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お役立ち仕事コラム

聴覚障害とは?難聴の等級や特徴、仕事上のコミュニケーションの工夫などご紹介

更新日:2024/08/09

聴覚障害は、音が聞こえにくい あるいは 聞こえない状態のことをいいます。

 

聴覚障害は人によって症状や聞こえ具合の状況はさまざまですが、日常生活や仕事をするうえで必要な「コミュニケーション」に影響を及ぼす場合があります。

この記事では、聴覚障害の特徴や難聴の種類・等級をはじめ、コミュニケーション方法や仕事上の対処法をご紹介します。

聴覚障害とは?聞こえの仕組みや難聴の種類を解説

聴覚障害とは

聴覚障害とは音を伝えるための外耳・中耳や、音を感じとるための内耳などに何かしらの障害があるために、耳が聞こえにくい・聞こえない状態であるといわれています。

※広義では、難聴・聴力障害だけではなく、耳鳴りや二重に聞こえる複聴など含まれることもあります。

 

聴覚障害とは?耳の構造のイメージ画像

 

耳の構造は外耳・中耳・内耳で成り立っています。

外耳では音を集め、中耳では鼓膜や耳小骨などによって音の振動を伝え、内耳ではその音の振動を電気信号に変換し、脳へ伝えることで、音が聞こえるようになります。

 

ところが、このいずれかの部位に異常が起きると難聴が発症してしまう可能性があります。難聴の種類は大きく分けて主に「伝音難聴」「感音難聴」があります。また伝音難聴と感音難聴が合わさった「混合性難聴」もあります。

  • 伝音難聴
    音を伝える役割のある外耳と中耳に何らかの問題が起きること。一般的に難聴となるような原因を特定した上、適切な治療をおこなえば、聴力の回復が期待できるといわれている。
  • 感音難聴
    音を感じとる役割のある内耳・聴神経・脳に何らかの問題が起きること。一般的に伝音難聴と比べ、原因が不明なことが多く治療が難しいといわれている。

耳が聞こえにくい原因や疾患、発症時期などは人によってさまざまです。遺伝が原因で生まれつき聞こえない方もいれば、成人後に難聴になった方もいます。

難聴の程度(レベル)や等級について

難聴の程度(レベル)について

難聴の程度(レベル)は「軽度」「中等度」「高度」「重度」があり、聴力レベルを表す「dB(デシベル/音の強さ(音圧)を表す単位)」が大きければ大きいほど、難聴の程度が大きくなります。

 

【聴覚障害】難聴(聴覚障害)の程度分類について
日本聴覚医学会「難聴対策委員会報告 ‐難聴(聴覚障害)の程度分類について‐」を基に作成

身体障害者手帳の等級について

聴覚障害の程度に応じて、以下の等級の身体障害者手帳が発行されます。

 

聴覚障害の等級

「身体障害者福祉法施行規則別表第五号(第五条関係)」の身体障害者障害程度等級表を基に作成

 

身体障害者手帳が発行されると、公共料金の割引や税金の軽減、障害者雇用への応募などが受けられます。ただし、障害者手帳の種類・等級・所得状況などによってサービスの内容が異なります。詳細はお住まいの市区町村の障害福祉窓口へご確認ください。

聴覚障害のある方のコミュニケーション方法・工夫

コミュニケーション方法

聴覚障害のある方が円滑にコミュニケーションを進めるために、視覚情報も活用していきます。

  • 筆記(筆談/PC入力など)
    話す言葉を文字にして伝える方法です。手話や指文字を知らない方もいるため、一般的にこの方法を用いてコミュニケーションを取ることが多いです。また、音声を文字化する音声認識アプリの活用もおすすめです。
  • 手話
    手を中心に、顔や目、身体の動きなどで表して伝える方法です。
  • 指文字
    手指のきまった形が、ひらがなの1つひとつを表して伝える方法です。
  • 読話
    相手の口の動きや表情、身振り、会話場面の状況を見ながら、視覚的に読み取ることに加え、前後の文脈などをヒントに推測して、話の内容を理解する方法です。

これらのコミュニケーション方法を場面に応じて使い分けをしていくことが多いです。

 

(例)
・双方が手話できる場合、手話を用いてコミュニケーションを取る
・読話によるコミュニケーションを中心に、聞き取れなかったところは筆談を用いる

コミュニケーションの工夫

相手と円滑にコミュニケーションを進めるためには「相手にどうしてほしいのかを伝える」ことが大切です。相手は、自分がどのように聞こえているのか目で見えないため、自分のことを具体的に伝えられるといいでしょう。

 

例えば、以下のようなものがあります。

  • どのようなコミュニケーション方法がいいか
  • 相手にはどれくらいの声でどれくらいのスピードで話してもらえるといいか
  • 周りの環境がどのような時に聞き取りやすく聞き取りにくいのか
  • 聞き取りにくい場合はどのように発信するといいか など

周りの方のコミュニケーションの工夫

聴覚障害と聞くと、耳が聞こえないというイメージが持たれやすいですが、実際には人によって聞こえ方やコミュニケーション方法が異なります。また、聞こえの反応は一定ではなく、そのときの周りの環境や場面によって変わります。

 

伝音難聴は治療や補聴器で聞き取りが改善することが多いですが、感音難聴は補聴器など使って音を大きくしても聞き取りが難しいことが多いといわれています。例えば、「いい天気ですね」を「い×天××すね」のようにぼやけて聞こえることもあります。

 

そのため、まずはその方にとってやりやすいコミュニケーション方法などを確認するといいでしょう。特に感音難聴の場合、補聴器で音が聞こえても聞き取りにくい場合もあります。そのため、大声で話すという配慮ではなく、視覚情報を最大限に活用していくこと・分かりやすい話し方をすることがポイントです。工夫としてできることを以下に挙げます。

 

【視覚情報を活用する工夫】

  • 顔、口の形や表情、動作を聴覚障害のある方に見えるように面と向かって話す
  • 可能な範囲でジェスチャーを使って話す
  • 伝わらなかった場合、筆談や音声認識のツールなど用いる など

【分かりやすい話し方をする工夫】

  • ゆっくりはっきりと話す
  • 適宜、文節や句単位で区切って話す
  • 話題を変えるタイミングで認識があっているかどうか、一緒に確認する など

聴覚障害のある方が仕事で困ることとは?その対処の事例

聴覚障害のある方が働くうえでよく困ることと対処の事例をご紹介します。

 

聴覚障害仕事で困ること

 

特に、仕事を円滑に進めるために、以下の観点を意識するとよいでしょう。これから働くうえでの工夫として、ぜひ参考してみてください。

 

聴覚障害仕事で困ること

 

もしかしたら、中には「コミュニケーションにおける配慮を相手にお願いすることを恐縮してしまう」「配慮を伝えてもなかなか改善ができていない」というお悩みがあるかもしれません。

 

円滑に仕事を進めるためには、障害の有無にかかわらず、双方の認識を合わせたコミュニケーションが必要です。そのため、何度も聞き直すことを恐縮して分かったふりをして仕事を進めてしまうと、双方の認識がずれて仕事の振り出しに戻ってしまう可能性があります。

 

特に聴覚障害の場合「今の話がどれだけ聞き取れたか」というところは自分にしか分かりません。また、配慮してほしいポイントを相手に伝えたとしても、相手は無意識についつい早く話してしまったりする場合もあります。そのため、聞き取れなかった時は遠慮せず「どんな時に聞き取れて、聞き取れなかったか」を伝えましょう。その上、双方にとってよりよいコミュニケーションに向けて試行錯誤をしていくことが大切です。

 

また、相手にお願いばかりで恐縮してしまうという気持ちがある場合、まず自分ができることに目を向けてもいいかもしれません。例えば「電話対応は難しいけど、メール対応は率先して対応する」「会議にとってもらった筆談の内容を議事録に起こして、みんなに共有する」などがあります。双方助け合いながら、仕事を進めていけるとよりお願いしやすくなるかもしれません。

 

それでも改善されず困っている場合、1人で抱え込まず、会社で相談できる方(例:上司、産業カウンセラーや人事担当者など)や外部の支援機関などへ相談してみてください。外部の支援機関については、次の章でご紹介します。

聴覚障害のある方が働くうえで活用できる支援機関などご紹介

仕事で円滑にコミュニケーションがとれない、相手のサポートがなかなか得られないといったようなお悩みや困りごとがある場合、「働く」をサポートする支援機関を活用することを検討してもいいでしょう。ここでは支援機関の一部をご紹介します。

聴覚障害者情報センター

日常生活やコミュニケーションの困りごとについて相談ができる場所です。コミュニケーションに困りごとがある場合、まずはそこで相談してみてもいいでしょう。

※お住まいによって、名称が異なります。

障害者就業・生活支援センター

就労面と生活面における一体的な相談・支援をおこなっている場所です。就職と生活、両方とも相談をすることができます。お近くの障害者就業・生活支援センターについては以下から確認することができます。

ハローワーク

自分に合う求人を探したいと思ったときに使える公共機関です。ハローワークは「一般窓口」だけではなく「障害者窓口」もあります。中には手話通訳士が配置しているところもあります。

 

求人紹介のほか、就職相談やセミナーなども実施しています。自分に合う求人を探したいと思っている方は、まずはハローワークに相談してみてもいいでしょう。お近くのハローワークについては以下から確認することができます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業への就労を目指す障害のある方に対して、求職から就職までの一連の過程をサポートをおこなう事業所です。自己分析や企業インターン、面接などの就職活動だけではなく、就職した後も長く働き続けるようサポートをおこなっています。自分らしく長く働き続けたいと思っている方はそこで相談してもいいでしょう。

 

LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」のサービスを提供しています。そのひとりに合う「働く」をみつけ、そのひとりらしい「やりがい・楽しみ」をみつけられるようサポートしています。聴覚障害のある方の就職事例について次の章で簡単にご紹介します。

就労移行支援事業所について詳しく分かる資料を1分でダウンロードする

【事例】就労移行支援事業所を利用して就職された聴覚障害のあるAさん・Bさん

ここでは、実際に就労移行支援事業所を利用されたAさん・Bさんが就職に向けて取り組んだことを簡単にご紹介します。

※プライバシー保護のため一部の文章について変更・事実を再構成しています。

●Aさん(両耳補聴器着用)

【就労移行支援事業所を利用したきっかけ】
今まで職場で働いたことがないため、初めての就職活動に不安があったこと、また職場で必要なサポートが分からなかったため、就労移行支援事業所を利用することになりました。

 

【就労移行支援事業所で取り組んだこと】
コミュニケーションを円滑に進めるための練習をしました。例えば、グループワークへ参加し、音声認識アプリを使って自分にとって使いやすいかどうかを確認したり、就労支援スタッフに文字起こしをお願いしていました。また企業見学会などへ参加し、まずは自分で聞いてみて、どれくらい理解できたのか、どれくらい認識があっているのか、スタッフと確認をしていきました。

 

【就職活動、その後について】
就職活動では、事前に耳が聞こえにくいことを伝えた上、面接では筆談を中心に対応してもらいました。企業側の了承があれば、就労支援スタッフに同席してもらい、隣で文字情報を起こしてもらいました。就職活動をした結果、市役所のチャレンジ雇用(※)で内定を得ることができました。現在は市役所でデータ入力などの業務を主に担当しています。上司からの業務指示はチャットで、1対1で話すときは音声認識アプリや透明マスクを使ってもらいながら、働いています。

 

(※)チャレンジ雇用とは…障害のある方が国や地方公共団体の機関で働いた経験を活かし、一般企業への就職につなげる制度です。

●Bさん(両耳補聴器着用)

【就労移行支援事業所を利用したきっかけ】

前職(接客業)のときに突発性難聴が発症し、退職しました。それから身体障害者手帳を取得し、障害者雇用で転職活動をしていましたが、うまくいかず、就労移行支援事業所の利用を始めました。

 

【就労移行支援事業所で取り組んだこと】
突発性難聴のため、これまで耳で聞いていたものが難しくなり、自分に合うコミュニケーションが分からない状態でした。そのため、自分に合うコミュニケーション手段を探ることから始めました。例えば、グループワークに参加して口を読む練習をしたり、聞き取りにくい時はどのような場面でどのようなサポートがあるといいのかを就労支援スタッフと一緒に確認をしました。そうしていくうちにBさんは「1対1の会話では口頭でのコミュニケーションができる」「複数人数での会話では文字起こしするアプリと併用するとやりやすい」といったように、場面に応じて自分に合うコミュニケーション方法を整理しました。

 

【就職活動、その後について】
Aさんと同様、事前に耳が聞こえにくいことを伝えた上、面接では口頭・筆談を併用しました。就労移行支援事業所で整理したコミュニケーション方法を活かし、採用前の企業インターンでも双方認識をすり合わせながら仕事をすることができました。その結果、その会社の事務職に就職することができました。現在の職場では、会議中は音声認識ツールをうまく活用したりしながら、自分らしく働けています。

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聴覚障害と仕事のまとめ

聴覚障害とは、耳が聞こえにくい・聞こえない状態であるといわれています。

 

特に聴覚障害があることで最も困難が発生するのはコミュニケーションになります。コミュニケーションにおける困難さを軽減するためには、まず自己理解を深めながら、自分にとってやりやすいコミュニケーション方法を整理していくことが大切です。

 

整理していくことで、周囲の方々へ具体的に説明がしやすくなる上、適切なサポートが得られることでコミュニケーションにおける難しさが軽減され、より自分らしい人生を送ることができる可能性が高まります。

 

もし仕事や生活において困難を感じている場合、1人で抱え込まず、ぜひお近くの支援機関など活用してみてください。もちろんLITALICOワークスでも筆談など用いながら相談することもできますので、ぜひお気軽にご相談ください。

聴覚障害のある方の就職サポート

聴覚障害などで働くことにお悩みのある方への支援として、「就労移行支援」があります。

就労移行支援とは障害のある方の就職をサポートする福祉機関のひとつです。LITALICOワークスでは各地で就労移行支援事業所を展開し、障害のある方が自分らしく働くためのサポートをおこなっています。

LITALICOワークスでは聴覚障害のある方の就職実績も豊富にあります。自分のやりやすいコミュニケーション方法を整理し、ツールをうまく活用できる自分に合った仕事を一緒にみつけましょう。
働くことでのお悩みがありましたら、ぜひ一度LITALICOワークスにご相談ください。

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更新日:2024/08/09 公開日:2021/09/27
  • 監修

    東京都中途失聴・難聴者協会 理事

    小谷野 依久

    3歳頃に難聴が発覚し徐々に失聴。一般企業で働く傍らで聴覚障害児者の社会参加に関心を持ち、様々な活動に従事している。

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