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障害のある方の就職事例

パニック障害(精神障害)・知的障害の仕事・就職事例 -バックヤード-

パニック障害(精神障害)・知的障害の仕事・就職事例 -バックヤード-

アルバイトをして判明した「知的障害」「パニック障害」

女性/30代/雑貨店/バックヤード

パニック障害 (精神障害)・知的障害

違和感だらけの子供時代

幼少期から大人しかったKさん。仲のいい友人は2人おり、その他のクラスメイトに話しかけられると緊張したり、授業中に指されるとうつむいて黙ってしまったりすることが多々あったそうです。

中学校時の3者面談で「恥ずかしがり屋なのか、人前で全く話せない」と先生に言われた母親は、他の子と何かが違うと違和感があったものの、本人の前だったため「昔からずっとそうなので、なかなか直せない」と言うことしかできませんでした。

高校生になると、学校の授業についていくことが難しくなりました。友だちに勉強を助けてもらっても補講を受ける日々が続き、テストの成績も最下位すれすれでした。それでも母親は進学・卒業できるならいいと思ってはいましたが、Kさんの行動・言動にずっと違和感を持っていました。

インターネットで調べると、「発達障害・知的障害に当てはまるのではないか……」と心配し、病院へ行こうと伝えました。しかしKさんは「どこも悪くないし痛くない」と言って病院へ行くことを拒みました。

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やりたい仕事がわからない

補講を繰り返し、何とか高校を卒業できる見込みが立った頃、進路・就職について3者面談がありました。担任の先生から「就職は難しいのでは」と言われ、母親はショックを受けその場でKさんの意思を確認しました。Kさんは「就職すること」の意味を理解していない様子で首を傾げるだけ。

困った母親は求人誌を見せ、やってみたい仕事はあるか確かめたところ、「特にない」と興味を示さなかったそうです。就職は卒業が決まってから考えることにしました。

Kさんの高校卒業に安心するのも束の間、再度親子で働くことについて話をしたところ、「興味のあるサッカー観戦やファッション・美容・音楽などに関われるなら」と発言がありました。

コミュニケーションを必要とする仕事は難しいと感じていた母親は、Kさんの興味に合い且つ彼女ができそうな仕事がないかインターネットで必死に探すも、コミュニケーションを要するものばかり……しかもKさんに「この先自立した生活をするためには、仕事をしないといけない」という認識がありませんでした。

急な環境変化、叱責でパニック症状が出る

卒業後、しばらくはインターネットショッピングをしたり、友だちと食事をしたり、自由気ままに過ごしていたKさん。ある時、「お小遣いだけじゃ足りないから、アルバイトをしてもいい?」という発言が。

母親は喜んでKさんと一緒にインターネットで求人を検索し、「コミュニケーションを極力取らない単純作業」「自宅からなるべく近い」という条件で探すことに。お惣菜の値札シール貼りなどをする、スーパーのバックヤードの求人を見つけ、働くことにしました。

はじめてのアルバイトでは、何を言われても「はい」としか反応できず、おどおどしながら周りの人の見よう見まねで作業をおこなっていたKさん。長年パートとして働いている方が彼女を気にかけ、休憩時間を一緒に過ごし、いろいろと面倒を見てくれたそうです。しかし1年程した頃、その方が家の事情で退職されると、周囲の方の対応が厳しくなりました。

はじめは気のせいかと思ってやり過ごしていましたが、新しい業務を一斉に覚えなければいけない時に、周りの人のペースについていけないKさん。すると「さぼっていないで、もっとスピードをあげて」「1度教えたこんな簡単なことを、何で間違えるのかわからない」などみんなに聞こえるように何度も言われるように……職場で過呼吸を起こしたり、震えが止まらなくなったりして、自分の身体に違和感を覚えるようになりました。

違和感の理由が「障害」であると明らかに

アルバイトの日になっても、仕事へ行かないKさんを不審に思った母親は、何かあったのか尋ねましたがKさんは首を振るだけ。出勤しないKさんを心配したスーパーの管理者から電話がかかってきても、「電話に出たらまた何か言われる」と思うと震えが止まらず過呼吸になり、電話が鳴りやんでもしばらく苦しんでいました。

その日、アルバイトに行ったかどうかを聞くとKさんは過呼吸になり、近隣の総合病院へ行きました。心療内科で「何か辛いことがあったか」という質問があった際に、再度過呼吸に。結果は数日後に出ると言われ、そのまま帰宅。帰宅する頃には、Kさんの症状は治まっていました。

後日、心療内科で今までのKさんの様子を話すと、パニック障害と知的障害が診断されました。アルバイトは母親から事情を説明し、退職しました。

その後、通院しながら自宅で療養して1年くらい様子を見ることに。自分の趣味を楽しむ余裕のあるKさんを見て、母親はもう1度アルバイトをすることを提案しましたが、拒否反応・警戒心を示し、パニック気味になってしまったため断念しました。

こだわり、対人恐怖、パニック症状

その後10年くらい引きこもりに近い状態になりました。その間のKさんは、金髪、濃い化粧、派手な服装……母親はKさんの将来を考えると心配と不安で、支援機関を探して様々な所に相談へ行きました。その中で「一人ひとりに合った目標やペースで就職支援をする」というLITALICOワークスの支援方法に惹かれ、Kさんと一緒に相談・見学をして、利用することに。

LITALICOワークス初日、Kさんは自分の好きなスタイルで訪れました。「好きなファッション・化粧をすることがストレス緩和につながっている」「話しかけられないようにするための防衛策で警戒心が強い」と話してくれました。スタッフは「今はそのままでも大丈夫。就職活動をする時は落ち着いた髪色にすること」を約束しました。

働くにあたり、まずはできることを一緒に見つけながら、作業系のトレーニングをメインに取り組むことに。単純作業をコツコツ取り組み、スピーディにミスなく取り組むことができることがわかりました。スタッフは「こんなに早く正確にできるのはスゴイ!」とこれはあなたの強みだと伝えると徐々に警戒心が和らいでいきました。

趣味の合う利用者と会話ができるようになったKさんを見て、別プログラムへの参加を提案。しかし、プログラム内でのグループワークで話についていけず、パニック症状が出て椅子から倒れ落ちてしまいました。

スタッフとの面談やSST(ソーシャルスキルトレーニング)でも発作を起こしてしまうことがありました。Kさんの理解度を確認しながら1つずつ話をすることを、スタッフ全員で認識し支援することにしました。

プログラムや面接のトレーニングと並行して、求人を探しました。「作業系/服装・髪型自由」の求人を提案するも、興味のある業界でないと決して縦に首を振りません。

はじめてスタッフとの模擬面接をおこなった時は、緊張してパニックになり、事業所を飛び出してしまいました。

「あと3ヶ月」で就職に向けてスイッチが入った!

就労移行支援の利用期間は原則2年間と決められています。この時点でKさんは残り3ヶ月の利用期間になっていました。「あと3ヶ月」と認識した途端、次の日から「外見で書類も出せないのは嫌だから、普通にしました」と髪とメイクを大人しくしてきたKさん。模擬面接も回数を重ねるうちに落ち着いて受け答えができるようになりました。

実習先を入念に選び「レンタルショップ」の清掃業務を提案しました。音楽に興味のあるKさんは、喜んでやってみたいと即答し、翌週から5日間の実習が決まりました。

実習初日にスタッフが同行。Kさんは実務をはじめて2時間ほど経った頃です。スタッフは管理者と障害の状態を話していたところ、Kさんがふらふらになってスタッフの元に来て「辛くてもうできない」と泣きました。スタッフは継続不可と認識し、1回目の実習が終了。詳細を聞くと、男子トイレの清掃が辛かったとのこと。

利用期限が目前に迫り、スタッフは急いで雇用前実習やトライアル雇用をしてもらえる企業を探しました。「バラエティショップ」での防犯シール貼りやラッピングパッケージの組み立てなどの求人を見つけ、Kさんへ提案しました。Kさんもよく行くお店で馴染みもあるとのことで、雇用前実習をすることに。

前回の実習のことがあったので、スタッフは心配していましたが、初日を無事に終えたKさんは「作業自体は単純だけれど、いろいろな商品を見ることができて楽しい」と今までにない笑顔で話してくれました。

業務課題は、定着支援で対策

企業の評価は「たまにミスがあったり、作業が終わったのに報告がないことがあったりする」とのことでした。しかし、雇用前実習が終わりに差し掛かる頃に「無遅刻・無欠勤で、真面目に業務に取り組んでいるので、正式に採用したい」とスタッフへ連絡がありました。

Kさんに正式採用の旨を伝えると、「これからも頑張ります!」と力強く意思表示をしてくれました。正式採用が決まったのは、利用終了期限間際の1年11ヶ月目のことでした。

Kさんの母親から「ここまで成長できると思わなかった。就職がゴールではないですが、ひとまず安心しました」という言葉をいただきました。涙を流して喜んでくださいました。

LITALICOワークスは就職後、その職場に定着できるよう支援の一環として、定期的に職場訪問をします。Kさんや職場の様子を確認し、管理者からのフィードバックを受ける中で新たな課題を発見しました。

雇用前実習の時から指摘を受けていた「作業が終わっても自分から声をかけられずに数十分待機をしている」「わからないことがあっても人に聞かず、声をかけられるまでボーッとしている」ということでした。

待機時間や受け身であることが多いことに理由があるのでは?と思ったスタッフ。Kさんに聞いたところ「みんな忙しそうで声をかけられない」とのこと。管理者と認識を合わせ「忙しくしていても声をかける」ということを習慣づけることになりました。

その後、新たな課題が生まれても、Kさん・管理者・スタッフの3者で話し合い、都度解決策を講じています。

働くのが楽しいと笑顔で話してくれるKさん。この先、働く以外にしたいことはあるかと尋ねると、「貯金をして、プライベートで好きなファッションやメイクをして出かけたい」と話してくれました。

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

 

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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