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障害のある方の就職事例

ADHD(発達障害)の仕事・就職事例 -事務-

ADHD(発達障害)の仕事・就職事例 -事務-

ADHDの特性に理解ある環境で働く

男性/20代/病院/総務事務

ADHD(注意欠陥・多動性障害)(発達障害)

大学進学後、ADHDの診断

中学・高校とサッカー部に所属し、部活に情熱を注いでいたSさん。友だちに囲まれ、楽しい学生生活を送っていました。勉強はあまり好きではなかったものの、父親から「大学は卒業しておいた方がいい」と言われた経緯から大学へ進学。自宅から電車で通学できる距離ではなかったため、大学生になると同時に1人暮らしをはじめました。今までは母親と姉が家事全般をやってくれていたので、Sさんは「1人暮らしができる」とうれしい反面、Sさんは家事をしたことがなく、自分の部屋の掃除も母親がしていたため、家族は本当に大丈夫なのかと不安でした。

アパート選びから家具・家電の設置・電気・ガス・水道の手続きまで全て母親に任せて、いざ1人暮らしをはじめてみると、あんなにきれいだった部屋が1日でぐちゃぐちゃになり、1週間経つと足の踏み場もない状態になってしまいました。それでも気にせず、大学で仲良くなった友だちと夜な夜なゲームをしたり、おしゃべりをしたりして楽しんでいました。

ゴールデンウィークに母親が様子を見にSさんの部屋を訪ねると、洋服や大学の教科書・ゲームなどが山積みで足の踏み場がなく、台所も見るに見兼ねる状態でした。急いで掃除・洗濯・食器洗いなどをし、きれいな状態に戻しました。その後も母親が訪れる度に部屋が荒れていて、仕事をしている自分が毎回掃除などをおこなう余裕がないことから、ご両親は家事ヘルパーに月2~3回、掃除・洗濯などの家事をお願いすることにしました。

大学でのテストやレポートは、友だちに助けてもらって何とか単位を取得していました。3年生の夏休みが明けると、就職ガイダンスやインターシップ、エントリーシートのポイントなど就職活動に関する説明会が徐々におこなわれるようになりました。しかし、Sさんは「仕事はそのうち決まる、何とかなる」と思い参加しませんでした。周りの学生が就職活動へ向けて本格的に動きはじめても、焦らずマイペースな生活を送っていました。

しかし、4年生になって友だちや周りの学生が内定をもらったという話を聞いて、急に焦り出したSさん。エントリーシートにはじめて目を通すと……全く手につかず、パニック気味になり、しばらく放置してしまいました。

夏休みに実家に帰った際に、現状を家族に相談しました。Sさんの母親は看護師をされており、以前からSさんと同じような特性を持つ子どもたちを見ていて、もしかしてSさんは発達障害かもしれないと薄々気づいていたものの、受け入れることが恐く行動に移していませんでした。しかし、このままではSさんが社会に出た時に、生きづらさを感じては困ると思い、心療内科に一緒に行くことに。

診断を数回受けた結果、母親が思っていた通り、発達障害の「ADHD」。ショックを受ける母親をよそにSさんは「ADHDだから片づけられない、時間を守れないんだ」と楽観的にとらえていて、少しほっとしたそうです。その後も、定期的に通院することを忘れたり、通院日時を間違えたりすることが多く、ここでもADHDの特性が見られました。

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「1人で就活は難しい」と判断

結局、夏休みは就職活動の準備をおこなうこともなく過ぎ、Sさんは再び1人暮らしの自宅へ戻りました。その翌日、母親から大学のキャリアセンターに相談へ行くように促されましたが、気が乗らずしばらく遊んで過ごしました。

11月末にほとんどの学生の就職が決まったことを耳にしたSさんは、夏休み同様急に焦り出し、キャリアセンターの先生に障害のことや働くことについて想像がつかないこと、就職活動をおこなっていないことや書類の書き方が全く分からないことなどを全て伝えました。

キャリアセンターの先生は、もう少し早く来てほしかったと言いつつも、真摯にSさんに向き合ってくれました。先生は、1人での就職活動はもとより、ビジネスマナーや身だしなみなどから学ばないと難しいと思い、LITALICOワークスをSさんに紹介しました。

紹介されてもどうしたらいいかわからず、母親に相談して一緒に見学へ行くことに。雰囲気・カリキュラムやSさんに寄り添った支援方法に好感を持った母親がSさんの意見もふまえ、通いたいが大学生でも大丈夫かとスタッフに尋ねました。母親に時間をもらう許可を得て、スタッフは自治体に掛け合いました。そして、単位がほぼ取れていることから卒業見込みが立っていること、18歳になっていることから利用可能との回答が。Sさんと母親に連絡して、大学通学中であることを考慮し、まずは週3日から利用することにしました。

LITALICOワークス利用初日、スタッフはSさんが来ることを待っていましたが、開始時間を過ぎても一向に姿が見えず連絡もなかったため、Sさんに電話をするとまだ寝ていたようで「今日から?」という反応でした。その連絡かSさんが訪れたのは30分後。ずいぶん到着が早いと思ったスタッフがSさんの姿を見ると、部屋着に寝ぐせという出で立ちで、悪びれる様子もなく「今日からということを忘れていた」との発言。その後もたびたび勤怠や、身だしなみに課題が見られました。

スタッフは、まずビジネスマナー、SST(ソーシャルスキルトレーニング) やコミュニケーションプログラムを多く組むことにしました。そのことを聞いたSさんは「自分はビジネスマナーはできている」という認識があり、納得がいかない様子の中、プログラムに取り組みはじめました。しかしプログラム中に集中力が切れ、すぐにスマホを取り出して熱中することが多々ありました。スタッフは直接伝えるより、実践的に理解してもらえるよう、毎回「〇〇と△△と□□を終えたら、スマホを見てもよい」と伝え、Sさんの意識を変えていくよう支援しました。

就活に焦りナシから企業インターン後に急変

大学卒業後、LITALICOワークスに通う頻度を週3日から週5日に変更しました。変更したことでシフトがわからなくなることが多くありましたが、週5日になってからは徐々に遅刻・忘れることがなくなっていきました。

しかし、利用開始から10ヶ月が過ぎてもスタッフの目が届かない所でスマホのゲームをしてしまうことがしばしば。それを指摘するも、「今日やることは終わったからスマホを見ていいと思った」と言い、笑ってゲームを続けるSさん。よくよく見ると、応募書類に1行だけ記入があり、その他は真っ白。就職活動の応募書類が出来上がらないと応募できない旨を伝えるも、「やりたいことがまだはっきりわからないし、障害年金をもらっているのでそんなに急いて就職する必要がないし、いつか決まる」と思っていたようで、Sさんとスタッフの認識している就職活動のペースに違いがあることが判明しました。

そこでスタッフは企業インターンに行って、何がSさんに向いているか働くことで理解してもらうことにしました。

サッカーが好きということなので、サッカー専門のスポーツショップで清掃&ユニフォームをハンガーにかける作業をおこないました。企業インターン終了後Sさんに感想を聞くと、あまりうまくできなかったから、向いていないかもしれないとの回答。企業担当者からは「仕事が雑」との評価でした。

Sさんは、自分は作業系は向いていないと判断し、急に事務の求人を探しはじめました。しばらく集中して求人を見て、病院内の事務に興味があるとスタッフに伝えました。今まで就職に対して消極的に見えたSさんの急変ぶりにスタッフは驚き、急いで応募書類を一緒に作成しました。応募書類は無事通過、面接日までに一生懸命、模擬面接をおこない自信をつけました。面接は手応えがあったようで、「たぶん受かる」とうれしそうにスタッフへ伝えました。その後、無事内定を得たSさんは、雇用前実習の期間を2週間設けてもらいました。身だしなみについて注意を受けることもありましたが、正式に採用をいただきました。

特性を理解し、働きやすい環境で仕事

Sさんが採用されたポイントとなった2点「若くてサッカーをやっていたので体力があると思ったこと」「上司と出身地が同じで話が合ったこと」を伝えると、評価してもらえたことに素直に喜ぶSさん。

LITALICOワークス最終日に、スタッフは「身だしなみに気を付けること」「仕事中はやりたいことを優先しないこと」をSさんと約束しました。「LITALICOワークスでたくさん注意されたことを頭に入れて、職場では注意されないように頑張ります!」とSさんは力強く宣言してくれました。

就職してから1週間が経ち、Sさんに職場の様子などを尋ねると、「仕事はちゃんとできています! 部屋は汚いけれど」と笑って答えました。しかし、企業担当者に話を伺うと「身だしなみ・やりたいことはきちんとやってくれていますが、苦手なことは後回しにしているので、時々指摘しています。ただ、Sさんの特性でもあるので、試行錯誤しながら働きやすい環境を作っていければと思っています」とのこと。それを聞いて、企業担当者だけでなく周りの方々が理解してもらえている状況で、様々な工夫を凝らして対策を練っていただいていることを、スタッフは改めて感じました。

働きだしてからもうすぐ1年が経ちます。相変わらずな部分もまだあるようですが、Sさんは「もう少しお金がたまったら、家族で旅行に行きたい」と目標を持って楽しく働いていています。

※プライバシー保護のため一部の文章について事実を再構成しています。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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