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突発性難聴とは?初期症状や原因、治し方、仕事や体験談などご紹介

更新日:2024/08/09

突発性難聴は、突然耳が聞こえにくくなる疾患です。多くの場合は、片耳に発症するといわれています。

 

突然発症する疾患なのであれば、1日で治る場合もあるのでしょうか?「ストレスが発症のきっかけとなる」と聞いたことがある方も多いかもしれません。これは本当なのでしょうか?

 

この記事では、突発性難聴の初期症状や原因、治療方法について説明し、これらの疑問についてもお答えします。突発性難聴を発症した方の体験談や仕事での対処法、利用できる支援機関も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

突発性難聴とは?初期症状をチェックしてみよう

突発性難聴とは

突発性難聴とは「突然発症する高度の感音難聴で、原因が不明または不確実なもの」とされています。(厚生省特定疾患突発性難聴研究班,1973年)

 

感音難聴とは、内耳から聴(蝸牛)神経に至る「感音系」と呼ばれるルート上に、なんらかのダメージが起こって生じる難聴のことです。

 

突発性難聴とは?感音系ルートの位置を表した図

 

突然に起こる難聴でも、原因が明らかなものは突発性難聴とは診断されません。

突発性難聴には、以下のような特徴があります。

  • 片耳に発症することが多い(まれに両耳に発症することもある)
  • 副症状として耳鳴りやめまい、耳閉塞感などをともなうこともある
  • 難聴やめまいの発作は1回だけで、再発しない

突発性難聴の初期症状

突発性難聴の症状のあらわれ方は、人により異なります。「朝起きたら、音が聞こえなくなっていた」という場合や、「突然耳鳴りがしたあと、聞こえなくなった」という場合などさまざまです。また、難聴の程度も「耳が詰まった感じ」という程度から「まったく聞こえない」状態まであります。

 

感音難聴は一般に回復が困難だとされていますが、突発性難聴は、早期に治療を開始すればするほど、回復の可能性が高まるとされています。

 

前述のように、突発性難聴は内耳(または聴神経)になんらかのダメージが起きて起こると考えられており、内耳のダメージが小さいうちに治療を開始することが重要です。このため、突発性難聴の初期症状がみられた場合は、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

突発性難聴の原因や治療について

突発性難聴の原因はストレス?

突発性難聴の原因は現在までのところ、はっきりとは分かっていません。有力な説にはウイルス内耳炎や、内耳の神経に栄養や酸素を送る血管の循環障害説などがあります。ストレスや疲労が蓄積したときに発症しやすいともいわれていますが、突発性難聴は多くの場合再発しないことを考えると、ストレスだけが原因とは一概にいえないでしょう。

突発性難聴の治療法にはどのようなものがある?

突発性難聴の診断は、ほかの病気で鑑別するものがないかどうかを調べるために診察や聴力検査を中心におこなわれます。また聴神経腫瘍や心因性難聴などの疑いを排除するために、画像検査(MRIなど)やABR(聴性脳幹反応)などの他覚的聴覚検査がおこなわれることもあります。

 

治療法は症状の程度によって異なりますが、薬物療法が中心となります。多くはステロイドが基本となりますが、ビタミンB12や環改善薬などの薬剤が使われることもあります。ステロイドは点滴または経口薬での全身投与のほか、鼓室内投与されることもあります。またステロイドとともに高圧酸素療法をおこなう場合もあります。

早期治療の重要性

突発性難聴では、発症後1週間以内に適切な治療を受けることが重要だといわれています。難聴の程度によっても異なりますが、発症後1週間以内に適切な治療を受けると、約40%の人は完治し、50%の人にはなんらかの改善がみられるというデータもあります。

 

完全に回復しない場合、難聴が残ったり、耳鳴りだけが残ったりする場合があるとされています。なお、発症から約1~2ヶ月で聴力が固定すると考えられています。

突発性難聴は1日で治るのか?

突発性難聴は突然発症しますが、多くの場合、数日で治るものではありません。聴力の回復には、通常1ヶ月程度の時間が必要とされています。

 

発症後間もない急性期は、入院して、安静な状態で治療をおこなうこともまず考慮されます。入院しない場合も発症後しばらくは安静を心がけ、生活リズムや睡眠などに気を配ることが大切だとされています。

突発性難聴に似た疾患とは?

突発性難聴と似た症状があらわれる疾患には、急性低音障害型感音難聴、メニエール病や聴神経腫瘍などがあります。

 

診断ではこれらの疾患との鑑別が必要となりますが、突発性難聴では早期の治療が重要なため、まず治療を優先し、最終的な診断は後日おこなわれることもあります。

 

急性低音障害型感音難聴

突然、低音域に難聴が起こる疾患です。多くの場合は片耳に起こりますが、両耳に起こる場合もあります。原因が不明であることや、突発的に耳閉塞感や耳鳴り、難聴などがおきることも突発性難聴と似ている点です。急性低音障害型感音難聴は短期的に回復する傾向がありますが、その後の再発も多い疾患です。中には、進行性に聴力が低下する場合もあり、注意して耳の様子をみる必要があります。

 

メニエール病

周囲の景色がグルグルと回るような「回転性めまい」、耳鳴り、難聴の3つの症状がみられる疾患です。突発性難聴との違いは、突発性難聴では発作が1度きりであることに対し、メニエール病では発作が繰り返し起こる点です。

 

聴神経腫瘍

内耳神経から発生する良性腫瘍です。本腫瘍の一部は突発性難聴のような急性の難聴で発症することが知られています。

突発性難聴の方の体験談

突発性難聴を発症したAさん・Bさんの体験談をご紹介します。

 

※これらは個人の体験談の一例であり、典型例としてご紹介しているのではありません。一つの参考として考えてください。
※プライバシー保護のため一部の文章について変更・再構成しています。

突発性難聴を発症したAさん(男性/30代)

Q. 最初に感じた症状はどのようなものでしたか?

A. 朝、起きた直後に突然、両耳で警報音のような高音の耳鳴りがありました。しばらくベッドから動けなかったほどです。

 

Q. いつ診察を受け、どのように診断されましたか?

A. 起床後1時間ほどすると、耳鳴りが少し小さくなりました。しかし左耳は依然として聞こえなかったため、すぐに病院へ行きました。診察と聴力検査の結果、「突発性難聴」との診断を受けました。

 

Q. どのような治療を受けましたか?

A. 薬を処方され、定期的に通院して治療することになりました。通院の頻度は、発症初日と発症から3日後、1週間後、2週間後という形でした。

 

Q. 症状の経過を教えてください。

A. 耳鳴りは5日ほど続きましたが、徐々になくなっていきました。幸い、2週間後には聴力もほぼ完全に戻りました。

 

Q. 治療期間中は、仕事はどうしていましたか?

A. 上司に相談し、仕事を1週間休んで治療に専念しました。 その後、仕事に戻り、体調をみながら仕事量を調整しました。

 

Q. 治療期間中の過ごし方で、気をつけていたことはありますか?

 A. 突発性難聴を発症した当時は非常に業務量が多く、ストレスも抱えていました。このことを踏まえ、仕事をしすぎないように、そしてストレスをためないように気をつけています。また、今でも大きな音や突然高い音を聞くと左耳が痛くなるため、そのような負担が耳にかかる環境をなるべく避けるようにしています。

突発性難聴を発症したBさん(女性/40代)

Q. 最初に感じた症状はどのようなものでしたか?

A. 最初に耳に違和感があったのは、携帯で電話をかけたときです。相手の声が聞こえづらかったので、携帯が壊れたのかと思っていましたが、やがて右耳がまったく聞こえていないことに気がつきました。

 

Q. いつ診察を受け、どのように診断されましたか?

A. 耳に違和感を覚えた翌日に、耳鼻科クリニックを受診しました。聴力検査やMRI検査などをおこない、「突発性難聴」と診断されました。

 

Q. どのような治療を受けましたか?

A. 入院をすすめられましたが、小さい子どもがおり家を空けられないため、急に入院はできないと考え、通院での治療を選択しました。点滴治療をしてもらい、薬をもらって帰りました。

 

Q. その後の症状の経過を教えてください。

A. 症状が改善しなかったので、翌週に再度受診した結果、総合病院に入院することになりました。

点滴や薬の服用、高圧酸素療法などの治療を受け、右耳の聞こえは多少回復したので退院しました。しかし1ヶ月後、今度は左耳に回転性のめまいをともなう失聴が発症したため、再度入院しました。

左耳の聞こえは半分ほど戻りましたが、両耳とも元の聴力には戻らなかったので、補聴器を両耳に装用し、リハビリをすることになりました。

 

Q. 治療期間中は、仕事はどうしていましたか?

A. 退院後に職場へ復職した際に、周囲の方々へ両耳が聞こえにくくなったことを伝えました。当時は接客業をしていたので、初めて会う人には耳が聞こえにくい旨を伝え、相手の言うことが聞き取れないときは聞き直しながら働いていました。その後、本社の事務職に異動になりました。電話応対業務から外してもらうなどの配慮を受けながら、現在も働いています。

 

Q. 治療期間中の過ごし方で、気をつけていたことはありますか?

A. 今思えば、突発性難聴を発症したときは、栄養失調とストレスが重なっていました。現在は、ストレスを排除するように気をつけて生活しています。また、食事内容にも気をつけて、適度な運動をおこない、睡眠をしっかりとることも意識しています。

突発性難聴と診断されたときの仕事は?

突発性難聴の回復には、早期の治療開始することが大事だといわれています。このため、突発性難聴を発症した場合は早めに職場の方々へ相談し、治療と休養を優先できる環境をつくることも考慮されます。勤務している会社が休職制度を導入している場合は、休職制度を利用して治療と休養に専念するのもひとつの方法です。

仕事を休めない場合や休職から仕事に復帰する際には、突発性難聴により聴力が低下し今までの業務が難しくなる場合もあるかもしれません。その際は、可能な範囲で業務や環境の調整について、職場の上司や周囲の人たちに相談するといいでしょう。その際は、「どのような場面で困りごとがあり、どのようなサポートがあれば仕事がしやすくなるか」を伝えます。

 

突発性難聴のある人が職場で自らおこなっている工夫や得ているサポートの例には、以下のようなものがあります。

  • 左耳が聞こえづらいため、右耳で聞き取りやすいよう、会議の際は自発的に左端の席に座る
  • 急性期で具合が悪くなったときは、静かな環境の場所に移動し、休む

また、難聴の症状が残っている場合は、補聴器や人工聴覚器を使う方法もあります。装用後は、専門医の指導のもとで聞こえに慣れるためのトレーニングをおこなう必要があります。

【無料】仕事の困りごとや今後の働き方について専門機関に相談する

突発性難聴で仕事で困ったときの相談先

突発性難聴を発症し、仕事について困りごとがある場合は、まず職場の上司や会社の産業医などに相談してみてください。

そのほかにも、疾患がある場合の働き方については以下の機関に相談できます。機関により支援対象となる条件が異なるため、詳しくは各機関に問い合わせてみてください。

 

障害者就業・生活支援センター

障害のある方を対象に、仕事面と生活面の一体的な相談にのり、支援をおこなう機関です。2023年4月現在、全国に337センターが設置されています。

地域障害者職業センター

障害のある方に職業リハビリテーションを提供する機関で、各都道府県に設置されています。

 

職業リハビリテーションとは、職業の適性の理解や把握、就職に必要な技能・知識などの習得のための職業訓練などの支援を通じて、障害のある方の就職や職場定着をサポートすることです。ほかに、一定期間ジョブコーチとして職場を訪問し、長く働き続けるためのサポートもおこなっています。

 

障害者職業カウンセラーやジョブコーチ、相談支援専門員などの専門職員が在籍しているため、突発性難聴のある方が仕事探しや仕事をするうえでも助けとなるでしょう。

ハローワーク(公共職業安定所)

国が運営する総合的雇用サービス機関で、求職者や求人事業主に対してさまざまなサービスを無償で提供しています。障害のある方専門の窓口があり、障害について専門知識をもつ職員や相談員が就職に関する相談に応じています。

就労移行支援事業所

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づき、障害や難病のある方(65歳未満)を対象に、一般企業への就職をサポートをおこなう福祉サービスです。

 

主に就職するために必要なスキルや対処法を身につけるためのプログラム実施、企業インターン、就職活動のサポート、就職後に職場に定着するための支援などをおこなう事業所です。

【無料】就労移行支援事業所に利用についてスタッフへ相談する

LITALICOワークスでは、全国で就労移行支援事業所を運営しています。自分に合う働き方をみつけ、やりがいと楽しさを持って働けるよう、きめ細かいサポートをおこなっています。

 

突発性難聴は指定難病(医療費助成の対象となる難病)には指定されていませんが、障害者総合支援法の対象疾病(難病など)に指定されています。そのため、突発性難聴を発症した方は就労移行支援の利用対象となる可能性があります。突発性難聴によって仕事上での困りごとがある方はお気軽にLITALICOワークスへご相談ください。

 

【無料】働くことのお悩みをLITALICOワークスのスタッフで相談する

突発性難聴のまとめ

突発性難聴は、突然耳が聞こえにくくなる疾患です。発症後は、なるべく早く適切な治療を受けることで聴力が回復する可能性が高まるとされているため、早期の治療開始が重要です。

 

このため、働いている方は職場の方々へ相談し、治療と休養を優先できる環境を整えることが必要となります。

 

もし治療後に難聴が残ってしまった場合は、職場でサポートを得ながら働くのも一つの方法です。突発性難聴の症状により働くうえでの困難を感じたら、この記事で紹介している支援機関に相談してみてください。

 

LITALICOワークスでは「自分らしく働く」をサポートしています。もし働くうえでの困りごとがあればぜひお気軽にLITALICOワークスへお問い合わせください。

更新日:2024/08/09 公開日:2021/10/11
  • 監修者

    筑波大学医学医療系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授

    田渕 経司

    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、日本聴覚医学会等に所属。日本聴覚医学会理事。

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