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障害のある方の就職事例

パーソナリティ障害・うつ病(精神障害)の仕事・就職事例 -事務-

パーソナリティ障害・うつ病(精神障害)の仕事・就職事例 -事務-

ストレスや恐怖と上手に付き合うには

男性/30代/サービス/事務職

パーソナリティ障害・うつ病(精神障害)

どうしても断ることができない

「人に嫌われたくない」「自分は人より劣っている」という考えを小さい頃から持っているWさん。「どうせ失敗する」「どうせ人から嫌われる」など、否定的な考えに囚われて、はじめから何もしないでいることが一番安全で楽だと考えてきたそうです。

大学生の時に就職活動をした際、面接のお知らせがくると急に自信がなくなり、連絡せず面接に行くことを辞めてしまい内定をもらうことはできませんでした。

卒業後は、アルバイトで欠員が出たら駆けつける日々を送っていました。アルバイトのシフトが、気付いたら24時間勤務になっていることが日常茶飯事。断ったらどう思われるか、嫌われたくないという思いから対応していましたが、体調を崩して退職。

その後、「働かないと家賃が払えない」と自分を奮い立たせコールセンターの求人へ応募し、数年契約社員として働きました。仕事ぶりを評価され正社員登用と転勤を含む異動を提案されると、転勤より正社員登用に対し荷が重く感じ、断ることが怖く退職したそうです。

正社員へのチャンスを逃したことを退職後に深く後悔し絶望したYさん。自傷行為を試みたこともありました。うつ状態が治らず生活費が底を付き、生活保護を受けるため福祉事務所へ行くと精神科へ行くよう勧められました。

精神科を受診すると「回避性(不安性)パーソナリティ障害とうつ病」と診断されました。

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パーソナリティ障害の診断名に納得

回避性パーソナリティ障害のある方は、拒絶されたり批判されたりすることを恐れ、自分に魅力がない、他者より劣っているという感情のために人との接触を回避しようとする特徴があると言われています

医師から回避性パーソナリティ障害の説明を聞いたYさんは大学時代の就活、アルバイトや正社員登用の話など過去を遡って、ほぼ項目に当てはまり理解してもらえたような気がしました。

デイケアに通いはじめたYさん。自分のことを理解してもらえる場として活用できるようになり、楽しく過ごしていました。しばらくして生活保護の担当者に「働きましょう」と言われました。

主治医に相談するとLITALICOワークスを紹介され、見学に訪れました。スタッフと話をして利用したいと思いましたが、新しい環境への恐れから連絡・申請を後回しにしていました。スタッフから状況の確認連絡がきて、体験に参加しました。

グループワークの体験をした時に、通いはじめたばかりの利用者が自分の意見を発言している所を見たYさんは「レベルが高い、自分には無理」と弱気になっていました。スタッフは「LITALICOワークスにはいろいろな方が通っています。はじめは見学のみの方もいらっしゃいますよ」と伝え、体験している様子を見守りました。

数日体験後、「親に働いていないことがばれてしまったので、早く働きたいけれど働くことが怖い」と話してくれました。

場数を踏んで「嫌われていなかった」

LITALICOワークス通うことにしたYさん。新しい環境が苦手で引っ込み思案になっていた所、面倒見の良い利用者がYさんを輪の中に入れるよう誘導したため、打ち解けるまで時間はかかりませんでした。

しかしある時、急にお休みが続くことに。心配したスタッフは詳細を聞くと「体調の悪そうにしていた利用者に話しかけたら睨まれたし嫌われた」とのことでした。その時の状況を見ていた別のスタッフから情報を共有、嫌っているわけではないことを説明しました。

はじめはスタッフに本音をなかなか言えませんでしたが、面談を重ねるうちに段々と心を開き今まで話していなかったことを話すようになりました。家族や友人との関係、仕事や人間関係に対する恐怖、学生・デイケア時代……

ストレスをためこみやすく、発散や対処の方法を持っていないと察したスタッフは、どういう時にストレスを感じ、どういうことをおこなえばリラックスできるかを一緒に考えました。

Yさんの課題の1つは「人に話しかける前に、相手にどう思われているかを考えてしまい行動に移せない」ということです。SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)で話しかけ方・声のかけ方や感情のコントロールについて何度もロールプレイング(役割演技)をしました。

さまざまな場面を想定して練習するうちに、人に話しかけることはもちろん、いろいろなことができるようになったと実感を強めるYさん。同様に感じたスタッフは今までこまめに声をかけていましたが、声をかける回数を少しずつ減らしていく支援へ切り替えることにしました。

企業インターンで職業体験

回避性パーソナリティ障害のある方の中には、「周りから取り残されているような孤独感」を感じ取る方もいらっしゃいます。Yさんもそのひとりでした。スタッフが声をかける機会が減っていることに気付き、塞ぎこむように。

面談で「みんなもう私に興味がない、放棄されている」と訴えるYさん。スタッフは就職して働くことを想定して少しずつ声をかける回数を減らしていたことを説明し、働いていた時のことを思い出してもらいました。

レンタルビデオ店やコールセンターで自分から発信しない限り声をかけられることはなかったことを思い出したYさん。デイケアやLITALICOワークスでの生活に慣れると、この先働くことになったらどうなってしまうのか不安になりました。スタッフはどのような仕事や環境が自分に合っているかを確認できるよう、企業インターンでいろいろな職種を体験してみることを勧めました。

コールセンターで働いていた時は、顔を見られることもなく、相手も知らない方なので話すことができたと振り返るYさん。電話対応のある事務は対応できるかを確かめるため、企業インターンへ。

「緊張してはじめの方は覚えていない」と言うものの、企業評価が高くYさんも頻繁に電話業務がなければ大丈夫と少し自信を付けることができました。企業インターンを数社終え、働けるかもしれないと就職活動にエンジンがかかりました。

安心して働くことのできる環境

面接問答集や自己PRを作成し、模擬面接に取り掛かりました。すると急に緊張して頭が真っ白に……「企業インターンの時より緊張度が高くなっている」と不安になるYさん。

スタッフが代わるがわる面接官になり、練習を重ねました。次第に緊張はほぐれてくるものの、質問に対して良い回答をしようと長く話す傾向があったため、結論から伝えるようにしたり、短い言葉で話せるようトレーニングしたりしました。

障害者雇用の求人をしばらく見て、採用アシスタントの仕事に興味があると言うYさん。通勤時間が短く、LITALICOワークスから別の部署に就職した方が数名いるため、応募することを決めました。

スタッフはYさんの了承を得て、働いている姿を見てもらってから面接をお願いできないか交渉しました。業務に取り組むYさんを見た人事担当者は、未経験とは思えないと面接の時から歓迎ムードでした。

内定をもらい就職したYさん。面接日程の調整を担当していて、「障害者雇用で採用アシスタントってやっぱり珍しいみたいです」と笑顔で話をしてくれます。

また「別部署にLITALICOワークスの卒業生がいて、お昼休憩を一緒に過ごしたりLITALICOワークスのことについて話をしたりできるので、友だちができたみたいでうれしい」とも言っていました。コロナ禍前は一緒に出掛けたりしていたけれど、今はオンラインで話をしていますと新しい時代に対応できています。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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