
「不安障害」とは、強い不安感や恐怖心によって、生活に支障がでている状態をまとめて表す呼び方のことです。
いくつかの種類に分かれており、人によって症状の現れ方はさまざまです。
例えば、「人前でスピーチをしようとすると、体が震えて話せなくなる」といった症状が挙げられます。
不安障害は、決して本人の努力不足や甘え、性格によって引き起こされるものではありません。
今回は不安障害の症状や診断基準、治療方法についてわかりやすく解説します。
「不安障害」とは、強い不安感や恐怖心によって、生活に支障がでている状態をまとめて表す呼び方のことです。
いくつかの種類に分かれており、人によって症状の現れ方はさまざまです。
例えば、「人前でスピーチをしようとすると、体が震えて話せなくなる」といった症状が挙げられます。
不安障害は、決して本人の努力不足や甘え、性格によって引き起こされるものではありません。
今回は不安障害の症状や診断基準、治療方法についてわかりやすく解説します。
まずは、不安障害がどのような障害なのか解説します。
もともと人間が不安を感じることは、おかしなことではありません。
不安を感じる事で、危機に備えて準備したり、危険を回避したりすることができます。
つまり、大勢の人の前で話さなくてはいけない会議の前や、大切な試験の前に緊張するのはごく自然なことといえるでしょう。
また、人によっては環境が変わる前や、初めての場所に行く際に不安になることもありますが、これらも人間に元々備わっている自然な反応です。
上記のことからも「不安を感じる=必ずしも不安障害である」とは言い切れないことがわかります。
もしも、不安や恐怖心によって、仕事のパフォーマンス(能力)が落ちていたり、人間関係に悪い影響を与えていたりする場合は不安障害の可能性があります。
「人と比べて、不安を強く感じすぎていないか?」というところも判断するポイントのひとつです。
また、不安障害はいくつかの種類にわかれています。
それぞれの不安障害にどのような症状があるのか、次の項目でご紹介します。
自身にあてはまる項目がないか、チェックしてみましょう。
不安障害は主なものとして「全般性不安障害」「社会不安障害」「パニック障害」「限局性恐怖症」などが挙げられ、種類によってそれぞれ症状が異なります。
不安障害の症状について、種類(分類)ごとに解説します。
全般性不安障害は、職場や日常のさまざまな場面で不安を感じる症状が現れます。
また、会社や家庭のことだけでなく、例えば、自然災害や紛争など、自分に直接関係すること以外も含めて、あらゆるものが不安の原因となることがあります。
具体的な症状の例は下記の通りです。
このように、精神面だけでなく、身体的な症状も現れるため、日常生活に支障が生じることがあります。
社会不安障害は社交不安障害とも呼ばれます。
人から注目を浴びることや、誰かの前で恥ずかしい思いをすることに対して必要以上に恐怖や不安を感じます。
そのため、人との会話が怖いだけでなく、人がたくさんいる場所にいること自体が辛くなるケースもあります。
例えば、周りに沢山の人がいるときに、下記の症状が現れることがあります。
また、上に挙げた症状が繰り返し現れることで、目立つことを避けたり、電話にでなくなったり、学校や職場へ行けなくなったりする可能性が考えられます。
パニック障害とは突然理由もなく、動機やめまい、手足の震えなどのパニック発作が現れて、日常生活や社会生活に困難が出ている状態のことをいいます。
パニック発作としては以下のようなものがあります
パニック障害ではパニック発作以外にも「予期不安」や「広場恐怖」が現れることがあります。
予期不安とはパニック発作を繰り返すことで、「また発作が起きるのではないか」「次はもっと強いのではないか」といった不安が強くなっている状態のことです。
広場恐怖とは特定の場所に行くことに不安や恐怖を覚えて、その場所に行くことが困難になる状態のことです。場所は「広場」に限定されているわけではなく、例えば電車の中でパニック発作が起きたことがきっかけで電車に乗ることに恐怖を感じて避けるようになった場合は、「電車」に対して広場恐怖を抱いているということになります。
パニック障害の治療では、薬物治療とともに心理療法が行われることが多くあります。その中でも認知行動療法の「暴露療法」などで治療を行っていきます。
恐怖症があると、あるものごとに対して、必要以上に恐怖心を感じることがあります。
実際には危険ではないとわかりながらも、自分で恐怖や不安をコントロールすることができません。
恐怖の対象となるものは人によってさまざまです。
また、恐怖症は過去の出来事がきっかけとなり、発症するケースも見られます。
例えば「犬に噛みつかれた経験から犬が怖くなる」などです。
恐怖を感じるものごとや状況によっては、あらかじめ避けて生活することが可能です。
しかし、恐怖心を感じることで、生活に影響が出たり、仕事に支障をきたしたりするケースもゼロではありません。
このような場合、限局性恐怖症と診断されるケースがあります。
インターネット上には、不安障害の症状をチェックできるサイトがあります。
ただし、これらは不安障害の可能性を確かめるもので、正式な診断結果を表しているわけではありません。
そのため、自己チェックで判断せず、「不安障害かもしれない」と思った場合は、必ず専門医による診断を受けましょう。
不安障害の診断基準についてアメリカ精神医学会によって出版された「DMS-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)」を基準にしてご紹介します。
「DMS-5」には、世界共通で使用されている精神疾患の診断基準が書かれています。
まずは、全般性不安障害の診断基準についてご紹介します。
上記に該当する場合、全般性不安障害と診断されることがあります。
つづいて、社会不安障害の診断基準についてご説明します。
上記の10項目を満たした場合、社会不安症と診断されることがあります。
パニック障害の診断基準はパニック発作が生じていることと、パニック発作が起きる心配があるか、または発作を避けるような行動をとることが1ヶ月以上続いていることになります。
そしてパニック発作とは、突然激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こることをいいます。
限局性恐怖症の診断基準は下記の7項目です。
あるものごとや状況に対して強い恐怖があったとしても、日常生活や社会生活に影響が出ていない場合、恐怖症と診断されることはありません。
不安障害の治療方法は、不安障害を根本的にとりのぞくというものではありません。
日々の生活へ支障をきたす症状を和らげる目的で行われます。
治療方法は大きく、薬物療法と精神療法のふたつに分かれています。
不安障害の発症には、うつ病と同じく「セロトニン(脳内の神経伝達物質)」が、影響していると言われています。
そのため、薬物療法では抗うつ剤や抗不安剤が使われます。
精神療法では、不安をコントロールする「認知行動療法」を行うことがあります。
認知行動療法とは、認知(ある出来事に対しての受け取り方や見方のこと)に働きかけて、バランスの良い考え方ができるようにしていく療法のことです。
より柔軟な思考ができるようになることで、ストレスや不安を和らげる効果に期待できます。
この項目では、不安障害のある方が仕事をするうえで意識したいポイントをご紹介します。
かかりつけの医師に、日常生活や症状のことだけでなく「どのような仕事をしているのか?」や「職場の環境について」なども伝えておくことをおすすめします。
また「話を聞いてもらっている」という状況が、不安を減らすことへも繋がるため、気になることがあった場合は医師に相談してみると良いでしょう。
栄養バランスを考えた食事や十分な睡眠、適度な運動などは、体だけでなく心を整えるためにも大切な要素です。
とくに、生活リズムが乱れてしまうと、夜に眠れなくなったり、体調が悪くなったりする可能性があるため要注意です。
食事の時間や睡眠時間はなるべく一定に保つように心掛けましょう。
電車やバスの人混みがストレスになる場合は、時差出勤や在宅勤務の制度を利用しましょう。
会社に上記のような制度がないときは、できる範囲で利用者が少ない電車やグリーン車などに乗ることで混雑を避ける方法もあります。
少しでも「不安な状態になりそう」と感じたら、すぐにリラックス方法を実践しましょう。
例えば「深呼吸をする」「ストレッチをする」などが挙げられます。
とくに深い呼吸は、リラックスに影響する副交感神経の働きを良くする効果があるため、日常的に取り入れると良いでしょう。
上記のポイントを抑えながら仕事を続けている方でも、その症状によっては「仕事が辛い」と感じることがあります。
そういった場合は、かかりつけの医師に相談して、休職や退職も合わせて検討しましょう。
仕事が辛く退職を検討しているものの「復職できるか不安」と感じることもあるはずです。
そのようなときは、ハローワークや就労支援事業所などの支援機関を利用しましょう。
まず、ハローワークには障害や疾患がある方をサポートする窓口(専門援助部門)があります。
また、就労支援事業所(一般企業への就職を目指す障害や疾患がある方の支援を行う機関)を活用することもできます。
ただし、受けられる支援は施設によってさまざまです。
そのため、自身の悩みや症状に合わせて選ぶ必要があります。
例えば、「LITALICOワークス」では、職場体験実習や就労後のフォローなどを通して、働きたい方をサポートしています。
働くことでのお悩みがありましたら、ぜひ一度LITALICOワークスにご相談ください。
不安障害は、誰にでも起こり得る可能性があるものです。
そのため、もしも強い恐怖や不安感が生活に支障をきたしている場合は我慢や自己判断のみに頼らずに、医療機関へ相談することが大切です。
また、不安障害は薬や精神療法で症状を和らげることもできるため、症状と付き合いながら仕事を続けている方もいます。
かかりつけの医師や、可能であれば職場の上司や同僚と相談し、なるべく心身への負担を減らしながら仕事を続けることが大切です。
LITALICOワークスでは、全国で不安障害のある方の就職と定着の支援を行ってまいりました。
不安障害があり、働くことにお悩みのある方は「就労移行支援」を活用することで、自分らしくそして安心して長く働くことができるかもしれません。
就労移行支援のことをもっと詳しく知りたい方は以下より資料をダウンロードしてみてください。
監修
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
関連ページ
不安障害を抱える方の仕事の悩み・解決策・復帰方法まとめ
不安障害とは、不安を主症状とする精神疾患の総称です。代表的なものに、パニック障害や社会不安障害、強迫性障害などがあります。はっきりした理由の有無に関わらず、強い不安を感じたり、その状態がしばら … [続きを読む]
初めての精神科で不安な方へ|初診の流れ・費用・診察内容について解説
「精神科には行ったことがなくて不安」 「何を話せばいいのか分からない」 「精神科ってどんな治療を受けるの?」 初めて精神科を受診する場合、よく知らないために不安な点がある方もいる … [続きを読む]
情緒不安定とはどんな状態?症状や原因・対処法について解説
情緒不安定とは、イライラしたり急に涙が出るなど感情の起伏が激しい精神状態の事をいいます。 誰でも感情の波はありますが、情緒不安定となると感情の急激な変化や激しさによって、仕事や生活にも影響が出 … [続きを読む]
対人恐怖症(社交不安症)の症状・原因は?診断基準や治療方法・仕事を続ける上で大切なことを解説
「対人恐怖症(社交不安症)」のある方は、人とコミュニケーションをとるときに、過剰に緊張したり、話すことが困難に感じ、苦痛を感じることがあります。 対人恐怖症は、早めに症状に気が付 … [続きを読む]