障害をオープンにして、一般雇用 安心できる環境で、“自分”を活かす
プロフィール
- Yさん
- 年代 : 30代
- 診断名 : うつ病
困りごと
- 人見知り
- 職場環境などに慣れるまでに時間がかかる
- 慣れない環境の中で相談することが苦手
- ストレスや悩みなどを抱え込みやすい傾向がある
目次
目次
- ストーリー
- 入社3ヶ月で退職。先のことを考え、途方に暮れた
- 自分のスキルを磨きながら、他者との関わり方を学んだ
- 安心して働けるように。障害を伝えた上で、一般雇用で就職
- 「もう一度、頑張ろう」絶望していた私に、希望を与えてくれた
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ストーリー
2020年3月、転職と同時にテレワークに切り替わり、慣れない仕事に加えオンライン上でのコミュニケーションにしんどさを感じたというYさん。会社を退職し、入院先の病院で診断されたのは、うつ病でした。
療養期間を経て1年半LITALICOワークス姫路を利用し、現在は介護福祉事業系の会社の総務部で働いています。採用面接では障害があることを伝えた上で、障害者雇用ではなく一般雇用で就職。「隠したくない」そして、「安心して働きたい」という思いからでした。
ご自身のスキルや興味関心の枠を超えて、「どんな風に生きていきたいのか」を考えながら就職先を決めたYさんに、入社までの経緯や現在の働き方について伺いました。
入社3ヶ月で退職。先のことを考え、途方に暮れた
ーー LITALICOワークスを利用される前は、どのようなお仕事をしていたのでしょうか?
2019年までは、社員十数人くらいの小さな制作会社でWeb関連の仕事をしていました。働いていたのは4年間くらいです。毎日終電で帰るほど忙しく、離職してしまう人も多い職場でした。当時から結婚も視野に入れてお付き合いしている方がいたので、働き方を変えたいと思って2020年3月に転職し、広告代理店で働くことになりました。前職とは違い、200人規模の会社です。私はWeb関連の知識があったので、Webディレクターとして採用していただきました。
ーー 2020年3月というと、ちょうど新型コロナウイルスの感染が広がり始めた時期ですね。職場での変化はありましたか?
入社してからすぐに、テレワークに切り替わりました。私は人見知りする方なのですが、関係性ができてしまえば自分からコミュニケーションを取っていくタイプです。でも、生活リズムや仕事内容の変化に加えて、オンライン中心のやり取りに難しさを感じてしまって…。徐々に精神的にしんどくなっていきました。
ーー そうだったのですね。具体的にどのような状態だったのでしょうか。
最初の症状は不眠症です。「結婚に向けて安定した生活をしたいと思って転職したんだから、辞めるわけにはいかない。失敗したくない」と、どんどん自分を追い込んでしまって。5月頃には自傷行為をして入院することになりました。診断名は、うつ病です。自分でも「多分そうだろうな」と思いました。せっかく入社したのにすぐに退職してしまい、途方に暮れましたね。この先、どうしよう…と。
自分のスキルを磨きながら、他者との関わり方を学んだ
ーー どのような経緯で、LITALICOワークスのことを知ったのでしょうか?
退院してからは、心療内科に通い始めました。最初は、「何もしたくない」「死にたい」という気持ちが強かったのですが、実家で暮らしながら処方された薬を飲んでいたら、1年くらいで気持ちが回復していきました。その頃、通っていた心療内科で「これから社会復帰するにはどうしたらいいですか?」と相談したら、いくつかの就労移行支援事業所を紹介してくれました。その中の1つが、LITALICOワークスだったんです。
ーー なぜLITALICOワークスを利用することにしたのでしょうか。
実際に体験させてもらったのは、LITALICOワークスと別の就労移行支援事業所の2ヶ所です。LITALICOワークスの方が静かな雰囲気で、居心地がいいなと感じましたね。直感的に「自分に合っているな」と思って、2021年12月からLITALICOワークスを利用させてもらうことにしました。
ーー 実際に利用してみて、印象に残っていることはありますか?
特に経験できて良かったのは、部署活動です。総務部、企画部、広報部の3つの部署があり、その中の1つに所属して他の利用者と一緒にプロジェクトを進めるんです。私は広報部で活動することが多くて、その中で冊子やチラシ、新聞などを作りました。元々Web業界にいたので、そこでの知識や経験を活かしながらどのようにチームの人を巻き込むかを学ぶことができました。
ーー具体的に、どのようなことをしたのでしょうか?
例えば、新聞の制作では、文章を書いたりレイアウトを考えたりします。レイアウト作りはエクセルやパワーポイントでもできるのですが、もう少しデザイン性を高めたいなと思って画像編集ツールを使うことを提案しました。他の利用者が文章を書き、私がレイアウトを考えることで上手く役割分担ができたのではないかなと思います。
また画像編集ツールを使いたい人がいたときには、基本的な使い方を教えました。得意だったパソコンのスキルを活かしながら、他者との関わり方を学べたのは良かったです。レイアウトを考えることで、それまで苦手だと思っていたWebデザインにも挑戦できました。
安心して働けるように。障害を伝えた上で、一般雇用で就職
ーー 現在は、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
介護福祉事業系の会社の総務部で働いています。主に、社用携帯や電子機器の管理、名刺や備品の発注、業務改善の提案などをしています。障害があることは面接のときにお伝えした上で、一般雇用の非正規社員として働いています。
ーー 障害者雇用ではなく、一般雇用で就職されたのですね。面接のときに、障害があることを伝えたのはなぜだったのでしょうか?
徐々に体調が良くなってきていたので、主治医からは「障害者手帳が更新されないかもしれない」と言われていました。障害者雇用で就職したとしても、障害者手帳がなくなってしまうと、雇用形態の変化に伴い仕事内容も変わってしまう可能性もあるんです。それはちょっとつらいなと思って、一般雇用で就職することにしました。
障害があることを伝えた理由は、「隠したくない」という気持ちが1番ですね。前の会社を辞めてから期間が空いているので、やはり面接時に「今まで何をしていたんですか?」と聞かれるわけです。そのときに、LITALICOワークスを利用していたことをきちんと説明したいなと思いました。
あとは、その方が気持ちが楽だろうなとも思っていました。私の場合はそこまで多くの配慮を望んでいるわけではないのですが、やはり少し気にかけてもらえた方が安心して働けるのではないかなと思ったんです。
ーー 実際に働き始めてみて、どのように感じますか。
働く前は不安でいっぱいでしたが、実際に始まってみると、自分の強みを活かしながら働けている実感があります。今の職場ではパソコンが苦手な方が多いので、困っている方がいるときは私が教えることができますし、みんなに頼ってもらえているのも嬉しさを感じます。
逆に私は事務処理が苦手なのですが、周りの方がやり方を教えてくれたり手伝ってくれたりします。「いつでも聞いてくれていいからね」と言ってくれる優しい方たちばかりです。それぞれの得意なところを発揮してサポートし合えている感じがするので、いい関係はできているのではないかなと思います。
ーー それは素敵ですね。どのような経緯で、現在の会社に就職することを決めたのでしょうか?
実はLITALICOワークスを利用しているとき、そこで働くスタッフを見て就労支援の仕事もいいなと思っていました。それでいくつかの会社の採用試験を受けてみたのですが、すべて不採用だったんです。
結局、これまでの知識や経験を生かせる業界として、Web関連の会社の面接を受けました。ただ、同じ職種だと過去のつらかった経験がフラッシュバックしてしまって、それも難しいことがわかりました。最終的に、事務系の仕事を中心としつつ、少しWeb関連のことも含むような職種を探していきました。
「もう一度、頑張ろう」絶望していた私に、希望を与えてくれた
ーー LITALICOワークスに通い始めた頃から現在にかけて、どのように気持ちが変化しましたか?
自分に自信を持てるようになりました。転職してすぐの会社を辞めたあとは、どうやって社会復帰をしたらいいかわからず、1人では何もできなかったんです。さらに、うつ病の診断を受けて障害者手帳を手にしたときは、「僕は障害者なのか…」と落ち込みました。
でも、LITALICOワークスのスタッフの方がサポートしてくれたおかげで、「もう一度、頑張ろう」と思えるようになりました。まさに、絶望の淵にいた私に希望を与えてくれた場所です。担当のスタッフさんとは頻繁にメールのやり取りをしましたし、よく悩みを聞いてもらっていました。私と年齢が近いスタッフの方も多くて話しやすかったですね。
今は、堂々と「僕、障害者手帳を持っているんですよね」と周囲の人に言えるようになりました。障害者手帳を持っているかどうかよりも、自分の能力を発揮しながら今の仕事と向き合えているかどうかに意識が向くようになったんだと思います。
ーー 最後に、今後の目標を教えてください。
今の仕事はやりがいもありますし、職場環境もとてもいいなと思っています。大変なことはありますが、今の職場で頑張りつつ今後は正社員になることが目標です。
あとは、自分自身が障害者として就職することの難しさを感じてきたので、同じような悩みを抱えている方の支援ができたらいいなと思っています。それぞれが自分に合った仕事は必ずあると思うので、もし、今の会社に障害者のある方が職場実習に来られたり、就職することがあったら、サポートができたらいいなと思っています。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。
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