人が怖い。対人緊張が強く、汗が止まらなかった学生時代
プロフィール
- Kさん
- 年代 : 30代
- 就職先企業 : ダイキン・コンシューマ・マーケティング株式会社
- 診断名 : 社交不安障害
困りごと
- 対人緊張が強い
- ミスを引きずる
- 新しい環境への不安が強い
目次
目次
- 向き合ってくれる仲間がいる
- 人が怖かった。でも学校には行きたかった
- 「働くって楽しそう」 働く姿を見て変わる意識
- 利用者の意欲とスタッフの優しさが背中を押す
- 「まずやってみる」の精神で コツコツ成功を重ねる
- 自立した社会人として 一人暮らしをするのが夢
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向き合ってくれる仲間がいる
現在、エアコンや空気清浄機などの空調機器を販売しているダイキン・コンシューマ・マーケティング株式会社で働いています。物流業務部物流業務グループに所属し、18名の社員が在籍する中、私は主に製品の修理費用請求に付随する伝票の発行や仕分け、ファイリングなどの業務を任されています。
夏は暑がりで冬は寒がりの私にとって、室内を快適に過ごすことができるようにしてくれるエアコンはとてもありがたい存在です。そのエアコンや空気清浄機を扱っている会社ということに、とても親近感を感じています。
また、トライアル雇用*で6ヶ月、契約社員として1年が経ちますが、職場の方の温かさや配慮の手厚さ、私に対して誠心誠意向き合ってくれる姿勢にいつも心が温かくなります。
就労前は引きこもりがちで生活リズムが崩れてしまった時期もありましたが、今では生活リズムも整い、規則正しい生活を送ることができています。日頃から体調管理にも気をつけて、「早寝早起き」「1日3食」を実行しています。
日によって気持ちが沈むこともありますが、朝の出社時は会社のことだけを考えようと意識的にスイッチを入れています。まず洋服を着る、準備する、とりあえず駅に向かう。ちょっとずつ目標を立ててそれを遂行しています。通勤時間には、エレクトリカルパレードなどの明るい音楽を聴いて気分を高めています。会社の先輩から「退勤したら会社のことは考えなくていいよ」と言われているため仕事が終わると同様にスイッチをオフに切り替えます。
家では、テレビゲームで体を動かしたり、音楽を聴いたりして心身のリフレッシュをしています。
人が怖かった。でも学校には行きたかった
20歳の頃にカウンセリングを受け、社交不安障害と診断されました。それまで障害があるという意識はなかったのですが、診断を受けて「やっぱりな……」という気持ちと、「やっと分かってもらえた」という安心感の両方がありました。
学生の頃から対人緊張が強く、初対面の方の前だと汗が止まらなくなったり、考えがまとまらなかったり、言いたいことがうまく伝えられなかったりすることが悩みでした。
特に、中学や高校では同級生と自分を比較して「みんなができることが自分にはできない」「自己紹介ですら、自分はうまくできない」など落ち込むことが多かったです。
当時は障害があるという認識もなかったので「少し休めば大丈夫」という程度にしか思っていませんでした。気分が落ち込むと教室を離れ、同級生たちのいる教室に戻るとまた落ち込む……を繰り返し、根本的解決には至りませんでした。最終的には両親に「休養したい」と伝え、高校2年で中退。
その後20歳になるまで引きこもりの時期を過ごしました。家にいる時の自分は落ち着いているからか、両親からは「怠けている」と言われた時期もありました。その裏では「自分達の育て方が間違っていたのか」と心配をかけてしまっていることもわかっていました。
引きこもっている間も、勉強することは好きでした。学校には行きたいという気持ちも常にありました。自分と向き合うためにも児童心理学を学びたいと考えるようになってからは、大検にチャレンジし無事に合格することができました。
折角受かった大学でしたが、しばらくすると人がたくさん居る教室に行くことが辛くなりました。そんな時は図書館などで本を読むなどして、のんびり過ごし気持ちを落ち着かせる努力もしてみたのですが、1年で退学してしまいました。
「働くって楽しそう」 働く姿を見て変わる意識
大学中退後、生活リズムを整えるため、デイケアに1年ほど通いました。授産施設にてクッキー作りや病院内の清掃など、負荷の軽い作業に取り組み、社会復帰に向けた準備をしました。
デイケアには幅広い年代の方がいたので、卓球などのレクレーションを通して色々な方と交流したり、会話したりしました。中でも気になったのは就労されている方たちでした。楽しそうに仕事をしている姿、ものの見方や考え方が「大人だな」と感じました。自分もその人たちと同じように「働きたい」と強く思うようになりました。
ちょうどその頃、就労移行支援事業所を利用している方と知り合い、LITALICOワークスのことや、就労移行支援という福祉サービスを知りました。興味はあったのですが、新しい環境に馴染むことができるか、障害の症状が悪化しないか、就労移行を利用して本当に就職することができるかといった強い不安や悩みがありました。
家族やカウンセラーの方に、「ゆっくり焦らずに、あなたにとって働きやすい場所をダメもとでいいから探してみたら?」と背中を押してもらい、授産施設のスタッフに就労移行支援事業所LITALICOワークスのことを相談し、説明会・見学会に参加することにしました。
実際にLITALICOワークスに行ってみると、パソコンが1人1台あり、集中して作業したり気軽に挨拶を交わしたりする人がたくさんいました。明日からでも働けるんじゃないかという方々を見て、自分も2年間ここで頑張れば就職できるような気がしました。
毎日ここに通うことがこの先通勤の練習にもなると思ったことや、医者からの勧めもあったことで、LITALICOワークスの利用を決意しました。
利用者の意欲とスタッフの優しさが背中を押す
LITALICOワークスの利用当初、利用者の方たちを見て「大人だな」と思いましたが、自分でもできることがあるんだと自信にもつながっていくと共に、自分もその一員として感じられるようになりました。
私は特にコミュニケーションを図ることがとても苦手だったのですが、「報・連・相」の練習をしたり、ワークを通じて様々な利用者の方の就職への取り組みや意気込みなどを話し合ったりしました。相手とのやり取りがスムーズにおこなえる機会が徐々に増えていきました。
確実に就労に向けて準備ができてきている実感が湧くと、家族との会話が増え、事業所内での交友関係が広がりました。生活が充実してきたことで、家族と買い物に出かけたりする機会も増えました。
LITALICOワークスでは、自分の苦手なことに向き合う以外にも、ビジネスマナーやWord・Excelなど事務系ソフトの使い方、模擬面接や企業インターンなど、就職に関して役立つプログラムが非常に多かったのが印象的です。
周りの方々が企業インターンに行く姿を見て、私も3社ほど参加しました。学習教室での庶務業務、老人介護施設での介助補助業務、そして現在所属している企業での事務業務を経験しました。
企業インターンを通じて学んだことは、自己理解の大切さです。実習中にミスしたことを引きずってしまい、うまく気持ちをコントロールすることができない時もありましたが、LITALICOワークスで学んだ体調管理やストレスコントロールの方法が役に立ちました。また、自分の特性への理解を深め、「○○の場面ではパニックになりやすい」と気づきを得てからは、対策を練ることができるようになりました。
「まずやってみる」の精神で コツコツ成功を重ねる
現在の職場では、入社前に「こういう障害のある方が来るよ」と私のことを事前に社員の方に連絡してくれていたり、面接の際に「障害について具体的にどのような配慮が必要なのか」を聞いてくれたり、ジョブコーチをつけてくれたりと様々な配慮があります。会社の一員として真剣に育ててくれようとする想いを強く感じます。
製品の特性上、夏と冬に繁忙期を迎えますが、その時期は業務量が特に多くなり、スケジュール通りに進まないことがあります。そういう場合、朝に上長や業務担当者から「周りの方が業務をフォローしますね」と言ってもらえるので、やるべきことを焦らず取り組むことができます。
一方、ケアレスミスが多くなった時は、その原因を一緒に考えてくれます。忙しかったからなのか、違う作業を同時にしていたからなのか、じゃあどうすればミスを減らせるか、と考えるきっかけをくれたりします。
この職場で働く前は、常に失敗することが怖く、人に質問することも避けていたのですが、今では「ミスをした時に原因や背景を考えること」を教わり、あいまいな点や疑問に思ったことはその日のうちに聞くようになりました。
また、企業インターンでの経験から「失敗への恐怖心を持たずに、まずやってみる」「自分1人で考えても相手には伝わらないし、相手も動いてもらえない」ということも分かっていたので、「まずやってみる」の精神で小さなことでも目標を設定し達成するようにしています。
社内の決起会や研修旅行などにも参加し、他の部門の方とも少しずつコミュニケーションを図ることができたことで、人との輪が広がり、楽しく業務に取り組んでいます。(はじめはとても緊張しました)
日々の業務はもちろん、新しい業務を教わり、自己理解を深めることで、やりがいのある毎日を過ごしています。
自立した社会人として 一人暮らしをするのが夢
これからも自己発信力を身につけ、業務理解を深めていきたいと考えています。また社内での交流の場にも積極的に参加し、コミュニケーションの輪を広げていきたいと思っています。
私は新しい環境に対し不安や緊張が強く、慣れるのに人よりも時間がかかる方だと思います。企業側の配慮として、トライアル期間はジョブコーチをつけてもらったことで仕事が理解しやすくなり心強く感じました。
また、労働時間についても企業と主治医の先生と相談・連携しながら、はじめは週5日の6時間勤務からスタートし、問題なければ1ヶ月ごとに30分ずつ延長するという配慮をしてもらいました。自分の障害特性を発信したことで、企業の理解を得られ、居心地の良い職場環境を築けています。すべて理解してもらうのは難しくても、できるだけ発信することは自分の働きやすさにつながると思っています。
今の私の目標は、無理せず少しずつ努力を重ねて、会社の一員として責任感をもって業務をおこなっていくことと、家族に頼りすぎず経済的に自立した生活を送ることです。そして、一人暮らしをしながら、ずっとこの会社で働き続けたいと願っています。
この会社での人とのめぐり逢いが良かったので、毎日幸せに働くことができています。これからも人との縁を大切にすることを忘れずに、自分らしく頑張っていきたいと思います。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。
企業からのコメント
営業支援統括部 物流業務部 本社物流業務グループ グループ長 大木 様
スタッフからのコメント