障害と「付き合っていく」ということを学び、一歩を踏み出す勇気に
プロフィール
- Hさん(左)・Oさん(右)
- 年代 : 30代
- 就職先企業 : ランスタッド株式会社
- 診断名 : Hさん(うつ病)・Oさん(うつ病)
困りごと
- Hさん:新しい環境や変化に対して緊張感が強く出る・周囲の変化や物音などに敏感・事前に準備をしないと落ち着かない
- Oさん:精神的、肉体的な負荷により体力が消耗しやすい・季節変化によって心身ともに調子が下がることがある
目次
目次
- ストーリー
- 就職活動を考え始めた時、ブランク期間の説明に悩んでLITALICOワークスを利用
- LITALICOワークスに通う前は「毎日同じ場所に通えるのか?」と不安でした
- LITALICOワークスでの出会いで、障害と「付き合っていく」ということを学びました
- 「自分が無理をすればいい」という気持ちがありました
- 今後は、他の障害者雇用の方の橋渡しをしたいです
- 企業からのコメント
- LITALICOワークス大宮からのコメント
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ストーリー
人間関係の悩みがきっかけでうつ病を発症したHさんと、仕事や家庭の環境変化によってうつ病を発症したOさん。おふたりともLITALICOワークス大宮を利用し、現在はランスタッド株式会社の同じ部署で、派遣社員やクライアントの請求関係の事務業務を担当しています。
LITALICOワークスに通うまでのことや、利用する中で学んだこと、現在の職場で活きている経験などについてお話を伺いました。
就職活動を考え始めた時、ブランク期間の説明に悩んでLITALICOワークスを利用
おふたりは、ランスタッドにどのくらい勤めているのですか?
Hさん:
私は、ランスタッドに入社してちょうど6年になります。首都圏集中プロセスセンターという部署に配属され、そのまま同じところで6年間働いています。最初はどこまで働き続けられるか不安もありましたが、周りのみなさんのおかげでここまで続けられました。
Oさん:
私は、ランスタッドに入社して3年9か月になります。気付いたらいつの間にか3年以上が経っていて、あっという間でした。Hさんと同じ首都圏集中プロセスセンターに所属しています。
おふたりがLITALICOワークスを知ったきっけを教えてください
Hさん:
私は、通院先のカウンセラーの方に「仕事をしたい」と話していたところ、LITALICOワークスを含めた就労移行支援事業所をいくつか紹介してもらいました。家から近い大宮にLITALICOワークスのセンターがあったので、まずは見学に行き、そのまま利用することにしました。1年半くらい通って、ランスタッドに就職しました。
Oさん:
私の場合は、体調がちょうど落ち着いてきた頃に家族がテレビでLITALICOワークスの特集をしているのを見たようで、「通ってみるのはどう?」と勧めてもらったのがきっかけです。ただ、その時はすぐには行く気になれませんでした。しばらく経って就職について考え始めた時に、「履歴書にブランク期間があることを、どう説明したらいいんだろう?」と悩むようになりました。その時にLITALICOワークスのことを思い出して、見学に行ってみることにしたんです。利用期間は、私も1年半くらいでした。
LITALICOワークスに通う前は「毎日同じ場所に通えるのか?」と不安でした
LITALICOワークスに通う前の状況について聞かせてください。
Hさん:
私は性格的に、物事を考えすぎてしまうことが多いんです。人間関係がうまくいかない時に抱え込みすぎて、仕事に行きづらくなることや体調を崩してしまうことがありました。自分では「少し休めば大丈夫かな」と思っていたのですが、パニック症状みたいなものも出るようになって、両親から勧められて受診したところうつ病と診断されました。
今振り返ると、「もっとこういう対応をしていれば…」と思うこともありますが、つらい状況の中では冷静になることも難しいですよね。助けてもらえる支援機関の知識もなかったので、いろいろなことが積み重なって発症したのかなと思っています。
発症後もうまくうつ病と向き合うことができず、前向きになれなかったり、遊びに行けなかったりする時もありました。私の場合、転院して自分に合うカウンセラーの方と知り合えたこともあり回復していきましたが、LITALICOワークスを利用する時は「毎日同じ場所に通うことができるのかな」という不安がありました。
Oさん:
私が発症した時は、仕事の環境と家庭の環境が同じタイミングで変化し、それに対応できなかったというのがきっかけでした。症状として胸の痛みが一番強く出たので、最初は狭心症だということになり治療をしたのですが、なかなか良くならないという状態が1年以上続いたんです。そういった状況で「死ぬかもしれない」という恐怖感が長く続いたことでうつ状態に陥り、仕事どころか日常生活も送れないくらいの状態になったところで、初めてうつ病と診断されました。
ただ、うつ病と診断されてもすぐに治療を始められたわけではなく、障害の受容ができなかったんですね。「自分はそうはならない」「気持ちの持ちようだ」という思いが抜けなくて、治療に取り組めないまま、3年くらい寝たきりに近いような状況でした。
自信も完全に失ってしまい、再発するのではないか?回復してもこれだけブランクがある人間が社会生活を送れるのか?といった不安や恐怖を強く感じていました。そのため、体調が回復してきてからも、「さあ仕事をしよう!」という気持ちには到底なれませんでしたね。それに、回復したといっても、それを就職活動の時にどうやって企業に証明したら良いのか分からず悩んでいました。
そうした悩みをまとめて解決できるのではないかと思い、LITALICOワークスを利用することにしました。LITALICOワークスに通い始めたのは、うつ病の診断を受けてから6年が経ってからでした。
ほかの就労移行支援事業所も見学しましたか?
Hさん:
いえ、私はしていないです。紹介された中で、LITALICOワークスが一番近くて通いやすいということで見学したのですが、そうしたら、まず利用者の方やスタッフの雰囲気がすごく良くて。自分が通うことを想像しても、苦にならないなと感じました。スタッフの方と面談した時も、「慌てなくていいですよ」と言ってもらえて、ここなら自分のペースで通っていけるなとピンときて利用を決めました。
Oさん:
私は、LITALICOワークスの前に、他の就労移行支援事業所も見学しました。比較しようと思ってLITALICOワークスの説明会にも参加してみたのですが、その時に対応してくださったスタッフの方が「いつ来る?」という感じで、良い意味で軽いノリで誘ってくれて。考えすぎて動けなくなっていた自分にとって、すごく後押しになりました。
もちろん、ノリだけで決めたわけではありません。説明会で、スタッフの方が迷いなく自信を持って話している姿を見て、「ここに通えばうまくいくのでは」という予感も持っていました。
LITALICOワークスでの出会いで、障害と「付き合っていく」ということを学びました
LITALICOワークスに通って良かったと思うところを教えてください
Hさん:
最初は毎日通うことも不安だったので、まずは他の人より遅めの時間に通所して、無理なく通う習慣をつけていくことから始めました。落ち着いてきてからは、プログラムなどにも参加したのですが、その中でもグループディスカッションが特に印象に残っています。実は私は、子どもの頃から、人前で話すことがすごく苦手で…。「周りから変に思われるのでは」など、発言した後のことを考えてしまい、なかなか意見が言えなかったんです。
でも、LITALICOワークスのグループディスカッションでは、「ここなら自分の意見を言っても受け入れてもらえる」という雰囲気を感じました。なんというか、スーっと発言できたんですよね。それを繰り返していくうちに、話すことが苦じゃなくなっていきました。現在も、会社のミーティングで自分の意見を発言できていて、そのおかげで仕事を続けられていると思います。
それ以外にも、LITALICOワークスでは小さな成功体験をたくさんさせてもらったので、それが自信につながっていると感じています。
Oさん:
私はLITALICOワークスに通って、1人で就職活動をしていたらきっと体験できなかっただろうな、と思うことがたくさんあったと感じています。
まず、障害がある他の方と話ができたことが大きかったです。利用者の方にはさまざまな障害があって、苦労していることや工夫していることなどを共有できました。それが、自分の障害受容にとてもプラスになったと思います。私は障害を「克服しなくてはいけない」という意識が強すぎたのですが、他の人の話を聞くうちに、必ずしも打ち勝つ必要はない、障害と「付き合っていく」という生き方もあるんだ、ということを学びました。
もうひとつ大きかったのは、企業インターンを経験できたことです。事務系や作業系などさまざまな企業実習があったのですが、私は「提案されたものは、断らずに参加する」ということをしました。
どうしても自分の視野は限られているので、一度それをゼロベースで見てみたいと思ったんです。その上で、向いてないと思っているものが本当に向いてないのか、嫌いと思っている環境が本当に嫌いなのか、確かめてみようと思いました。結果的に、7つの企業インターンに参加しました。
複数のインターン先で実習を重ねることで、職場環境や業務内容についても、自分が大切にしたい価値観が分かってきました。その後就職活動をする上でも、大きな指針となりました。
Hさん:
私も、企業インターンでいろいろなことを学びました。私は新しい環境が苦手なので、参加する前は不安が強かったのです。4社の企業インターンに参加して、新しい環境で自分がどんな体調になるのか、どう対処すればいいのかということを学べたので、結果的にプラスになったと思っています。参加してみたら、「自分はこういう環境や業務が好きなんだな」という新しい発見もありました。そういった経験が、就職活動にもつながったと感じています。
「自分が無理をすればいい」という気持ちがありました
就職活動で苦労したことがあれば教えてください
Oさん:
すべてですね。それまでの就職活動では、経歴などを伝えればよかったのですが、障害者雇用での就職活動では、体調管理などこれまでとは違った情報を伝える必要があります。そのため、書類作成の段階から苦労しました。
それに、私も当初「障害は克服するもの」だと思っていたので、「どういうときに症状が出やすいか」「その時の対処法は何か」といったことを書くのは、症状が出ることを前提にしているようで難しかったです。でも、LITALICOワークスのスタッフの方に添削してもらいながら、いろいろな考え方があることを教えてもらったので、すごく助けられました。
Hさん:
障害者雇用で働く時には、配慮してほしいことを書類にまとめて提出することが多いのですが、私は、その伝え方に苦労しました。その時、LITALICOワークスのスタッフの方に、「ここまでは配慮として必要だけど、こういう部分は自分で努力できます」ということを伝える必要があると教えていただきました。何度も調整しながら書類を作ったのですが、その時に必要な配慮と自身でできるところを明確にしておいたことが、今の会社で働く上でも、すごく役に立っています。
実際に受けている配慮を教えてください。
Oさん:
私は入社前から、体調管理についての配慮を相談させてもらっています。繁忙期などもあるのですが、体調がよくない時は早めに上がらせてもらうなど、体調を優先して業務調整をさせてもらっています。もちろん、自身で業務の見通しを伝えた上で、お互いに無理のない範囲で調整するように心がけています。
Hさん:
私は環境に慣れることが苦手なので、入社時にさまざまな配慮をしていただきました。具体的には、短時間勤務から始めることや、相談窓口を明確にしてもらうこと、体調が悪い時には休憩を入れたり、業務量を調整したりしてもらったりすることなどです。最初はかなり細かく相談したので、職場の方から「大丈夫かな」と心配されたかもしれませんが、慣れてきてだんだん調子も上がっていったので、安心してもらえたかなと思っています。
そうやって自分のことを伝えられるようになったのは、LITALICOワークスでの経験があったからこそだと思っています。配慮について相談するところと、自分で努力するところを明確にできましたし、表現方法も学んでいたので、それが今も活かされています。
Oさん:
Hさんも私も、「自分が無理をすればいい」というのが根本にあるんですよね。LITALICOワークスで、「大変な時には相談してもいいんだ」ということを学べたのが、大きかったと思っています。
Hさん:
まだ、無理をしてしまうこともあるんですけどね。後から気づいて「その分、休みを多くしよう」といった調整をすることができるようになりました。
今後は、他の障害者雇用の方の橋渡しをしたいです
ランスタッドに入社を決めた理由を教えてください。
Hさん:
私の場合は、最初の説明会の時に、「障害のある方とこういう風に働いていきたい」「こういうようなコミュニケーションをしていきたい」という話を明確に聞いていたことが大きな理由です。その後、インターンに参加した方の話なども聞いた上で、私がやりたい業務内容や職場環境に近かったこともあって応募を決めました。
Oさん:
私は前職が教育関係だったこともあり、人をサポートする業務がしたいと思っていたことが、まずひとつ目の理由です。もうひとつは、LITALICOワークス大宮の卒業生が実際にランスタッドで活躍しているのを聞いて、安心して働けるのではないかと思ったことです。
今後の目標を教えてください。
Hさん:
私は短時間勤務から始めて、フルタイム勤務にすることを目標としていました。それが達成できたので、次は他の社員の方がしている業務を、自分もできるようになりたいと思っています。私ができるようになれば、他の障害者雇用の方の選択肢を広げることにもつながると思うので、そういう橋渡しをすることを目標にしています。
Oさん:
私も業務歴が長くなってきて、新しく入社する方にレクチャーする機会も増えてきました。その中で、それぞれの方の性格や特性に合わせて、どういう風に接すれば業務に適応できるか?ということをよく考えます。例えば、同じ情報量のことを伝えるにしても、一度に伝えた方がいい方もいれば、ひとつずつ伝えた方がいい方もいますよね。そういったバランス感覚を身につけていくことが、現在の目標です。
ゆくゆくは採用などの業務にも関わり、障害のある方が活躍しやすい環境を作っていくことも目標として持っています。
LITALICOワークスの利用を迷っている方へメッセージをお願いします。
Hさん:
私も利用する前は「本当に通えるの?」という不安がありました。でも、実際に通ってみると、いい刺激をたくさん受けて前向きな考え方に変わることができました。今は不安な気持ちが強い方もいると思うのですが、LITALICOワークスではスタッフの後押しもあり、「ちょっとやってみようかな」と感じられることがたくさんあります。自分のペースで通ううちに自信もついて、就職活動にもつながっていくと思います。まずは話を聞くという感じで行ってみると、いいきっかけになると思います。
Oさん:
私も悩んでいる期間が長かったのですが、今では「もっと早く相談できていれば」と思っています。LITALICOワークスにはホスピタリティの気持ちを持ったスタッフがいて、幅広いプログラムも用意されています。1人で悩んでいるよりも、一歩踏み出してみる価値がある場所だと思っています。
企業からのコメント
【請求給与センター 山本愛様より Hさん・Oさんへ】
請求給与センター業務の中で、主に派遣スタッフの勤怠や有給の登録、派遣スタッフ向けの福利厚生としてサービス提供している「前給(お給料日前に働いた範囲内で事前に給与を受け取れるサービス)」の利用額計算という業務を担っていただいています。
前給は、毎日16時までに処理する必要があるというタイトなスケジュールの中、正確に対応していただき、派遣スタッフの満足度にもつながっています。
また、派遣スタッフの給与計算という重要な業務を担当するうえで、ご自身の体調や予定を調整し、整え、日々の優先順位を的確にメンバーと相談しながら取り組んでくださっています。
後輩社員の方への業務レクチャーやフォローもご対応いただき、いつも頼りにしております。
LITALICOワークス大宮からのコメント
【Hさんへ】
LITALICOワークスをご利用いただいていた頃から、ご自身としっかり向き合っていたHさん。ご入社後は環境の変化も大きかったと思いますが、ご自身の体調とうまく向き合いながら、周りの皆さんが働きやすくなるように業務改善をしたり、スキルを身に着けたりと、前向きに取り組まれていたのが印象的でした。
また、周囲への気配りやコミュニケーションの取り方が上手なことから、職場でレクチャー担当を任されるなど「いなくてはならない存在」となっていかれたことも印象に残っております。これからもお体に気を付けて、ご自身のなりたい姿に向かい頑張っていただければと思います。
【Oさんへ】
LITALICOワークスに通われていた頃は、ブランク期間があったことから、体力をつけることや、新しくスキルを身に着けることに貪欲に取り組まれていました。ご自身よりも年齢が若い方とも積極的に交流されており、他のメンバーの方の相談相手になっていらっしゃいました。
現在でも、体調や業務管理を徹底されていることや、先々のキャリアを考えながらお仕事をされていることから、職場でも頼りになる存在としてご活躍されていると思います。
無理をせずご体調に気を付けて、お仕事を続けていただければと思います。
※掲載内容(所属や役割、診断名など)は
インタビュー当時のものです。