ストレスや疲れから「働くことがつらい」と感じるものの、上司には相談しづらいと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。このようなときに検討したいのが産業医面談です。
産業医面談とは、従業員が心身共に健康的に働けるようサポートするための面談です。
今回は「産業医面談はどんなときに受けるのか?」や「産業医面談で何を話すのか?」「産業医から受けられるサポート」について紹介します。また、産業医に相談できない方の相談先についてもご紹介します。
ストレスや疲れから「働くことがつらい」と感じるものの、上司には相談しづらいと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。このようなときに検討したいのが産業医面談です。
産業医面談とは、従業員が心身共に健康的に働けるようサポートするための面談です。
今回は「産業医面談はどんなときに受けるのか?」や「産業医面談で何を話すのか?」「産業医から受けられるサポート」について紹介します。また、産業医に相談できない方の相談先についてもご紹介します。
目次
産業医面談とは産業医による面談のことで、従業員が健康的に働けるようにサポートするためにおこなわれます。産業医は従業員の話を聞きアドバイスをするだけではなく、専門的な立場から企業に対し、職場環境の改善指導をおこなうことも役割としてあります。
産業医面談を受けるタイミングは、以下の通りです。
また、ストレスや疲れから「働くことがつらい」と感じるものの、上司には相談しづらいといった方も産業医面談を検討してみるのも選択肢のひとつです。
産業医面談を受ける方法には、対面とオンラインがあります。以前は原則対面での実施のみでしたが、2020年労働安全衛生法の改正により、オンラインでの実施も可能となりました。
オンラインで実施する場合の要件
産業医は、従業員が健康で快適な職場環境のもとで仕事ができるよう、専門的な立場から指導・助言をおこなう医師のことです。
産業医は従業員の話を聞きアドバイスをするだけではなく、企業に対し職場環境の改善指導をおこなうことも役割としてあります。
産業医の役割
産業医は、基本的には診断や治療はおこないません。そのため、産業医が診断や治療が必要だと判断した場合には、医療機関を紹介することもあります。また、休復職の際は主治医と必要に応じて情報共有をしてサポートします。
産業医は「労働者の健康管理などをおこなうのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める一定の要件を備えた者でなければならない」と労働安全衛生法により規定されています。
産業医の要件
常時50名以上の従業員が働いている職場は、最低1名以上は産業医を選任する必要があります。常時50名以上で999名以下の従業員が働いている職場における産業医は、非常勤でも可能と定められています。そのため、従業員数によっては常に産業医が企業にいるのではなく、月に数回企業に訪問する場合もあります。
職場の規模と産業医
産業医面談を受けるタイミングは、従業員が休職(復職)を相談したいとき、ストレスチェックで「高ストレス」だったとき、長時間労働が続いているとき、健康診断後などです。
産業医面談が必要と判断された従業員は、面談を希望するか確認があったうえで面談を受けます。基本的に産業医面談は強制ではなく、従業員本人の任意となります。しかし、例えば従業員の休業が続いており、健康問題が懸念されるときには、会社が必要と認めた場合、産業医(会社指定医)への面談指示が就業規則に定められていることもあります。
休職(復職)を相談したいとき、産業医との面談を受けることができます。
産業医は従業員の心身の健康状態を把握すると共に、主治医の診断書をもとに意見書を作成し、企業へ提出します。
産業医はあくまでも企業と従業員の間に立つ中立的な立場です。産業医は就業の可否や適正な配慮の必要性について判断し、アドバイスをします。
【対象者】休職予定・休職中の従業員
労働安全衛生法にもとづき、従業員50名以上の職場では毎年1回、ストレスチェックをすべての従業員に実施することが義務づけられています。ストレスチェックの結果「高ストレス」だった場合、本人が希望すれば産業医による面談を受けることがあります。
【対象者】ストレスチェックの結果「高ストレス」で面談を希望する従業員
長時間労働は、脳・心疾患や精神疾患のリスクが高まるといわれています。過重労働による健康障害を防止する観点から、長時間労働者(※)は医師による面談を受けることができます。
【対象者】
※月80時間超の時間外・休日労働をおこない、疲労蓄積があり、医師による面談を希望する者。
※月100時間超の時間外・休日労働をおこなった研究開発業務従事者の場合は本人の申出がなくても実施。研究開発業務従事者とは、例えばシステム開発やマーケティングリサーチ、科学分野の研究や調査などが対象となります。
年1回の健康診断は、生活習慣病の予防と治療のきっかけになります。
健康診断の結果によっては、生活習慣病などの予防と健康保持を目的として産業医面談を受けるようにいわれることがあります。
健康診断を実施後、3ヶ月以内に産業医による意見を聞き、以下のような就業区分を産業医が健康診断個人票に記載することとされています。
【対象者】健康診断の結果、産業医面談が必要とされた従業員
上記以外にも、職場での人間関係や業務内容に悩んでいる、体調不良が続いているなど、従業員が面談を希望すれば面談を受けることができます。業務以外のプライベートな要因で体調を崩している場合でも、健康相談として面談を受けることも可能です。
産業医面談では対象となった従業員に合わせ、体調や生活習慣、業務の状況について話します。
産業医面談では、心身の調子で気になること、生活習慣(睡眠、食事、運動習慣、飲酒や喫煙)について聞かれることがあります。眠れない、起きられない、食べられないなど、生活習慣の変化が疾病の前兆となる場合があるからです。
そのほか、産業医面談では勤務時間、仕事による負担の有無、業務上の悩みについて聞かれることもあります。
産業医面談を受けるものの、何を話せばいいか分からず悩んでいる方は、事前に気になることや確認したいことをスマートフォンやノートにメモをしておくようにしましょう。
メモをすることで自身の状況が整理できます。少しでも気になることがあれば、相談してみましょう。
産業医面談で話す内容例
産業医に話したことが企業や上司、同僚に漏れるのではないかと不安に思う方もいるかもしれませんが、産業医には守秘義務があります。産業医は守秘義務によって、正当な理由なく業務上知り得た情報を他人に漏らしてはいけないことになっています。
一方、産業医面談の中で従業員の健康や安全上のリスクがあると判断された場合は、人事や上司などへの報告義務が発生します。特に緊急性が高い場合、例えば従業員が自傷行為に及ぶ可能性が高い、健康診断の結果で結核などの伝染病が疑われ、ほかの従業員に健康被害が生じる危険があるケースなどでは、守秘義務よりも安全配慮が優先されます。
しかし基本的には、守秘義務が生じますので本人が希望しないかぎり、面談で話した内容が他人に伝わることはないので安心して相談しましょう。
悩みを誰かに相談すること自体に抵抗を感じる方もいるかもしれません。また、相談したところですべての問題が解決するわけではないかもしれません。ですが、相談することで「気持ちが楽になった」「心が軽くなった」といった感想を話す方も多くいます。また、相談をすることで自身の課題や状況が整理でき、状況がよくなることもあります。
産業医から受けられるサポートにはさまざまありますが、大きくわけて「企業への職場環境の改善指導」「職場復帰のためのサポート」があります。
産業医に相談をすることで企業への職場環境の改善指導につながることもあります。例えば、業務上の課題を複数の従業員が抱えていた場合は、個人の問題ではなく職場全体の問題である可能性があります。そのような場合、産業医は企業に対し改善に向けたアドバイスをします。
アドバイスの例
産業医は休職中の従業員に対して、職場復帰のためのサポートをおこないます。
休職中の従業員との面談だけでは病状や必要な配慮が明確でない場合があります。そのようなとき、従業員の了承を得たうえで主治医に問い合わせることもあります。
就業可能だと判断できた場合、時間外・休日労働時間の制限や業務内容の調整など、業務上必要な配慮を意見書としてまとめ、会社に提出し働きかけます。
休職してすぐは療養することが大切になりますが、復職に向けた準備をするタイミングで産業医面談を受けることが多いようです。休職中の方の中には、復職に向けて焦ってしまう方もいるかもしれませんが、産業医はそのような気持ちを受け止めつつ、職場復帰のための適切なタイミングをはかってくれる心強い存在でもあります。
会社の規模や従業員の人数によっては、産業医がいないこともあります。
会社に産業医がいないときや、会社の産業医に相談しづらい方へ向けて相談できるところを解説します。
社内にメンタルヘルスや健康に関する相談窓口を設置している企業もあります。社内相談窓口専用の電話番号やメールアドレスを設置、イントラネット上で事前に相談予約ができるようにする、など相談しやすいよう工夫をしている企業もあります。また健康保険組合の福祉厚生として、社外相談窓口が設置されていることもあります。年間数回まで無料の電話・メール相談が可能となっていることが多いです。
眠れない、起きられない、食欲がないなどの生活習慣の変化や、不安感や焦燥感が続くなど精神面の不調がある場合、心療内科や精神科への診察を検討してみるのも一つです。また健康診断で高血圧や高血糖など有所見を指摘された場合には、内科へ受診して治療について相談してみてください。
心療内科や精神科に通院する時間がないという方は、相談機関もあります。働く人の「こころの耳相談」では、仕事に関することやこころの健康に関することなど、さまざまな相談機関を案内しています。
心療内科や精神科で診察を受け、主治医から精神疾患と診断された場合、どうしたらいいか、戸惑うこともあるかもしれません。
そのようなときは、産業医をはじめ、上司やご家族などへできる範囲で相談し、無理せず療養するようにしましょう。また体調不良が続き、仕事や日常生活へ影響が出てしまっている場合、体調を整えることを第一に、休職など検討してもいいかもしれません。また、前章で紹介したように、会社以外の場所で相談してみるのも選択肢のひとつです。
そして、体調が整った段階で復職や再就職などを考えたときに、いろいろと不安な気持ちになるかもしれません。しかし、そのような方のためにサポートをおこなう「リワーク」や、「障害福祉サービス」というものがあります。ここで簡単にご紹介します。
リワークとは、精神疾患を原因としている休職中の方を対象とした、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)プログラムのことです。具体的には、生活リズムを整えたり、体調安定にむけたセルフケアを身につけたりしていきます。また、職場に近い環境で作業をおこなうことで復職しても無理がないように準備を進めていきます。
障害福祉サービスとは、障害者総合支援法に基づき障害のある方の日常生活や社会生活をおくるうえで困難を感じる方のために作られたものです。例えば、経済的なサポート(例:自立支援医療制度など)や就労に関するサポート(例:就労移行支援事業所や就労継続支援など)があります。就労に関しては、就労に関する相談ができたり、長く働き続けるためのサポートが受けられたりします。自分に合うサポートが知りたい場合、まずはお住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口へ相談するといいでしょう。
産業医面談は、従業員が健康的に働けるようにサポートするための面談です。
産業医は従業員の話を聞きアドバイスをするだけではなく、企業に対し職場環境の改善指導、主治医と連携した職場復帰サポートもおこないます。
心身の調子で気になること、業務上の悩みがある方は、一人で抱え込まずに相談してみてはいかがでしょうか。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しています。これまで1万人以上の方の就職や再就職を支援してきました。「体調が安定し、そろそろ働きたい」「復職するか退職するかで悩んでいる」「再就職に不安がある」などのお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
関連ページ
診断書とは?内容や料金・病院での依頼方法・会社へ提出する場合も解説
診断書は、会社の休職制度を利用するときや、保険の手続きをするときなどに必要です。 しかし、診断書は日常的によく使うものではないため「すぐに書いてもらえるのか」「料金はどのくらいか … [続きを読む]
休職中の給与は?手当やボーナスはどうなる?分かりやすく解説します
身体や心の状態によっては「働くことがつらい」と感じるものの、経済的な問題から、休職に踏み切れない方もいるかもしれません。しかし、休職が心身の回復のために必要な場合もあります。休職制度は法律で定 … [続きを読む]
心理カウンセリングとは?内容や種類、効果、料金などを紹介
「仕事やプライベートが不調」「心身共につらい」「一人で悩みを抱えているがどうしていいか分からない」そのような場合は、カウンセリングを受けることも選択肢のひとつです。しかし「自分はカウンセリング … [続きを読む]