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障害のある方の就職事例

摂食障害(精神障害)・自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 -事務-

摂食障害(精神障害)・自閉症スペクトラム障害(発達障害)の仕事・就職事例 -事務-

できることを1つずつ増やす

女性/20代/金融/事務職

摂食障害(精神障害)・自閉症スペクトラム障害(発達障害)

摂食障害で明らかになった発達障害

高校生の時にファッション誌に掲載されているダイエット特集を読んで、モデルや芸能人のようなスリム体型になりたいと思い、ダイエットをはじめたAさん。

単品・置き換えダイエットなど簡単にできるものから試し、効果がないと別の方法へ。いろいろとチャレンジしましたが、思うように体重が減らず、母親の目を盗んで夕飯を食べるふりをして一部捨てたり、昼食を抜いたりするようになりました。

不自然に痩せていく娘の姿を見た母親が、捨ててある食事を発見。問い正すと「食べたくない」の一点張り、無言で近くにあるものを投げることもありました。

次第に外出する機会も減り、体重を減らすことにのめりこむことに。Aさんの高校卒業を機に働きはじめた母親は、部屋に引きこもる娘を不安に思うも、拒絶されることを恐れて深く介入できませんでした。Aさんは次第に体力がなくなり、自宅で倒れたころは身長155cmで体重30kg台前半でした。

緊急搬送され、摂食障害(神経性やせ症)と診断・即入院。母親は入院中の行動を見た主治医から発達障害の可能性があると伝えられ、これまでのAさんの生い立ちを話すことに。

この機にはっきりさせた方がいいと思い、発達障害の検査を実施しました。結果は自閉症スペクトラム障害(ASD)。摂食障害が原因で自閉症スペクトラム障害の診断が下り、自立するため将来についてどうすればいいか悩みました。

無理なく働きたいあなたをサポート
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体力回復を第一優先

栄養状態が改善、母親が食事管理を徹底して外来治療に移行していくうちに、少しずつ回復していったAさん。これから働くことはできるかと母親が主治医に相談すると、体力や適性などの観点から就労移行支援事業所へ相談することを勧められました。

インターネットで調べ、職業訓練校と同じかなと思いながら近隣にあるLITALICOワークスへ。一人ひとりに合わせた支援と就職後もフォローがあることが決定打となり、体験することにしました。

体験から母親の付き添いなしで1人で来たAさん。利用者から話しかけられると、Aさんの返答は頷くか首を振るかのどちらかです。数日の体験を終了し、スタッフが体験してみてどうだったか確認すると「疲れた」の一言。

高校卒業後、何かに集中して取り組むことがなかったため、ひどく疲れたようでした。主治医に相談の上、週3日・短時間から利用することになりました。

前傾姿勢や傾眠傾向になることが多く、睡眠状況や疲れ具合などを確認しながらプログラムやトレーニングを進めました。

1つのことをはじめると過集中になりやすく、その後放心状態になる特性があったため、タイマーを使って時間制限を設けるなどして上手に休憩を取る方法を模索しました。

また無意識に前傾姿勢をとっているため、客観的な印象を伝えて姿勢に対する意識付けをしていきました。母親の食事サポートもあり体力は徐々に回復、週5日通えるようになりました。

できる・できないを明確に

利用者やスタッフと必要最低限の話しかしないAさん。積極的にコミュニケーションを取ることはなく、1人で過ごすことが好きだと面談の時に話してくれました。

スタッフから見て「不安や不満に思うことを言い出せず、いらいらしているように見える」と伝えたところ、無意識だけれども言葉にできていないとのこと。個別・集団の両方でSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)をおこない、発言する練習をしました。

Aさんに職歴はなく、パソコンの基本操作はキーボードを見ながらゆっくりタイピングができるという状態です。本人からは、面談時に「何の仕事ができるか、向いているかが全く想像がつかない」との発言がありました。

スタッフは体力面が不安なことから「立ち仕事は避ける」、コミュニケーションが得意ではないことから「対面業務は避ける」、1つのことを集中してコツコツ進めることが得意なことから「マルチタスクは避ける」など、仕事におけるAさんの得意・不得意を確認していきました。

自分に合った職種を見つけることを目的とした企業インターンへ行くため、気になる企業をピックアップしてもらうことに。にこやかに回答し、企業リストを眺めていましたが、スタッフが進捗具合を確認するとパソコントレーニングをしており、気になる企業欄は空白でした。

今まで「いつまでに何をどうするか」細かく指示をするとその通り行動できるAさんでしたが、今回指示を少なくしたらどうかを確認するために、特に指示を設けず観察していました。後にAさんに指示の仕方について確認すると、明確な指示がないと動けないとのことで、合理的配慮事項に追加しました。

苦手意識から得意分野へ

企業インターンで事務アシスタントを体験の際に、業務を予定時間より早く終わらせることができ、空いた時間にデータ入力を頼まれました。企業インターンをはじめる頃のAさんは、企業担当者が目を丸くするほどのタイピングスピードになっていました。

後から分かったことですが、Aさんは毎日自宅でタイピング練習をしていたそうです。(格段にスピードアップしていたことは本人は気づいていなかったそうです)

企業担当者からのフィードバックの際、「業務や入力スピードは申し分ない、ミスが減れば合格」と課題をいただきました。ミスを減らせばデータ入力多めの仕事でも大丈夫だと分かりました。

これまで苦手意識があった入力作業が、いつの間にか得意分野に変わったと自覚したAさん。入力の精度をあげる練習をたくさんして、事業所でのデータ入力大会で1位を取るまでになりました。

希望職種が決まったため、応募する企業を探しながら面接トレーニングに取り組んでいました。緊張すると頭が真っ白になってしまうため、面接時は用意したものを見ながら答えていいかを事前に確認することにしました。

事前に用意したものは手書きでなく入力したデータを印刷したもので、データ入力が得意だからという理由づけに持っていく想定で準備しました。

就職後に盲点

求人を見ていて、大手企業の特例子会社に興味を持ったAさん。他の求人で書類が通らず少し弱気になっていましたが、スタッフの「大丈夫」という言葉に安心し、応募することに。

数日後、すぐに面接のお知らせが来ました。スタッフが面接に同席したことやお守りとして印刷した書類を見て回答できたことにより、無事内定が出ました。LITALICOワークス最終日、母親と一緒にスタッフ一人ひとりにあいさつをして卒業しました。

初就職で緊張しながら仕事をスタート。しかし、初日の昼休憩時間にAさんが泣きながらスタッフへ連絡してきました。

「食堂でみんなと同じものを食べること、食べている所を見られることが辛い」……Aさんが就職した企業には社員食堂があり、ほとんどの方が定食や麺類などのメニューを食べるとのことでした。摂食障害はほとんど寛解していましたが、「食べる量が少なくない?」「もっと食べないの?」と聞かれることが辛いとのことでした。

連絡を受けたスタッフはAさんと打ち合わせ後、上司と話し合いの時間を取ってもらい、社員食堂へ誘わず1人で休憩時間を過ごしたい旨を説明しました。

次の日から「社員食堂ではなく、休憩室でランチタイムを過ごせるようになった」と嬉しそうに連絡が来ました。その後、仕事面について、上司からよくやってくれていると高評価。Aさんもまだまだ頑張りますと意気込んでいます。

 

※プライバシー保護のため、一部の文章について事実を再構成しております。

※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。

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