摂食障害・うつ病(精神障害)の仕事・就職事例 -学校法人・事務-
周りと同じように就活できない
女性/20代/学校法人/事務職
摂食障害・うつ病(精神障害)
成績も容姿も完璧主義
成績優秀な兄がいて、自分も同じように良い成績を取らなければと必死に勉強していたNさん。学年2位の成績を取った高校1年生の時に、兄が有名難関国立大学へ合格しました。
両親が高成績を取ったNさんより、第一希望の大学進学を決めた兄の方を褒め称えていたことから、「1位を取らないと褒めてもらえない」と思い、自分にプレッシャーを与え続けていたそうです。
毎回頑張ってもどうしてもトップを取れず、大学受験シーズンへ突入。ストレスでだんだん食事や間食の回数が増えていきましたが、努力の甲斐あって第一希望の大学へ合格。両親が盛大にお祝いをしてくれ安心しました。
卒業式で久しぶりに制服を着た時に違和感を感じ、クラスメイトから「太った?」と言われ、体重を測ると10キロ以上増加……何事にも完璧を求めるNさんにとって第一希望の学校へ合格したことより、太ったということの方が一大事でした。
ダイエットをはじめるためにインターネットで調べていろいろ試すも、なかなか体重が減りません。大学に通っているとスタイルのいい女性にばかり目がいき、次第に「太っていることは醜い。痩せなければ」と思うほど気分が落ち込み、その反動で過食気味になる⇒過度なダイエットを繰り返していました。
Nさんの異変に気付いた母親が仕事を休んで病院へ付き添うと、摂食障害(神経性やせ症)と診断されました。
みんなと同じように就活ができない
早期に病院へ行ったため、入院はせずに投薬治療とカウンセリングをおこないました。しかし、少しでも体重が増えると食事の量を減らすNさんは、何とか栄養を摂ってもらおうと工夫する母親に対して苛立ち、暴れたり自傷行為をするようになりました。
母親はどう接すればいいかわからず段々と家族との間に溝ができてしまいました。Nさんは、そのような状態であっても、成績は上位を維持しなければと必死になっていました。
大学3年生になると、周りが就職に向け活動的に動いていました。Nさんも就活セミナーやインターンシップなど調べはするも、全く体が動きません。そんな自分に苛立ち自傷行為をして落ち着かせていました。
時間だけが過ぎ、このままでは就職できず、自分だけ取り残されてしまうと不安になり、大学の就職支援センターへ相談しました。そこでLITALICOワークスに相談することを提案され、見学に訪れました。
大学生でも就労移行支援事業所を利用できる可能性があります。(※自治体による)Nさんの住んでいる自治体では卒業できる見込みがあれば利用可能との判断でした。
3年生の前期では利用は難しかったため、まずはLITALICOワークスで体験をしながら卒業単位取得を目指すことに。Nさんは4年生の頃、周りは内定が出て喜んでいるのに、自分は何をやっているんだと自責の念に駆られ、うつ病を併発しました。
自分を苦しめる原因と対策
卒業の見込みが立った頃、自治体から「障害福祉サービス受給者証」が発行され正式にLITALICOワークスへ通うことになりました。
主治医から「摂食障害はすぐ治るものではなく長い付き合いになる」と言われているため、症状と付き合いながら支援をしていくことに。体調不良を自己発信することが苦手で、気分の浮き沈みがあっても我慢して休まないようにしていたNさん。
スタッフは早々に体調の把握をするため、1日の感情をセルフモニタリングシートに記入してもらうことにしました。これをはじめるまではNさん自身も気持ちが落ちたり自傷行為をしたりする原因が分かりませんでした。
セルフモニタリングシートを見て遡ると、月曜日のブルーマンデー症候群や雨の日、食事後になどに気分の浮き沈みがあることが分かりました。気分が落ちた時にどう対処するかを一緒に考え試したり、自分を苦しめている完璧主義の考え方について和らげる方法を考えたりしました。
気分が落ち込むような思考に陥ることから抜け出せない時のために「生活していると楽しいこともあるよね。それを意識化してみましょう」と提案。Nさんは考え方をストックすることにしました。
自身のコントロールよりも就活をしたいと焦るNさんに理由を聞くと、「家族は大学を卒業しても働いていない自分を責めていると思っている」とのこと。母親が付き添いで通院している所にスタッフも同行させてもらい、カウンセリング中に母親と話をしました。
すると「小さいころから相談することが苦手な子で、高校生くらいから何を考えているのか分からない」「本人がやりたい仕事を見つけて働けるまで見守るつもり」という話を聞いて、すれ違いが起きていることが分かりました。
浮き沈みを繰り返す就職活動
母親の気持ちを理解するも「早く就職したい」という気持ちは募るばかりでした。しかしアルバイト経験も職歴もなく、働くイメージがつかないNさん。
企業インターンで様々な職種の経験を積みました。その中で接客業務と1つのことに集中して続ける作業は合わない、コツコツ1人で取り組める事務職は合っているということが分かりました。
また企業から「正確でていねいに仕事ができていた」という評価があり、事務職を目指して就職活動をすること決まりました。
何事にも完璧でないと気が済まないNさんは、模擬面接で言葉に詰まってしまう自分が許せないとのこと。スタッフに自分の気持ちを伝えられるようになったものの、どうしても完璧主義の考え方や食事後の罪悪感は消えません。
面接後に記入したセルフモニタリングシートを見て気分が低下していました。しかし「面接で最初からパーフェクトな人はいない」と伝えると、少し気持ちが和らぎ笑顔に。
その後、専門学校での事務職の求人興味に持ったNさん。対人業務を含む業務内容のため大丈夫か確認すると「ストレスがかかる仕事かもしれないけれど、スタッフやカウンセラーなどを見て人のために働いてみたい」とのことでした。
Nさんの意思を尊重し、業務に取り組む姿を見てもらってから判断や面接をしてほしいと担当者へ連絡をしました。
安定して働けるようフォロー
仕事をしている風景や業務スピードを確認した担当者からは評価が高く、面接もスムーズに進みとんとん拍子で内定をもらうことができました。Nさんは「今後の不安もあるが、就職できる喜びの方が強い」と内定を承諾しました。
就職後もセルフモニタリングシートを付けて共有してもらうこと、主治医・カウンセラーとスタッフで情報共有をすることを約束し、送り出しました。
はじめての就職は全てが新鮮で刺激的です。疲れが出たり、ストレスがたまったりするのは当然のことです。
初日と1週間後に連絡をくれたNさんは「学生や教員と関わることは楽しいけれど、臨機応変に対応しなければいけない」と少し弱音。セルフモニタリングシートを見ると、気分の浮き沈みが大きくなっていたため急遽面談をしました。
その後も完璧にしないとという思いがプレッシャーになって自傷行為をしてしまうことがあり、現在も週1回仕事終わりに面談をしています。
企業からは「はじめての就職でこれだけできていたら十分」との評価をもらっていることを伝えると、嬉しそうにするも自己評価は低めです。定着支援サービスとして週1回の面談は多い方ですが、長く働けるようフォローしながら見守っています。
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※掲載内容(所属や役割、診断名など)はインタビュー当時のものです。