就職活動で躓きLITALICOワークスへ。今は自信が持てるように
プロフィール
- Sさん
- 年代 : 20代
- 就職先企業 : 日本ピザハット株式会社
- 診断名 : 自閉スペクトラム症(ASD)、脳性麻痺
困りごと
- マルチタスクが苦手
- コミュニケーションが苦手
- 優先順位をつけることが苦手
目次
目次
- ストーリー
- 大学生になり、さまざまな場面で困りごとが。発達障害かも?と主治医に相談
- 働く上で必要な知識を習得でき、他者の経験も聞くことができた
- 社会人として初めての仕事。苦手だと思っていた優先順位のつけ方への対処法
- 自信がついたことで苦手だった人とのコミュニケーションが強みに変わった
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ストーリー
大学時代、「授業の履修登録ができない」「アルバイトで複数のことを言われると混乱する」「就職活動の進め方が分からない」などの困りごとに悩まされたSさん。
病院に行くと、自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けたそうです。卒業後、LITALICOワークスでのプログラムを通し、スタッフからポジティブなフィードバックを受けたことで自分に自信が持てるようになりました。
現在、日本ピザハット株式会社で採用に関わる業務をしながら、ほかの障害者雇用メンバーのサポートをし、大活躍されています。
大学生になり、さまざまな場面で困りごとが。発達障害かも?と主治医に相談
——Sさんの障害について教えていただけますか?
自閉スペクトラム症(ASD)です。
大学に入り、さまざまな困りごとが出てきたことが診断のきっかけです。高校までと違いたくさんの授業の中から自分で受ける授業を選ばなければならない履修登録でつまづきました。
ほかにも、アルバイトの面接で自分ばかり話し過ぎてしまう、業務説明で複数のことを同時に言われて混乱してしまう、就職活動も複雑なプロセスでどう進めていいかわからない、などの困りごとがありました。
——大学への入学が大きなきっかけだったんですね。どのような対処をされましたか?
コミュニケーションについては家族から「癖があるね」と言われていました。自分でも「発達障害かもしれない」と感じはじめたことから、元々脳性まひで通っていた病院の主治医に相談し、自閉スペクトラム症だということが分かりました。
就職活動は、一般就労で進めていましたが上手くいかなかったため、当時から障害者雇用という選択肢もいいかもしれないなと考えていたんです。
情報収集をする中でLITALICOワークスを知り、大学を卒業した後に通いはじめました。
事業所がにぎやかな印象だったこと、スタッフの話し方が明確な分かりやすい言葉で理解しやすかったことなどから利用を決めました。
働く上で必要な知識を習得でき、他者の経験も聞くことができた
——大学卒業後からLITALICOワークスを利用されたんですね。どのように利用されましたか?
LITAICOワークスは約1年9ヶ月ほど利用しました。大学時代も電車で通学していたため、電車で通うことは苦にならずはじめから週5で利用していました。
LITALICOワークスでは、全プログラムを受講しました。特に印象深かったのは、ビジネスマナーのメールと、あいさつのバリエーションに関するプログラムです。
コミュニケーションについて、実際にロールプレイングなども通し「伝え方で印象がこんなに違うんだ」などリアルに体験できてよかったです。メールも伝えたいことを実際に文面に書いていく、実践的な内容で今も役立っていると感じています。
土日には、スタッフの経験を聞けるスタッフトークというプログラムがありました。自己紹介から職歴など、いろいろな方の経験を聞ける機会はあまりないと思うので、貴重な経験になりました。
——プログラムをたくさん活用されたんですね。就職についてはどうお考えでしたか?
大学生のときに一般就労を目指して難しかった経験から、障害を開示する方が困りごとがあったときに素直に相談できる、自分には合っていると感じてオープン就労を選びました。
企業インターンにも3社行きました。実習では自分が困ったときにどう質問したらいいのか、忙しそうな相手に対してどう声掛けしていいのかがわからず不安でしたが、スタッフに相談し担当の方に相談する方法を一緒に考えました。
——企業インターンを実践的な練習の場として利用されたんですね。大学時代の就職活動と、LITALICOワークスでの就職活動はどのような違いがありましたか?
大学生の就職活動と違ったのは、相談先がちゃんとある状態で就職活動できたこと、プログラムやスタッフとのコミュニケーションで実践につながる経験値を得た上で臨めたことで、自信を持って就職活動できたことです。
一方、就職活動で困ったことは、求人票を見ても文字でしか情報がなく、職場の雰囲気が分からなかったことです。
ピザハットは、実習でお伺いした企業の1つで、実際に雰囲気を感じられたこと、当時企業インターンの時の担当者で現職では上司にあたる笠原さんがはっきりと分かりやすい話し方で説明してくれたことで、快適なコミュニケーションがとれると感じ、入社することに決めました。
社会人として初めての仕事。苦手だと思っていた優先順位のつけ方への対処法
——今はどのようなお仕事をされていますか?
今は、HRサポート課で採用に関する仕事のサポート業務をしています。
採用に関するデータ収集、分析、障害者雇用体験者のチューター、資料の作成、準備、会議のスケジュール調整、電話対応などです。週5日、6時間勤務です。
——幅広いお仕事をされていますね。仕事をする中で困ったことはありましたか?
私は大学を卒業してすぐLITALICOワークスに通い、社会人経験がない状態で今の仕事に就きました。
はじめは、オフィスで働くなら基本となる備品の位置やファイルの整え方、書類はこういうものだという前提がわからない状態で戸惑いましたが、分からないことは聞いて仕事をしていく中で少しずつ覚えました。
また、私が就職したのはコロナ禍がはじまったころで、ちょうどリモート勤務導入の時期でした。私はまず仕事を覚えるために出社していましたが、オフィスに人がおらず質問しにくいなど困ったことがありましたね。
——コロナ禍で世の中全体もイレギュラーな状態の時だったんですね。リモート勤務もされていますね。
はい。仕事が増えて、自分もリモート勤務をするようになり、休む場である家で仕事をすることに戸惑い、うまく休めない気持ちにもなりました。その際、上司から「業務時間以外は家なんだから休んでいい」とはっきり言ってもらえたことで気が楽になりました。
困ったことは、週に1回30分の面談時に上司に話すようにしています。
——働く上で困ったことや工夫したことがあれば教えてください。
最初は、パソコンを使った作業がメインでした。徐々に仕事が増え、今は優先順位をつけながら業務を進めています。
優先順位をつけることは、学生のころから大の苦手で、LITALICOワークスで練習を重ねていました。
それでも、仕事をはじめたばかりのころは、優先順位の理解はしているけど、実際に自分の目の前に仕事がくると何から手をつけたらいいか迷ってしまう状態でした。
仕事の流れを把握した上で、スケジュールを組み立てるという順番を踏むことで、だんだんとうまく優先順位をつけることができるようになったと思います。
自信がついたことで苦手だった人とのコミュニケーションが強みに変わった
——SさんにとってLITALICOワークスはどにような場でしたか?
自分のことを肯定してくれる居場所だと思っています。LITALICOワークスに通うことで自己肯定感が上がりました。
LITALICOワークスに通う前は、どうしてもコミュニケーションに苦手を感じていたので、自信がなく全体的に暗い印象だったと思います。
スタッフと話したときにアドバイスをもらったり、「ここがいいですね」とポジティブな意見を言っていただけたりしたことで自分の行動に自信がついたと思います。
——今のお仕事では、どのようなことに力を入れていますか?
今仕事の中で大きい範囲をしめている業務が、ほかの障害者雇用の社員をサポートする役割です。
横浜オフィスでは8名の障害のある方が勤務しています。そのメンバーでオフィス美化を目的とする「グリーン会」というグループを作ったのですが、会の案内や日程調整、後から入ったメンバーのサポートをしています。新しく入社する方には、パソコンの使い方の説明をしています。
私はこれまで「自分はコミュニケーションが苦手だ」と感じてきました。
一方で、人との関わりが好きで、目の前に困った人がいれば、できるだけ助けたいな、というような気持ちも持っています。
最初は上司から頼まれて、何か質問がある際に答えるなどの対応をしていました。今では上司にも「丁寧に対応してくれて、適任だ」と言ってもらえ、いろいろな方と話す場面も増えたので、自分の経験を話すような機会も作っていきたいなと思うようになりました。
——これからチャレンジしたいことはありますか?
今は実家暮らしなので、1人暮らしをしてみたいと思っています。食事をちょっと豪華にしてみたりしたいですね。
今だと実家の家族の意見を取り入れながらになるのですが、料理は趣味なので、そういったことも含めて1人暮らしにチャレンジしたいです。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。
企業からのコメント
コーポレート HRサポート課 笠原 様(左)
スタッフからのコメント