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障害のある方の就職事例

アルコール依存症(精神障害)の仕事・就職事例 -栽培-

アルコール依存症(精神障害)の仕事・就職事例 -栽培-

アルコール依存症と年齢、高い壁を超えて

男性/50代/植物農園/栽培 

アルコール依存症(精神障害)

アルコール依存症、ゼロからのスタート

社会人になってから働きづめで残業・休日出勤が多かったOさん。人に頼ったり相談したりすることが苦手で、仕事のストレスはたまる一方。お酒を飲むことでストレスを発散していました。

次第に飲酒量が増えて仕事に支障が出たり、家族に迷惑をかけたりするようになりましたが、飲酒を控えたいと頭では考えていてもどうしてもアルコールに頼ってしまう日々が続きました。

ある日、仕事で会社や取引先に損失を与える大きな失敗をしてしまいました。自宅謹慎になったその日、泥酔し警察沙汰に。本人にはその記憶がなく、気付いたら病院のベッドの上だったそうです。

アルコール依存症と診断され、入院がすぐに必要な状態でした。その後入退院を繰り返し、家庭崩壊してはじめて断酒に踏み切ったOさん。

生活保護を受けながらリハビリをして、医師の勧めでデイケアに週6日朝から通っていました。家にいると飲酒の誘惑があるので、デイケアで朝から晩まで過ごし、飲めない環境を作る日々。

ある日、生活保護の担当者から働くことを要請されました。ハローワークへ行くとLITALICOワークスを紹介され、見学に訪れました。

「見た感じみんな若い。年齢が50代後半でも大丈夫か」と気にしていましたが、「実際20~30代が多いけれど40~60代前半の方もどの事業所にいらっしゃいます」とスタッフが説明しました。それでも不安な色を見せるOさんに「利用する前に体験してみませんか」と誘導すと、後日Oさんから「やっぱり利用します」と連絡が来ました。

話を聞くと生活保護の担当者から「働かないと生活保護が止まるけれど、すぐ働くことは体力的に難しそうなので就労移行支援を利用することで話がついた」と話してくれました。年齢のことを気にしていたため、手続きに時間がかかるので体験しながら進めるというることで着地しました。

客観的に物事をとらえられない

本人は年齢のことをとても気にしていましたが、優しく穏やかな雰囲気のOさんはすぐに打ち解けていて、「息子と同じくらいの子とでも話ができることに自分でも驚いた」と体験後の感想を聞かせてくれました。

主治医からLITALICOワークスとデイケア週3日ずつ通う方がいいという指示がありました。以前職場で頼ったり相談したりするのが苦手だったという話を聞いたスタッフは、「なかなか自分の弱さを出すのは難しいかもしれませんが、新たな環境下になるため疲れた時は疲れた、辛い時は辛いと教えて欲しい」と伝えました。

社会人経験豊富なOさんははじめの頃、20代のスタッフからアドバイス指示されることに嫌悪感を抱いていました。客観的に物事を捉えられなくなっていると感じたサービス管理責任者は面談で「若くてもしっかりしている人はしっかりしているので、年齢は関係ないですよ」と伝えると、よくよく考えるとそうだねと聞き入れてくれました。

何となくプライドが許さなかったと反省し、色眼鏡で見ることはやめますと20代のスタッフに謝罪してくれました。

事業所でおこなわれるプログラムは一通り全部受けて、吸収していました。個別トレーニングでパソコン操作や事務作業をしてみて、「事務職は向いてない。対人でストレス抱えるより身体を動かしていた方がいい」と自己分析をしました。

働く意欲に火が付いた

LITALICOワークスに通いはじめた頃、笑っていても表情がなく、働く意欲があるのか分からない感じでした。しかし、自分より症状がよくない利用者を見て「彼らも頑張っている。自分でも社会の役に立つことができるのではないか、働けるかもしれない。働くスイッチが入った」と働く意欲が湧いたことをスタッフに報告してくれました。

そしてこっそり「実は今まで年齢的に働けると思っていなかった。生活保護の担当者に言われていやいや通っていたけれど、これからは週5日通って就職活動に向けて頑張る」とサービス管理責任者に教えてくれました。

それからは、とても生き生きとしてどの利用者にもスタッフにも笑顔で対応して、スタッフ同士で「別人のように輝いている」と口々に意見が出るほどでした。

再度スタッフは通院同行をして主治医と面談しました。週5日LITALICOワークスへ通うことに対して意見をもらうと、「デイケアは週1日通うことが条件」と主治医から指示がありました。

Oさんは「今までLITALICOワークスへ通うことが苦痛だったり詰まらなかったりしていたのに、今ではLITALICOワークスが楽しくてデイケアがつまらない」とつぶやきました。

主治医曰く、「働きはじめてストレスがたまったら飲酒してしまう可能性があるから、働きはじめてもしばらくはデイケア週1日でも行くこと」とのことでした。スタッフはなだめながらも「仕事にストレスはつきものなので、主治医の指示に従いましょう」と伝えました。

応募書類が通らない

面接の練習をはじめたOさん。最後に面接をしたのは、なんと35年以上前とのこと。対人緊張があり、模擬面接になるとスタッフ相手でも緊張してしまって覚えた回答が抜けてしまうほどでした。

みんな誰でも緊張するので緊張していい旨を伝え、「面接がはじまった時に緊張しやすいタイプで今とても緊張しています」と先に伝えることを提案しました。

そうすることで緊張している前提で対応もらえ、緊張しているということをわかってもらったという安心感が緊張を少し和らげてくれると説明すると、納得して模擬面接でもはじめに緊張していることを発言しました。

模擬面接に繰り返し取り組み、求人への応募をしましたが、年齢で書類が通らないことが続いてしまいました。Oさんの精神面を心配しましたが、スタッフが声をかける前に「年齢的に厳しいことはわかっているので、書類がなかなか通らなくても大丈夫。1人だったら落ち込んでいたかもしれないけれどね」と笑ってスタッフを気遣ってくれました。

そんなOさんの気持ちに応えたいと思っていたところに、ハローワーク主催の合同企業面談会の情報が入ってきたため、参加を提案しました。

応募者が多いため面接会自体は流れ作業になってしまう可能性が高いものの、企業担当者と接したことのないOさんには雰囲気を感じてもらうチャンスでもあると伝えると、「久しぶりにスーツ着ちゃおう」とおどけて快諾してくれました。

はじめての面接でうれしい質問

合同企業面接会は事前に企業が発表されるため、スタッフと一緒に企業を見たところ、Oさんの目に「屋内農園」の文字が飛び込んできました。デイケアでは、庭でミニトマトやゴーヤなどを栽培しているのを見ていて、だんだん実になっていく姿を見て楽しんでいたとのことでした。「

外ではなく屋内なので夏も冬も影響なさそう。この企業の求人に決めた!」とスタッフのみならず他の利用者にも嬉しそうに伝えていました。

俄然やる気が入ったOさんは志望動機を考えていた所、急に「アルコール依存症って言ったら引くかなあ」とトーンダウンしてしまいました。スタッフは「ちゃんと説明できれば大丈夫」となだめ、合同企業面談会まで準備を整えました。

当日、会場は多くの人であふれかえっていましたが、Oさんは「これくらい人がいた方が安心する」とびしっととスーツを着て真剣な眼差しで向かいました。合同企業面談会後、屋内農園の求人に面接を申し込みたいとのこと。

書類を提出すると、2次面接のお知らせが。面接当日、緊張していましたがしっかり「緊張しています」と伝え、その後和やかに進みました。

最後に「定年が60歳までですが、Oさんが頑張ってくれるという意思があったら、定年を延ばしますがどうでしょう」と質問がありました。Oさんもスタッフもびっくりしつつも「喜んで」と伝え、面接を終了しました。

自ら定年の壁を切り開く

面接した日から数日後、内定の連絡がきました。Oさんは「最後の最後まで本当に就職できるか不安だったけれど、無事就職できて良かった」と嬉しそうにみんなに報告していました。

面接の最後に質問されたことについて企業から補足があり、働いてみてお互いの意思に相違なければという条件付きで定年60歳はなしということでした。

興味のあることを仕事にすることができて喜ぶOさんからびっくり発言が。「実は働けると思っていなかったと言うより働きたくなかった。でも働く気になれたのも就職できたのもLITALICOワークスに通ったから。人生諦めちゃダメですね」と笑ってLITALICOワークス最終日を終えました。

就職後の面談で「毎日新しい発見があり、楽しい。以前みたいにストレスがたまることもないので、アルコール摂取しようと思わない。デイケアには相変わらず土曜日に通っているけれど」とオチつきで報告してくれるOさん。

先日60歳になりましたが、仕事ぶりが評価され定年を65歳まで延長してもらうことができました。企業担当者から初めて定年を延長しましたと嬉しい報告付きでした。Oさんは自分で定年の壁を切り開いたことに喜びながら、「65歳まで頑張ります」と意気込んでいました。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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