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不安障害(不安症)とは?種類ごとの症状や診断基準・治療方法について解説

更新日:2024/06/28

不安障害(不安症)とは、分かりやすくいうと強い不安感や恐怖心によって、生活に支障がでている状態をいいます。不安障害(不安症)にはいくつかの種類に分かれており、人によって症状の表れ方はさまざまです。例えば「人前でスピーチをしようとすると、身体が震えて話せなくなる」といった症状が挙げられます。不安障害(不安症)は、決して本人の努力不足や甘え、性格によって引き起こされるものではありません。

 

回は不安障害(不安症)の症状や診断基準、治療方法、対処法や対策について分かりやすく解説します。

 

(※)現在、診断名は「不安症」となっています。(DSM-5-TR『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』)旧診断名の「不安障害」で診断された方も多いため、本記事では「不安障害(不安症)」の名称を使用します。

不安障害(不安症)とは

まずは、不安障害(不安症)がどのようなものなのか解説します。

そもそも「不安」とは?

もともと人間が不安を感じることは、おかしなことではありません。不安を感じることで、危機に備えたり、危険を回避したりすることができます。

 

つまり、大勢の人の前で話さなくてはいけない会議の前や、大切な試験の前に緊張するのはごく自然なことといえるでしょう。また、人によっては環境が変わる前や、初めての場所に行く際に不安になることもありますが、これらも人間にもともと備わっている自然な反応です。

 

上記のことからも「不安を感じる=必ずしも不安障害(不安症)である」とは言い切れないことが分かります。

不安や恐怖心を強く感じる場合

もしも、不安や恐怖心によって、仕事のパフォーマンス(能力)が落ちていたり、人間関係に悪い影響を与えていたりする場合は不安障害(不安症)の可能性があります。「人と比べて、不安を強く感じすぎていないか?」というところも判断するポイントのひとつです。また、不安障害(不安症)はいくつかの種類に分かれています。それぞれの不安障害(不安症)にどのような症状があるのか、次の項目でご紹介します。

不安障害(不安症)の種類ごとの症状

不安障害(不安症)は主なものとして「パニック症」全般不安症」「社交不安」「限局性恐怖症」などが挙げられ、種類によってそれぞれ症状が異なります。不安障害(不安症)の症状について、種類(分類)ごとに解説します。

パニック症

パニック症とは突然理由もなく、動機やめまい、手足の震えなどのパニック発作があらわれて、日常生活や社会生活に困難が出ている状態のことをいいます。パニック発作としては以下のようなものがあります

  • 動悸
  • めまい
  • 発汗
  • 窒息感
  • 吐き気
  • 手足の震え など

パニック症ではパニック発作以外にも「予期不安」や「広場恐怖」が表れることがあります。

 

予期不安とはパニック発作を繰り返すことで、「また発作が起きるのではないか」「次はもっと強いのではないか」といった不安が強くなっている状態のことです。

 

広場恐怖とは、特定の場所に行くことに不安や恐怖を覚えて、その場所に行くことが困難になる状態のことです。場所は「広場」に限定されているわけではなく、例えば電車の中でパニック発作が起きたことがきっかけで電車に乗ることに恐怖を感じて避けるようになった場合は、「電車」に対して広場恐怖を抱いているということになります。

 

パニック症の治療では、薬物治療とともに心理療法がおこなわれることが多くあります。その中でも認知行動療法の「暴露療法」などで治療をおこなっていきます。

全般不安症

全般不安症は、職場や日常のさまざまな場面で不安を感じる症状が表れます。また、会社や家庭のことだけでなく、例えば、自然災害や紛争など、自分に直接関係すること以外も含めて、あらゆるものが不安の原因となることがあります。

 

具体的な症状の例は下記の通りです。

  • 小さなことで不安になる
  • そわそわとする
  • 疲れやすい
  • 頭痛や肩こり
  • 集中力が悪くなる
  • イライラとしてしまう
  • 夜中に目が覚めてしまう など

このように、精神面だけでなく、身体的な症状も表れるため、日常生活に支障が生じることがあります。

社交不安症

人から注目を浴びることや、誰かの前で恥ずかしい思いをすることに対して必要以上に恐怖や不安を感じます。そのため、人との会話が怖いだけでなく、人が多くいる場所にいること自体がつらくなる場合もあります。

 

例えば、周りに多くの人がいるときに、下記の症状が表れることがあります。

  • 頭が真っ白になる
  • 声が出なくなってしまう
  • 思った通りに話ができない
  • 胃のむかつきや吐き気がある
  • 顔が赤くなる
  • 手足や声が震える
  • 冷汗が出る など

また、上に挙げた症状が繰り返し表れることで、目立つことを避けたり、電話にでなくなったり、学校や職場へ行けなくなったりする可能性が考えられます。

限局性恐怖症

限局性恐怖症があると、あるものごとに対して、必要以上に恐怖心を感じることがあります。実際には危険ではないと分かりながらも、自分で恐怖や不安をコントロールすることができません。恐怖の対象となるものは人によってさまざまです。

  • 高いところ
  • 狭いところ
  • 尖ったもの
  • 動物や昆虫
  • 血液
  • 水場などの自然 など

また、限局性恐怖症は過去の出来事がきっかけとなり、発症する場合もみられます。例えば「犬に噛みつかれた経験から犬が怖くなる」などです。恐怖を感じるものごとや状況によっては、あらかじめ避けて生活することが可能です。しかし、恐怖心を感じることで、生活に影響が出たり、仕事に支障をきたしたりする場合もゼロではありません。

 

このような場合、限局性恐怖症と診断される場合があります。

不安障害(不安症)は自分でチェックできる?

インターネット上には、不安障害(不安症)の症状をチェックできるWebサイトがあります。ただし、これらは不安障害(不安症)の可能性を確かめるもので、正式な診断結果を表しているわけではありません。

 

そのため、自己チェックで判断せず、「不安障害(不安症)かもしれない」と思った場合は、必ず専門医による診断を受けましょう。

不安障害(不安症)の原因

現時点で不安障害(不安症)のはっきりした原因は分かっていません。ここでは、不安障害(不安症)の原因として考えられる要因について紹介します。

 

冒頭で紹介したように、仕事や人間関係などで日常生活で何らかの不安を感じることは誰にでもあることです。その不安が強く出たり長期間続くことで、生活に大きな影響があらわれてはじめて不安障害(不安症)の可能性が出てきます。

 

不安障害(不安症)につながる要因といわれているものを「身体的な状態」「精神的な状態」に分けて紹介します。

身体的な状態

身体的な疾患やそれに伴う薬の使用など、身体的な状態が影響して不安障害(不安症)が発症することがあるといわれています。

 

身体的な疾患としては「心不全」「不整脈」などの心臓の疾患や、ホルモン(内分泌系)の疾患、喘息などの呼吸器系の疾患などがあります。また、さまざまな疾患に対して薬の使用や、薬を中止したときの離脱症状によっても不安が生じる可能性が考えられています。

 

もちろん、疾患や薬の使用などである程度不安を感じること自体は自然な反応といえます。しかし、疾患による生命の影響などに強く不安を覚える場合は、早めに主治医に相談するようにしましょう。

精神的な状態

次に、精神的な状態についてみていきます。何かストレスとなる出来事や場面に遭遇して、強く不安を感じることが多いなど、精神的な状態も不安障害(不安症)の要因になると考えられています。

 

ストレスは人前で話すといった日常的に感じることもあれば、災害など大きな出来事に遭遇して強く感じることもあります。しかし、同じ場面でもどの程度不安を感じるかは人それぞれ異なっています。人前で話すことに強い不安を覚える方もいれば、逆に楽しみを感じる方もいます。また、そういった場面に慣れることや対処法を身につけていくことによっても変わってくるでしょう。

 

また、生命の危機を感じるような出来事(トラウマとも呼びます)を感じた後に心身の不調が表れた場合は不安障害(不安症)ではなく、PTSD(心的外傷後ストレス症)など別の診断名がつくことがあります。

 

不安障害(不安症)とPTSD(心的外傷後ストレス症)では治療方法も異なるため、気になることがある場合は自分で判断せずに専門医の診断を受けるようにしましょう。

不安障害(不安症)の診断基準

この章では、不安障害(不安症)のそれぞれの診断基準について解説します。

パニック症の診断基準

パニック症になると、常にパニック発作が再度起こることを心配したり、発作のきっかけとなりえる状況を回避しようと行動したりします。

 

パニック発作は、突然激しい恐怖や不快感をおぼえ、数分以内にさまざまな症状が生じます。

 

症状としては、動悸・心拍数増加、発汗、震え、息切れ感、窒息感、胸部の不快感、吐き気、めまいや寒気など身体症状のほか、どうにかなってしまうのではないかという恐怖、死への恐怖などを感じる場合もあります。

全般不安症の診断基準

全般不安症では、日常生活の多くの出来事、または活動において、まだ起きてもいないうちから、過剰な不安や心配を感じる状態となります。この時、焦燥、注意散漫、集中困難、緊張、疲労、易怒性、睡眠障害などの症状がみられ、社会生活や職業生活に問題が生じることがあります。また、その状態が6ヶ月以上続きます。

社交不安症の診断基準

社交不安症には、他者から注視される可能性のある場面への強い恐怖・不安の症状があります。

 

社交不安症になると、とくに他者の注目が集まるような社交場面では、他者に悪く思われないか過度に恐れ、回避しようとし、その行動によって社会生活において障害を引き起こします。そして、その状態が6ヶ月以上続きます。

限局性恐怖症の診断基準

限局性恐怖症では、ある特定の対象や状況(例:高所、閉所、動物、昆虫、注射など)に置かれた際、ほぼ常に、そして即時に激しい不安や強烈な恐怖を感じ、その状況を回避しようとする状態となります。また、その状態が6ヶ月以上続きます。

不安障害(不安症)の治療方法

不安障害(不安症)の治療方法は、不安障害(不安症)を根本的にとりのぞくというものではありません。日々の生活へ支障をきたす症状を和らげる目的でおこなわれます。治療方法は大きく、薬物療法と精神療法のふたつに分かれています。

薬物療法

不安障害(不安症)の発症には、うつ病と同じく「セロトニン(脳内の神経伝達物質)」が、影響しているといわれています。そのため、薬物療法では抗うつ剤や抗不安剤が使われます。

精神療法

精神療法では、不安をコントロールする「認知行動療法」をおこなうことがあります。認知行動療法とは、認知(ある出来事に対しての受け取り方や見方のこと)に働きかけて、バランスのいい考え方ができるようにしていく療法のことです。より柔軟な思考ができるようになることで、ストレスや不安を和らげる効果に期待できます。

不安障害(不安症)の対処法や対策は?

この項目では、不安障害(不安症)のある方が仕事をするうえで意識したいポイントをご紹介します。

気になることは医師へ相談する

かかりつけの医師に、日常生活や症状のことだけでなく「どのような仕事をしているのか?」や「職場の環境について」なども伝えておくことをおすすめします。また「話を聞いてもらっている」という状況が、不安を減らすことへもつながるため、気になることがあった場合は医師に相談してみるといいでしょう。

生活習慣を見直す

栄養バランスを考えた食事や十分な睡眠、適度な運動などは、身体だけでなく心を整えるためにも大切な要素です。とくに、生活リズムが乱れてしまうと、夜に眠れなくなったり、体調が悪くなったりする可能性があるため要注意です。食事の時間や睡眠時間はなるべく一定に保つように心掛けましょう。

出勤時のストレスを減らす

電車やバスの人混みがストレスになる場合は、時差出勤や在宅勤務の制度を利用しましょう。会社にそのような制度がないときは、できる範囲で利用者が少ない電車やグリーン車などに乗ることで混雑を避ける方法もあります。

 

しかし、ずっと回避することで社会生活に支障が出ると困りますので、家族や友人の協力を得て電車に同伴してもらうなど、段階的に取り組んでいくことも大切です。

リラックス方法を見つけておく

少しでも「不安な状態になりそう」と感じたら、すぐにリラックス方法を実践しましょう。例えば「深呼吸をする」「ストレッチをする」などが挙げられます。とくに深い呼吸は、リラックスに影響する副交感神経の働きを良くする効果があるため、日常的に取り入れるとよいでしょう。

 

上記に挙げられたポイントを抑えながら仕事を続けている方でも、その症状によっては「仕事がつらい」と感じることがあります。そういった場合は、かかりつけの医師に相談して、休職や退職も合わせて検討しましょう。

就職する際は支援の利用を検討する

仕事がつらく退職を検討しているものの「別の会社に就職できるか不安」と感じることもあるかもしれません。そのようなときは、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などの支援機関を利用しましょう。

 

まず、ハローワークには障害や疾患がある方をサポートする窓口(専門援助部門)があります。また、障害者就業・生活支援センター(生活や就労について一体的な相談ができる支援機関)、就労移行支援事業所(一般企業への就職を目指す障害や疾患がある方の支援をおこなう機関)を活用することもできます。

 

ただし、受けられる支援は施設によってさまざまです。そのため、自身の悩みや症状に合わせて選ぶ必要があります。もし迷ってしまった場合、身近にあるお住まいの市区町村の障害福祉窓口センターへ相談してみるといいでしょう。

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不安障害(不安症)のまとめ

不安障害(不安症)は、誰にでも起こりうる可能性があるものです。

 

そのため、もしも強い恐怖や不安感が生活に支障をきたしている場合は我慢しすぎず医療機関へ相談することが大切です。また、不安障害(不安症)は薬や精神療法で症状を和らげることもできるため、症状と付き合いながら仕事を続けている方もいます。

 

かかりつけの医師や、可能であれば職場の上司や同僚と相談し、なるべく心身への負担を減らしながら仕事を続けることが大切です。

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LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」を運営しており、全国で不安障害(不安症)の方の就職と定着の支援をしています

 

具体的には、体調安定やストレスコントロールなどのプログラムや職場への体験実習(インターンシップ)、就職活動のサポート、就職後の定期面談などをおこなっています。

 

不安障害(不安症)があり、働くことでのお悩みがありましたら、ぜひ一度LITALICOワークスにご相談ください。

 

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参考文献・URL

更新日:2024/06/28 公開日:2022/02/07
  • 監修

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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