kさん:PwCは業務内容が幅広くて、自分の得意を活かせる仕事が見つかるのではないかという期待を持っていました。また、成長したいという意欲が強いので、その気持ちを尊重してくれることが面接を通して伝わってきたんです。
ーー面接を通して、働くイメージが持てたと。
Kさん:それに、面接のときに雑談を含めて話が盛り上がったんです。文化祭の実行委員の時の話だったり、昔やっていたヨットの話だったり、たくさんの話をしました。そこでPwCで働く人の人柄の良さを感じられて、楽しく働けるイメージが持てたので、この会社で働きたいなと強く思いました。
ーーとても良い出会いだったのですね。現在のお仕事内容についても教えてください。
Kさん:PwC Japanグループの障害者雇用のチーム、オフィスサポートチームに所属しています。1日6時間、週5日間で勤務をしています。業務内容としては、勤怠関連のデータ処理や、社内手続きに関するお問い合わせの仕分けなどを中心に行っているチームの業務を管掌しています。また、チーム内の分担調整、新規業務のマニュアル作成やレクチャーも行っています。
ーーKさんはオープン就労ということですが、職場に相談された配慮はありますか?
Kさん:入社時にお伝えしたこととしては、情報の整理整頓があまり得意ではないので、もし見落としていることがあったらリマインドいただきたいということを伝えました。あとは、やはり最初のうちはかなりガチガチに緊張してしまうと思うので、どんどん気軽にお声がけいただければ助かりますと、お願いをさせていただきました。
ーーそのように配慮してもらっていると感じられましたか?
Kさん:はい、タスクをチャットでリマインドしていただいたり、チームメンバーの皆さんもたくさん声掛けをしてくれて、特に壁にぶつかることもなくスムーズに働き始めることができました。
ーーそれは素晴らしいですね!実際に働かれてみてどうですか?
Kさん:ありがたいことに、体調面で大きな不安もなく、障害特性についての対応も自分自身でできるようになってきたので、とても楽しく働くことができています。困りごとや不安も、毎月の面談で上司に相談することができて、都度解消しています。
ーーやりがいの部分はいかがでしょうか。
Kさん:そうですね、自分が提案した業務上の改善案が採用されたりすると、ダイレクトに会社に対して貢献できたんだなと、やりがいを実感できます。具体的には、チェックフローの改善などで、それを提案できる風通しの良さも、働きやすさややりがいにつながっています。
ーーなるほど。Kさんはキャリアアップについてはどのように考えていますか?
Kさん:私は成長への意欲が強いので、責任の大きな仕事もしていきたいと考えています。入社して1年目のときからたくさん仕事を担当させていただく中で、信頼してもらえていると感じることができました。今は、チームの業務を取りまとめるリーダーとしての仕事もしています。
ーーすごいことですね!やはり責任が大きくなると大変なこともありますか?
Kさん:そうですね、リーダーになってからしばらくは、やはり大変だと思う場面も多かったです。メンバーに仕事を振ることもあり、今までとは求められるものが変わってきて、やらなければいけない仕事の種類も量も一気に増えました。慣れることに精一杯でした。
ーー適応にはしばらく時間がかかったと。
Kさん:それでも毎日必死にがんばって、まだまだ道半ばではあるのですが、皆さんに支えられて前向きに挑戦できています。常にアンテナを張って、メンバーや仕事相手のニーズがどこにあるのかを意識したり、仕事を関連付けて覚えて処理していったり。そんなことを大事にしています。
ーーきっと、やりがいもさらに大きくなりましたよね。
Kさん:はい、今までは自分一人の成長にフォーカスしていたのですが、他のメンバーが仕事でできることが増えるときに、やりがいを感じるようになりました。あとは社内の事例共有で私たちの仕事が紹介されるときには、喜びを感じますね。今はある業務範囲でのリーダーという形なのですが、これからはチーム全体のリーダーにもなれるように、成長していきたいです。
ーーキャリアを広げていきたいという読者の方にとって、とても励みになるお話をありがとうございました!最後に、これからまさに就職活動をされていく皆さんに、メッセージをお願いいたします。
応募先の企業のことを理解するのはもちろんですが、自分自身のことをしっかりと見つめ直して、得意不得意などを理解することが重要だと思います。就職活動は、自己理解を深めるための機会でもあると思うので、自分にとって最適な仕事を探すためにも、いろいろな方と相談しながらチャレンジしてみてください!
企業からのコメント
Kさんは、業務理解力とコミュニケーション力に強みがあり、キャリアアップにも意欲をお持ちでした。そのため、1年目からリーダーの補佐やチーム内の研修の講師などの経験を、積極的に積んでいただきました。
現在は、業務を取りまとめるリーダーとして、チームの中心的役割を担っていただいています。状況に合わせて迅速にアサインする人員や業務手順を調整して、効率的に業務を回してくださっています。
今後は、自分の抱えている仕事を徐々に同僚に切り出して、後進を育成いただくことも期待しています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。
スタッフからのコメント