障害があるからといって諦めなくていい。子どもの頃の夢だった仕事に出会うまで

プロフィール
- Tさん
- 年代 : 20代
- 就職先企業 : ANAエアポートサービス株式会社
- 診断名 : 軽度知的障害・自閉スペクトラム症
困りごと
- 周囲の人とコミュニケーションをとって仕事をするのが苦手
- 報連相のタイミングが分からず、独断で作業してしまうことがある
- 失くし物や忘れ物が多い
- 書類の管理が苦手
- 急な予定変更が苦手
目次
目次
- ストーリー
- 働いていた店舗が閉店。それが人生の転機に
- 2回目のLITALICOワークスでは、「自分に必要なこと」を優先して身につけた
- 何度面接に落ちてもあきらめずにサポートしてくれて、すごく心強かった
- 想像していたより、はるか上のステップまで来ることができた
- スタッフからのコメント
- 企業担当者からのコメント
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ストーリー
特別支援学校を卒業後、LITALICOワークスを利用し接客業に就職。
しかし、勤務先のお店が突然閉店することに。
今度は「好きなことを仕事にする」と決めて、車両運転のできる企業への就職を目指し再度LITALICOワークスに通ったTさん。
面接では「障害者が運転なんて難しいよ」と断られることも。それでもスタッフと二人三脚でたくさんの会社を訪ねて何度も面接を受けた末、ついに子どもの頃からの夢だった仕事に出会います。
そんなTさんに、LITALICOワークスを2回利用した理由や取り組んだこと、現在の仕事に出会うまでの求職活動や、そのとき考えていたことなどをうかがいました。
働いていた店舗が閉店。それが人生の転機に

―LITALICOワークスには、2回通ってくださいました。最初に通いはじめたきっかけは何でしたか?
特別支援学校ご卒業後、社会人になるときに就職先を探すにあたり、いろいろな企業に実習に行きたかったんです。それで、企業実習に特化しているところを探していたら、行政機関からLITALICOワークスを紹介されました。
見学に行くと、スタッフの方がみんな親切なのが印象的でした。言葉遣いもやわらかくて、「いろんなことを親身に聞いてくれそうだな」と感じました。スタッフの方々のそんな優しさが決め手となって、通うことにしました。
当時は接客の仕事がしたいと考えていて100円ショップにパートタイムで就職し、3年間働きました。
―それからどういう経緯で、LITALICOワークスに2回目に通うことになったのですか?
働いていたお店が閉店することになったんです。
当時はLITALICOワークスの就労定着支援を受けていた期間中だったので、スタッフの方に相談したらLITALICOワークスをもう1度利用することをおすすめいただいたので、また通うことにしました。
※LITALICOワークスは、利用期間や自治体の判断によって複数回利用できる場合があります。
―お店が閉まって、仕事がなくなってしまう。そのときはどういうお気持ちでしたか?
実は、前向きな気持ちでした。当時すでに、転職を考えていたからです。
100円ショップでは1日5時間、週4日働いていました。仕事が休みの日に就職活動をするつもりでしたが、仕事と両立できるか不安でした。
それが無職になり、毎日就職活動ができるようになりました。もともと、3年ぐらい前から両親と、将来の話をしていたんです。
自立するための第一歩として「お給料が20万円以上もらえて、ボーナスも年2回あって、福利厚生がしっかりしている会社に就職できるといいね」と話していました。
その目標をどう達成するかを考えていた頃に偶然、働いていたお店が閉店になり、それが人生の転機になった感じです。
次に就職するにあたっては、「長く働いて、将来は正社員に登用され、自立した生活を送る」という目標を立てました。
2回目のLITALICOワークスでは、「自分に必要なこと」を優先して身につけた

―職種の希望はありましたか?
「車両を運転する仕事がしたい」という希望がありました。
子どもの頃から乗り物が好きで、当時の夢は飛行機のパイロットになることでした。でも「車両の運転が向いている」と思っていたのと、周囲の勧めもあって、フォークリフトの資格を取りました。
それで、「運転ができる」という条件で仕事を探しました。
―LITALICOワークスの2回目の通所では、どのようなことに取り組まれましたか?
2回目の通所で利用できる期間が短い中でしたが、自分に必要なことを身につけるために、優先順位を決めて取り組みました。
週5日通っていろいろなプログラムに参加し、履歴書や職歴書の書き方、履歴書写真の撮り方などを教わりました。
報告や連絡、相談の仕方なども教わりました。前の職場では、人に聞かずに何かを勝手にやってしまうことがあったので、「周りの人たちとコミュニケーションをとって仕事ができるようになりたい」と思っていたんです。
今は、以前に比べたら「50%ぐらいは成長できたかな」と思います。
面接の練習もたくさんして、良い印象を与えられるようにすごく努力しました。
LITALICOワークスのプログラム実施中の様子。自己分析やストレスコントロールなど、日々の生活にいかせるプログラムが多数用意されている。
―LITALICOワークスに通っていて、特に印象的だったことは何でしたか?
スタッフの方が、本当に親身になって考えてくれるのが心強かったです。
「夜は眠れていますか?」「ご飯はちゃんと食べられていますか?」など、生活上のことも聞いてくれるんです。「すごく寄り添ってくれているな」と感じて、頼りになりました。
何度面接に落ちてもあきらめずにサポートしてくれて、すごく心強かった

―求職活動は、どのように進めましたか?
「特性のある人にも、車両を運転する業務を任せてくれる会社はないかな?」と思って求人を探しました。でもそういった会社は少なく、探すのに苦労しました。「とにかくたくさん面接に参加する」と決めて、頑張りましたね。
フォークリフトを運転する求人を探して、スタッフの方と一緒にいろいろな会社に行きました。
面接に行ってすぐ「障害者が運転なんて難しいよ」と言われたこともありました。私は運転はできるのですが、前例がないために「難しそう」と思われてしまうようでした。
―そのようなとき、どう思いましたか?
「プロの方がついてくれていて、よかったな」とすごく思いました。
求人を探して、面接に行って…ということを一人でできる自信がなかったので、スタッフの方に一緒にやってもらえて心強かったです。
いろいろな会社を受けて、「また落ちた」というときも、その瞬間からすぐ、次の求人を一緒に探してくださいました。すごく感謝しています。
とにかく、「好きなことを仕事にする」と決めていました。「車両の運転ができる仕事がしたい」という気持ちは最後まで変わらなかったです。
―今のお仕事には、どのようにして出会われたのですか?
スタッフの方がすごく探してくださいましたね。その中でANAエアポートサービスの求人を見つけてくれました。「すごくいいな」と思ったので応募をして、面接を2回受けたら、内定をもらうことができました。
最初の面接はオンラインで、2回目の面接は対面でしたが、全く緊張しませんでした。以前の面接でもっと怖い面接官がいらしたこともあったので、そのときの方がドキドキしていましたね。
希望していた車両関係の仕事で就職が決まって、すごくうれしかったです。
Tさんが普段お仕事されている駐機場。航空機をはじめたくさんの車両が行き来している。
―今のお仕事は、どんなことをされていますか?
ANAエアポートサービスの「ランプサービス部業務課」の、サービスデスクに所属しています。働き始めて、もうすぐ1年になります。
主な業務は車両点検ですが、現場の社員たちが快適に働けるようなサポートもしています。
例えば夏の暑いときは冷たい飲み物を配りに行ったり、事務所の中を掃除したりもします。
―やりがいを感じるのは、どんなときですか?
飛行機を見ることができるのが楽しいです。それに、乗客の方々や現場の社員たちが笑顔になってくれるのがうれしいですね。
また、飛行場で走っている特殊車両を運転するには、国土交通省の資格と社内の資格が必要なので、一生懸命勉強をして両方の資格を取りました。
いま、大好きな飛行機の間近で、車両に関わる仕事ができるようになったことがすごくうれしいです。
想像していたより、はるか上のステップまで来ることができた

―いま、就労定着支援サービスを受けてくださっていますね。相談していることはありますか?
「最近どうですか?」と聞いてくださるので、変わったことがあればお話しして、連絡事項があればお伝えいただいています。残りの時間は、雑談をしていることが多いですね。
私にとって定着支援の時間はいろんなことを見つめ直す時間になっていて、いいなと思っています。
―LITALICOワークスはTさんにとって、どんな存在ですか?
第二の恩人です。LITALICOワークスは親に次ぐ「第二の母」みたいな感じがしています。
今、子どもの頃からの夢が叶っただけでなく、想像していたよりはるか上のステップまで来れているので、よかったなと思います。
LITALICOワークスに通わなかったら夢は叶っていなかったので、「通ってよかったな」と強く感じますね。
―今後の目標や、やりたいことはありますか?
今は契約社員なので、今後は正社員になって、自立した生活を送ることが目標です。
前の仕事をしていた頃より、精神的にも肉体的にもすごく成長したと感じているんです。あとは経済的にも自立して、自分らしい生活が送れるといいなと思っています。
やりたいことといえば、公共交通機関に乗ることが趣味なので、休みの日は遠出しています。最近は、飛行機で関西に行ってきました。今度は休みを4日間いただいて、家族でベトナムへ行くんです。
あと私は、交通系YouTuberでもあるんです。スマートフォンで撮影した動画に文字を入れて配信して、登録者数や再生回数が増えるのを見て、一人で盛り上がっているんですよ。
―お仕事と趣味を両立させて、楽しんでおられるんですね。そんな働き方がしたい方に向けて、メッセージをお願いいたします。
「努力すれば、夢は叶う」と伝えたいですね。自身の経験を踏まえて、そう思います。
スタッフの方々はいろんな話を聞いてくれて、細かなところまで親身になってくれるので、LITALICOワークスをおすすめしたいです。
スタッフからのコメント
今回の2回目の就労移行支援のご利用は期間が短かったので、必要な取り組みを最優先で行いました。そのような中で、Tさんのとにかく明るく前向きなところが印象的でした。「やりたい」と思うことにまっすぐなところや、元気で体力もおありな点など、素敵なところや強みをたくさんお持ちの方だと思います。
周囲からの指摘には「ありがとうございます」と言ってすぐ直してくださるなど、お伝えする側も心地よくなるような受け答えをしてくださいました。私はTさんの1回目のご利用の時も、途中から支援させていただきました。Tさんはその頃から前職も含めて経験を積んでいかれる中で、ビジネスマナーなどの「働く」スキルをどんどん身につけていかれました。
面接に行くとTさんの素直さや明るさが相手に伝わって、相手が引き込まれていくんです。相手の心をつかむのがとてもお上手で、それもTさんの魅力だなと思います。1社目や2社目で内定が出るような就職活動ではありませんでしたが、不採用になってもすぐに「次へ、次へ」と明るく前向きに進んでいかれるTさんに、私たち支援者も支えられました。
とにかく楽しく支援させていただいたと思っています。関わらせていただいたことに感謝しています。
企業担当者からのコメント
面接時は緊張されていましたが、礼儀正しく、素直で一生懸命に受け答えをされる姿が印象的でした。
入社後も、周囲の方々に丁寧に接していらっしゃって、相手の気持ちや立場を考えて行動できる、思いやりのある方だと感じています。業務の中でミスがあった際も素直に受け止め、アドバイスをもとに改善策を自らメモに取り、振り返りを行うなど工夫されています。
一つひとつの業務に真剣に取り組み、誠実に対応されているTさん。今後は、さらに正確な知識を身につけ、自信をもって行動できるようになるといいなと思います。また、将来的に後輩ができた際には、後輩が職場で困らないように、自分の経験や知識を分かりやすく伝えていってほしいです。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。
利用していた事業所
神奈川の就労移行支援事業所 LITALICOワークス 新横浜
