朝起きられない、朝起きることに苦痛を感じる。
何度目覚ましをかけても起きられず、ストレスがたまっていく一方。
このように朝起きることに困難を感じている方は、もしかすると、気持ちだけでは解決できない、「起立性調節障害」という自律神経系の病気(疾患)による症状かもしれません。
この記事では、起立性調節障害の原因や症状、治療方法などについて解説していきますので、少しでも心当たりのある方は、ぜひ最後までご覧ください。
朝起きられない、朝起きることに苦痛を感じる。
何度目覚ましをかけても起きられず、ストレスがたまっていく一方。
このように朝起きることに困難を感じている方は、もしかすると、気持ちだけでは解決できない、「起立性調節障害」という自律神経系の病気(疾患)による症状かもしれません。
この記事では、起立性調節障害の原因や症状、治療方法などについて解説していきますので、少しでも心当たりのある方は、ぜひ最後までご覧ください。
起立性調節障害とは、自律神経のバランスが崩れることで起きる病気(疾患)の一つです。
起立性調節障害は、十分な血流が身体や脳に届かないことで、立ちくらみやめまい、朝起きられないといった身体症状や、思考力の低下や慢性疲労、無気力などのさまざまな症状が起こります。
主に午前中にかけて症状が強く表れるため、社会人の場合は、会社に遅刻してしまったり、なかなか集中できず午前中の仕事が思うように進まない、といった傾向がみられます。
起立性調節障害は、午後には症状が落ち着くことが多いため、周りからは怠けていると誤解されてしまうことがありますが、これは決して本人の意志や甘えによるものではありません。
起立性調節障害の症状は、基本的には思春期前後の子どもに多くみられます。
小学校高学年くらいから徐々に症状が表れ、思春期と重なる中学生・高校生が最も多く、その後大人になるにつれて、徐々に収まっていく傾向があります。
しかし、一方で、子どもの頃に起立性調節障害を発症したことのある方の約4割が、大人になってから、再び発症(または継続)しているという調査結果も報告されています。
大人が発症する起立性調節障害については、職場や人間関係からくるストレスなどが原因だと考えられています。
起立性調節障害は、自律神経を調節する機能が何らかの理由によって乱れることで起こります。
自律神経が乱れる原因については以下のようなことが考えられます。
上記のような内容が当てはまる場合、生まれつき自律神経の働きが弱い可能性があります。
また、一度症状が収まった場合でも、その後の生活習慣の乱れなどによって、再発する可能性も考えられます。
低血圧により、脳への血流が低下することで、朝起きることが困難に感じたり、立ちくらみやめまいといった症状が表れることがあります。
また、日常生活において、水分や塩分が不足している場合でも血圧は低くなる傾向があります。
少食であったり、エネルギーが足りなくなっている場合は、朝起きることがつらく感じたり、めまいや立ちくらみを感じることがあります。
夜遅くまで起きていたり、偏った食生活を送ることは自律神経が乱れる原因となります。
自律神経が乱れることで、起立性調節障害の発症のリスクが高まります。
周りとのコミュニケーションに苦手意識があったり、他人の言動を必要以上に重く受け止める傾向のある方など、日頃から精神的なストレスが多い場合、自律神経が乱れやすくなることがあります。
また、例えば、威圧的な人がいる場合や残業の多い職場など、精神的なストレスがかかることが多い環境も自律神経が乱れるきっかけになる可能性があります。
天気や気圧の変動は、自律神経が乱れる原因になることがあります。
特に、春から夏にかけて気温が大きく変化する時期や、雨や台風など気圧が下がる日は自律神経のバランスが崩れやすくなります。
また、生まれつき自律神経の働きが弱い方や不規則な生活を送っている方、日頃から精神的なストレスを抱えている方は、自律神経が整いにくく、天候の変化による影響を受けやすくなる可能性があります。
起立性調節障害は、下記のようなものが代表的な症状としてあげられます。
ほかにも、起立性調節障害は起立時の脳血流が低下するため、ふらつき、めまい、立ちくらみ、頭痛、倦怠感、気分不良などの症状が出たり、さらには腹痛、動悸、食欲不振などの症状がでることもあります。
起立性調節障害の症状は、変動しやすく、季節や時間帯によって症状の程度に差が出ることがあります。
起立性調節障害の治療方法はいくつかありますが、その前に大切なことがあります。
繰り返しになりますが、起立性調節障害は怠け癖ではない、自分の意志ではコントロールできない、あくまでも病気(疾患)の一つになります。
本人のやる気や甘えといった問題ではありません。
そのため、治療をおこなうことももちろん大切ですが、周囲の人に起立性調節障害について理解してもらい、可能な限りサポートしてもらうことも大切です。
周囲からのサポートを受けることで、より治療に専念することができます。
起立性調節障害は、症状が軽症であれば、日常生活上で心がけ・注意することで症状をある程度コントロールすることができます。
自宅でできる、症状を緩和できるポイント(日常生活の改善点)を把握し、少しずつでも試していきましょう。
※ご自身で症状の判断はせず、初めに必ず医師による診断を受けるようにしましょう。
体内を循環している血液量を増やすためにも、水分と塩分をしっかり摂るようにしましょう。
朝ごはんを抜いてしまったり、偏った食事を続けていると、自律神経が乱れる原因となり、起立性調節障害の症状が表れやすくなる可能性があります。
意識的に水分・塩分を摂取するように心がけることが大切です。
寝ている状態や座った位置から、急に立ち上がることは避けましょう。
ゆっくり時間をかけて起立して、うつむきながら立ち上がり、最後に頭を上げるように心がけてみましょう。
いきなり立ち上がって、頭をあげてしまうと、脳の血流が低下してしまうことで気分が悪くなる可能性があります。
朝一度起きてから、日中に寝転がるのは避けるようにしましょう。(体調がすぐれない場合を除く)
自律神経系は、自分の姿勢に合わせて身体の状態を調整しています。
せっかく一度起きた後に寝転がってしまうと、また自律神経系は、転がった状態に合わせて、副交感神経が活発になり、よけいに起きにくくなるという悪循環を生む可能性があります。
また、できる限り長時間の起立を避けたり、毎日15~30分程度、ウォーキングなどの軽い運動をおこない、筋力低下を防ぐこと、早寝早起きといった規則正しい生活習慣なども、治療に有効だと考えられています。
起立性調節障害の治療方法に一つに、薬物治療もあります。
代表的なものとして、ミドトリン(末梢神経を収縮させ、起立直後の血圧低下を軽減する)やアメジニウム(交感神経活性が低下し、血圧・心拍数が低下している時に服用)という薬を服用するほか、漢方薬を使用することもあります。
起立性調節障害の症状を抑えるための予防法をご紹介します。
また、血液の循環量を増やすためにも、運動習慣を身につけること、特に下半身の筋肉を鍛える運動が有効だと考えられています。
加えて、治療法のところでも説明しましたが、水分不足・塩分不足になると、症状が出やすくなるので、日ごろから充分な水分・塩分を摂るようにしましょう。
参考:徳島県医師会「起立性調節障害」
起立性調節障害を診断された場合、どうするのがいいでしょうか?
学生であれば、親に相談したり、先生に事情を説明して、サポートしてもらうことができますが、社会人の場合は周囲の協力を得るほか、仕事に合わせて各自で工夫することも大切です。
症状が、仕事に支障をきたすほどではない程度の軽いものだったとしても、きちんと治療を受けましょう。
決して放置せず、医師の指示に従って治療や生活習慣の改善を進めていくことで、徐々に症状を抑えることができます。
どのような病気でも早期発見、早期治療が大切です。
治療を続けながら仕事を続ける場合、治療が長期に及ぶ可能性もありますので、仕事環境を調整する必要があります。
なかなか相談しにくいことかもしれませんが、病気であることを隠して無理し続けることで、精神的にも負担になり、回復が遅れる可能性もあります。
できる範囲から少しずつ職場の人に相談しながら、理解・配慮してもらうことで、より治療に専念することができます。
また、産業医や保健師など、社内に相談窓口がある場合は、相談してアドバイスや協力を得ることも有効です。
起立性調整障害は、自律神経のバランスが崩れることによって起こる病気です。
朝起きられなかったり、午前中の仕事が集中できないといった状況が続き、自分ではなんとかしたいと思っていたとしても、気持ちだけで解決できるものではありません。
朝起きられない日が続いている、立ちくらみや食欲不振、動悸などが続くようであれば、一度病院で診察を受けてみることを推奨します。
一部、起立性調節障害の専門外来のあるクリニックもありますが、基本的には最もつらい症状に合わせて、循環器内科、神経内科、心療内科、睡眠外来などを受診するようにしましょう。
朝起きられないことや午前中の作業に集中できないことについて、自分自身を責める必要はありません。
起立性調節障害は生活習慣を改善し、しっかりと治療を続けていくことで徐々に良くなっていく病気です。
焦らず、ゆっくりと治療に向き合っていくことが大切です。
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監修
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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