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パニック障害(パニック症)とは?原因や症状などについて解説

更新日:2024/08/11

パニック障害(パニック症)(※)は、原因が分からない動悸や吐き気、手足が震えるなどの症状が起こり、日常生活や社会生活に影響をおよぼすことがあります。


パニック障害(パニック症)は決して珍しいものではなく、人生の中で経験したことがある人は1000人に6~9人の割合といわれています。

 

しかし「自身の症状は本当にパニック障害(パニック症)なのか?」「パニック障害(パニック症)の治療法はあるのか?」など、分からない方も多いのではないでしょうか。

 

そこで、今回はパニック障害(パニック症)について、原因や症状、対処法などを解説します。

 

(※)パニック障害は現在、「パニック症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「パニック障害」といわれることが多くあるため、ここでは「パニック障害(パニック症)」と表記します。

パニック障害(パニック症)とは

パニック障害(パニック症)は「不安障害」といわれる精神障害のひとつとされています。

 

身体に異常がないのにもかかわらず、呼吸が苦しくなったり、汗が出たりなどの「パニック発作」を繰り返す疾患です。

 

過去には「心臓神経症」や「過呼吸症候群」などと呼ばれていることもありました。

パニック発作について

本来、人間は災害や命の危機的状況下では、パニック発作と同じような症状が起こります。

 

例えば、心臓の音が早くなったり、冷静な判断ができなくなったりするなどです。

 

また、「じっとしていることができない」や「大声を出したくなる」などの反応が出る方もいらっしゃいます。

 

このような身体反応は、敵などの危機的な状況から逃れるために必要なものです。

 

つまり、誰もが身体に備えている、生き延びるための反応と言えるでしょう。

 

しかし、人によっては危機的状況ではないときであっても、命に危険が迫っているような不安や恐怖心を覚え、日々の生活に影響が出てしまうことがあります。

パニック障害(パニック症)は誤解されやすい?

パニック発作中は「このまま死ぬかもしれない」という恐怖感に襲われることがあります。

 

しかし、パニック障害(パニック症)の発作が直接死に繋がることはないといわれています。

 

そして、上記のことが周囲の方へ誤解されてしまうケースがゼロではありません。

 

例えば、本人は命の危機を感じるような発作を繰り返しているのにもかかわらず、周囲からは「またいつもの発作だ」と、理解を得にくい状態になる可能性があります。

パニック障害(パニック症)になりやすい人の傾向はある?

パニック障害(パニック症)の症状が起こりやすい年齢は、20~30歳代、男性に比べて女性の頻度が高いと報告されています。

 

また、パニック障害(パニック症)になりやすい人の特徴としては、下記が挙げられます。

 

  • 不安になりやすい
  • 責任感が強い
  • 真面目
  • こだわりが強い
  • 感受性が高い
  • 完璧主義
  • よく緊張する
  • 神経質
  • 他者からの悪い評価が怖い など

 

このような気質のある方が、環境やストレスなどの要因によって、パニック障害(パニック症)を起こしやすいといわれています。

 

もちろん、上記にあてはまらないからといって、パニック障害(パニック症)にならないとは言い切れません。

 

また、性格のみが原因となり発症するわけではありません。

パニック障害(パニック症)の原因

現状、パニック障害(パニック症)の原因は明確にはなっていません。

 

しかし、研究によると、パニック障害(パニック症)の発症には、脳内神経伝達物質(脳内ホルモン)の乱れが関係しているといわれています。

 

とくに注目されているのは、不安を抑えて平常心を保つ働きをもつ「セロトニン」と不安や恐怖を感じたときに血圧や心拍数を高める「ノルアドレナリン」のふたつです。

 

また、発症のきっかけとなるのは、睡眠不足や過労、ストレス、心身の不調などです。

 

さらに、家族のうち誰かがパニック障害(パニック症)になったことがあると、発症率が高まるといわれています。

パニック障害(パニック症)の症状

パニック障害(パニック症)の症状は「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つです。

 

また、パニック障害(パニック症)の症状にあてはまる場合は、自分で「大丈夫」と判断せず、必ず専門医に相談をして、適切な治療を受けるようにしましょう。

パニック発作

パニック発作は、パニック障害(パニック症)の代表的な症状です。

 

予測のできないタイミングで突然、原因の分からない恐怖や不安感に包まれます。

 

そして、下記のような身体的症状が現れることがあります。

 

  • 動悸や息苦しさ
  • 胸が痛い
  • 手足が震える
  • 吐き気
  • 冷や汗が出る
  • めまいやふらつき など

 

発作はおおよそ30分~1時間でおさまるといわれています。

 

耐えがたい息苦しさは心筋梗塞にも似ているため、救急車で運ばれるケースもありますが、パニック発作によって命に危険が及ぶことはないといわれています。

 

また、発作は繰り返し起こることがあり、最初は月に1回のペースだったはずが、月2回、月3回と増えることもあります。

予期不安

パニック発作が繰り返し起こることによって、発作が起こっていないときにも、恐怖心や不安を抱いてしまうことがあります。

 

例としては「また発作が起きるかもしれない」「次はもっと苦しかったらどうしよう」といったことが挙げられます。

 

これを「予期不安」と呼びます。

 

予期不安はパニック発作に悩む方に多く見られる症状です。

 

パニック発作が起こるたびに、徐々に強まり症状が悪化してしまうこともあります。

広場恐怖

予期不安の症状が強く出ると、特定の場所や状況を避けるケースも見られます。

 

とくに、発作時にすぐ逃げることができない場所や状況を避ける傾向があります。

 

例えば「通勤バス内で発作が起きたことがあるから、乗り物に乗りたくない」などです。

 

また、過去に発作を起こした場所が危険なところに思えて、近づくだけでドキドキしたり、吐き気を感じたりすることも起こり得ます。

 

上記のような症状が「広場恐怖」です。

 

パニック障害(パニック症)のある方は、約80%以上の割合で広場恐怖の症状が現れるといわれています。

 

症状が酷くなると、仕事や買い物のために外出することが困難になり、家にひきこもってしまう方もいらっしゃいます。

 

パニック障害(パニック症)の治療方法

パニック障害(パニック症)は、正しい治療を受けることで症状が和らぐといわれています。

 

治療方法は「薬物療法」と「精神療法」のふたつに分けられます。

薬物療法

パニック障害(パニック症)の薬物療法では、抗うつ薬や抗不安薬を使います。

 

とくに抗うつ薬のSSRIは、副作用のリスクが少なく、パニック発作だけでなく、予期不安や広場恐怖にも有効的といわれています。

 

ただし、効果が出るまでに2週間程度かかるといわれています。

 

人によっては、眠気や吐き気などの副作用があるケースも見られるため、気になる症状があった場合は、すぐに医師へ報告しましょう。

精神療法

パニック障害(パニック症)の薬物療法では、曝露療法(ばくろりょうほう)や認知行動療法が用いられます。

 

暴露療法とは、行動面に働きかけて不安に慣らしていく療法です。

 

具体的には「本人が不安を感じている場所に、あえて出向く」といったことが挙げられます。

 

もちろんいきなり現場に向かうわけではなく、治療は段階的におこなわれます。

 

また、認知行動療法は、人の認知(ものの考え方や捉え方)に働きかけて、バランスのいい思考ができる状態に整えていく療法です。

 

パニック障害(パニック症)についてしっかり理解したうえで、発作時の身体症状が起こった際に、感情をコントロールできる状態を目指していきます。

 

どちらも、薬物療法と同じくらい治療効果があるといわれています。

パニックや発作が起きた時の対処法は?

パニック発作が起こった際(もしくは起こる前)にできる対処法をご紹介します。

 

ただし、記載の内容はあくまで一例であり、発作を抑える効果を保証するものではありません。

自分でできる対処法

まずは、自分でできるパニック障害(パニック症)の対処法を4つ見ていきましょう。

 

深く深呼吸をする

パニック障害(パニック症)の症状が起こったら、深い呼吸を繰り返して、身体のなかの酸素と二酸化炭素のバランスを整えましょう。

ポイントは、なるべく呼吸のしやすい体勢をとり、ゆっくりと吸って吐くことです。

呼吸法にはいくつか種類があるため、自分がリラックスできる方法を試してみましょう。

 

意識を別のところへ向ける

パニック発作が起こると、心臓がドキドキと音を立てたように感じることがあります。

このようなときに、心臓に意識を向けると、ドキドキ感を強く感じて不安な気持ちに包まれてしまいます。

そのため、できる範囲で意識を別のところへ向けるようにしましょう。

例えば、「頭の中で1から順番に数を数える」「心の中で大好きな曲を歌う」などです。

あらかじめ自分がとりいれやすい方法をひとつ決めておきましょう。

 

出口の近くにいる

バスや電車などの乗り物に乗るときは、なるべく出口に近い場所にいるようにしましょう。

「なにかが起こっても、すぐにその場から離れられる」と思えるだけで、恐怖や不安な気持ちが軽くなるからです。

また、会社で会議があるときも、出口付近の席を選ぶなどの工夫をすることで、気持ちを楽にして発作を起こしにくくできる可能性があります。

 

生活リズムを整える

疲れが溜まったり、睡眠時間が不足したりすると、パニック発作が起こりやすくなります。

そのため、日頃から「夜更かしをしない」「無理をしない」などを心がけることが大切です。

また、カフェインが含まれるコーヒーなどの飲み物や、アルコール類を飲み過ぎると症状が悪化するといわれているため注意しましょう。

周囲の人ができる対処法

つづいて、家族や友人など周囲の人ができる対処法をご紹介します。

 

優しく声をかける

パニック発作で死ぬことはないと分かっていても、本人は強い恐怖心を感じています。

もしも、友人や家族に発作が起こったときは「大丈夫」と優しく声を掛けましょう。

ほかにも、背中をさすってあげるなど、少しでも不安を取り除けるよう手を差し伸べてあげましょう。

 

パニック障害(パニック症)について理解する

パニック障害(パニック症)は身体の病気ではないために、周囲の人から理解されにくいことがあります。

例えば、「身体に異常がないなら問題ない」などの言葉は、つらい症状に悩んでいる本人をさらに追いつめてしまいます。

そのため、パニック障害(パニック症)を正しく理解して、寄り添うことが大切です。

パニック障害(パニック症)のまとめ

パニック障害(パニック症)(パニック症)は、突然のパニック発作や予期不安、広場恐怖などの症状が出る疾患です。

 

人によっては、社会生活や日常生活に影響が出たり、うつ状態になってしまうこともあります。

 

また、パニック発作の症状は、心筋梗塞や狭心症など、ほかの病気にも似ているといわれています。

 

正しい診断を受けるためにも、身体に異変を感じている場合は早めに医師へ相談しましょう。

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更新日:2024/08/11 公開日:2022/03/15
  • 監修

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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